社説
雇用の場 使い捨てにしない社会を(1月5日)
・同一労働・同一賃金の確立が大事
・住民による社会的企業を応援したい
暮らしを立て、社会に役立ちたい。こうした思いで、人は働く。
その素朴な願いをかなえられない人が増えている。昨年11月の完全失業者は331万人。1年間で75万人も増えた。大学生や高校生の就職内定率も低迷を続ける。
職に就きたくても、仕事が見つからないまま、年を越した人たちが数百万人もいる。それが、世界でも有数の経済大国と言われる日本の現在の姿である。
行き過ぎた経済合理性が働きの場にひずみを生んだ。人を使い捨てにしない社会を築きたい。雇用の在り方が問われている。
1990年代半ばからの10年間、企業は景気の後退に対応し、新卒者の採用を大きく抑えた。
「就職氷河期」と言われた時代だ。労働者派遣法の規制緩和が一気に進んだのもこの期間である。現在はほぼ全業種への派遣が認められるまでになった。
人件費削減で企業が力を取り戻す一方で、雇用の不安定化は進んだ。それが雇用危機の根底にある。
今月召集の通常国会に、仕事のある時だけ雇用契約を結ぶ登録型派遣や製造業派遣の原則禁止を柱にした同法改正案が提出される見通しだ。
正社員として就職することができなかった若者たちは、非正規労働者として労働市場に流れ込んだ。彼らは「ロストジェネレーション」(失われた世代)と呼ばれる。
「雇用の調整弁」とされた人たちが今、派遣切りなどで職と住まいを奪われ、貧困にあえぐ。
企業の経営者の中には、非正規労働を「働き方の多様化」として、積極的に是認する意見が多い。しかし何年たっても単純労働の繰り返し、給料も上がらない−というのが非正規労働者の実態である。
「働き方の多様化」が認められるとするなら、非正規労働者の処遇改善が前提だ。昇給・昇格の機会を保障しなければならない。正規・非正規の均等待遇を目指す「同一労働・同一賃金」の原則を確立したい。
一昨年秋からの世界同時不況で、「就職氷河期」が再び訪れようとしている。新たなロストジェネレーションの出現をどう防げばいいのか。
まず、年1回の新卒者一括採用を見直すべきではないか。
今の日本の社会では、卒業時に正社員になる機会を逃すと、その後に正社員として働くことは難しい。本人に何の落ち度もないのに、卒業時の経済動向で人生が大きく左右される。こんな状況を変えたい。
年間通して採用を行うことで、卒業後も何度でも正社員になる機会を得ることができる。そうした措置を講じてこそ、非正規労働者を対象に国や自治体が行っている職業訓練も効果を挙げるはずだ。
産業構造の変革も求められる。外需に頼る限り、海外景気の動向次第で、雇用状況が不安定になってしまう。内需の拡大で、新たな雇用の創出を目指すことが必要だ。
地域の特性を生かした産業を育てていきたい。その担い手として近年注目されているのが、地域の課題をビジネスの手法で解決しようとする「社会的企業」だ。
起業支援の活動家として知られる片岡勝さん(63)たちが、農業を核にした事業協同組合を間もなく札幌で発足させる。
空知管内南幌町で栽培するジャガイモやカボチャといった有機野菜を使い、札幌でポテトチップスやジュース、ケーキなどを作り、住民の交流拠点となる札幌の「町内レストラン」で販売する。
既存の産業分類の1〜3次産業を融合した「6次産業」の構築を目指す。組合員として働くのは、派遣切りに遭った若者、障害者、主婦ら約50人。今後、規模を拡大していく構想で、社会的弱者の就労につなげたい考えだ。
片岡さんは「みんなが豊かに働ける社会をつくらなければならない。札幌の事例を全国に発信したい」と語る。
経済産業省の08年の調査では、NPO(民間非営利団体)を含めた社会的企業は全国に約8千あり、雇用規模も約3万2千人に上る。
雇用問題や地域格差など社会の矛盾の深まりに伴って、社会的企業はますます数を増すだろう。
京都経済短大の藤原隆信准教授(経営学)は、編著書「NPOと社会的企業の経営学」の中で、社会的企業を「『市民の力』によって新たな社会の枠組みを創造しようとする動き」と位置づける。
市民による社会変革への息吹とも言えよう。支え合いの中から、新たな雇用を生み出す−。自立と共生に向けた動きを応援したい。
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