ソマリアに海賊株式会社 昨年身代金1億ドル強奪
1月11日7時56分配信 産経新聞
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ソマリア(写真:産経新聞) |
【ロンドン=木村正人】アフリカ・ソマリア沖で昨年、海賊が奪った身代金総額が推定で1億ドル(約92億6千万円)に達し、資金が流れ込んだ周辺国で住宅ブームが起きていることが関係者の話でわかった。ソマリアには武器購入の資金調達のため“株式会社”が設立され、住民や海外から出資を募集。米英両政府はソマリアやイエメンに拠点を広げる国際テロ組織アルカーイダにも身代金が流れる恐れがあるとして警戒を強めている。
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国際海事局(IMB)によると、昨年1〜9月にソマリア沖とスエズ運河に通じるアデン湾で起きた海賊事件は147件(前年同期63件)。うち32件で船が乗っ取られ、533人が人質になった。ロケット弾や自動小銃を発射した事例は倍増して85件を数えた。
ソマリアの海賊に詳しい英王立国際問題研究所のロジャー・ミドルトン研究員は「実際、海賊に支払われた身代金は1件当たり平均100万ドルから200万ドル(約1億8500万円)に上昇し、昨年1年間で総額1億ドルにのぼったとみられる」と推測する。
国連が海賊の拠点である北東部エイルで身代金の分配方法を実地調査したところ、海賊の取り分は3割▽海賊の出身地を支配する軍閥に1割▽地元の長老や役人に1割▽出資者に3割▽融資元に2割−が流れていた。英海上警備会社イダラト・マリタイムのクリストファー・レジャー副会長は「ソマリアでは海賊を行うための武器、燃料などを調達するため“海賊株式会社”を設立して地元住民や海外から資金を募っている。身代金が入れば出資者は配当にありつける」と語る。
身代金はソマリアだけでなく、イエメンの密輸組織やレバノン、アラブ首長国連邦に環流。経済危機で欧米の住宅市場は下落したのに、ケニア・ナイロビの住宅価格は過去5年で2〜3倍も急上昇した。
英ロイズ保険組合の保険業者に情報提供するロイズ・マーケット協会のニール・スミス氏は「身代金がテロ組織の資金源になっているという証拠はない。身代金を含め海賊被害は戦争保険の対象だが、テロ組織との関連がはっきりすれば対象から外される」という。
海賊はカネが目的の世俗集団で飲酒や買春もすることから、アル・シャバブなどイスラム原理主義勢力とは基本的に相いれない。だが、テロや海賊に詳しい竹田いさみ独協大教授(国際政治)は「身代金の一部が地元軍閥や有力者を通じてアル・シャバブに渡っている可能性は十分にある」と指摘する。
海賊問題で北大西洋条約機構(NATO)の上級顧問を務めるジョプリング英上院議員は昨年11月、身代金を支払い続けることはテロ組織に海賊行為を促すことになるとして、英政府に身代金の流れを徹底調査するよう要求。米政府はアルカーイダと関係しているアル・シャバブの資金源を調査している。
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最終更新:1月11日14時35分
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