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NIKKEI NET

日航再建の行方

更新:01月09日 07:00

(1/9)Q&A 日航株、更生法でどうなる?

 日本航空が企業再生支援機構の支援を受け、会社更生法を活用して再建を目指す方向であることが明らかになった。株主の保有株はどうなるのか。論点を整理した。

 

 Q 債務超過額が8000億円を超えるとも伝えられている。38万人を超える株主の保有株や株主権などはどうなるのか。

 A 通常なら会社更生手続きに入った場合、「株主の議決権は裁判所が債務超過と認めた時点で無効となる」(事業再生に詳しい藤原総一郎弁護士)。債務超過とは負債が多すぎて、資産を処分しても返せず、自己資本がマイナスになっている状態。これまでは債務超過の企業は会社更生法の適用を申請すると、100%減資するケースが多かった。この場合株主の持ち分はゼロになる。つまり事実上、紙くずになってしまう。

 Q 現段階では100%減資とするのか、99%減資など、持ち分をわずかに残す方式とするのかは両論あるようだが。

 A 100%減資と、99%など100%未満の減資では、株主の経済的持ち分に対する影響が全く異なる。100%減資でない場合は、保有株は“紙くず”にはならない。ただ再生に向けての増資(新株の発行)によって議決権の保有比率が薄まることはある。



 Q 減資とは具体的にどういう意味か。

 A 厳密に言うと、会社法では資本金の金額を減らすことを意味するが、これはあまり実際的な意味のある話ではなく、今回の日航の再生を巡る議論では株の無償・強制取得を指している。「99%減資」という場合、1000株持っていたら990株を会社が対価ゼロで取得する。「100%減資」なら全株を会社が取得する。

 Q 株式の上場のルールなどについてもっと詳しく知りたい。

 A 100%減資(全株の無償取得)なら上場廃止だ。そこまでいかない99%などの「減資」を選択するならば、上場が維持される可能性がある。会社更生法の場合、整理銘柄になり、その後上場廃止となるのが普通だ。ただ、東京証券取引所では(1)上場している普通株の100%「減資」をしない(2)裁判所が手続きを認可する見込みがある(3)時価総額が10億円以上――の3つの条件がそろえば、上場維持が可能というルールが設けられている。もし認められれば初のケース。更生手続きの内容や再建計画の内容によっては、通常の売買が続けられる可能性もある。



 Q 上場が維持された場合、株価はどうなるのか。

 A 更生計画の内容にかかわらず、上場が維持される場合、株価は株式市場で決まる。これまでと同様だ。ただ、減資によって“端株”(最低取引単位=日航は1000株=未満の株、正式な用語は「単元未満株」)が発生する可能性もありそうだ。1000株しか持っていない株主が99%「減資」されると、保有株は10株に減る。この場合、取引に支障が出ることも考えられる。これにどんな対応がなされるかも、今の時点では不透明だ。減増資などに絡み、株式の併合などが行われる可能性もあるとの指摘もある。

 Q 日航株には航空券の株主優待割引がある。更生法となるとどうなるのか。

 A 原則として会社が決めるので、制度の行方は分からない。2001年に法的整理となったマイカルの場合は上場廃止と同時に優待も廃止した。非上場企業で民事再生法の適用を申請した北海道国際航空(エア・ドゥ)は、100%減資で新たな優待はなくなったが、進呈済みの株主優待券の有効期限までは破綻前と同じ扱いとしていた。なお、現在の日航の株主は1000株保有で優待対象になるが、減資で保有株が減ると、1000株しか持っていなかった人は計算上、優待の対象でなくなる。


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