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【社会】

嫡出子 届け出認めず 性同一性障害 戸籍性変え夫に 妻が出産

2010年1月11日 朝刊

 性同一性障害で、戸籍の性別を女性から変えた兵庫県宍粟市の自営業男性(27)が、弟の精子の提供を受け非配偶者間人工授精(AID)で妻(28)との間に生まれた子どもの出生届を市役所に提出したところ「非嫡出子」として届け出るよう指示されていたことが十日、男性への取材で分かった。

 同様なケースについて法務省は、宍粟市を含む各地の自治体から六件の照会があり、非嫡出子として受理するよう指示したことを明らかにし「生物学的に親子関係がないことが明らかな場合、嫡出子として受理するわけにはいかない」(民事一課)としている。

 性同一性障害者の性別変更は、二〇〇四年に施行された特例法に基づき、要件を満たせば可能になった。

 男性は〇八年三月、戸籍の性別を変更し、翌月結婚。実弟から精子の提供を受け、妻は昨年十一月四日に男児を出産、同月五日に宍粟市役所に出生届を出した。

 しかし市の担当者が性別変更を知っていたため、嫡出子としての受理を拒否。男性は翌日、非嫡出子としての届け出を指示され、養子縁組するよう勧められた。

 神戸地方法務局龍野支局(兵庫県たつの市)からも同様の説明を受けた。

 一方、法務省によると、生まれつき男性と女性の夫婦の子は、AIDの事実が分からない限り、生物学的にも親子関係があると推定し、嫡出子として受理されている。

 男性は弁護士に相談し、嫡出子とする出生届を市に郵送した。

 不受理となれば神戸家裁龍野支部に不服申し立てする方針。「国から男と認められているのに、父としては否定された。何のための特例法なのか」と話している。

 

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