『これならわかる!知的な財産のお話』 〜 著作権とその周辺 〜

ウルトラマンと商品化権

日本で生まれたスーパーヒーロー☆ウルトラマン☆がタイの契約書に負けた?!
2004年 5月 7日発刊 <<第15号>>

  昨年から今年初め頃にかけて、知的財産権全般に渡る研修を受講する機会
 がありました。著作権に限らず、工業所有権(今でいう産業財産権)や不正
 競争防止法、その他関連諸法について満遍なく講義があり、大変有意義なも
 のでした。

  その中の1つで「意匠法」の講義を頂いた弁理士の先生がとてもユニーク
 で面白かったのです。「意匠」とは何か?というと、「物品の形状、模様若
 しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起させるもの」
 (意匠法2条1項)、つまり「デザイン」と考えて頂ければいいかと思いま
 すが、詳しい内容はまた別の機会ということで。。

  で、「意匠法」の講義の中で説明の例として多用されていたのが、ウルト
 ラマンやバルタン星人、ガンダムなどのキャラクターの形状をした消しゴム
 でした。それも色んなポーズのものを出され、「見た目が違えば機能が同一
 でも権利範囲外」など意匠権の特徴を説明して頂きました。


  我々ウルトラマン世代には懐かしく楽しい講義だったのですが、最近この
 ウルトラマンを巡っての訴訟で最高裁判決が下されました。

  先月27日に下されたその判決とは、ウルトラマンの海外での独占的な商
 品化権を巡って、ウルトラマンの著作権を持つ円谷プロダクションとタイの
 映画製作会社会長が争っていた裁判で、最高裁は円谷プロの上告を棄却する
 決定をした、というものです。

  どういう訴訟であったかといいますと、ウルトラマンの「生みの親」であ
 る円谷英二氏の息子で当時の円谷プロ社長が、前出タイ人会長からの貸付金
 の対価として海外独占権を譲るという契約書を交わしており、その契約書の
 真偽が問題となっていました。

  判決は、著作権は円谷プロにあると判断した上で「その契約書は真正に成
 立していた」としてタイ人会長の主張を支持した1、2審判決を今回の最高
 裁も支持し、円谷プロ側の敗訴が確定した、というものです。

  これにより、ウルトラマン初期作品である「初代ウルトラマン」から「ウ
 ルトラマンタロウ」までの5代に渡る作品の、日本国外での商品化権や放映
 権などを円谷プロは失うことになりました。詳しい契約の内容はわかりませ
 んが。


  ここで、上記訴訟で対象となった「商品化権」について簡単にお話してお
 きましょう。

  「商品化権(マーチャンダイジング・ライト)」とは、漫画やテレビアニ
 メ等の主人公や登場人物などの、いわゆる「キャラクター」を利用したオモ
 チャや文具等(前記の消しゴムなどもそうですね)を製造・販売するなど、
 キャラクターを商品化することに関する権利を「商品化権」と呼んでいます。

  これは、例えば円谷プロなどキャラクターを創作した(あるいは権利を相
 続した)著作権者と、キャラクター商品の製造・販売業者との間での契約上
 の権利であり、著作権法等の法令によって規定されたものではありません。

  従って、「商品化権」をもう少し平たくいえば、「キャラクターを商品化
 しようとしている人」が、創作者と「契約」して得られる「そのキャラクタ
 ーを商品化できる権利」、もっと簡単にいえば「キャラクターグッズ屋さん
 ができる権利」です。


  これらキャラクターグッズの商品開発・販売を行うビジネスを一般にマー
 チャンダイジング・ビジネスと言います。最近ではゲームソフトの「ポケッ
 トモンスター」のキャラクターをグッズ展開(ポケモンカードなど)した成
 功例が有名ですね。

  円谷プロも例外ではなく、ウルトラマンなどのキャラクターの商品化権使
 用契約(譲渡契約ではありません)を業者と結んで、そこから支払われるロ
 イヤリティ(使用料)収入が、円谷プロの収入の柱でもあります。

  ですから、もちろん国内での権利は全て円谷プロにあるのでしょうが、最
 近のいわゆる「ウルトラマンシリーズ」が不調であるということもあり、今
 回の判決は円谷プロにとってかなりのダメージになるのでしょう。

  しかし、ウルトラマンは子供たちや我々にとっても永遠のヒーローです。
 「契約書は偽造だ」として、今もタイの裁判所で争っているとのことですが、
 早く決着をつけて、これからも地球の平和を守ってもらいたいものです。。

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