昨日は民主党の小沢一郎幹事長の政治資金疑惑をめぐり、小沢氏の資金管理団体「陸山会」や元秘書の石川知裕衆院議員の事務所、そして、大手ゼネコン「鹿島」の本社や東北支店などに一斉に強制捜査のメスが入りました。ある閣僚は「これは小沢さんまでいくんじゃないか?」と戦々恐々としているのやら、うれしがっているのやらよく分からない反応を示していましたが、本当に焦点ですね。一政治家の去就が、政界全体、ひいては今後の日本の方向性にも大きくかかわってくるというのは、あまりいいこととは思いませんが、まさに今、事態は分水嶺に差しかかっている気がします。
ただ、この問題に関しては今朝の紙面で粗方論じつくされているので、今回は紙面からこぼれた別の話題(早版には政治面ミニ・ニュースで掲載されていましたが、小沢関連ニュースに押されて後版では落ちていました)を紹介します。一応、このブログには、あまり他に報道されていない情報、視点を提供したいという趣旨があるので。また、私自身、しょっちゅう、周囲に「自民党は今、何やっているの?」と聞かれるので、こういうことをやっているようですという周知の意味も込めて。派手な動きは総裁のキャラもあってかできていませんが、まあ、こういう地道な調査をきちんと国会での追及に生かしてほしいものだと思います。
さて、実は昨日、自民党の文教部会の義家弘介部会長、衛藤晟一部会長代理、馳浩文科委筆頭理事、北村誠吾国対副(文科委担当)らメンバーが山梨県を訪ね、党山梨県連三役らと意見交換を行いました。テーマは、私がことさら取り上げるのですからもうお分かりでしょうが、「山梨県教職員組合問題」です。ここで論じられている民主党の輿石東参院議員会長支援のための違法な政治活動で刑事罰を受けた組合教師がスピード出世を遂げた事例は、私も過去エントリの2009年10月13日付「世はもはや輿石東氏の天下となっているようです」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1268676/)と12月11日付「刑事罰を受けた山梨県教員の教頭昇任に関する続報」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1362741/)で言及している問題です。以下、同行した田中靖人記者の取材メモをもとに報告します。
■皆川巌県連幹事長あいさつ 私達自民党県議会は12月の定例県議会におきましても本会議または委員会を通じまして、色々と前々回の参院選におきまして輿石東先生を支援致しまして政治資金規正法違反で罰金刑を受けた、そういう先生が、早い段階で、一番早いと言っても過言ではないんですけど、最初の試験で教頭に昇格したという事実を捉えまして、これにつきまして、徹底的に問題として議論を、論議を戦わせてきた訳です。この問題は単に山梨県における山教組の問題に留まらず、民主党の大物議員となっております輿石東議員に結びつく大変重大な問題だという風に我々も認識しております。そんな意味からも本日は国会議員の先生方と有意義な意見交換ができるんじゃないかと期待しておるところであります。
また、7月の参院選に向けまして、山梨方式による公募で(元山梨学院大付中高教諭の)宮川典子さんという大変、若い30歳の女性候補を私達は選びまして、昨年中(※12月28日)に党本部から公認を頂いております。宮川さんは恐らく日本一若い候補になると思いますけれども、相手方の輿石先生は民主党では恐らく日本一ご高齢の候補者になると言う風に思いますので、極めて有権者に分かりやすい対立軸が形成されると思っています。県連としても国会議員ゼロという大変不名誉な状況を一日も早く脱却して、何とか新しい自民党の流れをこの山梨から作っていきたいというそんな意気込みでがんばっているところであります。
■義家弘介部会長あいさつ 我々文部科学部会といたしまして、昨年から馳部会長、それを引き継いで私が部会長として文部科学政策について本当に活発な議論を行っている訳でございます。その中で1つ、やはりしっかりと捕まえて対策を講じていかなければならないのが、いみじくも1年前の日教組の新年会で輿石東民主党参院会長が発した「教育の政治的中立はあり得ない。我々は永遠に日教組の組合員だと思っている」という発言から端を発した一連の政治の教育介入の流れ、というよりも日教組の政治介入の流れ、これに対してしっかりと正常化を図っていかなければならない、その思いで一つ一つの政策の議論を積み重ねているところであります。
その中で山教組の影響力、そして問題、これはかねてから着目していたところですけれども、まず現場に足を運んで直接、一番身近にいる先生方からお話、ご意見を頂戴した上で国政の今後の論戦の中でしっかりとそれをぶつけていきたいと、その思いでこの山梨の地にお邪魔させて頂きました。限られた時間ではありますが、我々もしっかりと胸襟を開いて皆様方の意見、思い、そして現状に対して受け止めた上で今後の姿勢を明らかにしたいと思います。
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皆川氏 非常に有意義な意見交換ができた。国会議員の先生方は深く研究しており、目から鱗が落ちる気持ちだ。感謝している。
義家氏 我々も今日第一弾として山梨におうかがいしながら、前線に立っている県議の先生方との意見交換を行ってきましたけれども、率直にも申し上げて、現在の山梨の教育はあまりにも不正常、異常と断ぜざるを得ないという状況が表面に出ているという問題意識を本日も共有した。言うまでもなく、公立の小中高教員は地方公務員、全体の奉仕者である地方公務員であり、あるいは教員はその影響力が強いことから、教育公務員特例法によって、その政治活動について国家公務員と同様の規制がかけられております。しかし、これには罰則規定がないという面もありますけれども、国家公務員と同様の規定があり、毎回、選挙の折には教員の政治活動、こういうことは駄目、こういうことは駄目ということも文部科学省から通達があるにもかかわらず、それを大きく逸脱したような政治行為、これは6年前の参院選でも多くの教員が処分された通り。これは多くの人が知っている通りのものであります。
このたび、問題視してもう一度足を踏み入れたのは、その折りの責任者であった人が、この春から昇任試験で教頭になっているという事実が明らかになりまして、これ、全国的にも教育委員会あるいは政令市、都道府県の教育委員会に刑事処分を受けた者に対しての昇任、昇進に対してどのようになっているかという調査も行いましたけれども、議会の中でも各先生が質問している中で驚くべき回答があって、我々もびっくりしているところなんですけども、政治資金規正法で略式起訴された先生についての、停職3カ月の処分を受けた先生についてですけども、スピード違反と同じだと。これ、本当に子供の前でこんなことが言えるのかという問題です。
さらには、正当に選ばれて採用試験が行われて、管理能力、指導力、総合的に判断して教頭先生にしたということですけども、去年の12月28日に出している教育委員会の昇給に対しての取り扱いの中で、これはSランクからEランクまである訳ですけども、停職処分を受けた教員はEランク、つまり昇給はまったくしないという一番下のランクである訳ですね。それが、総合的に判断してすばらしい先生であると。だから、この教頭への採用は間違いではない答弁、この理論矛盾に対してもこの後ろ側には圧倒的組織率を誇っている組合がバックとして存在しているという事実は明らかです。これからも山梨に足を運びながら、草の根で現場の声を拾いながら、やはり教員というのは子供たちの人生を大なり小なり左右する存在でありますから、その正常化というものを我々自身も訴えて参りたいと思っています。
記者 今日の意見交換で新たに分かった事実は。
義家氏 先ほどもちらっと話したが、平成21年12月28日に山梨県の教育委員会の県教育長から平成22年1月1日付の昇給の取り扱いについてという通知が出ている。教育長の答弁とこの昇給のランク、つまり、昇給のランクっていうのは教員評価のランクでもあるわけですけども、その整合性が大きく乖離しているという事実ですね。それから、一部ですでにまた選挙に向けてのカンパが始まっているという声が具体的に上がっているということについて。あるいは、それが非常に巧妙化している部分があると。表に出にくいように巧妙化している部分がある、等のことについて今日、再確認させていただきました。
記者 山教組の問題だとややもするとローカルな印象があるが、これを国政で追及していく意義は。
義家氏 日教組問題、教育現場の、教育再生化の前に教育正常化が必要な訳ですけども、不正常な状態を国民の目に明らかにする。それは何のためにするか。これは日本を守るためでもありますが、子供たちを守ってあげなけばならないと思っています。やはり例えば、先生方が禁止されていることを当たり前にやってしまっている教育現場で、子供たちが駄目だと言われていることをやってしまっては当然、叱られる訳ですけども、教育に一番、説得力がなくなってしまう。やはり、ルールを生徒たちに示す教員こそがしっかりとしたルールを確立しなければならない。その意味では、山梨、これはかなり日本の教職員組合の組織率も含めた中でも特殊なところがあると思いますが、しかし、これは、日本中に共通していることでもありますから、ここをまず突破口にして、これから来る参院選に、じゃあ、これ、多くの国民の皆様は知らない訳ですよ。
先生が学校でファクスのビラまきのやりとりをしたり。これは違反なんですよね。やってはならないことなんです。あるいは候補者が学校に来て「選挙、よろしくお願いします」と。職員室に先生方、全員集められて。これはやってはならないことな訳ですね。中でポスターが張られていたり、ビラを撒いたり、これもやってはいけないことな訳ですね。子供たちにルールを語る教師は、少なくともルールにはしっかりと向き合わなければならない。それを、山梨あるいは別の地域にも足を運びますけれども、おかしな実態を明らかにした上で教育の正常化の第一歩にしたいと思っております。
記者 今日は委員会の理事も来ているが、当然、通常国会で追及するのか。
馳氏 衆議院の文部科学委員会の野党側の筆頭理事をしています馳と申します。去年、私も自民党の部会長という立場で、日教組の旗開きの会合に出席にしておりまして、私の目の前でですね、輿石さんが「教育に政治的中立はあり得ない」という、誠に正々堂々とおっしゃっておられました。そのことも大きな問題になっておりましたが、今、政権政党民主党の参議院の議員会長という立場で、ある意味で言えば、大きく国政の行方を左右する立場にあられると思っています。
ところが、民主主義の一つの原点は選挙でありますけれども、その選挙を戦うにあたって、前回、この山教組の政治資金の違法なカンパという実態が明らかになって、また文部科学省の調査も入って、処分を受けたにも関わらず、その当事者が人事において、昇任において優遇を受けている。これは一体なんなんだ。そういう意味で言えば、まさしく教育の政治的な中立というよりも山梨県においては極めて政治的に偏った状況にあると言わざるを得ませし、舌の根も乾かないうちに今年の参院選に向けて、現場でカンパがボランティアと称して行われている、そういった情報もいただききました。
委員会においても、国政の大きな課題という認識の下で、これはマスコミの皆さんも色々な調査をしておりますが、色々な情報をいただいて、現地調査を含め、視察に参りまして、本当にこういう実態でよいのか、政治活動、あるいは選挙活動の違法な状況については、厳しく戒められなければいけません。当然、そのために山梨県議会あるいは山梨県内の各市町村議会がありますし、それぞれの議会の同意人事として教育長も存在しておられますので、その皆さん方にも警鐘を鳴らしながら、違法な、あるいは行き過ぎた、そして全国的に見てもやっぱりまず山梨から正常化されなければならないという認識の下で取り組んでいきたいと思っています。
権力の中枢にある人こそ、権力に対して謙虚に、抑制的に取り組まなければいけないというのが、我々自由民主党の姿勢でありますので、その辺、具体的な事案をどんどんいただきながら、それはあまりにも法令違反であり、また、やってはいけないことはやってはいけないこととして戒めていきたいな、と、そんな思いで今日、参りました。
地元記者 全国的にみて山梨から正常化されなければならないと言ったが、今回の意見交換は山梨以外にも行うか。
義家氏 昨年から教育の不正常な実態、これに対しては、我々、議連を作りまして、実はもうすでに日本全国を回っております。色々な都市を周りながら、色々な情報交換、意見交換、それから情報収集を行っております。その中でも非常に組織率が高く、そして前回、明らかな違反で資金集めで大問題になったこの山梨。これがこれからの来る選挙の中で一体どういう動きになるのかということは非常に大きな問題意識を持っています。その意味で、山梨をもう一回しっかりと考えた上でこれからの対策を練っていきたいという思い。
で、一番、先ほども子供たちを守らなきゃいけないと言いましたが、はっきり申し上げて、まじめにやっている教師がばかばかしくなっちゃう訳ですよ。カンパをよこしなさい、嫌ですって言えないんですね。というのはこれからまた公務文書で、組合に逆らったら公務文書で閑職に追いやられたり、あるいは人事の部分でこういう人事介入を組合がしている状態ですから、それが起こったら困るということで、多くの全うにがんばっている人たちが辟易しているという実態も声は上げられないけれども、現実にはあるわけですね。
教員が志を持ち、しっかりと子供たちに向き合わない。子供たち以外のことばかり気にするような教育現場ではやはり良い教育はできないと。そういう中でしっかりこの山梨の実態。果たして、じゃあ、6年前から今、教育再生の道をたどっているのか、たどっていないのか。これは刑事事件になっていますから、明らかに検証できる。それは、やはり山梨県であるだろうと我々は考えて、本日お邪魔させていただきました。
地元記者 山梨を第一歩にということだが、これから参院選までの間は山梨を集中的にやるのか。
義家氏 これは、今日は山梨の一回目だと思っています。山梨の。つまり山梨を集中してやりたいと私自身は思っています。というのは、この6年間で山梨がどう変わったのか。それを見て大きな問題だと思った山梨県民の皆さんが沢山、いるわけですね。じゃあ具体的にどう変わったかということは、説明されていないというのが実態な訳ですから、この6年の経過、そしてこの夏の参院選含めて、どういう動きがあるのかということは、これは責任を持って検証していかなければならないことだと思ってます。もちろん、他の地域にも行きますけれども、この山梨は日教組問題、教育不正常問題の最重点地区として我々自身は位置付けています。
地元記者 山梨は相当特異な状況なのか?
義家氏 まったくその通りです。日本全国でも希有な状態、不正常な状態に陥っているという強い危機感を私自身も抱いている地域でもあります。
記者 先ほどカンパが行われているという情報もあったということだが、6年前と変わっていないという認識か。
義家氏 変わっていない、それを何とか変えなければならないと、それはすごく強く感じております。<了>
…小沢不動産問題にしろ、この山教組問題にしろ、私自身が取材し、紙面化してきた問題だけに、その行方がとても気になります。山梨での選挙時の半強制教員カンパに関しては、産経の追及キャンペーン以降は実施されなくなっていたはいずですが、このやりとりを読むと最近、今夏の輿石氏の改選選挙を前に密かに再開されたとの情報があるようですね。調べないと。
11日の産経に載った「自民党運動方針案の全文判明」の記事には、今年の運動方針の中に「今日の偏向した教育の最大の原因は日教組の存在」との文言が盛り込まれたとありました。遅きに失した感がありますが、与党時代の自民党が全方位に「いい顔」をしようとして打ち出せなかったことを、ようやく書き込んだこと自体は評価します。ぜひ、言葉倒れにならないよう、行動と実績を国民に示してほしいところです。
いずれにしろ、中央では権勢を振るい、我が世の春を謳歌している輿石氏ですが、今回は若い序裸姓の対抗馬も出ることですし、自民党も教育正常化のための「最重点地区」と位置づけるようですから、あまり安穏としてはいられないことでしょう。焦ってまた、得意の教員動員の選挙活動を大々的にやると、今回は監視の目が張り巡らされていることだし、面白い展開になってきました。
by ぜろ坊主
自民・義家氏「山梨は教育不正…