激突・電力vsガス、 「脱石油」に商機
1月11日12時29分配信 産経新聞
拡大写真 |
東京電力が提案する自動車ホイールの乾燥に使われるIHH塗装乾燥装置(写真:産経新聞) |
■工場をオール電化に
二酸化炭素(CO2)排出量の削減を目指す産業界では、重油から、環境にやさしい天然ガスや電気への燃料転換が急ピッチで進んでいる。
電力、ガス業界にとっては、市場を一気に拡大できるビッグ・チャンスだ。だが、この大型需要を取り込むには、「電力、ガス、自然エネルギーを効率良く組み合わせ、CO2削減や省エネを実現できるか」(東京ガスの村木茂常務)という提案力が必要で、市場競争にはもはや、電力もガスもない状況だ。
「生産行程のオール電化は未開拓で宝の山だ」
東京電力の清水正孝社長は、先行するガス業界に、こう宣戦布告する。
同社は、生産工程管理や化学分野の技術者の中途採用を進め、人材育成を強化している。製紙や化学業界などは、国際競争力を高めるため、生産コストとCO2削減が急務。東電の木村滋副社長は、産業界のこうした厳しい要求に応えるには、「電力育ちの素人集団では太刀打ちできない。専門集団を育成し、メーカーを上回る工夫が必要になる」と言い切る。
電力業界が狙うオール電化のカギは、空気や未利用廃熱を暖房や給湯に利用する高効率の「ヒートポンプ」技術だ。蒸気を使わない加湿器を組み合わせ、省エネを追求した「蒸気レス空調システム」の提案は、粉塵(ふんじん)が大敵の半導体工場のクリーンルーム用の受注を開拓した。
業務用厨房や、これまで蒸気を使っていた乾燥工程にも、オール電化を提案する。工業炉メーカーの三建産業とは、電気を使ったアルミ溶解炉の共同開発にこぎつけ、これまでの燃焼バーナータイプに対し、大幅なCO2削減と省エネを実現した。
景気低迷の影響で、既存の大口向け電力販売は前年割れが続くが、新たに開拓した電力需要は右肩上がりだ。2004〜10年度に累計100億キロワット時を開拓する中期目標も、昨年7月に2年近く前倒しで達成した。
■LNG基地を前倒し
これに対し、東京ガスは、太陽光や風力などの自然エネルギーの普及は、費用対効果の面で時間がかかるとみており、「当面の温暖化対策の切り札として、天然ガスへの燃料転換は予想を上回るペースで進む」(鳥原光憲社長)と読む。
昨年12月には、茨城県日立市の液化天然ガス(LNG)基地の建設計画を2年前倒しし、15年度に稼働させることを決めた。加えて、貯蔵基地やパイプラインの増設なども計画し、着々と先手を打つ。
オール電化という伏兵の登場で、「対石油」の構図から、「対電力」に舵を切り、昨年11月には8年ぶりに産業界向けの大規模展示会も開いた。高効率リジェネバーナーをはじめ、省エネ機器やシステムで天然ガスの優位性をアピールした。
三浦工業との省エネボイラーの共同開発に続き、水面下で次の提携先も模索する。省エネ診断や工場、オフィスビル、街全体のエネルギー管理をワンストップで提供する総合力で、電力業界を引き離したい考えだ。
■なくなる垣根
電力とガスのエネルギーの相互乗り入れも加速している。東電は、世界貿易の13%を占めるLNG購入のスケールメリットを生かし、ガス会社の導管を使って大口ユーザー向けのガス販売を強める。東ガスも発電事業を強化し、今年3月には、4カ所目の天然ガス火力発電所、扇島パワー発電所(横浜市鶴見区)が立ち上がる。
需要側がコストや環境影響を判断材料にエネルギーを選択する時代に入り、エネルギーの業界地図は大きく塗り替わる可能性を秘めている。(上原すみ子)
【関連記事】
・ 中国、中東勢台頭で“化学反応” 大再編のビッグバン
・ 3Dテレビ パナとソニー両雄激突
・ ユニクロが「民族大移動」 年内に数百人を海外勤務に
・ 正念場の「ソニー再生」 ウォークマン再来あるか?
・ ソニーと任天堂が再び激突 FF13、マリオの“援軍”受け
最終更新:1月11日12時29分
Yahoo!ニュース関連記事
- 激突・電力vsガス、 「脱石油」に商機[photo](産経新聞) 1月11日12時29分
- 【2010業界展望】脱石油、提案力の勝負 電力・ガス、垣根なき需要争奪(フジサンケイ ビジネスアイ) 1月11日 8時15分
ソーシャルブックマークへ投稿 0件
関連トピックス
主なニュースサイトで 液化天然ガス(LNG) の記事を読む
|