5日
金曜日
屋根裏のカンボジア
タイトルに意味はない。朝7時起き。なんて勤勉な連休なんだ。朝食、ピタパンとイチゴ。猟奇実録ホラーもの原作一本。バンクカードは警察に届けられた日付から判断するに、29日、吉祥寺で銀行に寄ったときに落としたらしい。銀行に寄ったという、そのこと自体を忘れていた。ネット回ろうとすると、ほんやら堂掲示板がサービス停止となっている。せっかく伊藤くんの大衆論が聞けるかと思ったのに、どうした ことか。
シャワー浴びて、12時、外出。六本木まで出て昼飯、と思ったがどこも開いてない。ABCなどに寄ったあと、明治屋で買い物し、帰る。メシに冷やし茶碗蒸しをかけてかっこむ。下手なところで食べるよりこっちの方がうまい。それからまた外出、東急ハンズで買い物。2時、芝崎くん来。片付けをはじめる。今日は書類、FAX類など、紙モノの整理。あと、雑誌類をどしゃどしゃ捨てる。中にはいい記事が載っているものもあるが、検索が出来ない状態ではとっておいても致し方ない。思い切って捨てる。よくとってあったと思う古い手紙類なども出てくる。昔つきあってた子(中野美代子の姪)から来た、私が結婚するときの恨み綿々の手紙とか。
4時、今日はきちんとお茶する。端午の節句らしく、カシワモチで。片付けでほこりが立ち、クシャミ鼻水とまらず。手がほこりまみれになり、それで目をこすったりしてはいけないので、マクベス夫人みたいにしょっちゅう手を洗い、しまいに脂っ気が抜けてガサガサになる。それでも書庫内、ちゃんと体をくねらせずに通れる道がつくのがうれしい。連休などのたびに、仕事のしだめをしようと決意し、結局何も出来ず自己嫌悪に陥るのだが、この連休はとにかくこの整理が出来たというだけで、価値があったというべきである。
連載していた雑誌類も、単行本になったものはどんどん処分する。捨てる指示をしていたら、芝崎くんが“これ、将来の唐沢さん研究の重要な資料ですから、もし捨てるのなら僕が貰います”という。そんな研究されるようなエラい奴にはならねえから安心して捨てろ、と命ずる。いったん捨て始めると捨てることが面白くなり、どんどんエスカレートしてあれもこれもと捨てていく。買ってまだ読んでいない本も、価値を考え、これをいつかは読まねば、と思うことが自分の人生の残り時間にかえって負担を与えると思われるものは思い切って捨てる。何か、借金をどんどん踏み倒していくような爽快感がある。薄田泣菫曰く、“本を捨てることは本を買うのと同じくらい人間を賢くするものである”。芝崎くん、“せめてブックオフに売って、飲み会の足しにくらいしましょう”と、クルマ持っている知人に電話して、日曜日に取りにこさせる算段をしている。
7時半、書かねばならない原稿があるという芝崎くんを帰し(夕食代を進呈)、居間の本類の片付けもうちょっと。8時から夕食の用意。牛肉とジュンサイの煮物、マス塩焼、白身魚のサラダ風。ビデオで中村征夫撮影『カムイの海』。巨大なタコイカが、卵を足の間に付着させて孵している光景を見た監修の先生が、“こりゃ、世界中のイカ屋さんがひっくりかえる映像だよ”と言った、という話の、“イカ屋さん”という言い方に、そうそう、学者って専門をこう言うよなあ、と笑った。