長谷川 夢の中で、柳さんは「時間がない」と訴えているんですよ。「五ヵ月しかないんじゃ書こうと思ってた小説も書けない」とね。五ヵ月しかないということは、その五ヵ月でやり遂げなければならない、ということですよね?
柳 はい。
長谷川 いみじくも今日、カウンセリングをはじめる前に、お話ししましたよね? このカウンセリングのゴールをいつに設定しましょうかと。そうしたら、まぁ、遅くても二月には、ということになって、今日から数えると、五ヵ月ですよね?
柳 あぁ、五ヵ月だ……不思議ですね……。
長谷川 不思議でしょ?
柳 私は、あと五ヵ月で、自分が抱えている闇、虐待の問題に決着をつけなくてはいけない。それで、五ヵ月しか時間がない、と訴えていたとしたら、あの夢の男性というのは、長谷川さんですか?
長谷川 それは、言い過ぎですね。つまり自分といっしょに、自分の闇を旅してくれる存在。自分が路に迷っても、そのひとが道標となるものを示してくれる。それを外在化させたら、カウンセラーということになるかもしれない。でもそういった存在は、心の内にいるんですよ。
柳 あぁ……心の内にいる……。
長谷川 内なる自分の導き手。スイスの分析心理学者ユングは、そういう存在のことをオールド・ワイズ・マンと呼んでいます。ひとが人生をかけた重大な成長、変化をするときに導いてくれる人物イメージとして、だれの心の中にもいる老賢者です。