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【動画付き】水にぬれても落としても大丈夫、500円玉4個分の超小型HDD登場

8GB版の実勢価格は1万4800円、12GB版が1万9800円。2006年12月中旬以降順次出荷される予定だ
8GB版の実勢価格は1万4800円、12GB版が1万9800円。2006年12月中旬以降順次出荷される予定だ
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HDMC-Uシリーズの内部。防水も兼ねたゴム製の衝撃吸収材(左)でハードディスクユニット(左から2番目)を包む構造になっている
HDMC-Uシリーズの内部。防水も兼ねたゴム製の衝撃吸収材(左)でハードディスクユニット(左から2番目)を包む構造になっている
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 アイ・オー・データ機器が2006年11月28日に発表した「HDMC-U」シリーズは、500円玉を4枚並べた程度の超小型外付けハードディスク(写真)。最近人気を集めているポータブルタイプの外付け製品の半分以下のサイズで、胸ポケットにも余裕で収まる。USBメモリーに近い感覚で持ち運べるのだ。しかも、容量は8GBもしくは12GBと、USBメモリーよりも数倍大きい。

 さらにHDMC-Uシリーズが特徴的なのは、防水性と耐衝撃性に優れること。水にぬれても、落としても、データを守ってくれる。

 もう1つ見逃せないのが、USBケーブルが本体の外周に巻き付く形で直結してあること。通常外付けHDDは、USBメモリーとは違い、USBケーブルを用意してパソコンと接続しなければならない。HDMC-Uシリーズの場合は、ケーブルを持ち運んだりする必要がないわけで、可搬性の面でもUSBメモリーとそん色ない。

 USBメモリーは、容量がギガバイトクラスの製品になると値が張る。ポケットサイズで、もっと容量が大きく、なおかつ安心して使える安価な外部記憶装置が欲しい――。そんなわがままな希望も、HDMC-Uシリーズならかなえてくれる。

■1時間水に漬けても大丈夫

 とはいうものの、防水性と耐衝撃性というメーカーのうたい文句はにわかには信じがたい。そこで、真実を確かめるべく、日経パソコン編集部では評価機を入手し、検証してみた。

 まず、洗面台にためた水にHDMC-Uを沈めてみた(動画参照)。そのままじっと待つ。1時間後、取り出して水滴をぬぐい、パソコンに接続。USBコネクターの部分まで水にぬれてしまったので、少々不安だったのだが、何とその状態でも正しくデータを読み書きできた。

 次に、オフィスの床に落としてみる。まずは2メートル近い高さから落下させる。さらに、放り投げて落としてみた。それでもやはり、動作に支障はなかった。

 どうやらうたい文句は額面取り受け取ってもよさそうである。もちろんメーカーが、どんな落下事故や水没事故でも動作を完全に保証するわけでない。また、経年劣化によって、必ずしも期待した通りの防水性・耐衝撃性を常に発揮できるとも限らない。ただ、「HDDだからそもそも壊れやすいはず」という不安を忘れてしまうほど、USBメモリー並みに気を使わずに活用できそうだというのが率直な感想である。

 なぜ、それほどまでに頑丈なのか。その鍵を握るデバイスが、中に収められている1インチのHDDである。通常、ポータブルタイプの外付けHDDの場合は2.5インチHDDを使う。また、据え置きタイプの外付けHDDの場合は3.5インチHDDを使うのが一般的だ。これに対し、HDMC-Uシリーズが採用するのは、米国のベンチャー企業コーニスが開発した1インチのHDD。一般に、小型のものほど、持ち運び用途を配慮して対衝撃性を高めてある。コーニスの1インチHDDの場合は、動作していない状態で、瞬間的な衝撃なら2000Gまで耐えられるように設計されている。実際、韓国サムスン電子などが携帯音楽プレーヤー用として既に採用しており、頑丈さでは実績がある。

 さらにHDMC-Uシリーズの場合は、衝撃を吸収する素材でこの1インチHDDをサンドイッチ状に包み込む構造になっている。「米国防総省の軍事製品で採用する耐衝撃性能試験に基づき、122センチメートルの高さから面方向、角方向などに合計26回落下させる実験をしたが、壊れずに正常に動作することを検証済み」(アイ・オー・データ機器)という。

 では、防水性の秘密は何なのか。それは、ゴム製の衝撃吸収材。本来、対衝撃性を高めるためのものだが、外部から水の進入も防ぐ役割も果たしている。「水深1メートルに約30分沈めて防水性を確かめる日本工業規格JISの基準に沿って実験し、水漏れが起こらないことを検証済み」(同社)。これなら、雨の日にかばんから滑り落ちてしまったり、胸ポケットから洗面台に落としてしまったり、万が一の事故が起こっても安心だ。

■価格はUSBメモリーの3分の1程度

 安心して使えることは分かったが、果たしてコストパフォーマンスはUSBメモリーと比べて優れているのだろうか。HDMC-Uシリーズの価格は、8GBタイプが実勢で1万4800円、12GBタイプは1万9800円である。1GB当たりの単価をUSBメモリーと比べてみた(表1)。読み書き速度の高さを売りとする最新型のUSBメモリーの場合、1GB当たりの値段は4350〜5980円。これに対しHDMC-Uシリーズは、1650〜1850円。最も高いもの同士を比べた場合で、HDMC-UはUSBメモリーの3分の1程度になる。ただ、ポータブルタイプや3.5インチ型の据え置きタイプのHDDに比べると、少々割高ではある。

表1 1GB当たりの価格はUSBメモリーの3分の1程度
種類 型番 容量 実勢価格 1GB当たりの価格
USBハードディスク HDMC-U12 12GB 1万9800円 1650円/GB
HDMC-U8 8GB 1万4800円 1850円/GB
USBメモリー
(高速型)
TB-BH8G/B 8GB 3万4800円 4350円/GB
TB-BH4G/B 4GB 2万4800円 6200円/GB
TB-BH2G/B 2GB 1万1800円 5900円/GB
TB-BH1G/B 1GB 5980円 5980円/GB
USBメモリー TB-ST2G/B 2GB 7880円 3940円/GB
TB-ST1G/B 1GB 3980円 3980円/GB
TB-ST512/B 512MB 2480円 4960円/GB
TB-ST256/B 256MB 1780円 7120円/GB
ポータブル型の外付けハードディスク HDPG-SU120 120GB 2万2800円 190円/GB
HDPG-SU80 80GB 1万4800円 185円/GB
据え置き型の外付けハードディスク HDH-U250SR 250GB 1万6800円 67円/GB
HDH-U300SR 300GB 1万8800円 63円/GB

 性能については、どうか。100MBのファイルを保存しておき、パソコンで読み出すのにかかった時間を測定したところ、HDMC-Uは約16秒だった。高速型のUSBメモリーと比べて、約2.7倍である(表2)。仮に1GBの大容量データを転送するとすれば、計算上は約2分44秒かかることになる。これをどう受け取るかは個人によっても違うのだろうが、筆者には必要にして十分な速度と思える。

表2 読み出し速度はUSBメモリーの半分以下
種類 平均読み出し
時間
USBハードディスク 16秒
USBメモリー(高速型) 6秒
100MBのデータを読み出すのにかかった時間

 大容量のデータを持ち歩く以上、USBメモリー同様に紛失のリスクが常につきまとうことは忘れてはならない。ビジネスの現場では、個人情報が漏えいして社会問題に発展する例が後を絶たないことから、USBメモリーの利用を原則として禁じる企業も増えつつある。iPodなどを使って故意に企業の情報を盗む「ポッド・スラーピング」と呼ばれる手口の犯罪も増加中だ。つまり、データを持ち運ぶ機器には、セキュリティに対する配慮が欠かせない。その点、HDMC-Uにはパスワードロック機能とファイル共有ソフトWinnyによる漏えい防止機能が備わっている。パスワードによるロックをかけておけば、HDMC-Uをパソコンに挿す際に内部の認証プログラムが自動的に起動し、本人であることの確認を促す。この際、接続先のパソコンでWinnyが動作していると、パスワードロックの解除すら認めない工夫を施してある。

 USBメモリーとはまた違った魅力があることから、他社がHDMC-Uシリーズの後を追い、同様のコンセプトの製品が次々と登場する可能性は十分にある。近い将来、「USBメモリー」ならぬ「USBハードディスク」とでも呼ぶべき新しい製品ジャンルが確立され、USBメモリーの兄弟分として当たり前に使われる日が来るかもしれない。

(高田 学也=日経パソコン)  [2006/12/08]

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