2010/01/07/ Thursday 放送

梅田サッカースタジアム構想

7日発表された大阪市のワールドカップ開催都市への立候補。そこで気になるのが、『梅田北ヤード地区』のスタジアム構想です。8万人収容でピッチはもちろん国際規格。太陽光発電パネルやLEDが使われ、地下には駐車場が作られる予定です。果たしてこの構想、現実のものとなるのでしょうか?

■スタジアム建設は大阪再生の切り札となるか

みぞれ混じりの冷たい雨が降る、師走の大阪にロマンスグレーの男性が現れた。Jリーグの初代チェアマンだ。
記者「きょうは、どんなお話を?」
【日本サッカー協会 川淵三郎名誉会長】
「やっぱり、万博の会場の跡に、素晴らしいスタジアムを是非、作ってくださいと・・・」

一方、鬼武チェアマンも多くの記者に囲まれていた。
【Jリーグ 鬼武健二チェアマン】
「10年後には、きっと、両スタジアム(北ヤード&ガンバ大阪)がいっぱいになるような、サッカー界になっていくと思いますよ」

【文部科学省 鈴木寛副大臣】
「これからの50年、100年の関西の街つくりをということで、知恵を振り絞って頂きたいなと思いますね。まずは、関西人の皆さんにね」
もう一度、かつての活気と賑わいを再生させたいと、行動を起こしたのは、政治家でもない経済界でもない、『サッカー』だった・・・。

去年の仕事納めの28日、市役所に衝撃が走った。日本サッカー協会とJリーグが2018年と2022年のサッカーワールドカップ日本招致に大阪駅前の北ヤードに8万人規模のスタジアム建設を大阪市に要望したのだ。ワールドカップ招致には、開幕戦と決勝戦に、8万人収容のスタジアムが必要条件となっている。北ヤードは、大阪駅北側に残る広大な土地。全体で24ヘクタールあり、『大阪最後の一等地』と呼ばれている。

【平松邦夫大阪市長】
「そこに目をつけて頂いたことに非常に、有難いと思います。世界から色々な賑わいというものを持ってきて頂けるような施設というのであれば、全面的に応援はさせて頂きたい」
日本サッカー協会とJリーグが考えるスタジアムは、環境がテーマ。自然に囲まれ、施設内にホテルやオフィスなどの都市機能を取り入れた複合型施設だ。屋根には太陽光発電パネルを設置し、次世代エネルギーの最新技術を集結させている。

【Jリーグ 鬼武健二チェアマン】
「いわゆる街作りに参加させていただくのと、サッカーはいまから10年後には、もっと発展すると思う、我々もそれをしなきゃいけない」
Jリーグのチェアマンを務める鬼武さんは、大阪とは縁が深い。かつて、大阪にあったヤンマーサッカー部のJリーグ準加盟やセレッソ大阪の加盟など、大阪のサッカー界に尽力した人物だ。

鬼武「駅から近いのがいいんじゃないですかね。いつでもいけるよと、トータルの商業施設が入っていると毎日、人が出入りする。動きがある、いわゆる賑わう街というのを作っていきたいとお考えのはずなんです。従って我々も、お手伝いすると」

北ヤードとは、一体、どんな場所なのか。
【大阪市計画調整局 佐野洋人課長】
「この貨物駅、歴史があって明治7年から、150年の歴史があるんです」
記者「これ・・・、明治7年からあるんですか?」
北ヤードは、3年後をめどに4つの高層ビルが建つ東側の7ヘクタールの先行開発地区。そして、西側にあるJR梅田貨物駅の17ヘクタールの2期開発部分に分かれている」

来年3月に、この貨物駅は移転する予定で、その後更地となる。

北ヤードの開発は、大阪再生にとって、どのようなポジションなのか?
【嘉悦大学 跡田真澄副学長】
「いや、もう生命線ですよ。あれだけの巨大な、土地の再開発できるというところは、あそこが最後な訳ですよ。もう、ミナミは終わりました。今度、北のあの地区、あそこで、すべてを浮かべなかったら、大阪の本格的な再生には繋がらない」

【大阪市計画調整局 佐野洋人課長】
「これは駅の一番南側で、面積的のも一番広いので広がりのゾーンという名前を付けております。あの新梅田シテイー南側と、こちらのヨドバシカメラを結ぶように幅員40メーターの道路を計画しています」
柿森「ズドーンと一直線に通っちゃうわけですか」

佐野「車と歩行者の道路を計画しています。街としても環境にやさしい、環境に配慮したそんな街にしていきたいなと思います」
JR大阪駅に面した、北ヤードで最も広いゾーン。ここが、スタジアムの建つ場所となるのだ。

しかし、国内10ヵ所の新設または改修された試合会場のほとんどは、いまも赤字で苦しんでいる・・・。緑豊かな山に囲まれた、エコパスタジアム。収容人数およそ5万人、ワールドカップのために、およそ300億円の県の税金で建設された。静岡県は、いまも200億円以上の債務を抱え、年間8億円の維持管理費に悲鳴をあげている。

金額の差はあれ、ほとんどのスタジアムが赤字を抱えワールドカップの負の遺産と揶揄されている。なぜ、こうなってしまったのか?
【嘉悦大学 跡田真澄副学長】
「赤字になるということを財政当局は知っていたはず、どこの都道府県も。だから、それを先には言わずに、終わってから表面化させるというやり方だった」

しかし、その中で運営に成功したスタジアムもあった・・・。住宅地の中心部にあるホームズスタジアム神戸。神戸市がおよそ230億円をかけて建設した開閉式の屋根があるスタジアム。

2002年のワールドカップでは、3試合が行われた。このスタジアムには維持管理費がかかっていない。その訳は?
【神戸市建設局 松岡達郎さん】
「単にスタジアムを作るだけでは、日常の賑わいにもなにもなりませんので、できるだけ民間の事業者の方からアイデアを取り入れて、運営を任せるという方法をとっています」

民間事業者に有効な運営方法を実践してもらうことで、使用料として毎年2300万円が神戸市に入ってくるというのだ。

実際に、こちらのスタジアムを運営している民間事業者の方に内部を案内してもらった。
【神戸ウイングスタジアム 森博之社長】
「視界が素晴らしいでしょ。平尾誠二さんが提案してくれて、採用されました」
さらに、進むと近くの住民が主に利用するフィットネスクラブがある。もちろんプールも完備されている。

森社長「いかに空きスペースを有効活用するか、どうしてもサッカー、ラグビーでは天然芝ですから、365日のうち60日しか使えないですから、残りの300日をスポーツクラブでは毎日、賑わうと」

Jリーグでは、ヨーロッパに調査団を送るなど、スタジアムの多機能性や経営状態を研究している。調査によると、ヨーロッパでは、スタジアムは都会の緑と考えられ、ホテル・病院・託児所・ショピングセンターなどのテナントが入りそれぞれが収益を上げ、建設費を返済するシステムとなっている。北ヤードのスタジアムはまさにこうなる。
鬼武「街作りを我々Jリーグが出来る訳無いんですけれども、いかに街作りのトータルの構想が市当局にもあるわけだから、どう、お手伝いできるかということでしょうね」
しかし・・・。

【平松邦夫大阪市長】
「この財政難の大阪市に、いまこれだけのスタジアムを自力で土地も買って作り上げる市力はない。国費がなければ無理ですという風に申しております」
5兆円の借金を抱える大阪市には数百億円といわれる建設費が捻出できない。お金がない大阪市は、国立が前提と言うが・・・。

【文部科学省 鈴木寛副大臣】
「市もお金がない、府もお金がない、国もお金がない、だから知恵を使わないと。もともと大阪というのは、お上から何か出てきて作られた街じゃなくて、まさに市民のみなさんの知恵というものを一生懸命集めて、いい街作りをしてきたわけですよ。そういう意味で言えば、その知恵の部分を大阪市民が出すべきだと」

国立が前提とする大阪市。一方、大阪ならではの知恵で資金を集めるべきだという国。多くのハードルが目の前にはある。

【関西経済連合会 下妻博会長】
「平松さんは国に対しても、もう要請は出してくれているんだよ。これは、大阪オリンピック招致と一緒で、サッカー場建設も、刀折れるかもしれんが、折れるまでやったらどやと」

大阪再生の鍵を握る北ヤード開発に浮上したスタジアム構想。巨大なハードルを乗り越えようと、大阪市とサッカー界は、5日、協議会の設置に向け動き出した。12月には、開催国が決定する。時計の針は1年を切った・・・。

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