きょうの社説 2010年1月13日

◎イノシシ対策 官民一体で知恵を絞るとき
 金沢市内の住宅地に出没したイノシシ捕獲騒動が警察官による拳銃発砲という想定外の 事態に発展し、イノシシ対策は石川県にとっても急務であることがあらためて浮き彫りになった。

 県内ではイノシシの捕獲数や農作物の被害額が年々増加し、いまやクマやサル以上に厄 介で深刻な問題になっている。市街地にも現れ、住民の安全まで脅かす存在になった以上、一部農家の問題ではなく、県全体で危機感を共有し、官民が一丸となって対策強化へ知恵を絞る時期にきている。

 イノシシ対策の先進地である中国、四国地方などでは、電気柵など防護策の効果的な設 置や、イノシシを寄せ付けないための牛放牧などが功を奏し、被害軽減につなげている地域もある。大事なのは、地域ぐるみで足並みをそろえて取り組むことである。その土地の実情に合った施策を上手に組み合わせていきたい。

 イノシシ被害は西日本を中心に拡大している。県内では10年ほど前から捕獲数が増加 の一途をたどり、生息域が能登まで北上した。暖冬傾向で生存率が上がったことや、中山間地で耕作放棄地が増えたことなどが指摘されているが、イノシシの生態や習性がよく分からないままに対策が後手に回った印象も否めない。

 金沢市は昨年秋、「イノシシ対策研究会」を発足させ、対策マニュアル作成などに乗り 出した。白山ろくでは、イノシシ料理を開発するなど、食材としての有効活用をめざすことで捕獲推進を促す動きもある。総合的なイノシシ対策は、新たに北上が指摘されるニホンジカなど、これから増えると予想される獣害対策の試金石にもなる。

 イノシシ増加の背景には、狩猟人口の減少も指摘されており、狩猟免許取得の奨励策も 自治体に共通する課題である。

 金沢市内では車にひかれたイノシシが猟友会員2人にかみついて逃走したため、警察官 が発砲して射殺した。住宅地での散弾銃使用が無理なら、同様の状況が起きないとも限らない。警察は今回のケースを厳密に検証し、拳銃使用のルールをあらためて確認しておく必要がある。

◎法的整理で日航再建 国民理解も得られる形で
 経営が行き詰まった日本航空の再建を法的整理に基づいて進めることが、前原誠司国土 交通相と日航の主要取引銀行首脳との協議で固まった。銀行側は法的整理によるイメージ悪化で顧客離れが拡大するのを恐れ、私的整理を主張していたが、経営再建に巨額の公的資金が投入される以上、国民の目が届き、その理解を得られる形での再建策が望ましく、法的整理はやむを得ない。

 政府と企業再生支援機構を中心に今後、大幅な債務超過に陥っている日航の具体的な再 建計画が策定される。日航の利用者や取引先企業などの不安の高まりや、日航社員の士気の低下が心配されるなか、継続される航空便の安全運航を徹底しながら、解体的出直しを図るという困難な取り組みをぜひ成功させてもらいたい。

 私企業とはいえ、日本の空の公共交通の柱であることを考えれば、金融システム維持を 大義とした銀行への資本注入と同様に、日航への公的資金の投入は認められてよいだろう。しかし、これまでの日航の経営は、その公共性にあぐらをかいて、甘さがあったと言わなければならない。

 日航の経営を急速に悪化させた要因として世界的不況やテロ、新型肺炎、インフルエン ザなどによる利用者減が挙げられるが、そうした外部要因以前の問題として、過剰人員や高賃金、高水準の企業年金、赤字路線などによる高コスト体質が指摘されてきた。

 これまでの経営改革が生ぬるいといわれる背景には、半官半民時代の「親方日の丸」的 な体質の残滓があるとされる。1987年に完全民営化されたが、経営幹部や社員の間に「日航がつぶれることはない」という甘い考えがなかったかどうか。日本を代表する航空会社がなぜ経営破たんに追い込まれてしまったのか、その原因を深く究明し、国民に明らかにする必要がある。その上で企業体質を根本的に改めてもらいたい。

 公的資金の出融資による経営再建を成功させるには、高い企業年金をあてにしてきた現 役社員・OBも、また株主も痛みを我慢しなければならないだろう。