社説

景気回復への道/欠かせぬ政策のスピード感

 東京株式市場は、年明けの大発会で1万0600円台に乗せた。円高も昨年末から落ち着きを取り戻している。そろりそろりと踏み出した2010年の日本経済。しかし、決して楽観できる状況ではない。

 デフレが深まる中、雇用、賃下げの不安感がぬぐえない。大手企業の昨冬の賞与は、過去最大の落ち込み幅だった。完全失業率は昨年後半、やや改善の兆しが見えたものの、5%超で先行きは不透明のままだ。

 消費も依然低調だ。新年の「仙台初売り」の人出は例年並みだったが、割安感のある福袋に人気が集まり、消費者の堅実さだけが目立った。

 わたしたちの暮らしは今年、どうなるのか。子ども手当や高校授業料の無償化で、子育て世帯は楽になるかもしれないが、税制改正で家計が厳しくなる世帯もあろう。公共事業が大幅削減されれば、地方の雇用・経済は一層冷え込むことになる。

 「景気が二番底になってはいけない。景気と雇用を第一に、国民の命を守る政治を目指す」。鳩山由紀夫首相は、きのうの年頭記者会見でこう語った。しかし、求められるのは聞き飽きたスローガンではなく、必要な政策をタイムリーに断行するスピード感ではないか。

 追加経済対策を盛り込んだ09年度第2次補正予算案がまとまって、既に1カ月になろうとしている。この間にも、雇用保険が切れ路頭に迷う人や、倒産に追い込まれた中小企業は少なくなかったはずだ。

 18日召集予定の通常国会には、2次補正と10年度予算案が提出されるが、この扱いが最初の試金石になろう。雇用調整助成金の要件緩和など緊急雇用対策は、あすの暮らしに直結する。急ぐべき案件は即決して、メリハリのある審議を望みたい。

 一方、大盤振る舞いの分配政策が中心の10年度予算案は、年末に帳尻合わせのように発表された「新成長戦略」と併せ、腰を据えた論戦が必要だ。

 成長戦略は、20年までの経済運営指針として、主眼となる分野に環境、健康、観光などを挙げた。476万人の雇用を創出、20年度の国内総生産(GDP)を1.4倍に増やすという。

 しかし、具体的な工程表も財源論も先送りされている。高い目標を掲げるのはいいとして、家計にも将来、一定の税負担などが求められるのではないか。制度論や財源問題が後から出てくる図式は見たくない。

 子ども手当にしても、最後になって示された地方負担に各県知事から異論が出ている。政府は、支給が消費に回れば内需を刺激し、GDP押し上げ効果もあると指摘するが、半分は貯蓄にとどまると分析する調査機関の報告もある。

 国民一人一人が、将来不安をぬぐえず、生活防衛に走るしかないのが今の状況だ。年金や医療制度改革、財政再建計画の道筋をしっかりと示し、国民の不安を和らげない限り、自律的な景気回復に向けた軌道は描けないのではないか。そうでないと、せっかくの成長戦略も画餅(がべい)に帰してしまう。

2010年01月05日火曜日

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