TOP
    TOPページ> 自転車の歴史 > トピックス【日本の自転車税の歴史】
 自転車にもかつて税金が科せられていました。その歴史は自転車の普及の歴史であるとともに、そこから社会の変遷の背景を窺い知ることができます。
 明治政府誕生とともに租税制度の改革が行われる中、自転車も租税の対象となりました。明治時代は自転車を持つということが上流社会のステータスシンボルでしたから、税額に負担感がありませんでしたが、大正時代に入り、価格の低下とともに普及が進むと税額に対する負担感が大きくなりました。税制度もこの頃から所得税中心の近代的税制が確立されていきましたが、まだ当時の政府にとって自転車税による収入は大きなもので、戦時体制のもとで増税が続き、廃止運動も実を結びませんでした。
 戦後、税制改革がすすみ、自転車税による収入の割合がわずかとなり、逆に事務手続き等の費用の方が高くなったこともあり、昭和33年80年余の自転車税の歴史に幕が下りました。
明治4年
(1871年)
太政官布告第265号によって、東京府下で車税を徴収

今般東京府下道路修繕ニ付商売所用大小ノ車取入賃銀百分ノ三ヲ以テ右入費ヘ為差出
候間在府ノ諸官員及華士族卒タリ共馬車人力車所持致候者右定額ニ準ジ入費可差出事


東京府下において、主として人力車を対象にして車税を徴収し、道路修繕費に当てることを定めた


明治5年
(1872年)

東京府「壬申八月中府下諸税収納」に諸車税(下記を参照)3959円25銭1厘8毛とあり、その中に自轉車1輌が記載されている

日本の自転車税の最初と思われる

  ※諸車とは以下のようなものを対象にしています。
●荷車 ●小車 ●牛車 ●日除車 ●自転車 ●人力車 ●馬車




申八月中府下諸税収納 (横浜毎日9月28日号より)

明治6年
(1873年)

国税としての車税が決定 同時に付加税として府県税を徴収することが認められた。いずれも「道路、橋梁之修覆或ハ貧民救育、小学費用、邏卒入費等二宛」てることとされた。
  
実施は明治8年
自転車1台につき1年で国税1円 ・東京府税1円

【当時の価格】
銀座の地価 1坪 5円(明治5年) 
はがき 1枚 1銭
ラムネ 1本 20銭

 


明治8年
(1875年)

2月20日 大政官布告第27号
 「車税規則ヲ定ム」
      国税実施 税率1円
      6年の「僕婢馬車人力車駕籠乗馬遊船等諸税規則」が廃止


明治9年
(1876年)

東京都の諸税収納触示中に自転車6両と書いてある

同年3月22日
東京府達第52号
  「是迄諸車二賦課致來り候府税之儀国税ヨリ超過ノ分ハ其額ヲ減シ」
自転車1ヶ年 1年

明治13年
(1879年)
10月15日
大蔵郷(佐野常民)乙第35号
 

「自転車税は各府県により車税として区々の取扱いであったが、人力車同様課税せよ」→

各府県は全面的に課税されるようになった


明治20年
(1885年)
車税取扱心得発布

明治25年
(1892年)

自転車台数約10000台 国税3円 付加税もほぼ同額
【自転車の値段 200円前後】

【当時の価格】
公務員の初任給 50円(明治27年)
白米 10kg 67銭
ビール 1本 14銭

 


明治29年
(1896年)
国税を廃止し、地方税として府県で雑種税、市町村で付加税を課すことができるようになった
   

明治33年
(1900年)
10月3日
埼玉県「県税納税者届出規則」制定
 

「課税物件を所有する者は、規則所定の事項を記載した書面をもって町村長を経由、部長に届出すべし」
 
自転車に鑑札を交付
鑑札は自転車の車体の見やすい所に付着するもの
標札の提出に違背した者に対しては、5銭以上1円95銭以下の科料に処する。

  埼玉県 雑種税として自転車税を新設し、34年から課税
 

税率年1円 明治37年度税額1822,000円
        明治38年度税額4869,000円

32年度の県会で議員提出の新設案が否決。県が改めて「自転車は遊技的に使用する類もあろうが、商用にも使用されている。人力車や乗馬の如く多少職業的にという風でなくても課税しているので、それから考えても不当な課税ではなく、一税源にもなる」と、その理由を述べ可決された。


明治44年  町税 領収書
青森県黒石町 1円60銭
明治45年  県税後期 領収書
青森県黒石町   2円

大正8年
(1919年)

選挙権が「25才以上の男子で、国税3円以上の納税者」に改められ、自転車の所有者は選挙権を得る権利が生じた。
【自転車の値段 50円〜200円】

【当時の価格】
巡査の初任給 20円 
銀行の初任給 40〜50円
天丼 25銭

 


大正9年
(1920年)
自転車税廃止運動起こる
    全国の自転車台数205万台

昭和2年
(1927年)
自転車税廃止運動起こる
3月東京上野の上野自治会館で代議員350人を集めて「自転車税撤廃全国大会」開催される。
   全国の自転車台数475万台

府県の雑種税と市町村の付加税を合せて平均7〜8円
昭和3年から漸次減税が行われたが、減税額も0.3〜0.8円程度である

地方自治体の収入は年間で4000万円に達し、これに代わる財源が見つからなかった


【自転車の値段 50円〜200円】

昭和初期の府県税 (平均4円90銭)
税率5円以上 山形・福井・石川・富山・奈良・徳島・宮崎(7県)
税率4円以上 長野・埼玉・群馬・栃木・福島・宮城・青森・岩手・秋田・山梨・岐阜・静岡・三重・京都・滋賀・和歌山・岡山・島根・鳥取・香川・愛媛・佐賀・長崎・大分・熊本・鹿児島(26府県)
税率3円以上 東京・神奈川・茨城・千葉・新潟・愛知・大阪・兵庫・広島・山口・高知・福岡・沖縄・北海道(14道府県)

【当時の価格】
食パン 1斤 17銭
銀行の初任給 70円

 



昭和3年 県税後期 領収書  
岡山県阿哲郡石蟹郷村 2円10銭

昭和4年 所得申告書
課税対象として同居人数の他に、自転車や牛、馬の数も記入する欄がある

昭和4年
(1929年)
8月
安達内相が地方長官に自転車荷車税の廃減を指示。

昭和5年
(1930年)
道府県は自転車税の軽減を実施(平均10%)



昭和6年(1931年)
福岡県自転車商連合組合が出した自転車税撤廃をアピールするビラ

自転車は足と同じで、自転車の利用は特に中産以下の人たちに多い。 10円の自転車でも同率課税をするとは無謀も甚だしい。自転車税の撤廃に向かって邁進する考えである。

昭和14年
(1939年)
12月
政府が各府県に「臨時財政調整補助金」2700万円を交付
自転車税に充当される → 各府県の自転車税は引き下げられた

昭和15年
(1940年)

府県としての雑種税を廃止し、市町村のみが自転車税と荷車税の2つを徴収
     税率は市町村がそれぞれ定めたが、大体において年2円
    
 【自転車の値段 公定価格となる 85円80銭〜98円80銭】

【当時の価格】
ガソリン 1リットル 22銭
銀行の初任給 70円

 


昭和25年
(1950年)

標準税率が設定される 1台年200円
 
【自転車の値段 6000円〜15000円】

【当時の価格】
桐タンス 13000円
白米 10kg 445円
銀行の初任給 3000円

 

自転車税滞納による督促状 年200円


昭和29年
(1954年)

自転車税と荷車税を統合して、自転車荷車税となる

 標準税率年200円

【当時の価格】
新聞購読料 1ヶ月 330円
サイダー 1本 35〜42円

 


昭和31年
(1956年)

物品税新設反対運動起こる
  自転車荷車税とは別に5%の物品税を課そうという2重課税案が出る
 
【自転車の値段 11000円〜20000円】

【当時の価格】
ラーメン 1杯 40円
幼稚園の保育料 1ヶ月 2700円





自転車・チューブ・タイヤに5%の課税

1000億円の減税を行うために、減税分の財源の一部として物品税新設の案が出る

11月5日 各団体連署の「自転車に対する物品税新設反対陳情書」を関係筋に持参して陳情を行う
11月28日 機械貿易会館で関東地区業者大会を開催
政府、32年度予算案作成の際、断念する

昭和32年 自転車が課税された最後の年の領収書 
自転車2台とリヤカー1台で合計600円

昭和33年
(1958年)
自転車荷車税廃止

市町村税の総得収入の2%に過ぎず、事務手続き等の費用が多額で、本来の目的である道路破損負担金としての性格がなくなったことによる

 

                                                    (谷田貝一男)

-----------------------------------
参考文献
朝日新聞社 「値段史年表」平成8年発行


 


    TOPページ> 自転車の歴史 > トピックス【日本の自転車税の歴史】


Copyright, 1998-2005 Bicycling Popularization Association of Japan. All rights reserved.