福岡市東区に住む30代夫婦の生後7カ月の長男が昨年10月上旬、発育が不十分で、栄養不良の状態で死亡していたことが13日、関係者への取材で分かった。長男は重いアトピー性皮膚炎などを患っていたが、1度も病院などで医学的治療を受けずに死亡したという。福岡県警は、保護者が子どもに必要な治療を拒む「医療ネグレクト」の疑いが強いとみて、殺人容疑で両親を逮捕する方針を固めた模様だ。
関係者の話によると、長男は昨年10月9日夜、東区の自宅で死亡。同日夜、長男の容体の異変に気付いた両親が119番し、救急隊が到着したときには、長男は心肺停止状態だった。長男は同市内の病院に搬送され、同院が虐待の可能性があるして福岡東署に通報したという。
司法解剖の結果などから、長男は栄養不良状態で、アトピー性皮膚炎などから感染症を悪化させて死亡した疑いが強いことが判明。長男は死亡時の体重が4・3キロしかなく、7カ月児の平均の半分ほどだったという。
両親は東区に本部がある宗教法人の信者。この宗教法人の関係者によると、同法人は、病気の場合でも信者が手をかざせば治癒するという「浄霊(じょうれい)」と呼ぶ自然健康法や、農薬・肥料を一切使用しない自然農法を提唱している。
県警は、両親が長男に浄霊をして、自然食を与えるなどの育児はしていたが、昨年9月下旬ごろから容体が悪化したにもかかわらず、医療機関で治療を受けさせなかったために、長男が死亡した疑いがあるとみている。長男は福岡市の生後4カ月の乳幼児健診も受診していなかった。
夫婦の自宅周辺の住民は「赤ちゃんは7カ月と思えないほど小さく、アトピー性皮膚炎が重そうだった」と話している。
この宗教法人は西日本新聞の取材に対し、長男の死亡について「捜査中のため回答を控える」としている。
=2010/01/13付 西日本新聞夕刊=