「大相撲初場所4日目」(13日、両国国技館)
大関復帰を目指していた関脇千代大海(本名、須藤龍二)が体力の限界を理由に引退を発表し、国技館で会見を行った。史上最長の大関在位65場所を誇る一方で、かど番14度のワースト記録も残した。10月2日に両国国技館で引退相撲を行う予定。年寄「佐ノ山」を襲名し、九重部屋付きの親方として後進の指導にあたる。これに伴い佐ノ山親方(元小結闘牙)は浅香山に名跡を変更した。土俵では両横綱が安泰だったのに対し、大関陣が総崩れ。08年初場所4日目以来、4大関がそろって敗れた。
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千代大海が、17年間の現役生活に別れを告げた。水色の羽織姿で会見に姿を見せた。6敗での引退を示唆していたが「自分がへこんだときにしかってくれる先輩。尊敬していた」という“盟友”魁皇との一番を引き際にした。
土俵に四つんばいになった自身の姿をビデオで確認し「ここが引退のしどころ」と決断。師匠の九重親方(元横綱千代の富士)を抜く幕内最多勝ち星の新記録をライバルに献上する黒星で終止符を打ったところも、この力士らしい。
“やんちゃ”だった少年が「親孝行したい」と大相撲の世界に飛び込んだ。一番の思い出に、横綱若乃花と史上初の優勝決定戦取り直しにもつれ込む三番勝負を制して初優勝した99年の初場所を挙げた。「三番取ったあの日がなかったら、今の自分はない」と、振り返った。
大関になって「人生観が変わったし、いろいろ学ばせてもらった」と言う。突き放しを武器に貴乃花、武蔵丸の両横綱に陰りが見えた土俵を支えた。昨年九州場所まで史上1位の大関在位65場所。大関515勝も最多。
一方で4度挑んだ綱とりはならなかった。けがにも泣かされ、かど番はワースト14度。大関最多13敗の不名誉な記録も作った。今場所はボロボロの体で大関復帰を目指したが限界だった。自分なりの美学を貫き「すっきりとケジメをつけたので悔いはない」と話した。
九重親方は「素直な気持ちでやったから大関にもなれた。完全燃焼したんだから、これで切り替えて」と、まな弟子の引退に目頭を熱くした。「目標を持てば、人生も変わる。自分の経験を伝えたい」。次は佐ノ山親方として、後進の指導に情熱をそそぐ。