最終更新: 2010/01/12 01:27

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デルタ航空機爆破未遂事件の容疑者が拠点とした中東・イエメンの現状をまとめました。

デルタ航空機爆破未遂事件の容疑者が拠点とした中東の小国・イエメンは、イラクとアフガンに続き、国際テロ組織・アルカイダとの戦場と化すのでしょうか。イエメンの現状をまとめました。

アメリカのオバマ大統領は「われわれは戦争の中にいます。アルカイダとの戦争です」と述べた。
世界を再び震撼(しんかん)させたアルカイダによるアメリカ旅客機爆破未遂事件。
このテロの震源となったのが、イエメンだった。
オバマ大統領は「(容疑者は)救いがたい貧困と暴力に覆われたイエメンを訪れていた」と述べた。
そして、混迷を深めるイエメンには、新たな危機がある。
今、焦点となっているイエメンを根拠地としたテロ組織、アラビア半島のアルカイダによる反政府集会の様子を映した映像で、アルカイダ幹部は「われわれは、神の敵への爆弾を抱えている」と話した。
イエメンで活動するアルカイダのメンバーは、政府の推定だけでも200〜300人にのぼるとされている。
この事態にイエメン政府は、2009年12月中旬から、国土の中部や南部で軍を投入した掃討作戦を展開し、これまで数十人にのぼるメンバーを殺害するなどしたという。
しかし、軍事評論家の宇垣大成氏は「イエメン軍には、対ゲリラ戦の経験はありますが、それほど効率的な作戦が行えているわけではないと思います。実態としては、すでにアメリカ軍が作戦の立案・実施に深くかかわっています」と語った。
1月2日、アメリカ中央軍の司令官がイエメンのサレハ大統領とアルカイダ掃討について協議する映像もある。
アメリカ中央軍のペトレイアス司令官は、「実際に機密情報などイエメンの情報機関と双方向で共有している」と述べた。
深まるアメリカのイエメンへの関与。
アルカイダ掃討作戦とは別に、イエメン北部で続いている反政府勢力との戦闘映像。
ゲリラが敗走した政府軍から奪ったという車は、実はアメリカ製の軍用車両だった。
アメリカは実際、イエメンでの作戦にどこまでかかわっているのか。
軍事評論家の宇垣大成氏は、「現在は、イエメン軍への対テロ作戦の訓練や無人機を使った偵察・攻撃などが主なところでしょう。しかし、イエメン軍の掃討作戦が不十分な場合には、アメリカ軍の例えば精鋭部隊のデルタフォースなどを投入して、アルカイダの拠点を直接攻撃することも予想されます」と語った。
アメリカの特殊部隊・デルタフォース。この部隊は、秘密の対テロ任務を主なものとして知られている。
人質救出作戦のほかにも、アメリカを攻撃する組織や人物などを秘密裏に誘拐・殺害するなどの任務もこなすという。
一方のアルカイダは、イエメンで一定の根拠地を築いたとされる。
ここで航空機のテロの訓練を受けたというアブドゥルムタラブ被告によれば、ほかにも20人ほどのメンバーが同様の訓練を受けていたという。
放送大学の高橋和夫教授は、「イエメンが新しいアフガニスタンになってしまう可能性を、これは示唆していると思います。内戦を2つ抱えている、貧困が激しくなるという中で、アルカイダがやって来て、ここに拠点をつくると」と語った。
人口およそ2,000万、アラビア半島南端のイエメンは、アラブ諸国の中では最貧国として知られる。
アラビア半島に在りながら石油資源に乏しく、内戦が続く国でもある。
中央政府の力は限定的で、地方は事実上、さまざまな部族が支配する部族社会となっている。
放送大学の高橋和夫教授は、「中央政府は石油収入を失いつつあって、といって部族に決して豊かさがあるわけではないですから、結局はアルカイダ系の人たちのアピールというものが、貧しい人たちの心に響くことになる」と語った。
これに加えて今、さらなる危機がある。
海を挟んだ対岸の東アフリカ・ソマリアで活動するというアルカイダ系武装組織。
ロイター通信などによると、彼らはイエメンのアルカイダへの支援と共闘を呼びかけているという。
放送大学の高橋和夫教授は、「ここはもう、本当に破たん国家で今、海賊の根拠地になっているわけですね。イエメンとソマリアのアルカイダが手を結ぶということになりますと、その間の海を毎日300万バレルの石油が流れているわけですけれども、この石油供給が脅かされると。世界経済を揺るがすというのが、最悪のシナリオですかね」と語った。
世界は、イエメンを発火点とする最悪の状況を回避できるのか。

(01/12 00:38)


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