発砲事件があった居酒屋前の路上を調べる捜査員ら=12日午後10時21分、大阪府羽曳野市、諫山卓弥撮影
発砲事件で4人が死傷した居酒屋「いーちゃん」を調べる捜査員ら=12日午後10時56分、大阪府羽曳野市、高橋一徳撮影
発砲事件で4人が死傷した居酒屋「いーちゃん」を調べる捜査員ら=12日午後10時25分、大阪府羽曳野市、諫山卓弥撮影
路上に血だまりができ、銃が無造作に落ちていた――。12日、大阪府羽曳野市の居酒屋で起きた発砲事件では、3人が死亡、1人が重体となった。「こんなところで」。静かな住宅地の夜に突然響いた銃声に、住民らは声を震わせた。
「バン、バン」。現場となった居酒屋「いーちゃん」の近くに住む50代の女性は午後8時前ごろ、金属をたたくような音を聞いた。「車上荒らしか」。そう思っていると、数分後、また音が鳴った。
外に出ると、居酒屋の前に人が倒れていた。動かない。直後に、「警察呼んで!」という女性の叫び声が聞こえた。急いで自宅に駆け戻り、110番通報したという。
恐ろしくてしばらく家から出られなかった。パトカーが駆けつけた後、もう一度、外に出てみると、歩道に猟銃のようなものが転がっていたという。
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亡くなった「いーちゃん」のオーナー、田中美子さん(66)は元羽曳野市議で、議長も務めた。市議時代に同じ会派に属していた北川嗣雄・羽曳野市長は、「議員時代から物をはっきり言う人で、引退されてからも行事で年に1、2回はお会いしていた。こんなことになるなんて大変驚いている」と話した。市議の一人も「非常に元気な人で、人に恨まれるような人柄ではない」と声を詰まらせた。
近所の住民によると、「いーちゃん」は2階建てビルの1階にあり、しばらく空き家になっていた店舗を借りて約1年前に開店。田中さんの娘が切り盛りして、客は中年の男性ら近所の常連が多く、家庭料理に加え、鍋料理やイノシシ料理なども提供していた。オーナーの田中さんは、話し好きな明るい人だったという。
一方、発砲後に自殺したと見られる杉浦泰久容疑者(49)は、居酒屋で働く田中さんの娘と離婚をめぐってトラブルになっていた。田中さんの知人は数日前、田中さんが「泰久が(離婚届に)はんこをつかへんのや」とこぼしているのを聞いたという。店では、前日も杉浦容疑者と田中さんがけんかをしていたといい、12日も午後6時ごろから店で騒ぎになっていたという情報もある。
杉浦容疑者が勤務する大阪市によると、「おとなしくまじめな性格で無口。勤務状況はよかった」という。杉浦容疑者と同じ羽曳野市内の大阪府猟友会員の男性(78)は「礼儀正しく、おとなしい好青年だった。そんな大変な事件を起こすような人ではないはず」と驚きを隠せない様子だった。