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若者が負担できる年金・医療 築き直せ

2010年01月04日 | 社説
若者が負担できる年金・医療 築き直せ

 日本では生まれてくる赤ちゃんの数が減り続け、平均寿命は伸びている。それとともに経済の成熟度が一段と高まっている。少子高齢化のなかで年金や医療制度の持続性をどう高めるか。2010年代は、未来を生きる世代への私たち現世代の責任が問われる10年になる。

 子供の世代や、これから生まれる将来世代が大人になったとき、税金や社会保険料の負担はどうなるか。制度から受ける受益はどの程度か。

○低負担・高福祉の無理

 それを見通しつつ年金と医療の再生に向け、負担と受益との関係を再構築する改革に取り組むときだ。

 税金など国や自治体に取られるお金は少ないほうがありがたい。一線を退いた後にもらう年金や病気になったときの医療は、手厚いに越したことがない。誰だってそう思う。

 そんな虫のよい話が続くはずもない。だが日本は戦後の一時期にそれを実現させた。1960年代から70年代前半にかけての高度成長期に、自民党政権は国民負担をさほど増やすことなく、年金や医療の大盤振る舞いに政策のかじを切った。

 福祉元年といわれた73年、高齢者医療を無料にしたのが典型だ。若くて豊富な労働力「団塊の世代」が社会に出た時期に重なる。人口ボーナスと呼ばれる現象だ。このボーナスによって、ときの政権は年金や医療を無理なく充実させられた。社会党など野党もその路線を後押しした。

 人口ボーナス期から数十年がたつと、かつて成長を支えた世代が高齢者になり、少子化の進行で現役世代の人口が相対的に減る時期が来る。これを「人口オーナス」と呼ぶ。オーナスは重荷を意味する英語だ。

 人口オーナス期は高齢層への財政支出が増え、現役に高い負担を強いる。また経済成長が阻まれやすくなる。これからの日本経済の姿だ。

 現役世代が背負う荷物がさらに重くなるのを、どう和らげてゆくか。

 まず高齢層に偏る給付の一部を若者に振り向ける必要がある。例えば年金への課税を強め、その税収を子ども手当の元手に回す。お金を配るだけでなく保育所の増設に民間の創意を生かす使い方を考えるべきだ。

 民主党政権の100日をみるかぎり、負担はあまり表面化させずに給付を充実させる方向を目指していると思わざるを得ない。有権者に聞こえのよい低負担・高福祉の路線だ。

 後期高齢者医療制度を廃止するのが典型だ。75歳以上の人への医療給付費を(1)国・自治体の税金(2)現役世代からの支援金(3)高齢者の保険料――の3財源で支えるしくみを壊してしまうなら、代わりの財源をどう工面するのか、展望を示してほしい。

 団塊の世代を含め、これからの年金や医療は高齢層も相応の負担を分かち合わざるを得ないのは、当事者も理解しつつあるのではないか。理解不足が残っているなら、その訳を粘り強く説明するのが責任政党だ。

 年金政策も今のところ無策に近い。長妻昭厚生労働相は記録問題には対応しようとしているが、肝心の制度改革は不熱心にみえる。

 足元ではデフレが会社員の賃金を直撃している。公務員でさえ給与が下がった。だが年金は物価が下がっても受取額に連動させない特例があるので実質的な価値は上がった。制度の盲点といってよい。放っておけば将来世代の保険料負担の上昇にしわ寄せされる。これも厚労相が説明を尽くし、直すべき課題である。

○消費税増税、道筋つけよ

 65歳以上の人が総人口に占める割合が22%に達した日本は、高齢化の先頭を走る。政府推計では高齢化率は20年後に31%、45年後に40%を突破する。待っているのは14歳以下の子供が8%、15〜64歳の現役人口が半数強といういびつな人口構造だ。

 少子化は克服すべき課題だ。だが出生数が増えても当面は働き手として年金や医療を支える側には回らない。即効性が期待できないのだ。

 それに備えて年金と医療の財源をいつ、どういう手立てで算段するのか、道筋を明らかにする時期だ。夏の参院選に向け、民主党は政権公約を見直して消費税増税への大まかな見取り図を示して戦ってほしい。

 国と自治体が抱える長期の借金残は860兆円規模だ。今は家計の貯蓄がそれを支えるが、高齢者が増えればその取り崩しが加速し、貯蓄率の低下となって表れる。向こう10年を見渡せば、政府は国債の借り換えに難渋する事態に直面する。そうしたときに備えておく必要がある。

 年金、医療の再生は野党も責任を負う。ちょうど1年前に民主、自民両党の有志の国会議員が共同でまとめた年金改革提言のように、党派を超え制度の安定を探る努力が不可欠だ。選挙になると有権者への甘言に走る候補者を減らす決定打になる。

1/4 日経新聞 社説
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