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振り込め詐欺、中国発――第9部〈続・犯罪底流〉(2/2ページ)

2010年1月12日15時33分

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写真:中国の振り込め詐欺組織に使われていた日本人の男。「こうして毎日、中国から日本に電話をしていた。二度と中国に行きたくない」と話す=2009年11月、緒方写す中国の振り込め詐欺組織に使われていた日本人の男。「こうして毎日、中国から日本に電話をしていた。二度と中国に行きたくない」と話す=2009年11月、緒方写す

 機械班が1日にかける電話約500件のうち折り返しは約30件で、詐取に至るのは1、2件という。反省会が毎日開かれ、ボスに「ほかのグループはもっと稼いでいるぞ」と責められた。中国から電話する理由を「日本では発信元がばれる。ここでは電話会社も取り込んでいるから心配はない」と説明された。

 初めて詐取した200万円の男の取り分は2万円だった。ボスや日本の暴力団組員、日本で引き出す在日華人らがごっそり取る。「組員には中国から電話をかける日本人集めを任せている」と聞かされた。

 待遇も最初の話とは違っていた。「寝泊まりはホテルの個室、3食レストラン」のはずが、民家の6畳ほどの部屋に数人押し込められ、即席めんが主食になった。

■すき見て脱走

 3週間を過ぎたころ、日本人同士で「だまされたのはこちらだ。帰ろう」と話し合った。これ以上同胞をだますのも耐えられない。だが大柄な中国人に行動を監視され、ボスからは「ここのことがばれたら密告者を突き止める」と脅され、脱走に踏み切れずにいた。それでも男はある日、すきを見て逃げた。

 「日本で詐取金を引き出す中国人が少額でも横領したら中国にいる家族が組織に殺される。裏切りは許されない」と内情を知る中国人は話す。男は、中国に残してきた仲間の安否も心配だ。

     ◇

 遠く中国にある犯罪組織が、一部の在日華人や日本人を取り込んで被害を広げる。第9部「続・犯罪底流」は、犯罪の新しいうねりや、止まらない就・留学生の犯行を追った。(編集委員・緒方健二)

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