池谷幸雄氏が参院選　鳩山民主から出馬へ

　体操競技のソウル、バルセロナ五輪メダリストの池谷幸雄氏（３９）が、今夏の参院選で民主党からの出馬に向け、最終調整していることが９日、分かった。池谷氏はこの日、スポーツ報知の取材に「何も決めていない」と言いつつも、体操クラブ代表として活動する中で政治への興味が出てきたと吐露。選手が活躍するための環境整備や、スポーツを通じた人間教育の重要さなど、“改革”へのアツい思いを語った。

　高校生で出場したソウル五輪で脚光を浴び、現在は後進の指導に尽力する池谷氏が、政界進出の準備を進めていることが分かった。

　関係者によると、昨年、民主党から比例代表での出馬打診を受け、党関係者と面談し、意思を固めた。昨年末には、周囲に「選挙に出るかもしれない」と出馬の可能性について打ち明けていた。関係各所の調整が整えば、近日中に党公認の運びになるとみられる。

　この日、池谷氏は東京・小平市にある自身の体操クラブ「池谷幸雄体操倶楽部（ＩＧＣ）」で午前中から夜まで生徒を指導。忙しいコーチ業務の間に取材に応じた。

　「何も決まっていないので、何も言えないです」と出馬に関してはノーコメントを強調。だが、「決まっている段階ではないですが、そういう話を勧められているというのはあります」と“オファー”があったことは示唆した。

　ＩＧＣを設立して１０年目。代表として、対外的な折衝、交際を続けるうちに「政治家の方とも、お付き合いをさせていただくようになった」という。だが、実は以前から、政治の世界には強い興味を持っていた。

　「僕が携わる子供たちの教育と、スポーツ選手の育成という両方に、政治はかかわっている。その意味で、倶楽部立ち上げの頃から興味を持っていました。現状を何とかしたいという気持ちはありますが、やはり個人としてできる範囲は決まっているんですよ」。より広く改革を訴えるために、“政治家”を志すのは自然な流れだった。

　池谷氏が訴えたのは、まず教育問題だ。「スポーツを通じて、子供は人間としての基本を学べます。ただ、今は子供たちの運動能力低下が叫ばれている。机の上の読み書きだけじゃわからない。小さいうちに体を動かすのがどれだけ大事か、ということです」

　アツい思いは、スポーツ界の環境整備にも。「選手とコーチという現場の方に、プラスになる環境を作りたい。僕は日本体操協会理事なので、両方の気持ちが分かる。変えていかなきゃいけないと思います」

　熱心な口調は“マニフェスト”を語るかのよう。「信念を世の中に伝えていきたい」。近日中に立候補が正式発表されるとみられるが、池谷氏の心の内で、すでに“答え”は出ていることをうかがわせた。

　◆池谷　幸雄（いけたに・ゆきお）
  ▼生まれ　１９７０年９月２６日、大阪市出身。３９歳。
  ▼競技歴　４歳で体操を始める。大阪・清風高―日体大卒。
  ▼高校生コンビ　高３時に出場したソウル五輪で、同級生の西川大輔（現日大コーチ）とともに活躍し、脚光を浴びる。
  ▼五輪メダル　ソウル五輪は団体と種目別ゆかで銅。９２年バルセロナ五輪は団体銅、ゆか銀。
  ▼タレント活動　バルセロナ五輪後の９２年に引退。その後「５年ほど」（本人談）、スポーツキャスター、バラエティー番組出演など、タレント活動をする。現在はＩＧＣ運営の方に力を注いでおり、タレントとしては、体操普及イベントや講演中心の活動。
  ▼ＩＧＣ　夢だった自身の体操クラブを小平市に設立。都区内や横浜にもスクールを開校、ベビー（歩行児）から、小中学生を中心に生徒数は約８００人。

　◆元スポーツ選手の国会議員　近年では元スポーツ選手の政界進出の例は多い。夏冬の五輪出場選手もいるが、メダリストは小野清子氏（体操＝東京・銅）、釜本邦茂氏（サッカー＝メキシコ銅）、橋本聖子氏（スピードスケート＝アルベールビル銅）、荻原健司氏（ノルディックスキー複合＝アルベールビル、リレハンメル金）の４人。変わり種では、麻生太郎前首相は政界入り前に、事業のかたわら、クレー射撃でモントリオール五輪に出場。結果は４１位だった。