グーグルは中国からの撤退に踏み切るのか。検閲とサイバー攻撃への対応をめぐる問題は、創業者や役員を巻き込んだ議論へと発展しており、今後の展開は彼らの判断がカギになりそうだ。
グーグルは12日付のブログで、同社が「中国国内からの同社インフラをターゲットとした極めて巧妙な攻撃」への公式な対応を数週間かけて準備し、その過程で共同創業者であるラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏が深く関与したことを明らかにした。
この二人にとって、中国は常に厄介な問題であった。関係筋の話では、ブリン氏はかつて友人とグーグルの同僚に中国で事業を展開する計画を打ち明けた際、ロシアで幼少期を過ごした経験から、政府の検閲に協力することに対して道徳的なジレンマを強く感じるようなったと語った。ブリン氏は何年にもわたって、「グーグルの良心」としての役割を果たし、「道徳的であれ」というモットーを忠実に守ってきた。
グーグルがサイバー攻撃をどうやって発見したかは不明だが、同社は数週間前から調査を開始している。グーグルがサイバー攻撃と中国当局との関連を示す証拠の収集を進める一方、同社のエリック・シュミット最高経営責任者(CEO)は、ページ、ブリンの両氏と対応方法の協議に入った。事情に詳しい筋によると、その話し合いは、グーグルが中国にとどまり、中国の政治体制に従いつつも変えられるところは変えていく努力をすべきか、あるいは中国から撤退するかで衝突し、激しい議論に発展したという。グーグルのスポークスマンは、この件について三氏はコメントを控えるとしている。
事情筋によると、シュミット氏は、中国の自由化を進めるために中国で事業を展開することは道徳的な意義があるという自身の長年の考えを主張したという。ブリン氏はその意見に強く反対し、グーグルはすでに十分な手段を尽くしたと述べ、これ以上検索結果の検閲を正当化することはできないと主張した。
この議論の結論がどのようなものになったかは明らかになっていない。だが結果的に三氏はこの種の攻撃について沈黙を守ることは中国側に加担することになると判断し、サイバー攻撃を受けた事実を公表することで合意したという。
さらに三氏は、サイバー攻撃の事実を伝えるブログ記事に、人権に関する文言を加えることにも同意し、「これまでのウェブ上での発言の自由に対する制限なども踏まえて、中国事業を再検討する」との見解を掲載した。
米国にとって重要性を高める一方の中国に反旗を掲げたグーグルに、他の米国企業がどう反応するかが注目される。
経験豊富な観測筋は、グーグルや米国は、インターネット検閲などの問題で中国を譲歩させることは不可能とみているようだ。