報道発表資料 [2008年2月掲載]
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ひきこもりの実態等に関する調査(若年者自立支援調査研究)結果(速報値)について

東京都青少年・治安対策本部

1 調査目的

 ひきこもりの実態把握と推計を行うとともに、ひきこもりなどの社会的不適応の前提としての自立意識を明らかにし、ひきこもりの背景及び要因等について、様々な視点から分析・検証を行う。

2 調査方法

 住民基本台帳から15歳以上34歳以下の男女3,000人を無作為抽出し、調査員の戸別訪問によりアンケート調査を行った。

3 調査結果

(1)ひきこもりの状態にある若年者の出現率 0.72%

 都内におけるひきこもりの状態にある若年者の推計人数 約2万5千人

「ひきこもり」とは
さまざまな要因によって、社会的な参加の場面がせばまり、就労や就学などの自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態。
(厚生労働省「10代、20代を中心とした『ひきこもり』をめぐる地域保健精神活動のガイドライン」より)

 本調査では、1)調査項目の「普段の過ごし方」で「自室からほとんど出ない」「自室からは出るが家からは出ない」「近所のコンビニなどには出かける」「趣味に関する用事のときだけ外出する」のいずれかを選択し、2)専業主婦、妊婦など「ひきこもり」と明らかに異なる回答を除いた場合を「ひきこもり」の状態と判断した。

 アンケート調査で協力を得られた1,388人のうち、10人をひきこもりの状態と判断した。

※ひきこもりの状態にある若年者はアンケート調査に協力できない場合も想定され、ひきこもりの出現率及び推計人数はその下限値としてとらえることができる。

(2)「ひきこもり群」「一般群」「ひきこもり親和群」の区分

  • (1)でひきこもりの状態と判断した10人に、相談機関等を通じて実施した同様のアンケート調査でひきこもりの状態にあると判断された18人のデータを加えて「ひきこもり群」として分析した。
  • ひきこもりの状態にある若年者(ひきこもり群)と一般の若年者(一般群)に加え、「家や自室に閉じこもりたいと思うことがある」など心理的には「ひきこもり群」と同じ意識傾向をもっているが、ひきこもりの状態ではない若年者の新たな層(ひきこもり親和群)66人の存在が今回の調査で明らかになった。今後、この「ひきこもり親和群」についても、「ひきこもり群」や「一般群」と比較・対照し、自立意識や行動傾向を分析することで、ひきこもりの予防や対処方法等を考察していく。

(3)ひきこもりの状態にある若年者の特徴

 一般群との比較で、次のような特徴が見られた。

1)性別・年齢
○ひきこもり群は、「男性」が多い(71%)。
○ひきこもり群は、「30歳〜34歳」が多い(43%)。

性別   年齢構成   一般群の年齢構成
グラフ グラフ グラフ
※一般群:「男」51.5%、「女」48.5%  

2)家族との関係
○ひきこもり群は、家族との関係が希薄な傾向にある。

  親と自分との関係がよくなかった(よくない) 両親の関係がよくなかった(よくない) 家族とはよく話をしている 家族は私を必要としている 私たち家族は仲がよいと思う 私は家族から十分に愛されていると思う
ひきこもり群 35.7% 25.0% 32.1% 14.3% 28.6% 28.6%
一般群 10.0% 9.1% 65.6% 43.4% 64.4% 62.9%

3)学校での経験等
○ひきこもり群の36%が「不登校」、39%が「いじめられた」、54%が「勉強の遅れ」を経験していた。
○ひきこもり群は、友人関係が希薄な傾向にある。

  信頼できる友達がかなりいた(いる) 友達とよく話した(話す) 友達がひとりもいなかった(いない) 不登校を経験した(している) 友達にいじめられた(いじめられている) 学校の勉強についていけなかった(いけない) 学校の先生との関係がうまくいかなかった(いかない)
ひきこもり群 21.4% 42.9% 10.7% 35.7% 39.3% 53.6% 35.7%
一般群 53.6% 80.6% 1.1% 5.3% 18.0% 15.0% 10.7%

(4)ひきこもりの状態について

1)ひきこもりの状態になった時期
○「25〜27歳」が最も多く(29%)、次いで「13〜15歳」が多い(18%)。

ひきこもりの状態になった時期

グラフ

2)ひきこもりの状態が継続している期間
○「3年〜5年」最も多く(29%)、「7年以上」も多い(21%)。
○ひきこもりが1年以上の長期に渡って継続している事例が全体の75%を占めている。

ひきこもりの状態が継続している期間

グラフ

3)ひきこもりの状態になった原因
○「職場不適応」(25%)や「就職活動不調」(14%)など就職・就労に関することがきっかけでひきこもりの状態になった事例が多い。
○その他、「病気」(25%)、「不登校」「人間関係の不信」(18%)が多い。

ひきこもりの状態になったきっかけ

グラフ

(5)ひきこもりの状態にある若年者の関係機関に相談する意向

○「非常に思う(32%)」「思う(18%)」「少し思う(32%)」と82%が相談の意向をもっていた。

4 今後の調査結果の分析・研究について

 今回の調査及び別途に実施したひきこもりの状態にある(あった)若年者への面接調査等の結果の分析や、「ひきこもり群」、「一般群」、「ひきこもり親和群」の3グループの比較・検討により、ひきこもりの要因や背景、対処方針等を考察する。