■「司法はしゃくし定規ではない」
10年ほど前、津地裁に勤務していた時のこと。キャンバスの隅に記された作者の署名を削り、著名な日本画家の署名に書き換える手口で偽造品を作っていた被告の公判を担当した。
偽造品の流通を防ぐため、検察庁は通常、公判終了後に品物を没収して処分する。「それでは、絵と作者がかわいそうだ」。検察官と相談して作者にもう一度署名してもらい、作品を社会に戻した。「司法はしゃくし定規ではない。できる範囲で、問題を解決することが大切だ」と話す。
名古屋大在学中に司法試験に合格。その後に検察庁と弁護士事務所、裁判所で受ける実地研修で、裁判官になることを決めた。「裁判を仕事にするならば、その中心にいたいと思った」と振り返る。
5月に裁判員制度がスタートし、司法制度は大きく変わった。全国で行われている裁判員裁判については「おおむね順調に行われているという印象」とし、今後は「これまでの公判を検証し、もっと分かりやすい裁判を目指すことが大切」と強調する。
根っからの鉄道ファン。富山市内電車環状線の新車両「セントラム」には開業の23日に乗車した。「経済情勢が厳しい中、街を活性化させようとする郷土の頑張りを感じた。負けてられないね」。富山市在住。60歳。(社会部・芦田周)