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昨年、年越し派遣村の村長を務め、今年、内閣府参与として年末年始対策に取り組んだ湯浅誠さんに意義などを聞いた。
昨年の派遣村と今年の最大の違いは、国が生活に困窮する人たちに知らん顔をしない、ということだ。昨年は労組やNPOが派遣村を開き、その中で困窮者の問題が明らかになり、国がその後にいろいろと対策を取った。いわば後ろ向きな対応だった。今年は命を支える活動を国の主導でやっている。しかし、これは特別なことではなく、本来国が果たさなければならない役割だ。
仕事を失い、住居を失い命の危機にさらされる人が出てくるのは構造的な問題がある。雇用の流動化が進み、派遣の方など労働者は各地を転々としながら働く。けれど、行政サービスは自治体単位。そのため、彼らはそこから排除されてしまう。年末年始に仕事がなくなったり、派遣切りに遭うと危険な状態になるのは、そうした構造の問題があるという認識を広げなければならない。そうでないと、大規模な派遣切りが行われた時などの特別の対策と思われてしまう。例えば、来年少し景気が良くなったらもう対策は必要ないということになりかねない。
生活に困窮する人々を、自己責任の一言で切って捨てるような考えを変えていく必要がある。そのためにも、年末年始、必要な人にこの取り組みを伝える努力をぎりぎりまで続けたい。(談)
毎日新聞 2009年12月29日 東京朝刊