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発信箱:若者を育てているか=磯崎由美(生活報道部)

 この春卒業する高校生の就職がいつになく厳しい。不況のしわ寄せはどの世代にも及ぶが、特に若い芽を摘んでいることは見過ごせない。10代と大人たちが、細っていく雇用のパイを奪い合う。採用の枠を狭め即戦力を求める企業も多く、社会経験の乏しい若者は圧倒的に不利だ。

 6年前、高校で即戦力となる生徒を育てようとの取り組みが始まった。日本版デュアルシステム。ドイツ発祥の制度をモデルに、学校と企業が連携して技能を身につけさせる。東京都が先駆け、文部科学省が国の委託事業として各地に広げた。

 その第一号として04年に開校した東京都立六郷工科高校(大田区)では、今春デュアルシステム科を卒業する19人の進路がほぼ決まった。同科は取得単位の約3分の1が企業実習で、地元町工場の経営者やベテラン職人が最新の技術から社会人としての基本までを教える。互いの希望が合えばそのまま採用となる。「こんな不況下でも、子供を一緒に育てていこうという企業があるのが支え」と佐々木哲副校長(48)は話す。

 文科省は2年前にこの事業を衣替えし、農業や水産業にも広げた。だが昨年の事業仕分けで「地方に任せるべきだ」とされ、国の全額負担だった事業費は3分の1の補助に減らされた。力を入れてきた教育委員会からは「教育と産業が歩み寄り、成果が出ていただけに残念」とのため息も聞こえる。

 「人と話せなかった自分が、いろんな仕事に挑戦したいと思っているのが不思議」「大田区でナンバーワンの職人になる」。六郷工科高卒業生たちの声だ。大人社会が真剣になれば、こんな若者をもっと増やせるはずなのに。

毎日新聞 2010年1月13日 0時05分

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