児童書『たくさんのふしぎ』(2010年2月号)は人気のある絵本シリーズだが、作中に登場するおじいさんが喫煙している事に対してクレームが寄せられ、発売元の福音館書店が自主回収をすることになった。福音館書店は公式サイトに「喫煙シーンが頻繁に描かれており、本文にもタバコを礼賛する内容が記載され、WHOタバコ規制枠組み条約に違反する、また日本たばこ産業株式会社の関与が疑われる、とのご指摘をいただきました」と経緯を掲載し、謝罪と自主回収を伝えている。

自主回収をするほど多くのクレームが寄せられたのだろうか? イラストレーターの井筒啓之さんは今回の自主回収騒動に関して、青森県の小児科医の一意見(クレーム)で回収をすることになったのでは? とブログに書いている。また、「一読者の恫喝にも似た抗議にいとも簡単に発売を中止するというのは、あまりにも無責任ではありませんか」と、悲しみも伝えている。

アイドルの杏野はるなさんも今回の自主回収騒動に対して怒っている一人で、「もちろん喫煙を子供に進めるような内容だったら仕方ないと思うのですが、普通に昔のやさしそうなおじいさんと子供たちが楽しそうにしているだけのものでした。それにクレームを入れて発売中止に……。日本っていつからこうなったのでしょうか?」とブログに書いている。

この回収騒動が小児科医一人のクレームによって起きた事なのか、それとも多数のクレームが寄せられて起きた事なのかは現在のところ不明だ。しかし、そのクレームに対して同調し、自主回収という行動までした福音館書店は、それなりに検討に検討を重ねて自主回収の決断をしたに違いない。

だが、モラルとクリエイティブの両立を考えるならば、今回の騒動は自主回収が適切だったとは言えない。過度な喫煙は健康を害するもの。しかし、それを理解できる大人に育てていくのは大人の役目だ。日本の子どもたちは、絵本に載っていたからと常識はずれな真似をするほど愚かなのだろうか?