「宇宙戦艦ヤマト・復活篇」はシリーズ最新作の劇場版アニメ。1974年のTV放映から36年目の2010年は実写版上映も。
乏しい国力のなかで世界最大最強の戦艦大和を開発、生産した日本。残念なのは十分に戦場で能力を発揮しないまま、撃沈されてしまったこと。悔しい。無念だ。
ところが宇宙戦艦ヤマトとしてよみがえり、人類を救う旅に出る。日本人として私は、このテーマが長続きする理由は痛いほどよくわかる。
10年は、68年以来保持していた「米国に次ぐ世界第2位の経済大国」の地位を中国に譲る。デフレと超円高の懸念は去らない。何とかならないか、と誰もが感じているはずだ。こういうときには、日本人の持つ誇りをもう一度、思い出してみたい。外国人の見た目で再確認だ。
まず、日本の技術革新力に対する世界の評価。米『ニューズウィーク』誌09年12月9日号の世界4800人のアンケート調査で81%が日本を世界一とした。第2位の米国は73%、中国50%、ドイツ42%。
英『エコノミスト』誌09年11月7日号は、世界にとって必要不可欠の製品を作る日本企業を列挙した。
第1は日本製鋼所。全世界で建造中の原子炉は40基。日、米、露、仏など6社で請け負っているが、放射能を封じ込める大型鍛鋼圧力容器はすべて同社の北海道工場で作る。
また、シマノは全世界の自転車のギアとブレーキの60~70%のシェアだし、YKKはファスナーで世界のシェアの50%のトップ。電子技術の特殊な分野でも日本企業が圧倒的なシェアを持つ。ハードディスク駆動のモーターは75%が日本電産だし、自動車のバックミラーに組み込まれるモーターの90%はマブチモーター。液晶パネル製造のエッチング装置の80%は東京エレクトロンだ。
分野によっては、首位の日本企業を追うのも日本企業だ。信越化学工業は電子部品の回路パターンを転写する基板で50%を占めるが、続く企業はコバレントマテリアル、日本板硝子、旭硝子、東ソーと日本ばかり。経済産業省によれば、市場規模10億ドル以上で、日本企業が70%以上のシェアを占める技術セクターは30以上ある。品質と信頼性の高さから、日本の優位は揺るがない。
それに、海外でも大ヒットのユニクロ、DVDレンタルのTSUTAYA、教材のベネッセと日本独自のサービスも世界的に見て超一流だ。
仏『フィガロ』紙のアルノー記者は言う。「日本人はそろって日本経済は死に体だというが、この運命論には反対。2つの顔がある。非効率で赤字にあえぐ企業を抱える国。もう1つは最高の競争力を備え、価格と品質で他の企業を寄せ付けず、消費者につくす繁栄する企業」。
映画のセリフから。敵側の総督が感嘆して言う。「あのヤマトの戦いぶりが、全艦隊に影響を与えているんだ」。20年のデフレがたくましさを生んだ。新年に当たり、改めて自分の国を見直したい。【国際エコノミスト・今井澂】
2010年1月5日
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