社説

山形・競技者養成/才能発掘の新事業に期待 

 スポーツの国際舞台で世界を相手に活躍できる才能を見つけ出そうと、山形県がスポーツタレント発掘事業「YAMAGATAドリームキッズ」を本格的に始動させた。

 選抜の対象は11歳以下の子どもたち。毎年30人を選び出し、心技体の三拍子がそろったアスリートの養成を目指す。

 昨年9、10月に実施した1次選考には577人が応募した。体力テストなどを基に1次選考を通過した315人が12月下旬の2次選考に参加。さらに絞り込まれた100人程度が、2月上旬の最終選考会に挑む。

 わくわくするような夢のある事業だ。世界で通用するアスリートの「金の卵」を探すわけだが、種目は限定しない。中学3年の時点で得意な能力、個性などに合わせて絞り込む。

 最終選考に残った30人を指導するのは、県内の競技関係者だけではない。国立スポーツ科学センター(JISS)、日本オリンピック委員会(JOC)などとも連携する。

 この事業で着目すべきは心の充実も目指す点だ。体力や技術の向上だけではなく、子どもたちに早くから社会性を習得させるとともに知的能力の開発にも力点を置くのだという。

 一流のスポーツ選手が集う華やかな大会で、プレッシャーに押しつぶされて実力を発揮できなかった日本人選手は枚挙にいとまがない。

 こうした教訓に学ぼうと、国際大会で気後れしないよう英会話や的確なコメントができる能力や、リーダーシップ、協調性も重視し、英才教育のプログラムを用意する。

 若い才能を組織的に発掘し、養成するシステムでは、ドイツサッカー連盟が運営する「タレントポイント」(有能選手養成所)が優れているとされる。

 ドイツ国内に390カ所ある養成所には専属のトレーナーがいて、10〜17歳の才能ある選手を選び出し、特別なトレーニングを施す。この中からプロ選手としてデビューし、ドイツ代表にもなった選手も少なくない。

 「才能は自然に育つのではない。発掘し、育成しなければならない」とドイツサッカー連盟の幹部は指摘する。実績に裏打ちされたその手法を、山形県は踏襲しようとしている。

 今年は大きなスポーツ大会がめじろ押しだ。来月11日にはバンクーバー冬季五輪が開幕。6月にはサッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会が始まる。タレント発掘事業に挑戦した子どもたちも、一流選手の活躍を目にすることで一層モチベーションを上げるだろう。

 山形県の戦略的な事業が結実するまで、しばらく時間がかかるのは仕方がない。じっと我慢して、どきどきする楽しい夢の続きを見てみよう。

2010年01月11日月曜日

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