村井仁知事は毎日新聞の単独インタビューに応じ、JR東海がリニア中央新幹線の中間駅建設の費用負担を地元に求めていることについて、「相手にしない。JR東海が『駅を造る』と言ってくるに決まっている」と述べ、負担を拒否する考えを明言した。知事は県内の人口減については、公共交通の維持などによる過疎地の保護を強調。また来夏に迫った知事選については言及を避けた。【聞き手・竹内良和】
--民主党政権をどう評価しているか。
何もかも、よい訳ではない。経済対策は一番望まれる局面だったが、前政権で作った(景気対策の)補正予算などを止められ、景気への影響は非常に気になる。だが地方消費税の充実を明確に言っていることなどを見ると、問題は適切にとらえていると思う。
--県内の人口減少が進んでいる。長野の将来像をどう描くか。
当然のことをやるしかない。医療、公共交通は不可欠なインフラだが、非常に劣化している。リニアや松本空港が関心を集めたが、本当にショックなのは山間へき地のバス交通が駄目になることだ。
過疎地域に住めるよう維持することが大事だ。その地域に住みたい人が1人でもいる限り、住めるようにする。「手間がかかるから町へ出てくれよ」とは言えない。町に出て何もやることがなくなり、どんどん年を取って単なる「お荷物」と化した例を随分と見ている。そんなの人間の幸せじゃない。
--過疎地の維持にはコストがかかる。
地域の中でそれなりに対応していくものだ。要するに近所の人たちが工夫する、いい意味の自治。何でも「保健師さんに」「介護保険を使って」などと考えがちだが、うまい助け合いはある。それだけで済まないこともよく分かってはいるが。
--リニア建設では、JR東海が中間駅建設に350億円の負担を求めている。
中間駅ができなかったらリニアは単なる迷惑施設だ。「350億円を出せ」なんてとんでもない。相手にしない。そこは心得て、向こうでちゃんと(中間駅を)用意することになるだろう。高速道路を造る時に「インターチェンジはお前たちが金を出さないと造らない」と言ったら、反対運動しか起きない。そんなバカなことできるはずがない。JR東海が「駅を造ります。どうぞよろしく通してくりゃしゃんせ」と言ってくるに決まっている。
--そもそも松本空港やリニアは、県の発展に役立つのか。
空港はできてしまっているインフラ。それをどう活用するかという話だ。松本空港はピーク時に年間約26万人が利用した実績もあり、捨てたものではない。リニアも長野だけ駅がないなんて考えられない。
--次期知事選に立候補する意思は。
私は4年間にわたって知事職をやることについて県民の付託をいただき、それに熱中している。何か考える状況ではない。
毎日新聞 2010年1月14日 地方版