第4回
カウンセリング第一日 長谷川博一氏(臨床心理士)との対話(2)
反対を押し切って鳥を飼うことにした理由
柳 偶然の一致かぁ……今考えると、鳥は、自分の秘密に関わっていたんじゃないか、と思うんです。私はブログをやっていて、ほかの動物、猫とか犬のことはケータイで撮ったり書いたりしてブログにアップしていたんですが、鳥のことは一度もアップしていないです。鳥を飼っていることは、だれにも知られたくなかった。
長谷川 その鳥は、特別な存在だったんですね。でも鳥は、過去に憎しみや怒りの矛先にもなったわけですよね。どうして三月に、鳥を飼おうと思ったんですか?
柳 「オンエア」という小説を書きあげて、連載をしていた週刊誌の最後の校了をしたのが、二月の終りだったんです。一つの仕事を終えて、鳥を飼いたい、という思いが募ってきたんです。
長谷川 でも鳥は、父親を連想させる嫌な側面もあるわけですよね?
柳 でも、どうしても、飼わないといけないような気がしたんです。実は、同居している彼に猛反対されたんですよ。犬が二ひき、猫が八ぴき、熱帯魚の水槽が六本、亀やオカヤドカリやクワガタなんかもいますからね、一日中動物の世話に追われているというのが現状なので、彼が「鳥を飼うんだったら、出て行く」って(笑)。いえ、笑い事じゃなくて、あのときは半泣きで訴えましたね。「私は、鳥を飼わないと、この家に居られない。私には鳥が必要なんだよ」って。彼に「どうして、そんなに鳥が必要なの?」って訊ねられたんですけど、それには答えず、「とにかく鳥を飼うから」の一点張りで(笑)。鳥に関することは全部私がやるから、と約束して、彼の反対を押し切って、鳥を飼ったんです。