社説

普天間問題/課題の重み言葉の軽さ

 「安請け合いではないか」。内閣をもう支持しないと言う人は、そう感じただろう。支持すると答える人でも、「『約束』してしまって、本当に大丈夫?」と思ったのではないか。

 「沖縄県民にも米国にも理解してもらえる結論を出すことを約束したい」。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題について、鳩山由紀夫首相は年頭の記者会見でこう語った。

 課題の難度に、言葉の重みが釣り合っていない。これまでも幾度となく指摘されてきたのに、先月、決着の越年を決めた後も繰り返されている。

 5月を最終結論の期限としているが、日米が県内の移設先として合意している名護市で今月24日、市長選の投票がある。合意通りの実現を譲る気のない米政府は、日本側の動静に神経をとがらせている。さまざまな動きに自らの発言が及ぼす影響を、首相はもっとしっかり推し量った方がいい。

 国内も米側も納得し、双方から拍手、称賛を浴びる解決策が、果たしてあり得るのか。目算を明らかにできないのであれば、語るべきは二律背反を引き受けた苦渋であるはずだ。苦渋を語る言葉の選択は当然、慎重でなければならない。

 与党3党が先月15日、結論の先送りを再確認する「対処方針」を決めた後、鳩山首相はコペンハーゲンでクリントン米国務長官にこれを伝え、「基本的に理解してもらった」と語った。しかし、国務長官が駐米大使に急きょ会談を求め、名護市辺野古への移設合意にこだわる姿勢をあらためて印象付けた。

 政府、与党はその後、28日に検討委員会をスタートさせた。1月中に各党が具体案を持ち寄る予定だ。しかし、この間にも鳩山首相はラジオ番組の収録で、社民党が主張するグアム移設案を「無理がある」と発言。検討委員長の平野博文官房長官が「グアムを排除したわけではない」と釈明する一幕もあった。

 政府、与党の検討作業に新たな影を落としそうなのは、小沢一郎民主党幹事長の発言。沖縄県の下地島(宮古島市)、伊江島(伊江村)の名前を挙げて、名護市以外での県内移設案を与党関係者に語ったという。

 平野官房長官が8日から沖縄を訪問し、現地の関係先を視察する。岡田克也外相は近く訪米し、米側との調整を少しでも進展させる段取りを整えようとしている。北沢俊美防衛相は省内に政務三役直属の特命チームを新たに発足させる。

 多くの動きが活発化する。一方で移設先案としてあまり聞き慣れない地名が次々に飛び交い、複雑さがさらに増しているように感じさせてしまう。事態が統合感なしに拡散している印象を与えないようにするためには、首相の話法の工夫がますます大事になる。

 通常国会が始まれば、鳩山首相がかつて唱えた「駐留なき安保」論の展望も当然、問われるだろう。中長期の安全保障観と併せて普天間問題の見通しを語らなければならなくなる。語られる言葉はより一層、重みのあるものであってほしい。

2010年01月08日金曜日

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