社説

どうする地域経済/見直したい地産地消の価値

 持ち直しているとされる日本経済が、再び下り坂を転げ落ちるのか。景気の「二番底」に対する懸念が消えない。
 経済の両輪は外需と内需。持ち直しの動きをけん引するのは中国をはじめ、成長を続けるアジア向けの輸出、外需である。

 だが、一方の、より強い駆動力を発揮してほしい内需に回復の兆しが見えない。その核である消費をむしろ失速させかねない材料が目に付くから、悲観的にならざるを得ない。

 一つはデフレ。モノが売れないから値下げする。市場は縮小し、そのしわ寄せが雇用や賃金に及び、消費が細る。景気の足を引っ張る、このぬかるみが泥沼化する恐れがある。

 もう一つは力不足が否めない政府の景気対策。内需主導型へ転換を目指す鳩山政権が編成した新年度予算でも目玉の家計支援による消費刺激策は不十分で、その道筋はかすんだままだ。
 消費の落ち込みは地方がより深刻だ。景気はどうなるか。不安の中で新しい年が始まった。

 悲観論からは何も生まれまい。経済の全体像を見渡す「鳥の目」と、足元を見つめる「虫の目」を光らせ活路を見いだしたい。アジアの活力を内需に取り込み、不十分とはいえ行政が講じる施策を活用して苦境打開の工夫を凝らしたい。前向きな気持ちを失ってはならない。

 不況の中でも売り上げを伸ばしている分野はある。農産物の産直施設も、その一つだ。青森県内にある170施設の2008年度の売上総額は81億円と、前年より3%増えた。仙台市内には年間売上高が1000万円を超す無人の直売所がある。

 産直施設は「地産地消」の代表的存在である。消費者は頼りになる作り手と安心な食材が身近にあることを再確認し、生産者は評価を糧にもっと安全で高品質のものを作ろうと意欲的になる。食と農の距離を縮め産消をつなぐことで生まれた好循環。産直好調の背景といえる。

 地産地消は成長している。今や「地産地『商』」という言葉があるように、生産者は異業種である外食産業や食品加工業者という、もう一つの消費者と出会い可能性を広げている。
 こうした取り組みの中で培われてきた業を挙げれば、地域経済が元気を取り戻すヒントにならないか。

 作り手という人材を含め地域の資源を再評価する。消費者が求めているものをじかに知り、それに応える。人とともに異なる業種をも結び付ける。異業種が相手のときは通年の安定供給に対応するため、生産技術を磨く必要がある。

 例えば、公共事業が大幅減となる建設業者は苦難に陥ろう。地域には高齢化が顕著で耕作放棄が増えかねない農地や未利用の山林という資源がある。農業も林業も異業種とはいえ「親和性」があるから参入しやすい。困難でも技術を会得すれば、活路が開けるのではないか。

 地産地消は、経済の血液であるカネが循環することで地域を活性化させる仕組みでもある。「地」が「国」に広がれば、内需はおのずと拡大する。

2010年01月04日月曜日

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