社説

藤井財務相、辞任/政権の真価が問われている

 藤井裕久財務相がきのう、体調不良を理由に辞任した。連立政権きっての財政通であり、閣内で重しの役割も担ってきた盟友を欠いた鳩山由紀夫首相の痛手は大きい。
 後任には菅直人副総理兼国家戦略担当相を起用した。2009年度第2次補正予算案と10年度予算案を審議する通常国会は18日に召集される予定。予算編成の司令塔が離脱したことで、国会審議への影響は避けられそうにない。

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題などをめぐって、このところ不協和音が目立つ「チーム鳩山」。政治とカネをめぐる疑惑が加わり、支持率も低下し始めた。目標とする予算案の年度内成立に失敗するようだと、政権維持に黄信号がともりかねない。
 藤井氏は衆院選前の7月、「後進を育てたい」と引退表明した。しかし、「政権交代に必要な人」という鳩山首相の強い意向を受けて撤回し、比例代表で当選した。

 旧大蔵官僚。細川、羽田両連立内閣で蔵相を務めた経験があり、財務省内にもにらみが利くことから約15年ぶりに大臣の座に返り咲いた。
 現内閣では最高齢の77歳。未知の経験となる政治主導による予算編成と税制改正、国際会議への出席なども加わり、心身の疲労がピークに達した。

 鳩山首相は慰留に努めたが、予算委員会の審議は1日7時間にも及ぶ。健康上の問題とあっては、辞任はやむを得ない選択だった。
 辞任の背景に予算編成をめぐって、菅氏や小沢一郎民主党幹事長と暗闘があったとの見方が出ている。真相ははっきりしないが、こうした憶測を呼ぶこと自体、鳩山首相の指導力が低下し始めた証左だろう。

 後任の菅氏には早速、難問が待ち受ける。ガソリン税の暫定税率廃止をマニフェスト(政権公約)に反して実質的に維持したことなどに対して、野党側が攻勢をかけてくるのは必至。
 「攻め」に入ったときの菅氏の舌鋒(ぜっぽう)の鋭さは折り紙付きだが、主要政策の変更には丁寧な説明が欠かせないことを自覚してほしい。

 市場の反応も気掛かりだ。藤井氏は野放図な国債発行に否定的な立場を堅持してきた。これ以上、財政規律が緩めば長期金利が上昇、日本経済が負のスパイラルに突入する恐れがある。2月にはカナダで先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)も予定されている。
 藤井氏の辞任であらためて思うのは政治家、中でも閣僚の激務についてだ。鳩山政権発足後、事務次官会議を廃止して閣僚、副大臣、政務官が政策を決定する仕組みに改めた。

 官僚依存の打破はいいとして、政治家が万事を差配するとなると、それこそ体が幾つあっても足りないのではないか。事務次官からは「(官僚の)士気が下がっている」と不満が上がってもいる。政と官の守備範囲を明確にすることが、政府と政治家の「健やかさ」を守る道であることを指摘しておきたい。

2010年01月07日木曜日

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