街頭などに設置する携帯電話の公衆充電器のオーナーをマルチ商法(連鎖販売取引)で募っていた大阪市北区の販売会社「メディアクロス」(旧「MMS」)をめぐり、大阪府警が特定商取引法違反(解約妨害)容疑で家宅捜索して契約書などの資料を押収し、詰めの捜査を進めている。
MMS社をめぐっては、オーナーとなった神戸市の女性ら26人が同社など2社を相手に充電器の購入代金返還などを求めた訴訟の判決が昨年末あり、大阪地裁(稲葉重子裁判長)は「充電器の購入を勧誘したり、代金を支払わせたりしたことは詐欺行為に該当する」と認定し、2社に総額約2900万円の支払いを命じた。また、高知地裁でも昨年1月、高知市の主婦(58)ら約10人が、充電器の購入代金など計約2600万円の返還を求めて提訴している。
判決によると、原告らはコイン式の携帯電話急速充電器をMMS社から1台約52万円で購入。同社に充電器の設置や管理、集金を委託する代理店契約を結び、売り上げに応じて配当を得るとともに、新たなオーナーを紹介すればボーナスを受け取るとしていた。しかし、購入した充電器はほとんどが未設置で、配当なども1人を除いて購入金額を大幅に下回り、全く配当がない人もいたとしている。
特商法は連鎖販売契約について、20日間のクーリングオフ(無条件解約)期間が過ぎても一定の条件でいつでも解約できると定めている。しかし、MMS社は途中解約を申し出たオーナーに、高額の違約金が必要などとうそをつき、解約を妨げていた疑いが浮上している。国民生活センターによると、同社に関する相談は04年以降約1200件にのぼっていたという。同社関係者らによると、同社は03年9月に設立され、07年9月までに2万人以上のオーナーを集めて百数十億円を売り上げたという。