きょうの社説 2010年1月14日

◎「陸山会」に家宅捜索 小沢氏は事情聴取に対応を
 民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入問題で、東京地検特捜部 が強制捜査に踏み切ったのは、秘書の寮用に購入した土地の購入代金に、ゼネコンからの資金が充てられた可能性を疑っているからだろう。小沢氏は特捜部の事情聴取の要請に応じておらず、定例会見などでも、不透明な会計処理についての質問にまともに答えようとしない。政治家としての説明責任を果たさぬ無責任な態度と言わざるを得ない。特捜部が実態解明のために、強制捜査に踏み切ったのも理解できる。小沢氏は事情聴取に応じ、疑問に答えてほしい。

 土地購入をめぐっては、小沢氏側の説明だけでは、資金の流れが把握できない。小沢氏 の元私設秘書、石川知裕衆院議員は、調べに対して、小沢氏から「たんす預金」4億円を受け取ったと話している。だが、小沢氏の年収はここ数年、歳費を含めて平均3000万円ほどだから、簡単に用意できる額ではなく、出所が不明である。

 石川議員は、土地代金の支払いと同時に、複数の小沢氏の政治団体から陸山会の口座に 1億数千万円を入金するなどして、4億円の定期預金を組んでいる。土地購入が既に終わっているのに、定期預金を担保にして銀行から小沢氏名義で4億円を借り、陸山会への貸し付けにした理由も分からない。

 特捜部の調べによると、小沢氏の関連政治団体が2000年から06年にかけて、鹿島 、清水建設、大成建設などゼネコン8社から計6億円近い献金を受け、その大半を陸山会に移している。今回の家宅捜索でも、陸山会の事務所や同会の会計事務担当だった石川知裕衆院議員の議員会館内の事務所のほか、鹿島本社でも行われており、土地購入代金がゼネコンから流れた可能性を示唆している。

 特捜部は▽4億円の原資は、ゼネコンから小沢氏への裏献金だったのではないのか▽必 要とは思えない借り入れは、小沢氏の個人資金を隠すための偽装工作ではなかったか、と疑っている。こうした疑惑に対して、小沢氏がいつまでも答えず、事情聴取に応じなければ、「政治とカネ」に対する国民の不信感は高まるばかりだろう。

◎金沢港の貨物量回復 「共同出荷」定着させたい
 世界不況の影響で落ち込んでいた金沢港のコンテナ取扱量が前年比プラスに転じたのは 、製造業の輸出回復の表れとはいえ、金沢港の利用促進という観点でみれば、地元企業の目がようやく金沢港に向き始めてきたことが何よりの明るい兆しと言えるのではないか。

 コマツなど荷主企業20社による金沢港利用促進会議は今年度、出荷時期を調整して貨 物船をチャーターする「合い積み輸送トライアル事業」に取り組み、神戸港などを利用してきた企業が金沢港に切り替える動きも出てきた。同事業は国土交通省の社会実験として実施されたが、これをきっかけに生まれてきた「地元港」意識をさらに広げ、荷物を太平洋側から金沢港へ引き戻すことが大事である。

 国交省は、金沢港など全国に103ある重要港湾の整備を絞り込み、2011年度から は「重点港湾」に絞って投資を重点化させる方針を打ち出した。金沢港が地域経済に欠かせぬ存在であることをアピールするためには、一部の企業にとどまらず、地域ぐるみで活用する姿を示す必要がある。「共同出荷」の仕組みを定着させ、金沢港の潜在力を引き出したい。

 金沢港のコンテナ取扱量は昨年11月に前年比プラスに転じ、12月はリーマン・ショ ック以降で初めて3千個の大台を回復した。輸出は中国、東南アジア向けの繊維機械や運搬用機械が伸びているという。一方、金沢港利用促進会議は企業の出荷情報を集約し、不定期便での共同出荷を促しているが、製造業の増産が軌道に乗れば、そうした環境も整ってくるだろう。

 輸出企業は長年の物流慣行から太平洋側の積み出し港を利用するケースが多かった。金 沢港を敬遠する理由として便数や航路の少なさが指摘されていたが、まず企業が地元港を優先する姿勢がないと、航路拡充につながるだけの貨物量も確保できない。

 輸出企業は不況を乗り切るため、陸送コストを含めた経営効率化に懸命であり、金沢港 の利用を促す好機ともいえる。県も企業への働きかけを強め、港湾サービスの一層の充実に努めてほしい。