池田信夫 blog

Part 2

2010年01月01日 11:33
その他

「衰退の10年」の生き方

t_hariko_3明けましておめでとうございます。今年も年賀状は書かないので、ブログでごあいさつ。

昨年は「希望を捨てる勇気」も必要かもしれないと皮肉で書きましたが、ここ数ヶ月の民主党政権の迷走ぶりを見ていると、それは皮肉にはならないようです。このままでは、2010年代はゼロ成長が続く「衰退の10年」になるおそれが強い。

がむしゃらに利益を追求するのをやめて優雅に衰退しよう、というのは一つの考え方ですが、衰退する社会で生きるのは、成長する社会よりはるかにむずかしい。所得が増えないから、誰かに再分配するときは他の人の所得を減らす「ゼロサム・ゲーム」になり、政治的対立が起こります。特に今のように世代間の所得格差が大きい場合は、バラマキ福祉は貧しい若年労働者から豊かな中高年に再分配する逆進的な政策になりやすい。

今のところ、この対立は政府債務という形で先送りされていますが、いずれ大増税か大インフレは不可避です。増税は政治的に不可能なので(物価か資産価格の)インフレが起こるでしょう。それによって政府債務は維持可能になり、年金の実質価値が下がって世代間の所得格差も縮小します。もちろん国債を大量に保有している銀行は経営危機に陥り、年金生活者は困窮するので政治的な紛争が激化し、内閣がいくつも倒れるでしょう。しかし戦争とか革命とかいう破局的な事態に至ることは考えられない。

こう考えると、優雅に衰退することは不可能でも、落ちるところまで落ちれば、やり直せるような気がします。むしろそこまで落ちるのに何年かかるかが重要です。私の世代にとっては、あと20年ぐらい先送りできればハッピーですが、たぶんそうは行かないでしょう。あと10年、今のような状態が続いたら、日本経済の体力が消耗して立ち直れなくなるおそれが強い。「実質破綻先」は早めに破綻させたほうが痛みは少ないというのが、失われた20年の教訓です。

トラックバックURL

トラックバック一覧

  1. 1.

    学生時代に学ぶべき学問:衰退の10年を生きる

    さて、年頭の挨拶で宣言させて頂いたとおり、今年は「いま必要とされている学び方をまとめ、提言していく」活動をひとつの軸にしていきたいと思います。「衰退の10年」の生き方 - 池田??.

  2. 2.

    失われた40年??その全面的総括

    '90年代のバブル崩壊以降の日本経済の低迷は「失われた10年」と呼ばれてきたが、2010年代に入り、ついに「失われた20年」と呼ばれるようになった。 いつも応援ありがとうございます! ...

コメント一覧

  1. 1.

    あけましておめでとうございます。昨年は、アゴラセミナー等で、蒙を啓いていただき、ありがとうございました。

    いよいよ2010年代が始まりますが、わたしのような若年世代は、急激なインフレによる資産再分配が起きて世代間格差がリセットされるほうがよいのか、ゆるゆる平和裏に衰退しているほうがよいのか、なかなか判断しかねます。いずれにせよ、少ない資産も現物で防衛しようと思う新年です。

    今年もよろしくお願いいたします。

  2. 2.
    • hiratayukai
    • 2010年01月01日 13:15

    日本人は新年を祝うことを好むくせに、「新陳代謝」という言葉は嫌いなようだw
    明らかな現実である「人口減少」に対してもなんら有効な対策を講じるわけでもなく、ただ「傍観」していれば海の向こうから「解決策」がやってくると期待している。
    希望、期待、将来、こうしたものが価値を失う社会というものがどういうものなのか、今年はその「始まりの年」になりそうです。

  3. 3.
    • taguidobu
    • 2010年01月01日 13:57

    「衰退と"絶望"の10年」を食い止める"中間小説"に期待

    明けましておめでとうございます。池田さんにとっては2本の著書(池池本、「希望」本)、「アゴラ」と関連企画、「BLOGOS(オリジナル記事部門)」など「中間小説」の土台作りで多忙を極めた1年だと思いますが、2010年は、より一層の活躍を期待したいと思います。

    2009年9月以降は"小沢"民主党になってからは迷走がつづいているようで、政界にはいまだ「社会主義経済」や旧来の自民党以上のバラマキが横行するなど、行政・政界のみ時が止まっているような気がしてなりませんが、輪をかけて雇用状況が悪化することは確実で、若者の雇用機会が失われ、民主党の支持が失うでしょう。今のところは、政界を早々と再編するという"絶望"に期待するしかありません。

    個人的には、「twitter」のぶっちゃけに期待。
    -類と濁酒

  4. 4.
    • sleep56ma
    • 2010年01月01日 14:10

    私は経済学について学んだことはありませんが、ちょっと疑問があるのでコメントいたします。
    結論から言いますと、仮に大インフレが起きても、その後ハッピーにはならないような気がします。
    まず、「豊かな中高年」と一言でおっしゃいますが、中高年の中における経済格差は若者より大きいのではないかと思います。
    大インフレが起こった場合、一部の金持ちは不動産や海外資産などによって上手く立ち回れるでしょうが、大多数の人は資産を失うでしょう。
    それから、公的年金は値上げせざるを得ないと思います。さもないと、いままで自助努力で生活してきた年金生活者が大挙して生活保護に移行するのではないでしょうか。
    結局、既存の政府債務は減るかもしれませんが、新たな政府債務が発生するのではないですか?
    「無い袖は振れぬ」と言いますが、生産される富の総量が少なければどう転んでも「多くの人が豊かな生活を送る」ような都合の良いことは無いと思います。
    「大インフレが原因で生産性が上がるとかイノベーションが期待できる」ことはあるのでしょうか?
    また、輸入資源の価格が上昇してインフレになった場合、国内の富が減るのと同じなので、むしろ不幸な事態になるのではないかと思います。

  5. 5.
    • nihonnomiraihe
    • 2010年01月01日 14:51

    池田先生、いつも勉強させて頂いております。
    ぜひ池田先生にご質問させて頂きたい事項が2点ございます。

    最近の池田先生のご意見には民主党に批判的なものが多く見受けられます。
    一方で、私の理解では池田先生は選挙前より、「与野党共に政策に多くの欠点が見られるが、総合的に考えて民主党へ政権交代すべき」という旨を書かれています。
    http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51301418.html
    http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51301421.html

    ①今でも「政権交代は正しかった」「民主党の方が自民党よりましだ」とお考えでしょうか。
    ②次回の参院選も民主党を与党に選ぶべきと書かれるおつもりでしょうか。

    今の民主党の政策が正しかったのか、自民党より優れていたのかなどというのは遠い未来に振り返ってみてわかる結果論だと思います。ただ参院選を間近に控えた今現時点での池田先生のお考えをご教示頂ければ大変幸いです。

  6. 6.
    • nihonnomiraihe
    • 2010年01月01日 14:55

    先ほど2点ご質問させて頂いた者です。私個人の意見では以下のように考えます。池田先生のご意見を何卒宜しくお願い申し上げます。

    ①「民主党の政策により日本が悪化するリスク>政権交代によりしがらみ等を断切るメリット」であることは、あまりに自明のように思えた。よって自民党に投票した。
    根拠:
    ・民主党は野党時代から自民党の政策(定額給付金、日銀総裁人事等)にひたすら反対しているだけで自らの成長戦略やビジョンを全く示さない
    ・経済危機下に国会をボイコットしたり自民党総裁との党首会談を避けたり、日本の国益よりも自分達の政権交代を優先しているとしか考えられない
    ・「官僚支配からの脱却」「教育の充実」と掲げていたが、民主党の支持母体や協力団体が自治労や日教組であるとは(正確な関係は把握していないが)割と聞く話であった
    ・政策財源の根拠が埋蔵金などと具体性や論理性がない

    ②実際に民主党のここ3ヶ月の政策は想像より遥かに劣悪だった。よって参院選も民主党への投票はあり得ない。
    根拠:
    ・社会主義的政策(郵政人事、金融機関のモラトリアム、「JALは潰さない」発言)
    ・日本から海外や外国人への富の移転としか思えない政策(25%CO2削減、アフガンへ5,000億支援、外国人参政権の付与)

  7. 7.

    イラクの状況で我々が知ったことに、隣人が隣人に対してテロを行うという内戦があることを知った。秋葉原の事件とかは無差別だけど、今後老人ホームなどを放火したりして、ネットで英雄視されるみたいなブームが来る可能性がある。
    アルカイダが巨大なテロリストカルテルの暗躍によって動いているよりも、イスラム移民の閉塞感の打破のために多くが個々の意志で自発的に行動している現状を考えると「ありえない」とはき捨てるには世の中の情勢はあまりに悪すぎる。(とくに地方)

  8. 8.

    私も、落ちるところまで落ちればやり直せる気がします。
    1948年の後の活気が再来するでしょうか。

    大インフレになった場合、なまじ資産を貯め込んでいた老人は絶望感から何もできないでしょうが、何も持っていなかった若者はヤミ市でも何でもやって頭角を現してくる。…かもしれません。
    イマイチ言葉が弱気なのは、コンプライアンスなどに飼い慣らされぎみの今の若者に、そういうパワーがあるのかが実感としてつかめないためです。
    しかし私は、追いつめられたときの人間の強さというものに、最後の夢を託したいと思います。

  9. 9.
    • saitamaken_soukashi
    • 2010年01月01日 21:55

    >大インフレが起こった場合、一部の金持ちは不動産や海外資産などによって上手く立ち回れるでしょうが、大多数の人は資産を失うでしょう。

    大多数の中高年は住宅ローンという名の年収の数倍の借金をしていますから、資産上は負債が目減りしてハイパーインフレで得をします。日本政府と同じ向きのポジションを張っているわけですから当然です。

    物価は毎日のように上がって行きますから、負債は減ってもキャッシュフローは悪化し、専業主婦というポジションはなくなるでしょうし、おそらくは第三号被保険者というのもなくなるでしょう。

    搾取される一方の若年層も「希望は戦争」という人たちもハイパーインフレは歓迎でしょうし、住宅ローンを組んでいる総資産負債比率の高い中高年も実は歓迎となると、時間が経てば意外と「やるなら早くやってくれ」という声が大きくなるかもと思っています。仮に職を失っても家が残ればやり直しはいくらでも出来ますからね。

  10. 10.
    • minourat
    • 2010年01月02日 05:54

    9. saitamaken_soukashi さん、

    >住宅ローンという名の年収の数倍の借金をしていますから、資産上は負債が目減りしてハイパーインフレで得をします。

    そこで、 長期の貸し出しを高金利の預金でまかなわなければならない銀行がつぶれます。 (米国では1980年代に、こうして信用金庫が倒産しました。) そこで金融危機で不況になります。

    >一方の若年層も「希望は戦争」という人たち・・・

    それでは、 不況脱却のためにひとつ戦争でもおっぱじめるかということになります。 ところが、 あっけなく原爆でもうちこまれます。 焼け野原にのこされた人たちは、 とにかく生き延びるためにいっしょけんめい働きます。 それから、20-30年もすると、 勤勉な国民のおかげで再び高度成長を達成し、22世紀は日本の世紀となります。

    新年らしく、 めでたいお話です。

  11. 11.

    これから衰退した10年を生きると言うことはわれわれ30代より下は貧乏人のままいろということなんでしょうか?ちょっとひどい話ですね。

    先生のお力でなんとか今後10年をいい思いさせてくれないでしょうか?

    我々30代以下もいい思いしたいです。

  12. 12.

    池田先生、
    初春のお喜びを申上げます。
    休みは北京へ里帰りで、元日は天壇へ行ってよい年になるように拝んできました。
    もっとも中国は旧暦で正月を祝うので、日本みたいに「年が改まった」感はないです。

    それにしても皆さんのコメントは暗いわね~
    中国では日本から来た招き猫がこのごろ流行です。ただ陶器じゃなくて張りぼてみたいなので、電池を入れると手が招くように動くのが主流です。これは「発財猫」(金儲け猫)と呼ばれています。頑張ればゼッタイ儲かります
    恭賀新禧 恭喜発財

    趙秋瑾 

  13. 13.
    • saitamaken_soukashi
    • 2010年01月03日 01:11

    10. minourat

    「希望は戦争」というかぎ括弧をつけたのは、池田さんが以前に(やや肯定的に)取り上げていた丸山真男をひっぱたきたい人の話にひっかけて皮肉で書いたつもりだったのですが。

    戦争という文言に敏感に反射してしまったようですが、常識で考えて(当人を含めて)本当に戦争を希望する人などいるはずがないでしょう。

  14. 14.
    • haruomi2
    • 2010年01月08日 21:47

    いったん焼け野原になったらまた力強く勃興する?

    太平洋戦争後のラッキーがまたくり返すと思っているんだろうか。
    何代も笑われつつ貧乏なまま、中国人に搾取され続けそのうちリベンジの機会すら得られず民族吸収されるほうがずっと有りそうなシナリオだ。(女だけね。オスはみんなカット。)

    それも含めて平和ボケだと思うんだけどね

  15. 15.

    老人は成長する必要ありませんし、そんなものよりもずっと大事なのは「自分の明日」です。
    選挙でも彼らの方が投票には積極的だし、有権者に〆る人口も現役層を逆転します。日本が成長するチャンスはもはやありません。
    自民? 民主? たいした違いは無い。どちらも票で老人に縛られているのだから。
    一票の格差は認められたものの、なお抵抗勢力は根強く、地方老人層の票の重さはこれからも続く。
    若者に勝ち目など無いですよ、少なくとも政治の上では。
    衰退の10年というよりも、永続的な「終わりの始まり」だと思っています。決してよくはならない生活を誰もが覚悟するための準備期間ではないかと。
    これまでみたいな「誰かにしわ寄せ」が出来ない「みんなまとめて奈落落ち」がリアルになる時代、ではないでしょうか。
    あと飼い慣らされた若者とは言いますが、安保闘争(ごっこ)が終わったらすぐに安定雇用に飛びついた「昔の若者」だって、じゅうぶん飼い慣らされてますよ。己の「いつか来た道」です。

コメントする

このブログにコメントするにはログインが必要です。               



記事検索