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■「【関西復権への道しるべ[4]】暗雲!リニアは名古屋止まり?」 2010/01/07 放送

 新春シリーズ「関西復権への道しるべ」。

 最終回は、去年暮れに着工に向け動き出した「中央リニア新幹線」について考えます。

 東京〜大阪間のリニアが開通すれば、1時間余りで2大都市を結ぶ21世最大の日本改造計画といえますが、実は関西までの乗り入れを絶望視する声があります。

 リニア着工は関西圏にどのような影響を与えるのかその未来を検証します。




 東京〜大阪間を1時間あまりで結ぶ超高速大量輸送システム・リニア新幹線。

 超伝導電磁石によって車体を浮き上がらせて進むため、500キロを越える最高時速を可能にする夢の超特急だ。

 この国家的一大プロジェクトが去年暮れ、大きく動いた。

 JR東海の社長が年末ギリギリに国土交通省へ提出した報告書。

 リニア着工の最終段階にこぎつけた瞬間だった。

 <JR東海 松本正之社長>
 「実現に向けてのステップを着実に進めていきたいと強い気持ちを新たにした」

 日本の超電導リニア。

 その研究の歴史は半世紀前に始まる。

 1970年代には無人の実験車体で時速500キロを越える世界最高時速をマークした。

 そして2003年には有人走行で世界最高速度の時速581キロを記録。

 <JR東海の担当者>
 「地上で一番速い時速581キロを達成し、それを体感したということで、今、非常に大きな感動の中にいます」

 技術面では実用化をクリアできるレベルにまで達した。

 しかし、国はリニアに莫大な国家予算を投入する余裕はなかった。

 全国の整備新幹線網の完成もままならないなか、リニアどころではなかったのだ。

 JR東海にとっては、老朽化が進む今の新幹線の全面改修や地震による災害時のバックアップなどを考えると中央リニア構想をこのまま夢物語で終わらせるわけにはいかない。

 国に頼らず、自己資本で建設するといういわば荒技のような方針を決断した。


 しかし、VOICEはこの方針が気になる。

 2025年の開業を目指す中央リニアは、東京〜名古屋間のみだからだ。

 大阪への延伸はその更に20年後の2045年という。

 <JR東海 松本正之社長>
 「一挙に大阪までできるのかというと、それは、経営(体力)を考えるとそこまでは言えない。第一段階としては名古屋までとにかくやろうと」

 <記者リポート>
 「名古屋に本社置くJR東海が出した結論が東京〜名古屋の先行開業でした。なぜ、名古屋までなのか。JR東海は一気に大阪まで引くだけの体力は無いと説明しますが、リニア計画がこのままいけば、日本第2の都市はここ中部にとって替わり、関西復権への道は完全に遠のくといわざるを得ません」

 東京〜名古屋間はわずか40分。

 中部の鼻息は荒い。

 <愛知県 神田真秋知事>
 「長年の夢が、実現に向けて大きく踏み出したなと我々も喜んでいるところでございます」

 事実、名古屋では再開発が加速している。

 駅前はターミナルビルなど複数の大型施設の建替えが相次いで決まり、中央リニア開業時には超高層ビルが林立する予定だ。

 世界最大の自動車メーカー、トヨタも中部国際空港との関係も睨み、一昨年から国内の営業と東京にあった海外部門のおよそ3,000人を名古屋にシフトさせた。

 専門家は東京と中部が、これまでとは比べ物にならない強力なパートナーになると指摘する。

 <名古屋産業大学 伊藤達雄名誉学長>
 「これはもう東京にとって最大の衛星都市が40分のところに近づいてきている。(東京は)これを利用しない手はないと思うでしょうね。リニア新幹線の開通を視野に入れた経済活動が始まりつつあると思います」


 リニアがもたらす効果とは…。

 世界初の実用線として7年前にリニアの運行を始めた中国・上海。


        
 <カメラマンリポート>
 「30キロを7分半で結びます。現在時速431キロです」

 ドイツ製、最高時速430キロのリニアは、浦東国際空港と市内の約30キロをわずか7分で結ぶ。

 リニアの開通で沿線の周辺地域にも変化が現れている。

 市内終着駅周辺。

 中国最大規模のモーターショーなどが開かれるこの国際展示場も、リニアによる空港からのアクセスが抜群で入場客は年々増加。

 去年は270万人に達した。

 さらに、リニア効果でマンションなど周辺の地価も急騰しているという。

 <周辺住民>
 「高所得のサラリーマンや技術者がこの辺りには大勢住んでいます」
 「マンションは以前の2倍に値上がりしました。これからもっと上がると思います」

 中国経済の発展に確実につながっている。

 <同済大学 謝維達教授>
 「経済を発展させるため、中国政府はリニアなど交通整備に26兆円を投じました。他の国ではあり得ません」

 一方の日本。

 中央リニア開通について大手シンクタンクの試算が出た。

 首都圏から中部圏への人の移動が11パーセント増え、国内の年間生産額も6,700億円増加するという。

 <三菱UFJリサーチ&コンサルティング 加藤義人主席研究員>
 「経済効果は50年間で10兆7,000億円くらいになるのではないかと試算しています。名古屋と東京を比較しますとオフィスコストも住宅コストも圧倒的に名古屋のほうが安い。東京と名古屋が40分で結ばれて港もある空港もあるとなると、名古屋に立地したほうがトータル的に安いというビジネススタイルは色々な場面で出てくる可能性がある」


 関西圏の経済力は今後、中部圏に追い抜かれてしまうのか?

 今回のリニア計画に自治体も強い危機感をもつ。

 <大阪市 平松邦夫市長>
 「東京〜大阪間の経済動脈を作る方がより効果的ですよというのは、誰が考えてもそうだと思います。是非、大阪市としては東京〜大阪間も同時にやっていただけるような国の方向性を示していただけるとありがたい」

 とはいえ名古屋までは開通しても、関西まで中央リニアが伸びることは不可能に近いと指摘する専門家も・・・

 <明星大学 橋山禮次郎教授>
 「JR東海が単独で(リニア建設を)やったら相当(経営)体力は消耗しますから、関西のほうに大阪まで繋ぐ新線を延長する。借金も更にしなければならない。これは(経営)体力的にも非常に難しいと思う」

 JR東海単体で関西まで結ぶことが難しい以上、平松市長が言うようにやはり国家予算を投入し、東京〜大阪間の同時開通を目指すべきではないだろうか。

 大阪府の橋下知事は、そのためにも将来的に伊丹空港を廃止するしかないと主張する。

 <大阪府 橋下徹知事>
 「東京〜大阪間は飛行機じゃなくて良い、鉄道でいこうということを早くみんなで合意を形成して、伊丹をばしっと廃港にして、早くリニアを作って下さい、という声を関西から上げたらいいと思う。うかうかしていたらアジアがどうのこうの行っている前に中部に負けちゃうんでね」

 関西にとっては空港問題と切り離せない中央リニア計画。

 20年、30年後の将来をいま描き始めなければ、関西復権の道はないといわざるをえない。




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