ニュースネット時代の新潮流――CGMとは(6)なぜ起こる? 「炎上」の力学 (2/2)2006年09月04日 09時41分 更新
ブログは私的な日記としても使えるツールですが、読者が見えにくいため、みんなが見ていることを忘れてしまう人が多いようです。つまり、悪口を書けば、書かれた人も見ている可能性がと考えたほうが、たいていの場合正しいのです。誰にも気がつかれていないと思って書いていたブログが、実はみんな知っていたというケースを、私も何度か見たことがあります。 実社会には「空気が読めない人」と言われる人がいますが、そのような人は、ブログでも、コメントやトラックバックをしている閲覧者の怒りに火を付けて、炎上させてしまうことがあります。無数のコメントを全体的にとらえて1つの総意を汲み取り「みんなの意見は案外正しい」的な感覚で真しに受け止め、正しいと思うことは貫き、間違ったことは謝罪する誠実な態度が重要だと思います。 「燃料投下」とは炎上するきっかけとなる、あるいは炎上中に更に炎上を拡大させる行為や情報が出してしまうことを「燃料投下」と呼ぶことがあります。ブログ本文によるものだけでなく、特定のコメントにブログの管理者がむきになって反論したり、挑戦的な発言をすることで燃料投下となることもあります。 先日、楽天証券の社員が、Wikipediaに書かれた自社に不利な情報を削除した、というニュースがありました(関連記事参照)。これは事件発覚から早い段階で謝罪を出したことにより、大事には至りませんでしたが、もし謝罪など対応がなかったならば強力な燃料投下として、関係各所で炎上を起こしていたでしょう。 Wikipediaは、ネットユーザーが自由に編集できる辞典で、情報の信ぴょう性は保証されるものではありませんが、その精度は相当高いものがあるようです。科学誌のNatureでは、Wikipediaの信頼性は「ブリタニカ百科事典」に匹敵すると評価されるほどです。(これに対してブリタニカ社は抗議しています) これほどの事典が、市民のボランティアによって民主的に形成されているものに対して、楽天証券の社員の行為は、公共の場を自分の都合で荒らすマナーの悪い人のようなものです。これを行った社員は、会社のために良かれと考えてのことだとは思いますが、これはネットの世界の空気が読めていなかったことが原因だと思います。 炎上しないための心得どんなブログでも、きっと誰かが見ていると意識するネットの向こう側に人がいることを忘れて、非常識な発言をしてしまう人がいます。ブログで書くことは、目の前に当事者がいたとしても発言できる自信があるものにしましょう。 誤りがあったらすぐに謝罪炎上しても早い段階で謝罪すれば、炎上はひどくなりません。 やらせをしないやらせのブログやSNSの日記は、ほとんど見透かされ、炎上につながるので、もし、やらせでも行いたい場合は、そのことを明確に宣言した上で運営しましょう。 都合が悪いことを削除しない自分で発言したが、都合が悪くなってしまったことや、都合の悪いコメントを削除した結果、閲覧者の反感を買い、Googleのキャッシュなどからその記載を「発掘」され、炎上につながることがあります。先に述べたように誤りがあった時には削除せずに率直に謝罪し、反対意見や批判的な意見は貴重な意見としてそのままにしておきましょう。 炎上は本当に悪いことなのか?炎上は恐れるものではありません。反社会的な行為を自慢するような書き込みは問題外ですが、自分が正しいと思うことを、炎上を恐れるあまりに発言しなくなってしまったならば、ネットの世界は危機的な状況に陥るでしょう。 現実の世界でも、人に向かってはっきり言える自信があることは、ブログやSNSで発言すべきです。その結果、反論や批判的な意見があったとしてもそれは1つの意見であり、そのことに対しての自分の意見を述べ、議論すればよいのです。 その結果、誤りであったと気づいたことは率直に謝罪し、それでも正しいと信じることは主張するような自由な議論がそこにあることが大切だからです。そして、真しにこれらの人たちと議論し、お互いを理解できたならば、炎上は逆に、新しい支持者を大幅に増やすチャンスに変わるでしょう。 伊地知晋一氏のプロフィールライブドア社長室長 コーポレート担当。グループ会社全体のWeb戦略を推進している。 1996年、メール配信システムのシノックスの取締役として創業から参加。退職後、ユーティリティー系ソフトを販売するプロジーグループに入り、オンザエッヂ(現ライブドア)による買収と同時にオンザエッジに合流。 2002年、オンザエッヂの旧ライブドア買収に伴い、無料プロバイダー・ライブドアの責任者として運営に当たる。2003年、ポータルタルサイト ライブドア立ち上げ。同時にスタートしたブログが国内最大のサービスに成長した。このほか、約2年半で50以上のネットサービスを立ち上げる。 関連記事
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