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追跡2010:自治体のキャラクター作りブーム 「ゆるさ」が人気 /愛知

名古屋開府400年祭のマスコットキャラクター「はち丸」
名古屋開府400年祭のマスコットキャラクター「はち丸」

 自治体がまちおこしや特産品PRなどのためにマスコットキャラクターを作るのがブームだ。東海3県でも続々と生まれている。どこかユーモラスなキャラクターに、思わず顔が緩んでしまう人も多いはず。一方、キャラクターが乱立する現状に専門家からは「今後は淘汰(とうた)されていく」との指摘もある。ブームの背景を追った。【稲垣衆史】

 ◇東海3県でも続々 専門家「今後は淘汰」指摘も

 ■ゆるキャラで活気

 09年12月、岐阜県岐南町であった「ぎなんフェスタ」。町特産の徳田ネギをモチーフにしたキャラクター「ねぎっちょ」の呼びかけで、各地のキャラクター約30体が集まるという趣向だ。初開催だったが、会場には東京都や愛知県などからも親子連れら約1万5000人が訪れ、お気に入りのキャラクターとカメラに収まった。

 岐南町が当日行ったアンケートによると、参加者の約半数はキャラクター目当て。当日の様子は参加者によってインターネット動画サイト「ユーチューブ」に投稿されるなど、関係者の予想を超える人気だった。

 岐南町は06年の町制施行50年を機に、ねぎっちょを作った。デザインは公募で寄せられたアイデアをベースに岐阜県山県市の絵本作家、高畠純さんが仕上げた。名前は小学5年生の案を選んだ。

 ねぎっちょの誕生と同時期にいわゆる「ゆるキャラ」ブームが到来。ねぎっちょは各地のイベントに参加し、知名度も高まった。

 地元の飲食店は、徳田ネギを使った料理や菓子を開発。地元の業者によってグッズの商品化も始まった。JAぎふは出荷する徳田ネギの箱にねぎっちょのシールを張って消費者にアピールしている。

 岐南町自治振興課の市野邦子係長は「キャラクター化したことでネギが町のシンボルになった。活性化に取り組む雰囲気が生まれ、急に物事がうまく進み始めた」と話す。

 ◇大きなPR効果期待

 ■モリコロがブームの下地に

 「ゆるキャラ」はイラストレーター、みうらじゅんさんの命名だ。ブームのきっかけは、彦根城築城400年記念祭のキャラクターとして06年に誕生した「ひこにゃん」と言われる。その後、全国の自治体が相次いで、地元の特産品や動植物などを擬人化したキャラクターを作った。奈良県の平城遷都1300年祭のキャラクターで、童子に鹿の角をつけた「せんとくん」は当初「気持ち悪い」などと批判が出たが、論争に発展したことでかえって話題になった。

 東海地方で記憶に新しいのは、05年に愛知県で開かれた愛・地球博のキャラクター「モリゾー・キッコロ」だ。東大大学院情報学環の七丈直弘准教授は「既に90年代からキャラクターを設ける自治体はあった」と指摘した上で「モリコロはテレビ番組でアニメ化され、万博終了後も人気が維持された。自治体にとって、人気キャラクターはイベントの時だけにとどまらず、普段も有効な広報手段になるという認識が広がった」と説明する。

 東海3県の自治体を調べてみると、ブームを背景に07~09年に生まれたキャラクターが多い一方、10年以上の歴史を持つものもある。市制施行○年など節目の年を記念する名目で作られたものが多いが、名古屋市交通局の「ハッチー」、愛知県高浜市の食育事業推進キャラクター「カワラッキー」のように継続的な事業をPRするキャラクターもある。

 ■費用対効果が抜群

 なぜ自治体がキャラクターを作るのか。「『ひこにゃん』の成功にあやかりたい」という意識に加えて、七丈准教授は「費用対効果」を挙げる。

 キャラクターによるPRの費用は、イベントの際に着ぐるみに入る自治体職員らの経費程度。どの自治体も財政が苦しい中、1体あたり30万~70万円程度の着ぐるみ作製費のみで大きなPR効果を期待できる。個性のあるキャラクターを作ればメディアが取り上げてくれる。キャラクターを通じて、特に子どもや年配者に対し、良いイメージで行政のメッセージを伝えられるのも利点という。

 また七丈准教授は「キャラクターを使う権利は自治体にある場合がほとんどで、広告代理店などを通さずにPRができ、行政の自由な裁量でイベント開催やグッズ製作ができる」と、規制の少なさもメリットと見る。

 一方、キャラクターの調査や育成を手がける「キャラ研」(本社・東京都)の森永留美子さん(28)は、自治体がキャラクターを多用する理由を「日本人が元来持つキャラクターリテラシー(活用能力)の高さ」と指摘する。

 アニメ文化に代表されるように日本人はキャラクターを作る能力が高い。自治体がキャラクターを作る際はデザインが決まってから名称を公募するケースが多いが、森永さんは「参加型を強調することで『みんなのキャラクター』という意識を生み出し、地元の人に愛着を持ってもらいやすくなる」とみる。

 ◇生き残り、独自色が…

 ■ブームの行方

 多くの自治体によるキャラクターの乱立状態を不安視する声も出ている。

 「土日返上でイベントに参加し職員はみんなヘトヘト」「現状維持が精いっぱい。先行きが見えない」--。

 09年10月、岐阜県多治見市で開かれた「第2回ゆるキャラ☆町おこしサミット」。自治体や町づくり関係者ら約25人が話し合ったところ、本音が次々に出た。

 会議を主催した「ゆるキャラ町おこし同盟」事務局長の佐藤円一郎さん(42)=多治見市=は、多治見市とともにキャラクター「うながっぱ」を使ったまちおこしに取り組んできた。グッズ販売も好調で人気に陰りは見えない。ただ佐藤さんは、一過性のブームに終わり地域活性化の動きが途絶えてしまうことに危機感を覚えた。「サミット」は単なるキャラクター集合のイベントではなく、関係者が町づくりのノウハウを共有し、ネットワークを作る場として08年から企画した。

 佐藤さんは「キャラクターブームは2、3年後には壁に直面する。継続的な仕組みを作ることが急務」と話す。今後はさらにネットワークの結びつきを強め、中部のキャラクターで連携して、さびれた商店街を応援するキャラバン活動を展開するなどの新たな活性化策を模索中だ。

 キャラクター評論家、ろばとでにろうさん(42)=名古屋市中区=は「単にブームで作ってみたというキャラクターと、企画・運営がしっかりしたキャラクターの人気に差が出てくる。生き残るためには、他とは違う独自色を出す必要がある」と指摘する。

 ◇着ぐるみ体験 動き制約、コミカルに

市職員に手伝ってもらい、うるるんの着ぐるみに入る記者。「イメージを壊すから」との理由で正面からの撮影は断られた
市職員に手伝ってもらい、うるるんの着ぐるみに入る記者。「イメージを壊すから」との理由で正面からの撮影は断られた

 人気のカギと言われる着ぐるみの秘密を探ろうと愛知県清須市のキャラクター「うるるん」と「きよ丸」に記者が入ってみた。

 うるるんはウレタン製で柔らかい。製作を依頼する際「動きやすさ」を求めたというだけあり、かぶってみても重さ(約10キロ)はあまり感じない。大きな顔の部分を中の人の肩で支える作り。手の動きは制限されるが、かえってコミカルな動きになる。難点は視界の狭さ。わずかに外をのぞける程度で足元は見えない。

 きよ丸は着物風の衣装で、手足を上げる決めポーズも楽々できる。ただ形や動きが人間に近すぎるため「子どもが怖がることも」と職員は苦笑する。

 やはり中は暑かった。約10分の着用でも汗が出た。実際のイベントでは15分ごとに休憩が必要という。着ぐるみは洗濯できないため、少し汗くさかった。

 市民への貸し出しの注意事項には「公衆の前での着脱禁止」と記されていた。「夢を壊すから」が理由だ。

 担当職員の大沼賀敬さん(40)は「苦労もあるが、子どもが喜んでくれるとうれしい」と話す。清須市は4月から、うるるんときよ丸の着ぐるみを1体ずつ増やす予定だ。

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 ◆東海3県の自治体キャラクターの一部

 ◇キャラクターの説明は(1)名前(2)所属(3)誕生年(4)特徴。

 (1)キムぴ~(2)岐阜県各務原市(3)05年(4)各務原日韓親善協会による講習会が好評で、まちおこしとして誕生した各務原キムチをPRする。名前は「キムチを食べてハッピー」という意味がある。

 (1)うながっぱ(2)岐阜県多治見市(3)07年(4)地元の「かっぱ物語」と名物うなぎが合体。日本一の暑さを記録した市を元気にしようと現れた。作者は「アンパンマン」のやなせたかし氏。

 (1)かさまるくん(2)岐阜県笠松町(3)09年(4)町生誕120周年マスコット。頭にかぶった「かさ」とかさの上の「まつ」で笠松を表現。妹のかさまるちゃんもいる。

 (1)ねぎっちょ(2)岐阜県岐南町(3)06年(4)性別はなく、町民全員が家族。町のホームページに「ねぎっちょ日記」を掲載中。特技は手と足を隠して「ネギ」になること。

 (1)らぴぃ(2)岐阜県警(3)92年(4)名称はモチーフになった県の鳥「雷鳥」の「ら」とパトロールやポリスなどの「P」からとった。現役警察官の黒川忠彦警部補がデザイン。

 (1)ヤマリン(2)第30回全国豊かな海づくり大会岐阜県実行委員会(3)09年(4)6月の同大会マスコット。名前は山(ヤマ)と海(マリン)に由来。体の模様は川、足の水玉は海を表現しており、清流を愛する。

 (1)トヨッキー(2)愛知県豊橋市(3)05年(4)市制100周年記念のロボット風マスコット。市の「鬼まつり」の赤鬼と漢字の豊をアレンジ。名前は「豊橋(トヨ)の鬼(キ)」に由来。

 (1)道風(とうふう)くん(2)愛知県春日井市(3)08年(4)小野道風の生誕地として「書の町」をPRする。市制65周年に合わせて、かわいいデザインに変更された2代目。

 (1)きんちゃん(2)愛知県弥富市(3)96年(4)特産の金魚のPRが仕事。イメージソング「近所の金魚は弥富のきんちゃん」は地元の園児にも歌われる。

 (1)はち丸(2)名古屋開府400年事業実行委員会(3)08年(4)名古屋開府と同じ1610年、名古屋生まれ。時を旅している。風呂敷にはねがいボシ「かなえっち」が入っており、人々に夢をかなえる力を配っている。天むすが好物。

 (1)いなッピー(2)愛知県稲沢市(3)07年(4)市制50周年キャラクター。頭は名産アシタバ。国府宮裸祭りをイメージし、はちまきにフンドシ姿。特技はガーデニング。

 (1)きよ丸(2)愛知県清須市(3)09年(4)清須の歴史を紹介する清須男児がモチーフ。今年4月から始まる清須越400年事業を盛り上げる。アニメ「忍たま乱太郎」などを手掛けた芝山努さんデザイン。

 (1)うるるん(2)愛知県清須市(3)09年(4)市内を流れる三つの河川をイメージした女の子の川の妖精。「きよ丸」とともに清須越400年事業を盛り上げる。

 (1)ホリゴン(2)名古屋市堀川総合整備室(3)秘密(4)本名は堀川権左衛門。福島正則の家来として堀川作りを手伝った。川が汚れて姿が見えなくなった。きれいになれば会える。

 (1)カワラッキー(2)愛知県高浜市(3)08年(4)市こども食育推進キャラクター。モチーフは地場産業の「かわら」。料理が大好きで腕前はプロ級。「食べ物は残さずに」「好き嫌いをなくそう」がモットー。

 (1)こにゅうどうくん(2)三重県四日市市(3)97年(4)市制100周年事業のキャラクター。タヌキ退治のために作られたと伝えられる首が伸びるはりぼて「大入道」にちなんだデザイン。

 (1)シロモチくん(2)津市(3)08年(4)初代の伊勢・津藩主、藤堂高虎の入府400年記念事業キャラクター。高虎の旗印「三つ丸餅」がモチーフ。

 (1)未定(2)三重県松阪市(3)10年2月(予定)(4)合併後の新市制5年記念キャラクター。名前は今年2月に正式発表される。松阪牛と豊かな緑がモチーフ。

 (1)いっぴょん(2)三重県選管(3)01年(4)明るい選挙キャラクター。三つの輪は三重の「三」、大きな耳は三重の「M」のイメージ。県選管は大学生に選挙に関心を持ってもらおうと、講座「いっぴょん塾」を開いている。

 (1)ゼロ吉(2)三重県(3)07年(4)県ごみゼロ社会実現プランを推進するキャラクター。ゴミを食べ過ぎて太っているが、ゴミが減ればやせていく。

 (1)ベルディ(2)三重県鈴鹿市(3)92年(4)市制50周年キャラクター。名称は鈴と鹿に由来。デザインは手塚プロダクション。

毎日新聞 2010年1月10日 地方版

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