【北京・浦松丈二】インターネット検索エンジン最大手の米グーグルが、中国国内で行ってきた検索表示の自主制限を一部解除していることが14日、分かった。同社は中国国内からサイバー攻撃を受けたことを理由に、中国政府が行ってきた検閲廃止を目指して交渉すると表明している。自主制限の一部解除は検閲やサイバー攻撃への対抗措置とみられ、同社と中国との交渉の行方にも影響を与えそうだ。
中国語版グーグルでは14日までに、これまでできなかった一部の写真や情報の検索表示が可能になった。グーグルは06年に中国市場に進出する際、中国政府の要請を受け入れ、検索表示の自主制限を続けてきた。
自主制限を解除した結果、中国当局が民主化を求める学生らを武力鎮圧した天安門事件(89年)で、戦車に1人で立ち向かう男性を撮影した有名な写真や戦車の発砲、虐殺された遺体の模様などが検索表示されるようになった。中国国内では、これらの写真掲載が禁止されている。戦車の写真はグーグルで表示されるようになったが、中国国内の検索エンジン大手、百度(バイドゥ)などでは引き続き表示できない状態だ。
このほかにも、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の写真を検索すると286万件表示された。中国政府はダライ・ラマ14世を「祖国分裂主義者」とみなし、国内での写真掲載を禁じている。
こうした「検閲対象」写真は、海外サイトでは大量に出回っているため、中国国内からでも検索方法によっては例外的に表示されることがあったが、今回のように大量に表示されることはなかった。
中国政府がこうした写真を表示させないためには、国内からグーグルへのアクセスを遮断する以外には方法がないとみられる。
ただ、グーグルへのアクセスを遮断すると、国内の莫大(ばくだい)な数のユーザーに多大な影響を与えることになる。また、中国が強制措置に乗り出せば、グーグルは中国からの撤退を辞さない構えで、両者の摩擦はエスカレートしそうだ。
毎日新聞 2010年1月14日 東京夕刊