ベジタリアン・中村光の生きる道
中村 私は、オノさんみたいに熱いパッションをぶつけられる食べ物がなくて……。しいて言えば、湯葉ですかね。すいませんなんか……(笑)。
オノ 普段は、どんなものを食べてるんですか?
中村 私は原稿中は毎食、サブウェイです。
オノ そうなんですか!?
中村 はい(笑)。サブウェイの、ベジデライト(※ベジタリアン向けの野菜だけのサンド)でまかなってます。私、おんなじものを食べ続けちゃうんですよ。
——食べものに興味がないわけではないんですよね?
中村 家族が料理上手なので、私もそうなりたいっていう憧れは、あると思います。うちでは毎回絶対おいしいものが出てくるので、おいしいものが出てくるのは当たり前、みたいになってるのかもしれないですね。ただ、ベジタリアンになったときに、ごはんに期待するのはあきらめたところがあるんです。それまで好きなものが基本的に肉中心だったので。小中学生のときは、「ステーキならレアで!」みたいな感じだったんですよ(笑)。
——肉以外には、あまり好きな食べものがなかった?
中村 嫌いなものが多いんです。アスパラがだめで、セロリもだめで……。野菜があまり好きじゃないんですよ(笑)。そのへんが食べられないと、食べるもの、どんどんなくなっちゃうので、最近はがんばって食べてますけど。食べられるものなら、私も唐揚げとかジャンキーな味が食べたいですよ(笑)。
オノ じゃあ、今日行く錦糸町のお店は、チャンスですね(笑)!
中村 もう、ここぞとばかりにお肉っぽい料理ばっかり注文します。「サラダを頼みますか?」って言われても、「いいです! 肉もどき以外興味ない!」みたいな(笑)。本物のお肉は、いまはもう、口に入れてもたぶん体が受け付けないんですけど、大豆の肉もどき料理は大好きです。
——中村さんが、そうやって食の好みを曲げてまでして、肉食を断つことにしたのは、何かきっかけがあったんでしょうか?
中村 ありますけど、暗い話ですよ~。実家が山奥だから、猟とかをしていて、いろいろ見ちゃったんですよ。それからいろいろ考えて。これ以上の描写は、食事の席なので、やめたほうがいいかもです(笑)。
オノ そうだったんですね……。じゃあ、おうちで家族でごはんを食べるのも、あるときから、ひとりだけ違うメニューになったんですか?
中村 そうですね、私だけ変えてもらって。
オノ 私も、お肉をまったく食べない時期があって、そのときはひとりだけメニューが違ってました。家族で餃子とか作っても、私だけ食べられなくて、寂しい思いをしてました。
中村 ただ、最近は私の影響で、家族もみんなベジタリアンに近づいてきてて。お魚は食べるんですけど、お肉はあんまり。なのでうちでは、畑の肉で餃子を作って食べるんですけど——あ、「畑の肉」って大豆のことです。大豆餃子はおいしいですよ。
——中村さんがベジタリアンになったのは、おいくつのときだったんでしょう?
中村 タイミング的には、14歳です。
オノ じゃあもう10年くらい、お肉を食べてないんですね。
——今後も食べることはありえないですか? 例えば科学技術が発展して食用人工肉ができたりしたら?
中村 実際、培養カプセルで肉を作る研究が進んでいて、この前、第一号ができたらしいんですよ! もちろん、値段がとんでもないので、まだ全然実用化されるような話じゃないと思いますけど。でも、畑からお肉が生えるようになっても、やっぱり食べないと思います(笑)。
この対談後の打ち上げ会場に選ばれた、錦糸町のJR高架下にある、日本では数少ない「台湾素食」のレストラン《苓々菜館(りんりんさいかいん)》。台湾素食とは、国民の1割がベジタリアンだという台湾で発展した、肉・魚・乳製品などを使用しない菜食中華料理(チャイニーズベジタリアン)。元来は宗教的な理由から生まれたものだが、シンプルで質素な日本の精進料理とは正反対に、野菜や豆やきのこを駆使して、普通の中華料理の見た目や味を再現しているのが特徴。その完成度の高い“そっくり”ぶりは、一見の価値あり。
東京都墨田区錦糸4-1-9
営業時間 11:45〜14:30(L.O.14:00)/17:30〜L.O.21:30
定休日 月曜 tel.03-3625-1245