〈2009年12月号〉
【ながせ義孝 表紙のひとこと】
夏にはあれだけ大活躍した小船。陸に揚げられシートで覆われた姿は、厳しい冬の到来に身構えているようだ。
緑やオレンジ色などカラフルだった風景は、冬のモノトーン一色だ。
余市はリンゴやブドウ、サクランボなどが有名だが、海の幸も豊富なところだ。前浜で獲れた魚介にこだわるすし店で「アンコウ鍋」を食べた。肝や皮、身などの「七つ道具」はそれぞれ食感が違う。あの魚体からは想像できない上品な味わいだった。
今月の表紙は、ながせ義孝氏による「厳しい冬に備えて 余市漁港」の風景です。
[12月号のプロフィール]
A4判・60ページ(モノクロ60ページ)、平成21年12月15日発行
[主要記事]
- 浜に朗報!利子補給伴う道単融資制度「漁業経営健全化促進資金」創設へ
―融資枠59億、長期低利(15年、1.85%)借換資金を来年3月10日まで提供
信漁連も「漁業緊急保証対策」活用しプロパー資金設定
緊急経済対策を狙った21年度補正予算で水産関係の最大の目玉とされた「漁業緊急保証対策」を活用した新しい融資制度がいよいよ本道でもスタートする。道は、11月26日から12月9日まで開かれた第四回定例道議会に提出した補正予算に「漁業経営健全化促進資金」への利子補給金を盛り込み、近年の燃油高騰や噴火湾の付着物の影響などで資金繰りに困窮している漁業者に長期低利の借換資金を提供し経営健全化を促す。
この資金は、信漁連と基金協会が金融・保証機関が一体となり、「漁業緊急保証対策」のメリットを最大発揮するため、利子補給措置を伴った道単融資制度の創設を要望していたもので、特に噴火湾地域のザラボヤ被害による養殖漁業者の窮状を重く見た道、道議会の理解でようやく実現した。ただし、貸付実行の期限は来年3月10日で、浜では早急な取り組みが求められる。信漁連も「漁業緊急保証対策」を活用しプロパー資金を設ける。(文責・上田)
- 大型クラゲが本道来襲、日本海からオホーツク海まで
定置網を中心に被害拡大、対策の拡充と原因究明を
大型クラゲ(エチゼンクラゲ)は毎年夏頃から日本沿岸で見られるが、今年は2005年以来の大量発生、被害拡大に悩まされ、漁業者は対応に苦慮した。発生源は中国の長江河口から黄海沿岸で、対馬暖流に乗って東シナ海を通って7〜8月頃、日本海に達するとされるが、詳しいメカニズムはわかっていない。
- 秋サケの沿岸漁獲状況、親魚捕獲・採卵状況等報告(連合海区委)
海洋環境等何らかの要因で成熟年齢が延伸か
5年魚が前年の4年魚を上回る初の現象
10月10日に開催された道連合海区漁業調整委員会では秋サケの来遊、沿岸漁獲、親魚捕獲・採卵状況等が報告された。道立水産ふ化場関係者は今年の来遊状況について述べ、四年魚以上の高年齢魚が予測を大幅に上回り、特に五年魚が前年の4年魚を上回ることが確実視されているが、これは年齢構造解析調査開始以来はじめての現象で、海洋環境等何らかの要因により成熟年齢が延伸した可能性があるとした。また、最終的な来遊量は昨年実績を21%上回る4,711万尾となる見込みを示した。
- 「第6回コープさっぽろ農業賞」表彰式・交流会
ブランドサケ「羅皇」で羅臼漁協が漁業大賞受賞
「第6回コープさっぽろ農業賞」の表彰式が、11月13日札幌パークホテルで開催された。漁業関係では、大賞部門で羅臼漁協がコープさっぽろ賞(漁業大賞)、奥尻潜水部会が特別賞、上磯郡漁協が奨励賞を受賞し、交流賞部門でタコ箱漁オーナーinおびら実行委員会が特別賞に輝いた。表彰式のあと交流会が催され、受賞者の食材を使った料理の数々を堪能しながら、消費者が生産者を支援する農業賞が年々応募も増え、食料基地北海道に根付いた取り組みに発展していることを喜びあった。
- 「平成21年度北海道漁協専務参事研修会」
政権交代に伴う水産施策の展開へ対応
政治評論家・屋山太郎氏が政治・経済の現況語る
北海道漁協専務参事会(遠藤 浩会長)は11月26日、札幌・第二水産ビル八階大会議室で「平成21年度北海道漁協専務参事研修会」を開催し、全道の漁協専務・参事ら約100人が、漁協経営に大きな影響を与える日本の政治・経済の動向について研鑽した。新政権の水産施策の今後の展開に的確な対応が必要との観点から、政治評論家の屋山太郎氏を招き講演を聴いたもので、屋山氏は、政権交代したばかりの揺れ動きながら変化を見せる政治の現況を語った。
[モノクロ本文]
- 浜に朗報!利子補給措置伴う道単融資制度「漁業経営健全化促進資金」創設
- 大型クラゲが本道来襲、対策の拡充と原因究明を
- 秋サケ、海洋環境等何らかの要因で成熟年齢が延伸か(道連合海区委)
- 「道産宣言!TおさかなチェンジU」「道産干貝柱消費拡大」キャンペーン(北海道おさかな普及協議会、道漁連)
- コープさっぽろ農業賞・「羅皇」で羅臼漁協が漁業大賞受賞
- 景気見通し依然不透明、事業計画も基盤強化に力点(漁協経営推進会議)
- 政権交代による水産施策の展開に向け講演聴く(道専務参事会研修会)
- 全道「JF共催」推進・専務参事協議会
- 1月19日、平成21年度「育てる漁業研究会」
- イエローページ 漁協の共済
- 行政だより
- 全道漁協みな貯金運動結果(10月末中間実績)
- 宗谷管内漁業士会が初の管内ホタテ漁具技術交流を開催
- [製品紹介]マツイ「手動式活魚〆処理機」/日本無線「国際VHF無線機」
- トドに続くアザラシの被害対策の方向性は?海獣による漁業被害と救済策
- ギリシャの現地法人「フルノ ヘラス」開所
- えりも町・ナマコ礁育成試験が好調に推移
- 【ニュースヘッドライン】News Headline
- トピックス
- 知ってますか水産普及情報
- 『浜の仲間たち』第5章 水産業専門技術員時代 安住芳雄
- 編集室から
- 高橋知事が苦しい立場乗り越え、道政推進の意欲語る(「北海道を愛するみんなの会」セミナー)
- 焼きシャコ、シャコ浜なべに長蛇の列(第2回おたる産しゃこ祭)
今月のフォーカス 
※読者の皆様へ……「今月のフォーカス」は独立したネットコラムであり、
雑誌の記事と関係のない場合(ほとんど?)がありますので、了承下さい。
盗作問題を考える 一つの事例をめぐる所感
このコラムに掲載する時期が大変遅くなってこともあるが、今回は身近で発生した「盗作」問題のケーススタディを考えてみたい。
ローカルな学会である北日本漁業経済学会の学会誌で起こった事例に過ぎないとは言え、会員による投稿論文の掲載取り消しという決定は、内外に少なからず波紋を投げかけたと思う。サンマの需給構造と市場の変化について書かれた論文は、二重の意味で「盗作」だった。まじめな大学院生の修士論文が水産庁委託事業による報告書に転用され、さらに学会誌投稿論文に流用された。原著者のクレジットが消されたわけではないが、共著や編著の形で実質的に「著作権」が侵害され、最終的には「盗作」の疑念を招く結果となった。その背後には学生の研究成果を指導教授がパクる、いわゆる「パワハラ」や「アカハラ」さえ見え隠れするのだ。
たまたま会長を中心とする学会理事会の一連の動向、調査委員会の活動、報告などにタッチする立場にいたことから、珍しい体験をさせて頂いた。一番考えさせられたのは、ネット全盛時代と言えども世の中に様々な形で存在する報告書や論文、文書をすべて検索するようなシステムはないということだ。学会側の投稿論文に対するチェック体制の甘さはあったにしても、あらゆる文章を網羅するようなデータベースはあり得ない。
しかし、きっかけが内外からの告発だったにしても、原著とその「修文」と称するアレンジした文章、学会の投稿論文は素人の筆者(私です)がみても類似性は明白だった。というより「盗作」としか言いようがない、学生がやるようなコペピ(コピー&ペースト)による作文以下の代物である。
こんなものがどうして論文として一度は学会誌に載ってしまったのか。実は原著者には悪いが、原型となった修士論文の出来はあまり良くない。後から読み直すと、調査時期が少し古いせいもあって、サンマを取り巻く産業的な位置づけや市場形成が全く変化し、この論文はもはや意味を失っている(言い過ぎかもしれませんが)。にも関わらず、有名大学の教授や助教授が絡んでこんなものを「再利用」するとは眼を覆うような醜聞である。
正直言って筆者の興味を失わせるような稚拙さが見えた。これがまかり通ってきたなら、水産経済を研究している人たちの集団的なレベルが低いとしか言いようがなく、実に残念な思いをさせられた。
所詮、この種の問題は書き手のモラルに依拠するしかない。「盗作」は有名無名に関係なく、どこにでも起きる可能性がある。ネットで仕入れた情報にしてもカッコでくくり引用先を公にすべきだし、それができないネタやフレーズは使わないくらいの気概が必要…と思いながら、自分自身に当てはめると忸怩たるものがある。役所や団体からもらったペーパーを丸写しで記事にするとか(読者の皆さんほんとにゴメンナサイ)。というわけでこれを契機に心を入れ替えたいと思います。(う)
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