「WBA世界Sフェザー級タイトルマッチ」(11日、東京ビッグサイト)
挑戦者・内山高志(30)=ワタナベ=が、王者ファン・カルロス・サルガド(25)=メキシコ=を12回2分48秒TKOで破り新王者となった。内山は世界初挑戦での王座獲得で、ワタナベジムからは初の世界王者。
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最終12回、内山のダイナマイトパンチがさく裂した。右で王者をロープまで吹っ飛ばし、連打でダウンを奪った。足元をふらつかせながら立ち上がった王者に容しゃなく連打を浴びせ、グロッギーになったところでレフェリーストップ。無傷の14連勝(11KO)で世界の頂点に立った。
プロ3戦目直前の05年11月、最愛の父・行男さんが、がんで亡くなった。58歳だった。若いころから病弱だった行男さんは内山のプロ入りに反対し、安定した職に就くことを勧めた。「絶対に世界チャンピオンになるから」。病床の父を説き伏せた言葉が現実のものとなった。
アマチュア4冠の肩書を引っさげプロ入りしたが、決してエリートではない。高校時代は無冠ながら、優秀な人材が集う拓大に進学。1年生の時は同級生の荷物持ちだった。「本当に悔しかった。この時の悔しさがなかったら、今の自分はない」。屈辱が“ボクサー内山”を大きく成長させた。
「今日は顔にはほとんどパンチをもらっていない。イメージ通りのボクシングができた。チャンスがあったら倒そうと思っていたから思い切っていった」。作戦通り、左ボディーでスタミナを奪った。ポイントをリードしても、最終回に倒しにいった。
2階級制覇のホルヘ・リナレス(帝拳)を1回TKOで破ったサルガドを粉砕し、世界最強を証明した。ワタナベジム創設28年目にして初の世界王者は「お父ちゃん、お母ちゃんに感謝したい。それに入門以来、ずっと支えてくれた会長にも感謝します」と、実直な性格そのままに感謝の言葉で締めくくった。