平成十六年二月二十七日(金曜日)委員長の指名で、次のとおり分科員及び主査を選任した。
第一分科会(皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣及び内閣府所管並びに他の分科会の所管以外の事項)
主査 松岡 利勝君
伊吹 文明君 倉田 雅年君
井上 和雄君 池田 元久君
遠藤 乙彦君
第二分科会(総務省所管)
主査 植竹 繁雄君
尾身 幸次君 滝 実君
石田 勝之君 生方 幸夫君
細川 律夫君
第三分科会(法務省、外務省及び財務省所管)
主査 杉浦 正健君
丹羽 雄哉君 萩野 浩基君
海江田万里君 河村たかし君
石田 祝稔君
第四分科会(文部科学省所管)
主査 小杉 隆君
玉沢徳一郎君 町村 信孝君
吉良 州司君 小泉 俊明君
筒井 信隆君
第五分科会(厚生労働省所管)
主査 谷口 隆義君
大野 功統君 鈴木 俊一君
津島 雄二君 鮫島 宗明君
首藤 信彦君 照屋 寛徳君
第六分科会(農林水産省及び環境省所管)
主査 北村 直人君
大島 理森君 西川 京子君
達増 拓也君 中津川博郷君
高木 陽介君
第七分科会(経済産業省所管)
主査 中馬 弘毅君
笹川 堯君 中山 成彬君
二田 孝治君 玄葉光一郎君
永田 寿康君 鉢呂 吉雄君
第八分科会(国土交通省所管)
主査 園田 博之君
小泉 龍司君 蓮実 進君
平岡 秀夫君 藤井 裕久君
佐々木憲昭君
平成十六年三月三日(水曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 笹川 堯君
理事 大野 功統君 理事 北村 直人君
理事 杉浦 正健君 理事 園田 博之君
理事 松岡 利勝君 理事 玄葉光一郎君
理事 筒井 信隆君 理事 細川 律夫君
理事 谷口 隆義君
伊吹 文明君 植竹 繁雄君
大島 理森君 岡本 芳郎君
奥野 信亮君 加藤 勝信君
倉田 雅年君 小泉 龍司君
小杉 隆君 鈴木 俊一君
滝 実君 玉沢徳一郎君
中馬 弘毅君 津島 雄二君
中山 成彬君 長勢 甚遠君
丹羽 雄哉君 西川 京子君
西村 明宏君 萩野 浩基君
蓮実 進君 二田 孝治君
保坂 武君 町村 信孝君
三ッ矢憲生君 井上 和雄君
池田 元久君 石田 勝之君
生方 幸夫君 大出 彰君
岡本 充功君 海江田万里君
吉良 州司君 小泉 俊明君
小林 憲司君 鮫島 宗明君
首藤 信彦君 園田 康博君
達増 拓也君 中津川博郷君
中村 哲治君 仲野 博子君
永田 寿康君 計屋 圭宏君
橋本 清仁君 鉢呂 吉雄君
鳩山由紀夫君 平岡 秀夫君
藤井 裕久君 古本伸一郎君
松崎 哲久君 松原 仁君
村井 宗明君 吉田 泉君
笠 浩史君 若泉 征三君
石田 祝稔君 漆原 良夫君
遠藤 乙彦君 高木美智代君
高木 陽介君 穀田 恵二君
佐々木憲昭君 塩川 鉄也君
阿部 知子君
…………………………………
内閣総理大臣 小泉純一郎君
外務大臣 川口 順子君
財務大臣 谷垣 禎一君
厚生労働大臣 坂口 力君
国務大臣
(内閣官房長官) 福田 康夫君
国務大臣
(国家公安委員会委員長) 小野 清子君
国務大臣
(金融担当) 竹中 平蔵君
内閣官房副長官 細田 博之君
内閣府副大臣 伊藤 達也君
外務副大臣 逢沢 一郎君
財務副大臣 山本 有二君
厚生労働副大臣 森 英介君
政府参考人
(金融庁総務企画局長) 増井喜一郎君
政府参考人
(金融庁監督局長) 五味 廣文君
政府参考人
(外務省アジア大洋州局長) 薮中三十二君
政府参考人
(厚生労働省健康局長) 田中 慶司君
政府参考人
(厚生労働省年金局長) 吉武 民樹君
政府参考人
(社会保険庁次長) 小林 和弘君
参考人
(財団法人厚生年金事業振興団理事長) 吉原 健二君
参考人
(年金資金運用基金理事長) 近藤純五郎君
参考人
(元金融再生委員会事務局長) 森 昭治君
参考人
(財団法人厚生年金事業振興団常務理事) 丸田 和生君
予算委員会専門員 清土 恒雄君
―――――――――――――
委員の異動
三月一日
辞任 補欠選任
尾身 幸次君 原田 令嗣君
大島 理森君 谷 公一君
津島 雄二君 加藤 勝信君
二田 孝治君 山際大志郎君
石田 勝之君 松崎 哲久君
生方 幸夫君 田島 一成君
吉良 州司君 小宮山泰子君
鮫島 宗明君 島田 久君
中津川博郷君 橋本 清仁君
平岡 秀夫君 市村浩一郎君
藤井 裕久君 中野 譲君
佐々木憲昭君 吉井 英勝君
伊吹 文明君 岡本 芳郎君
井上 和雄君 肥田美代子君
池田 元久君 長妻 昭君
市村浩一郎君 馬淵 澄夫君
海江田万里君 室井 邦彦君
河村たかし君 西村智奈美君
小泉 俊明君 高山 智司君
首藤 信彦君 都築 譲君
達増 拓也君 計屋 圭宏君
永田 寿康君 若井 康彦君
石田 祝稔君 上田 勇君
遠藤 乙彦君 大口 善徳君
高木 陽介君 長沢 広明君
高山 智司君 若泉 征三君
都築 譲君 村井 宗明君
計屋 圭宏君 楠田 大蔵君
上田 勇君 高木美智代君
岡本 芳郎君 西村 康稔君
加藤 勝信君 大前 繁雄君
谷 公一君 江藤 拓君
丹羽 雄哉君 西銘恒三郎君
原田 令嗣君 早川 忠孝君
山際大志郎君 山下 貴史君
西村智奈美君 泉 健太君
橋本 清仁君 松野 信夫君
肥田美代子君 加藤 尚彦君
江藤 拓君 井上 信治君
西銘恒三郎君 森岡 正宏君
加藤 尚彦君 小林 憲司君
楠田 大蔵君 岸本 健君
小宮山泰子君 藤田 一枝君
田島 一成君 三日月大造君
中野 譲君 梶原 康弘君
長妻 昭君 岩國 哲人君
鉢呂 吉雄君 前田 雄吉君
馬淵 澄夫君 宇佐美 登君
村井 宗明君 内山 晃君
若井 康彦君 近藤 洋介君
若泉 征三君 大出 彰君
山下 貴史君 北川 知克君
泉 健太君 笠 浩史君
岩國 哲人君 篠原 孝君
宇佐美 登君 津村 啓介君
岸本 健君 増子 輝彦君
前田 雄吉君 辻 惠君
室井 邦彦君 古本伸一郎君
大前 繁雄君 宮下 一郎君
西村 康稔君 奥野 信亮君
早川 忠孝君 保坂 武君
小林 憲司君 須藤 浩君
近藤 洋介君 樽井 良和君
大口 善徳君 古屋 範子君
照屋 寛徳君 東門美津子君
梶原 康弘君 鈴木 克昌君
藤田 一枝君 中根 康浩君
高木美智代君 西 博義君
長沢 広明君 赤羽 一嘉君
古屋 範子君 太田 昭宏君
内山 晃君 中川 治君
大出 彰君 城井 崇君
島田 久君 吉田 泉君
赤羽 一嘉君 長沢 広明君
西 博義君 高木美智代君
三日月大造君 長安 豊君
吉田 泉君 下条 みつ君
太田 昭宏君 古屋 範子君
吉井 英勝君 佐々木憲昭君
井上 信治君 大島 理森君
奥野 信亮君 伊吹 文明君
北川 知克君 二田 孝治君
保坂 武君 尾身 幸次君
宮下 一郎君 津島 雄二君
森岡 正宏君 丹羽 雄哉君
城井 崇君 小泉 俊明君
篠原 孝君 池田 元久君
下条 みつ君 鮫島 宗明君
須藤 浩君 井上 和雄君
鈴木 克昌君 藤井 裕久君
樽井 良和君 永田 寿康君
津村 啓介君 平岡 秀夫君
辻 惠君 鉢呂 吉雄君
中川 治君 首藤 信彦君
中根 康浩君 吉良 州司君
長安 豊君 生方 幸夫君
古本伸一郎君 海江田万里君
増子 輝彦君 達増 拓也君
松崎 哲久君 石田 勝之君
松野 信夫君 中津川博郷君
笠 浩史君 河村たかし君
高木美智代君 石田 祝稔君
長沢 広明君 高木 陽介君
古屋 範子君 遠藤 乙彦君
東門美津子君 照屋 寛徳君
同月二日
辞任 補欠選任
小泉 龍司君 中山 泰秀君
津島 雄二君 鈴木 淳司君
町村 信孝君 古川 禎久君
井上 和雄君 市村浩一郎君
海江田万里君 稲見 哲男君
石田 祝稔君 赤羽 一嘉君
遠藤 乙彦君 斉藤 鉄夫君
佐々木憲昭君 赤嶺 政賢君
大島 理森君 谷川 弥一君
二田 孝治君 松島みどり君
河村たかし君 川端 達夫君
吉良 州司君 大石 尚子君
首藤 信彦君 石毛えい子君
永田 寿康君 辻 惠君
赤嶺 政賢君 塩川 鉄也君
稲見 哲男君 菊田まきこ君
小泉 俊明君 中根 康浩君
鉢呂 吉雄君 長安 豊君
平岡 秀夫君 川内 博史君
赤羽 一嘉君 赤松 正雄君
斉藤 鉄夫君 桝屋 敬悟君
塩川 鉄也君 山口 富男君
照屋 寛徳君 阿部 知子君
伊吹 文明君 伊藤信太郎君
鈴木 淳司君 菅原 一秀君
池田 元久君 村井 宗明君
石毛えい子君 小林千代美君
石田 勝之君 仲野 博子君
大石 尚子君 三井 辨雄君
川端 達夫君 樋高 剛君
鮫島 宗明君 和田 隆志君
達増 拓也君 松本 大輔君
辻 惠君 梶原 康弘君
藤井 裕久君 藤田 一枝君
赤松 正雄君 漆原 良夫君
高木 陽介君 上田 勇君
桝屋 敬悟君 富田 茂之君
山口 富男君 石井 郁子君
阿部 知子君 横光 克彦君
尾身 幸次君 城内 実君
市村浩一郎君 泉 房穂君
生方 幸夫君 荒井 聰君
中津川博郷君 黄川田 徹君
仲野 博子君 山田 正彦君
長安 豊君 小宮山泰子君
三井 辨雄君 山井 和則君
横光 克彦君 山本喜代宏君
伊藤信太郎君 江渡 聡徳君
中山 泰秀君 葉梨 康弘君
古川 禎久君 佐藤 錬君
松島みどり君 萩生田光一君
荒井 聰君 高山 智司君
泉 房穂君 西村智奈美君
梶原 康弘君 長浜 博行君
川内 博史君 伴野 豊君
黄川田 徹君 山内おさむ君
小林千代美君 岡本 充功君
小宮山泰子君 下条 みつ君
中根 康浩君 大畠 章宏君
樋高 剛君 中村 哲治君
藤田 一枝君 金田 誠一君
松本 大輔君 大谷 信盛君
村井 宗明君 中川 治君
上田 勇君 白保 台一君
漆原 良夫君 石田 祝稔君
石井 郁子君 高橋千鶴子君
江渡 聡徳君 伊吹 文明君
城内 実君 尾身 幸次君
佐藤 錬君 町村 信孝君
菅原 一秀君 津島 雄二君
谷川 弥一君 大島 理森君
葉梨 康弘君 小泉 龍司君
萩生田光一君 二田 孝治君
大谷 信盛君 達増 拓也君
大畠 章宏君 小泉 俊明君
岡本 充功君 首藤 信彦君
金田 誠一君 藤井 裕久君
菊田まきこ君 海江田万里君
下条 みつ君 鉢呂 吉雄君
高山 智司君 生方 幸夫君
中川 治君 池田 元久君
中村 哲治君 河村たかし君
長浜 博行君 永田 寿康君
西村智奈美君 井上 和雄君
伴野 豊君 平岡 秀夫君
山内おさむ君 中津川博郷君
山田 正彦君 石田 勝之君
山井 和則君 吉良 州司君
和田 隆志君 鮫島 宗明君
白保 台一君 高木 陽介君
富田 茂之君 遠藤 乙彦君
高橋千鶴子君 佐々木憲昭君
山本喜代宏君 照屋 寛徳君
同月三日
辞任 補欠選任
尾身 幸次君 奥野 信亮君
大島 理森君 岡本 芳郎君
津島 雄二君 加藤 勝信君
萩野 浩基君 西村 明宏君
蓮実 進君 長勢 甚遠君
町村 信孝君 三ッ矢憲生君
池田 元久君 松崎 哲久君
海江田万里君 小林 憲司君
河村たかし君 岡本 充功君
鮫島 宗明君 松原 仁君
藤井 裕久君 鳩山由紀夫君
高木 陽介君 漆原 良夫君
佐々木憲昭君 穀田 恵二君
照屋 寛徳君 阿部 知子君
同日
辞任 補欠選任
岡本 芳郎君 大島 理森君
奥野 信亮君 尾身 幸次君
加藤 勝信君 保坂 武君
長勢 甚遠君 蓮実 進君
西村 明宏君 萩野 浩基君
三ッ矢憲生君 町村 信孝君
岡本 充功君 橋本 清仁君
小林 憲司君 海江田万里君
鳩山由紀夫君 笠 浩史君
松崎 哲久君 仲野 博子君
松原 仁君 鮫島 宗明君
漆原 良夫君 高木美智代君
穀田 恵二君 塩川 鉄也君
阿部 知子君 照屋 寛徳君
同日
辞任 補欠選任
保坂 武君 津島 雄二君
仲野 博子君 吉田 泉君
橋本 清仁君 村井 宗明君
笠 浩史君 園田 康博君
高木美智代君 高木 陽介君
塩川 鉄也君 佐々木憲昭君
同日
辞任 補欠選任
園田 康博君 藤井 裕久君
村井 宗明君 大出 彰君
吉田 泉君 若泉 征三君
同日
辞任 補欠選任
大出 彰君 中村 哲治君
若泉 征三君 池田 元久君
同日
辞任 補欠選任
中村 哲治君 古本伸一郎君
同日
辞任 補欠選任
古本伸一郎君 計屋 圭宏君
同日
辞任 補欠選任
計屋 圭宏君 河村たかし君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
平成十六年度一般会計予算
平成十六年度特別会計予算
平成十六年度政府関係機関予算
主査からの報告聴取
――――◇―――――
○笹川委員長 これより会議を開きます。
平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算、平成十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
三案審査のため、本日、政府参考人として、金融庁総務企画局長増井喜一郎君、金融庁監督局長五味廣文君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、厚生労働省年金局長吉武民樹君及び社会保険庁次長小林和弘君、以上の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○笹川委員長 本日の午前中は、北朝鮮問題についての集中審議を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山成彬君。
○中山(成)委員 おはようございます。自由民主党の中山成彬でございます。
きょうは北朝鮮問題に関する集中審議ということで、ちょうど先週、六カ国協議が終わったばかりでございます。国民の皆さん方の関心も非常に強いものがあると思うわけでございます。私に与えられました時間は極めて短いものですから、ひとつ実のある質疑になりますように、早速質疑に入らせていただきます。
先週、北京で、北朝鮮に関する第二回六カ国協議が開催されました。そして、六月末までに次回の会議を開催することや作業部会の設置には合意がなされましたが、北朝鮮が廃棄すべき核計画の範囲やウラン濃縮計画の存在についての立場の隔たりは埋まらず、解決への道のりは平たんでないように見受けられます。
また、拉致問題についても、六者会合の中で薮中局長がこれを取り上げ、アメリカ等の支持は得られましたが、日朝二国間の協議において具体的な進展はなく、日本が求めた協議再開についても回答も得られていません。
終わってみると、北朝鮮のしたたかな外交戦術といいますか、あるいはまた、拉致問題に関して各国間の温度差だけが目立つ結果になっております。
そこでまず、日本側の団長として直接交渉に当たられた薮中局長に、今後の拉致問題に関する見通し及び感触をお聞きしたいと思います。
○薮中政府参考人 お答え申し上げます。
今委員御指摘のとおり、昨二月二十五日から二十八日まで、北京において第二回の六者会合がございました。今回、第二回の会合でございますけれども、昨年の八月に第一回の会合がございました。そのときは、核問題について各国が基本的な立場を表明するということに終わりましたけれども、ようやく開かれた今回の第二回会合におきましては、核問題については相当実質的な協議ができたということを感じております。
その中で、特に朝鮮半島の非核化、これが共通の目的であるということが確認されたということがございます。そしてまた、そうした中で、日本が特に重視しております、北朝鮮のすべての核計画、これを完全に、そして検証可能な形で、また不可逆的な形で廃棄する、このことについて、日本はアメリカ等々と協力しながらこれまで強調してまいりましたけれども、今回の会議におきまして、多くの参加国の間でその重要性の認識が深まったということは感じております。
そしてまた、前回第一回の会合から第二回に至るに当たって六カ月の月日を要しましたけれども、そういうことであってはならない。そういう思いの中で、本年の六月末までに北京で第三回会合を開催する、またそして、十分な準備をするために作業部会を行う、作業部会を開いて今後の検討を行っていくということで、いわば六者会合の制度化ができたという意味では、これが、六者会合を通じて核問題の平和的解決を図っていくという我々の基本的な考え方からいえば、一つの前進であったとは思います。
ただ、今委員御指摘のとおり、これは決して平たんな道ではございません。非常に難しい問題である。完全な廃棄といったときに、それがどういう対象であるか、また、どういう形で検証を行うのか、これは決して容易なことではございません。今後とも、日米韓の協力を強化していく、そしてまた、中国、ロシアとも協力して、一層強い外交努力をしていかなければいけないというふうに考えております。
また、拉致問題でございますけれども、私は基調発言の中で、この拉致問題の解決の重要性を訴えました。六者会議のその場で訴えたわけでございます。また、各国からも日本に対する支持というか理解は深まっておりまして、アメリカも六者会議の全体会合の場でその重要性というのは指摘してくれたわけでございます。
さらに、この問題はやはり日朝間で話し合って解決していかなければいけないということで、向こうの、北朝鮮の代表であります金桂冠副相との間で相当じっくりと時間をかけてやりとりをすることはできましたが、残念ながら、我々が主張する拉致問題の一日も早い解決、具体的には、八名の方々、御家族の一日も早い帰国と、そして十名の方々の安否不明、これについての徹底した調査ということでそれを強く求めましたが、残念ながら、先方からは積極的な回答を得るに至らなかったというのは、委員御指摘のとおりでございます。
そういう意味で、この問題を一日も早く解決するため、日朝間での政府間協議を早く再開し、そして粘り強くさらに一層の働きかけをしていかなければいけないということを痛感した次第でございます。
○中山(成)委員 薮中局長、大変厳しい交渉、本当に御苦労さまでございました。
私は、今回の六者協議を経まして、拉致問題の解決というのはかえって難しくなったような、そんな気すらしているわけでございます。これまでは、拉致問題が六カ国協議から外されないように、包括的に一緒にやってくれということを言ってきたわけですけれども、今後は逆に、拉致が核に引きずられて解決がおくれる、そういうおそれが出てきたんじゃないか。次の六カ国協議も六月中の再開は難しいとか、あるいはまた核問題の年内解決は無理だ、そういう意見も各国から出てきているわけでございます。
現在、我が国は、北朝鮮に対しまして圧力と対話の両面で臨んでいるわけでございます。先般、私どもは外為法を改正しまして、我が国独自の判断で送金あるいは貿易取引を停止することを可能にいたしました。
また、現在、自民党内の若手議員が中心になりまして、特定船舶の入港を禁止する法案を作成中でございますが、今回の六カ国協議の結果を見て、その成立を加速させようとしているわけでございます。北朝鮮との関係では、象徴的な万景峰号を初めとする北朝鮮国籍の船舶等について、何らかの規制を及ぼして圧力を加える必要があると考えたわけでございます。与党のみならず、ぜひ野党の皆さん方にも協力いただきまして、早急に成立させたいと考えております。
このように、我々立法府としては、政府に対しまして北朝鮮に圧力を加えるそういうカードを用意したところでございますが、その発動について政府内に慎重な意見もあるやに聞き及んでおります。しかし、日本にとりましては、北朝鮮の核の問題も極めて重要ではありますが、それはまだ脅威の段階であります。この拉致の問題というのは、現に日本国民の生命の安全が奪われ、日本国の主権が侵害されている事件であり、その意味では拉致問題の方がより深刻な問題であると考えるわけでございます。
官房副長官、この経済制裁法の発動についてどのようにお考えか、お聞かせください。
○細田内閣官房副長官 ただいま中山議員御質問のとおり、既に今国会において、送金を規制し、あるいは資本・サービス取引や輸出入を規制することができる外国為替及び外国貿易法の改正が成立し、既に二月二十六日から法律としては施行されておるわけでございます。そしてまた、特定船舶の入港に関する法案については、現在、政党内及び政党間の協議、議論が行われているということを承知しております。
北朝鮮をめぐる問題につきましては、六者会合のプロセスや日朝間の協議を通じまして、対話による解決を基本的には追求しておるわけでございますし、先般の協議においても、日本側の要求に対して向こうも協議の継続を表明しておるわけでございます。まだ具体的ではないではないかという委員の御指摘も事実でございます。北朝鮮がさらに事態を悪化させるような場合、あるいは事態の改善、問題の解決のために関係国と緊密に協力しなければなりませんが、必要に応じて適切な措置を講じていくという考えでございます。
○中山(成)委員 この拉致問題の解決がおくれましたら期限を区切って発動するぞ、そういう姿勢も私は大事なのではないか、このように考えておるところでございます。
ところで、私は、自民党の拉致問題対策本部の事務総長といたしまして、先月、本部長であります安倍幹事長とともに拉致被害者五人の方々を訪問してまいりました。
被害者の方々は、子供たちが進学とか就職とかあるいは結婚といった人生において一番大事な時期に差しかかっておりまして、そういう時期に子供さん方と一緒にいてあげられない、大変つらいと言っておられました。また、特に曽我ひとみさんでございますが、向こうでは家族一緒に住んでおられましたけれども、お一人で帰ってこられているわけでございます。また、御主人のジェンキンスさんのこともあるわけでございまして、大変つらいだろうな、このように拝察いたしました。
幸い、皆さん、家族の励ましとか、また、特に地元の方々が本当に自分のこととして御支援をしておられまして、本当にありがたいことだなと思った次第でございます。いろいろつらい思いを胸に抱いて本当にけなげに頑張っておられる姿を見まして、一日も早い解決を本当にしなきゃいかぬと決意を新たにした次第でございます。
また、拉致問題は、これら家族の帰国をもって解決じゃありません。まだ安否が確認されていない十名の拉致被害者に関する真相究明と、生存されている方々の帰国が早急に実現されなければなりません。
ところで、拉致問題に関する昨年来からの動きを見ておりますと、NGO関係者による子供たちのビデオ撮影許可、あるいは北京における平沢議員らとの接触、日朝ハイレベル協議に際しての田中審議官の逆指名と、北朝鮮側はさまざまなルートを使って日本側に揺さぶりをかけているように見受けられます。
北朝鮮のような独裁国家との交渉というのは非常に難しいものがあるとも考えるわけでございます。北朝鮮側につけ入られるすきを与えないように、交渉上のぶれを一切排除するとともに、交渉の窓口を一本化していかなければならないと考えるわけでございます。
政府は、これまでも日朝交渉の責任者は薮中局長であるという旨を再三にわたって強調してまいりましたが、他方、二月の日朝ハイレベル協議には田中外務審議官と薮中局長の二人が出席しておりまして、北朝鮮の報道では田中審議官が団長とされているような状態でございます。
そこで、外務大臣に確認いたします。
これからも北朝鮮は揺さぶりをかけてくると思われますけれども、今後とも日朝交渉の窓口は薮中局長に完全に一本化して、日本が一枚岩となって問題解決に当たっていくことをはっきりさせた方がいいと思うわけでございますが、外務大臣、いかがでしょうか。
○川口国務大臣 北朝鮮は、委員がおっしゃるようにいろいろ不透明なところがある国でございまして、いろいろなことを恐らく考えて、いろいろな手を打ってきているということであろうかと思います。そういった一つ一つに惑わされることなく、基本的な方針を堅持してやっていくということが重要だというのは、おっしゃるとおりだと思います。
それで、窓口ということでございますけれども、窓口というのをどういう意味でおっしゃっていらっしゃるか、はっきりしないところもありますけれども、先日来申し上げていますように、これは政府一貫としてやっていることでございます。外務省の中でこの問題の責任者、実務レベルの責任者、これは主管局長である薮中局長であるということでございます。現に薮中局長は今までいろいろな会議に出席をしているということです。
それで、他方で、国際会議、これに関する会議がありましたときにだれが出ていくかということについては、これはいろいろな可能性、先方、全体としてのレベル、その他いろいろ配慮することがございますので、それはいろいろな人が出ていくということになるだろうと思います。
いずれにしても、そういう状況状況で、政府としてあるいは外務省として最適の布陣をしいて交渉に臨みたいというふうに考えております。
○中山(成)委員 ぜひとも、北朝鮮に揺さぶられるといいますか、向こうに主導権を握られているような、そういう交渉にならないように気をつけていただきたいと思います。
ところで、我が国では、拉致問題の解決なくして国交正常化なしという基本方針に基づきまして、拉致問題の解決を最優先課題として位置づけているわけでございますが、この問題の解決のためには、関係機関が一体となって取り組むことが必要であると考えております。
この点に関し、現在、関係省庁からの意見を集約し、拉致問題に関する基本方針を策定するものとして、各省の局長から成ります拉致専門幹事会が関係閣僚会議のもとに置かれています。しかし、その事務局は内閣官房の職員が兼務しており、専任の職員がいるわけではありません。
そこで、小泉総理にお尋ねいたします。
拉致問題の早期解決のためには、政府全体として情報の集約と分析、経済制裁の発動等を含めた政策の企画立案、そして被害者及び御家族支援関係団体との連絡調整等を一括して担当する部署を新たに設置し、取り組みをより効率的、効果的に進めていく必要があると考えます。また、そういう部署をつくることが、日本も本気だぞというメッセージを北朝鮮に与えることで、北朝鮮に対する新たな圧力になるのではないかと考えるわけでございます。
このような拉致問題専担部署の設置につきまして前向きに考えていただけないか。総理大臣、よろしくお願いいたします。
○小泉内閣総理大臣 中山議員におきましては、奥様ともどもこの問題につきましては格別の御協力をいただいておりますことに対しまして、まず感謝申し上げたいと思います。
多くの国民の最大の関心事であります拉致問題につきましては、政府一体で今全力を挙げて取り組んでおります。その時々の情勢に適切に対応できるように、今後も政府一体で取り組んでいく、これが大事だと思っております。
○中山(成)委員 官房副長官、いかがお考えですか。
○細田内閣官房副長官 今、拉致問題については、各省庁横断的な組織で拉致問題専門幹事会を運営して協議しておりまして、私の前任の安倍副長官のときから安倍副長官が議長になって、かつ、警察庁、総務省、外務省、法務省、公安調査庁、文部科学省、厚生労働省、国土交通省、海上保安庁という関係省の局長クラスが全員必ずこの幹事会には出席をして情報交換をし、また必要な指示をするという体制でやってきております。
これは、政府として多岐の省にわたる問題を包括的かつ機動的に対応する上では現在のところ適当な仕組みではございますが、委員の御指摘も念頭に置きながら、今後の取り組み体制については、今後の事態の発展、その他状況の変化もあると存じますので、今後とも不断の検討を行ってまいりたいと思っております。
○中山(成)委員 これは小泉総理からも言っていただきましたが、中山参与からのたっての願いでございますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
さて、一昨年九月十七日、小泉首相のリーダーシップによりまして、日朝首脳会談が開かれ、拉致問題解決に風穴があけられたわけでございます。長い間、政府にもまた政治家にも相手にされず、むなしい、悔しい思いをして子供たちの救出に走り回ってこられた家族の方々には大変な光明でございました。しかし、その後一年半、目立った進展がないというのが実情じゃないか、こう思うわけでございます。
小泉総理、ことしは、イラク派遣ということで大変な決断をされました。また、国内におきましても、聖域なき小泉改革、いよいよ正念場でございます。そういう意味で、ことしは、本当に腹を据えて、覚悟を決めて闘う年だと考えます。北朝鮮の出方によっては、経済制裁を期限つきで発動するということも考えなければならない、このように考えております。
向こう側にボールはあるとかいう、そういうふうな言葉がよく言われますが、キャッチボールならいいんです。キャッチボールというのは、しかし、親しいチームメイト同士とかあるいは親子間でやるわけでございまして、この日朝交渉というのは、決してそんな生易しいものではない。むしろ、いつまでもボールを持っているとペナルティーが与えられるよ、それぐらいの決意でやるべき交渉ではないか、このように私は思うわけでございます。
小泉総理のこの拉致問題の早期解決にかける決意をお聞かせいただきたいと思います。
○小泉内閣総理大臣 私は、金正日氏と会談したときも、北朝鮮にとって最大の国益、利益は何か、それは国際社会の責任ある一員になることだ、こういうことを私なりの表現で繰り返しお話しいたしました。
私は、今でも北朝鮮は、何とか国際社会の責任ある一員になるべく、考えて交渉に臨んでいると思っております。日本も、拉致問題等、御家族の苦しい胸中、また、日本政府として早く日朝間の国交を正常化したいという点について望ましい進展が見られないということについては、私も苦慮しております。北朝鮮側の立場にとっても、苦しい立場にあるんだと私は思っております。日本だけが苦しい立場じゃない。
そういう中で、拉致の問題、核の問題、それぞれ交渉の担当者が北朝鮮側は違ってまいりますが、日朝間に正常な関係をもたらそう、そして国際社会と平和裏に繁栄を図ろうという気持ちにおいては、あるからこそ、私をピョンヤンに招き、そして六者会合にも応じてきているんだと思います。
時間が経過し、思うようにこの問題が総合的に解決でき得ない現在の状況において、苦しい面もありますが、今、いろいろな交渉も、究極の目的は北朝鮮の問題を平和的に解決していこうということであります。この目的に沿ってこれからもあらゆる努力を傾注していく、これが小泉内閣の責任であると思っております。
○中山(成)委員 その熱意があれば、この難しい拉致問題も必ず解決できると確信をしているところでございます。
ところで、きょうは桃の節句でございます。全国でおひな様を飾り、娘さんやお孫さんの健やかな成長を願って、家庭でそれぞれお祝いをしておられるのではないか。日本人というのは、本当に子供たちを大事に育ててきた、そういう心優しい国民であります。であるがゆえに、子供たちを暴力的に、一方的に拉致していくような、こういう非人道的なことには耐えられない、私はそう思うわけでございます。
今回、日本は、イラク復興支援ということで自衛隊を派遣しましたが、さらに五十億ドル、約五千五百億円もの拠出を決めているわけでございます。私たちは、マスコミを通じて、北朝鮮の人々がいかに苦しい生活をしているか、その窮状を知っているわけでございまして、拉致問題さえ解決できたら、直ちに国交回復の交渉に入り、北朝鮮の人々にもできるだけの支援をしたい、そう考えている国民も多いのではないでしょうか。
この本日の質疑も北朝鮮側に届くことを願っております。そして、北朝鮮の誠意ある対応を期待いたしまして、私の質疑を終わります。
ありがとうございました。
○笹川委員長 これにて中山君の質疑は終了いたしました。
次に、漆原良夫君。
○漆原委員 おはようございます。公明党の漆原良夫でございます。
二回目となった六カ国協議が二十八日に閉会をしたわけでございますけれども、北朝鮮という難しい国を相手にして、総理、また外務大臣、また薮中さん、本当に御苦労さまでございました。敬意を表したいと思います。
そこで、質問させていただきますが、今回の六カ国協議における拉致問題に対する政府の具体的な取り組みの内容とその成果について、御説明をいただきたいと思います。
○川口国務大臣 まず、二十五日に会合が始まりましたけれども、その会合の基調発言というのがございまして、その中で我が方から、北東アジアの平和と安定のためには、諸問題を包括的に解決し、北朝鮮と関係国との関係改善が図られるべきである。先般、拉致問題を含む日朝間の諸問題の解決のため、日朝間での政府間協議を開始した。この努力が早期に結果を生み出し、また六者会合を通じ、核、ミサイル等の安全保障上の問題に具体的進展が得られ、これら諸問題が早期に、かつ包括的に解決されることを期待するということを発言いたしました。
さらに、二十六日の会合及び二十八日の閉幕式におきましても、我が方から、日朝間の諸問題の包括的な解決に向けて、この包括的な解決の必要性、これにつきまして、今申し上げたのと同様の趣旨の発言をいたしました。
また、これにつきましては、米国代表のケリー国務次官補から、拉致問題につきまして明示的な言及が行われたということでございます。
この問題についての、米国はもちろんのこと、他の国の理解、これも進んできているというふうに考えております。
○漆原委員 一方、北朝鮮の態度は、五名の拉致被害者をまず北朝鮮に戻すことが先決である、こういう原則論から一歩も出ていないというのが現状であろうと思うんですね。
そして、その論拠は何かというと、五人の帰国は一時帰国なんだ、五人を北に戻すとの約束が日朝間でなされたという、これが論拠になっているわけであります。
そこで、ここで明確にしておきたいんですが、そもそもそういう日朝間の約束があったのかないのか、これを明確にしていただきたいと思います。
○川口国務大臣 これは、そういうことで調整をしていたという経緯はございましたけれども、そういうことで約束をしたということはございません。この五人の方々は日本で生まれた日本人でございまして、日本に帰ってきて日本に住むという判断があったということでございます。約束があったということではございません。
○漆原委員 調整をしていた経緯はある、約束はない。
そうすると、北朝鮮は調整の段階の話をとらえて言いがかりをつけているんだ、こういうふうに理解してよろしいんですか、大臣。
○川口国務大臣 北朝鮮の意図がどういうことかということは、ちょっとよその国のことでございますので、我々としてその判断をするという立場にはないわけでございますけれども、北朝鮮が今、拉致の問題についてどういうことを言っているかといいますと、これは六者会談が終わった後の北朝鮮の代表の発言でございますけれども、拉致問題は基本的にすべて解決した問題だということであるが、後続措置の問題は残っている、そういう言い方をいたしていまして、それは日朝平壌宣言を履行する過程おいて解決するようになる問題であると。ですから、後続の問題、これは残っているということは北朝鮮も言っているということでございます。
○漆原委員 それでは、北朝鮮の主張は、日朝の間のだれとだれとの約束なんだというふうに言っているのか。それから、その北朝鮮の主張に対して、日本政府としてはどのように反論しているのか。そこをお答えいただきたいと思います。
○川口国務大臣 約束であるということにつきまして、先般の日朝のハイレベルの協議においても、先方からは、その点について、だれとだれの約束であるということについての説明というのはなかったとのことでございます。
○漆原委員 日本政府の反証はどうなんですか。約束があったという北朝鮮の主張に対して、日本政府は約束はないというふうにおっしゃっていると思うんだけれども、どういう主張で日本政府は反論されているのか。その反論の内容をお聞きしたい。
○川口国務大臣 この点につきましては、先ほど申しましたように、我が方としては、そういうように調整をした経緯というのはあるけれども、この人たちは日本で生まれた日本人であって、日本に帰ってきて日本に住むということを、これは政府としてもそのように判断をしたわけであるということを説明しているということでございます。
○漆原委員 新聞報道によりますと、薮中局長は北朝鮮の金外務次官に次回の日朝会談の日程の確認を申し入れたところ、次官は、しかるべきルートで回答を伝える、こう述べて期日の特定を避けたというふうに報道されておるんですが、そのとおりでしょうか、いかがでしょう。
○川口国務大臣 しかるべきルートで回答するということを言ったということは事実でございます。
会合の初日の二十五日に、一時間以上、八十分間にわたる会談を行いましたことを含めまして、連日、先方の金桂冠副相との間では率直なやりとりを行いました。そして今回、拉致問題についての前進、北朝鮮側からの対応に前進はなかったわけですけれども、繰り返して先方から、引き続きこの問題に関する日朝間の話し合い、これを持つことについて同意するという旨の表明があったわけでございます。
今後の日程につきましては、今回の日朝間のやりとりの中で、我が方は政府間の協議ということを強く求めまして、向こうからは、本国に報告の上、しかるべきルートで返答が、回答が来るということになっている、そういうように言っているわけでございます。
それから、先ほどの御質問で、約束のことに関しまして、先般の日朝のハイレベルのピョンヤンでの交渉におきましても、我が方から、約束ということはないという反論はいたしております。
○漆原委員 今御説明いただいたとおり、いつもそうなんですね。ボールは常に北朝鮮が持っているんです。それで、そのボールを日本に誠実に投げ返しをしないわけですね。そのような北朝鮮のいわば人質外交、日本は断じて屈してはならぬというふうに私は思うんです。
さらに、拉致事件の被害者というのは日本人なんですね。北朝鮮は加害者なんです。したがって、この日朝会談の主導権は日本が握るべきだと思うんですが、総理、この点いかがでしょう。
○小泉内閣総理大臣 これは日本自身の問題であり、北朝鮮と日本との間の問題でもあります。だからこそ、話し合いによって平和的解決が必要だということで、交渉の経緯はいろいろあります。しかし、日本の今までの方針のとおり、平和的解決に向けてこれからも努力をしていきたいと思っております。
○漆原委員 対話と圧力と言いますけれども、私は、日本政府のこれまでの外交は、いささか対話の方に傾き過ぎているのではないかというふうに思います。
総理はよく口にされますけれども、話せばわかるという、これは幻想の場合があるんだ、話してもわからない場合があるんだというふうに総理はよくおっしゃいますが、私も、まさに本件については、話してもわからない分野に属するんだろうなというふうに思っております。
実は、二月二十六日の読売の夕刊に、北朝鮮問題についての世論調査、興味深い数字が出ております。こんな内容です。「日本人拉致問題に対する、日本政府のこれまでの対応に満足しているか」という問いに対して、七五%の人が不満だと答えております。さらに、不満の理由についてこう言っています。「北朝鮮に対して強い姿勢で臨まなかった」、こう答えている人が実に五二%いた。
この数字をどう思われますか。
○小泉内閣総理大臣 それは、世論調査の動向をあれこれ言うわけでなく、私も不満なんですよ、北朝鮮側の態度に対して。私は十分理解できます。
対話と圧力、こういうことに対しまして、日本としては、今後、必要に応じていろいろな交渉をするつもりでもありますし、対話と圧力も平和的解決に向かっての手段でありますから、適切に対応していきたいと思っております。
○漆原委員 さらに、外為法の改正、これについては、実に七八%の人が評価をしております。そして、外為法改正に続く経済制裁の第二弾として今予定されております、万景峰号を初めとする特定船舶入港禁止法案について、これについては実に八〇%の人が賛成、こう答えているわけであります。
万景峰号は、昨年一月十五日の入港以来、七カ月、新潟港への入港を中止しておりました。しかし、八月二十五日、あれほど入港を反対した新潟県民、日本国民の声を無視して運航を再開して以来、十二月までに九回も新潟港に入港しているわけですね。
私は、万景峰号が、あの白い船体に肉とか野菜とか高価なメロンを満載して帰る姿、本当に、何事もなかったかのように悠然として新潟港を出ていくわけですね。その姿を見ると、本当に涙が出るほど悔しいと思うし、怒りが込み上げてまいります。
私も、入港するなという集会に被害者の方々と参加したわけなんですが、その万景峰号の姿を見て、あの船の入港をとめたいというふうに私は思いました。これは、決して私一人の感覚じゃないと思うんですね。新潟県民すべての感覚だし、また、日本国民、多くの日本国民の感覚だろうというふうに思います。だからこそ、今予定されている特定船舶入港禁止法案に八〇%の人が賛成だというふうに答えているんだと思います。
素朴な感情だと私は思うんですが、この素朴な感情に対して、総理はどのようにお考えでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 この特定船舶入港禁止に関する法案、どうあるべきかにつきましては、自民党内におきましても、あるいは他の政党の中にも議論が行われているということを承知しております。今後、政党間の協議を経て、国会でどのような扱いになるか、これについては、政党間の協議が続いている最中でありますので、私は、政府として注視していきたい。
そして、今後北朝鮮に対してどのような対応をするかということにつきましては、六者協議あるいはこれから進められていくであろう二国間の交渉、さらには六者間における作業部会等の進展状況をよく見きわめながら、適切な対応をしていきたいと思っております。
○漆原委員 私は今、特定船舶の法案というよりも、あの万景峰号が、多分金正日あるいはその部下が、高級官僚が食べる高価な肉とか高価なメロン等をいっぱい積んでいくあの姿を見ると、我々が反対していても悠然と入ってきて悠然と出て行くあの姿を見ると、非常に無念な思いがするということを総理に申し上げたんです。この素朴な感情について、総理は御同意していただけますか。
○小泉内閣総理大臣 外交についてはできるだけ冷静に、一時の感情の赴くままに外交交渉をするというのは危険な面もありますので、目的は何か、日朝間の正常化についてどういう対応があるべきかということについては、冷静に、慎重に対応していきたいと思っております。
○漆原委員 外為法の改正は、拉致問題を断固解決すべしという国会の強い意思のあらわれとして、今国会の冒頭で議員立法として成立させたものであります。
我々は抜かずの宝刀を政府に与えた覚えはありません。拉致問題解決のために経済制裁も辞さないという政府の断固たる姿勢と決意を求めたいと思います。
○小泉内閣総理大臣 抜かずの宝刀を与えたわけではないと申されますが、武士道を持ち出すまでもなく、刀というのは人を切るためにあるのではない。各国の防衛力も、使うためにあるのではない、抑止するためにあるんだということを常に念頭に置かなきゃならないと思っております。
いわば、伝家の宝刀、抜かないで済むんだったら、抜かないにこしたことはないというふうに考えておりますので、そういう点は十分考えながら、どのような対応が適切かということで、平和的解決を目指していきたいと思っております。
○漆原委員 北朝鮮による拉致被害者としましては、政府認定の十五名のほかに、百名を超えると言われている特定失踪者が存在をしております。北朝鮮は平壌宣言で拉致の事実を認めたわけでありますが、もっと多くの日本人が拉致の対象となっていると考えるのが当然であります。実際に曽我ひとみさんは、政府が掌握しておらなかった被害者でありました。
日本政府としては、この当時の原因不明の失踪者は原則として拉致の被害者なんだという前提で取り組むべきだと私は思っております。現実はどうかというと、警察庁、外務省、防衛庁、各省庁の縦割り組織の中でばらばらに取り組んでいる。
私は、政府の中に特定失踪者対策室あるいは委員会を設置して、各省庁横断的な組織をつくって、お互いに情報を共有し合いながら政府全体としてこの調査、解決に取り組むべきだと思っておりますが、総理の御所見をお伺いしたい。
○川口国務大臣 拉致の方々につきましては、外務省は警察庁と密に連携をとりながら、この問題については対応をさせてきていただいております。
それで、今、認定をされた方々、十五名の方がいらっしゃいますけれども、その方々に限定することなく、今後新たに拉致の認定をされるという事案がある場合には、これは北朝鮮側との協議の中で取り上げていくという考えでおりまして、この点については、先般のピョンヤンにおけるハイレベルの会合におきましても北朝鮮に伝えてございます。
○小野国務大臣 政府として全力で取り組むべきと考えるが警察の方はどうかという御質問もあわせてお答えさせていただきます。
先生おっしゃいましたように、特定失踪者問題調査会が、四百名近い失踪者につきまして北朝鮮による拉致の可能性を完全に排除できないという形の中で、その一部の方につきましては、拉致の疑いありということで、そのリストを作成しておりまして、警察の方で特定失踪者問題調査会から当該リストをちょうだいしております。
そういうことにつきまして、警察におきましては、一連の捜査の結果、北朝鮮によります日本人拉致容疑事案というのは、現時点で、御案内のとおり、十件十五名ということになってはおりますけれども、それ以外にも北朝鮮によります拉致の可能性を排除できない事案があると見まして、参考情報として活用しながら、引き続き鋭意調査や捜査を行っております。
具体的に申し上げますと、第一には、家族その他の関係者からの事情聴取をまずしているという点。それから二点に関しましては、付近の聞き込み等裏づけ調査をさせていただいている点。それから三点は、国内外の関係機関との緊密な情報交換をしている。
そういうことにおきまして情報の収集と証拠の積み上げというものに努めておりまして、今後とも、各関係機関と十分に連絡をとりながら、全容解明のための最大限の努力をさせていただきたいと思っております。
○漆原委員 最後に、中国は、今回、六カ国協議の開催に当たって、半年間に六十回も朝鮮と米国を往来したというふうに言われております。総理にはこのような中国の努力に対して最大限の配慮を持って臨んでいただけるようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○笹川委員長 これにて漆原君の質疑は終了いたしました。
次に、鳩山由紀夫君。
○鳩山(由)委員 久しぶりに、総理に対して質問を申し上げます。今回は、民主党の拉致問題対策本部長として、主として拉致問題に対して総理を中心に質問を申し上げます。
まず最初に、昨日、イラク・バグダッドを中心に大変なテロがまた起きて百人を超える方々が亡くなりましたことに、私どもも一同、心から冥福を祈りたいと思います。
私どもは、この件に関して申し上げれば、イラクに対する自衛隊の派遣は反対であります。しかしながら、派遣された自衛官、ぜひ無事に任務を果たしてできるだけ早く戻ってこい、そんな思いでおりますことをまず申し上げておきます。
さて、冒頭、基本的なことをお伺いしたいのでありますが、総理は、国家というものを因数分解いたしますと、国民と領土とそして財産、基本的にはそう分かれると思いますが、どれを最も重視して、日々激務で努力をされておられると思いますが、一番気にしておられるものはどちらでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 国民あっての国家でありますので、それぞれの国民の生命、財産、基本的人権、このことについて国家として一番重視すべきだと思っております。
○鳩山(由)委員 当然そうあっていただきたいと思います。
であるならば、いわゆる侵略行為、領土に対してそれを侵略する、そのことに対しては大変強い、当然のことながら、自衛の思いで行動しなければならないことは言うまでもありませんが、今、総理は、領土やあるいは財産よりもまず国民の生命が一番大事だと。
拉致という問題を考えれば、まさに国民に対する侵略行為ではないか、そのぐらいの思いでありますが、そのぐらいの強い認識で拉致問題に今日まで当たってこられましたでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 拉致というのは国民の生命財産を侵害する許されざる行為でありますので、この問題、明らかになっている現状におきましては、国を挙げて取り組むべき問題だと認識しております。
○鳩山(由)委員 そのように今日まで行動してこられたかどうかということをこれから検証していかなければならぬと思いますが、まず、蓮池さんの御兄弟であります蓮池透さんが、「こんな冷たい国はないと思います。」という発言をされた。当然それは北朝鮮のことだと思っておりましたら、そうではなくて、日本政府のことを、「こんな冷たい国はないと思います。」と発言されておられます。
そのことをどう感じられますか。本当に拉致問題に対して体を張ってこの国が解決に向けて努力をしてこられたのかどうか、いま一度お答えを願いたい。
○小泉内閣総理大臣 御家族が拉致されたということを考えますと、そのような心情を持たれるのは私は当然だと思っておりますし、政府としても、そのような心情を大切にしてこの問題の解決に全力を挙げていきたいと思っております。
○鳩山(由)委員 それでは、つい先日行われました六カ国協議、特に拉致を中心にお話を伺いたいと思いますが、本当に、今お話あったように、一刻も早い解決に向けて努力をしてこられたのかどうか、あるいは、これからもいかれるつもりなのかということをお聞きしたいと思っています。
私は、いろいろな六カ国協議に対する評価はあると思いますが、やはり六カ国協議は成功に終わったとは到底思えない、基本的には失敗をしたのではないか、そう思わなければならない、そのぐらいの自省の心を持つべきだと思っていますが、なぜこのように六カ国協議がうまくいかなかったのか。
一言だけ、それでは核開発問題に関して必ずしも十分な成果を上げられなかったのはなぜかというところだけ、お伺いをしたいと思います。
○川口国務大臣 私どもは、先般の六者会談の評価につきましては、これは一歩前進であったというふうに考えております。
なぜ一歩前進かということでありますけれども、まず、朝鮮半島の非核化が、これが共通の目標であるということがきちんと確認をされたということであります。
それから、我が国として重視をしています完全な検証可能な不可逆的な核の廃棄、これにつきまして、多くの参加者の間で認識がされているということについて、これは一歩前進であったと思います。
それからさらに、今後の進め方として、調整されたステップという形で、これが合意されたということも評価をしていいことだと考えております。
さらに、別な角度から、この六者会談の枠組みが制度化された。それは作業部会をつくるということの合意があるわけですし、次の会合について、六月の下旬までにということで決まったということでございます。
そういう点からいきまして、一歩前進であると思っています。
もちろん、まだまだ解決されるべき問題というのは残っているわけでございまして、道は厳しいわけでございます。なぜそういう問題が残っているかということで申し上げれば、それは、この問題自体がそもそも大変に難しい問題であり、そして、北朝鮮が御存じのような国家であるということであると思います。
○鳩山(由)委員 今、特に、核の全面的な廃棄、検証可能で、しかも、いわゆるCVIDという方式でしょうか、それを多くの国が認めたということでありますが、すべての国が認めなければ何も意味がない話でありまして、特に北朝鮮がこのことに対して十分に理解をしなければ協議は成立したという話には到底なり得ない話であります。
私はやはり、北朝鮮の思惑、すなわち、この六者協議は継続なんだ、作業部会のようなものをつくってどんどんずるずると先送りしてしまえばいいのだという話に北朝鮮は持ち込もうとした、結果として、北朝鮮の思惑どおり、話は、協議は成立をしないで先送りになったのではないかと。
私は、このような協議というものを、それはいつまでも続けてもいいという話では到底なくて、やはり我々の持たなければならないものは、いつまでに何をやるかというしっかりとした期限を区切らなければ、北朝鮮の核をやめさせるというのは大変厳しい話であるだけに、それをやらせるためには、そのぐらいの強い区切りというものを相手に認めさせて、そして、その間に交渉するということをやらなければ、これからいつまでたっても似たようなことになるんじゃないか。
まして、私はあえてここで拉致問題の話を申し上げたいと思いますが、拉致に関しては、人の命の問題でありますだけに、核の話以上に期限というものを区切らなければならない。その期限というものを区切って交渉するのがまさに交渉術だと思うのでありますが、その点から考えて、今回の六カ国協議はいかがだったんでしょうか。
○川口国務大臣 時が重要である、核の問題もそうですし、それから、特に拉致の問題については、家族の方、残っていらっしゃる家族、そして関係者の方、それぞれ、一秒一秒、毎日、時を刻んでいるわけですから、その重要性については私も全くそう思っております。
その上で、交渉するときに、目標の日程を設定するということに合意をしてそれから始めるのがいいかどうか。これはいろいろな交渉の仕方があると思います。我々はみんな、一日も早くというふうに思っているわけでございまして、時の要素というのは十分に認識して交渉をやっているわけです。明示的にそういうことをやる交渉の方法、それは、時によってはそういう交渉もありますけれども、この交渉については、やはり対話そして圧力という基本方針のもとに立って、忍耐を持って、そして、一日も早く、確固とした態度でやっていくということが重要であるというふうに考えております。
○鳩山(由)委員 私はやはり、今のような判断でおられると、いつまでたってもこの拉致問題は解決しない、そう思わざるを得ないのであります。
申し上げれば、今回の六カ国協議においても、一番大事なことは、北朝鮮にとってみて、今回の協議はしめしめだ、協議は継続をした、日程は決まらなかった、そしてその間は協議をするんだから、日本の外務省よ、あるいは日本の世論よ、国民の皆さん、経済制裁は今やったら大変なことになりますよと、経済制裁をさせないために時間延ばしをしようとしているとしか思えない。
だから、彼らの思惑にはまってしまっているとしか私には思えないんですが、いま一度御答弁願います。
○川口国務大臣 交渉のときに時がどちらの味方かという議論がございます。今、鳩山委員がおっしゃっていらっしゃるのは、時間がたつということは北朝鮮に対して一方的に有利であるという前提に立って御質問をしていらっしゃるというふうに受け取らせていただいておりますけれども、現実問題としては、そうではない。北朝鮮に対しても、時の要素というのは非常に重要な要素であるということであると思っております。そういった、両方が時の要素が重要である、また、それを交渉にうまく使いながら交渉していっているということであります。
我々は、日朝平壌宣言にのっとって諸問題を解決しなければ国交正常化をしない、国交正常化をしなければ経済協力をしない、すべての問題を包括的に解決するということを言っているわけでございまして、北朝鮮にとっても時は重要であるという認識を持っているということであると私どもは考えております。
○鳩山(由)委員 もしそうであるならば、例えば、北朝鮮も時を大事にしたい、急いでこの問題も解決したいというのならば、あすにでもまた交渉すればいいじゃないですか。こちら側が交渉を要求しても、それをいつまでにやるという日程さえ相手は決めてこないということは、やはり日程の問題、時間の問題を相手は巧みに利用している、すなわち、協議をしている最中なんだから、経済制裁、厳しいカードを切ってほしくない、日本政府にも自重を求めて、多分、今これをやるとすれば、カードを切るとすると大変なことになるぞというおどしをかけるために時を使っているとしか私には思えない。
横田早紀江さんの言葉、外務委員会の小委員会で発言されております。
金正日のもとに拉致が実行されてから三十年近く、何も具体的な救出活動に出ようとしない政府にかわって、私たち被害者家族が活動の前面に立って懸命に活動してまいりました。しかし、私たちも同じように年をとり、孫や息子、娘の顔を見ることもなく他界されていかれる方々の悲しい事実に直面しています。もう時間がないのです。
こう切実に委員会でお話をされたんです。
そして、結論として、どのような手段を用いれば一番早く、早くですよ、奪還することができるのか、そのことだけを追求してもらいたい、こうまでお話をされている。その中で、善意を持って臨めば拉致問題の進展につながるのではないかとかすかな期待を抱いておりましたけれども、実際にそれが何ら意味もないものであったということを学びましたと。
横田めぐみさんのお母さんがこのような思いでおられるということを、ぜひ政府の皆さん、まじめにですよ、答弁でうまく逃げればいいやという話じゃなくて、まじめにとらえていただいて、そして、本当にこの横田早紀江さんの気持ちにこたえるような政府になってもらいたい、心からそのことをお願いします。
いま一つ申し上げれば、私の祖父の鳩山一郎が一九五六年に訪ソをいたしました。そのときにはもう、妻の薫の言葉によれば、体を壊しておりましたから、モスクワに行って帰ってこれる確率は半分だというふうに言われたそうであります。ただ、そのときに北方領土問題が大変話題になっておりましたから、みんな、政府や国民の皆さんの関心も北方領土に集中していたと思います。
ただ、若い友愛青年同志会のメンバーに対して、鳩山一郎はこう言いました。
領土問題は確かに重要だ。しかし、私は、シベリアに抑留されているすべての日本人の人たちに一刻も早く本土日本の、祖国の土を踏ませてやりたいんだ。そのためにモスクワに行くんだ。なぜなら、わかるだろう。領土というものはいつまでも待ってくれるじゃないか。人の命はあすをも知れないんだよ。どっちが先に急がなきゃならないことか、考えればわかるだろう。
祖父の友愛精神の原点、私はそこにあったのではないか、そのように思うわけであります。
そうであるならば、ぜひ小泉首相に、一昨年の九月十七日に訪朝されましたが、この問題も全精力を傾けて、一刻も早く解決をするんだ、ピョンヤンに行っていただいて、この問題が解決するまでおれは粘るぞというぐらいの粘り腰で交渉していただきたいと思いますが、いかがですか。
○小泉内閣総理大臣 シベリアの抑留の問題をお話しされましたけれども、確かに、戦争が終わっているにもかかわらず何年間も抑留された方々の心境を、当時の、おじい様であります鳩山一郎首相、よく勘案されましてそのような決断をされたんだと思います。
我々も、現在の拉致された御家族の心情、一日も早くこの問題を解決して、早く家族が再会されるよう、政府に大きな期待を寄せているということをひしひしと私も痛感しております。なかなか思うような進展が見られないということについて、御家族の心中いかばかりかと察しておりますし、私どもも、そのような期待にいまだこたえることができないということに対しては、大変残念に思っております。
しかし、この問題、一日も早く解決できるように、今までも努力してきたつもりでありますし、これからも全力を挙げていきたいと思っております。
○鳩山(由)委員 総理、今申し上げたのは、一日も早く訪朝していただいて、おぜん立てができたから行くとかいう話ではなくて、まだおぜん立てが整っていないかもしれません。いろいろ難しいことがあることもよく理解しています。しかし、意思として、すぐにでも訪朝して、問題の解決、先頭切ってやりたい、そういう意思を国民に伝えていただけませんか。
○小泉内閣総理大臣 私が訪朝することによって解決するなら、今でも行きます。状況を見ながら、解決のために何が必要かということを考えながら判断したいと思っております。
○鳩山(由)委員 だから、おぜん立てができてから、解決ができるなら行くというのではなくて、解決できるかどうかわからぬ、しかし、こういったまさに国民に対する侵略行為を一日も早くやめさせて、解決をさせるために自分の命を賭してもいいんだ、そのぐらいの迫力を持って臨んでいただきたいということをあえて申し上げた。
もし小泉首相がそのような判断をなさらないんなら、私が、今、民主党の拉致問題対策本部長という役目を仰せつかっております。鳩山に、小泉首相から、あんた、行けと、その役を仰せつけるから行けというぐらいに言っていただけませんか。
○小泉内閣総理大臣 それは、何が必要かということは政府で判断いたします。
○鳩山(由)委員 国民の皆さんにとって、この問題の大きさというものをぜひ理解をしていただきたいと思いましたから、あえて何度もこのことをお伺いしたのであります。
ぜひ総理にはその迫力を持って臨んでいただきたいし、私も、こういう問題には自民党も民主党もありません、与党も野党もありません、国民は一つですから、解決に向けて私も全精力を挙げて皆さんと一緒に頑張っていきたいと思っていますから、その思いを一つにして行動していこうじゃありませんか。
私がこれから申し上げたいことは、その具体的なツールに関して、カードに関して申し上げたいと思っています。
これも、蓮池さんが委員会で話されたことでありますが、今、私たちは、おかげさまで議会の皆さん方が頑張られて外為法の改正が成立をした、これはよかったと思います、カードを一枚持ったと。でも、そのカードが一枚しかないと、このカードを使ってしまったらもうカードがなくなるということがわかってしまっていますから、ならばカードは使わないだろうな、カードを使うことに慎重にならざるを得ないだろうなと。ならば、私たちはやはり、交渉するに当たっては、カードは二枚以上、常に持っていて、その一枚というものを使うぞ、いつまでに期限を切って、拉致問題が全然進展しなければこのカードは切りますよと本気で切る覚悟を持って臨まなければ、一枚のカードも切れずに、結果として、国民の皆さんが期待している拉致問題の解決というものはいつまでたっても実現しない、そうなると思います。
その意味で、私たちも、民主党も特定船舶入港禁止の法案というものを用意しております。
このような二枚カードを持つ、あるいはそれ以上カードを持って交渉に臨むという方針に関して、総理はどのようにお考えでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 外為法の改正のみならず、特定船舶入港に関する法案につきましても、現在、自民党内におきましても議論しておりますし、民主党の中におきましても議論されているということを聞いております。
これは、今、鳩山議員が言われましたように、北朝鮮に対応する際には与党も野党もないんだというお話であります。何が必要かということで、国会の対応がどうあるべきか、また、法案がどうあるべきかということについては、今、政府としても注目しておりますので、よくその状況を見守って、どのような対策が一番効果的かということを見きわめながら判断していきたいと思っております。
○鳩山(由)委員 その民主党案でありますが、民主党が与党案と違うところを三点だけ申し上げれば、民主党の案としては、特定の船だけではなく、飛行機もその中に入れるということが一点あります。それから、これは大変特殊な状況のもとで起きている事案であるということで、時限立法にしたいと考えています。もう一つは、これは自民党案、与党案は特定の国に対して船舶の入港を禁止するという話でありますが、私どもは、国ではなくて、特定の船や飛行機あるいは港というものを指定して、そこに対して制限やら禁止をするという柔軟性を持った法案を考えております。
以上三点の違いに関して、総理として、あるいはお答えできる方として、どちらの方がより柔軟で、しかも実効性がありそうだというふうにお考えになりますか。
○川口国務大臣 今、委員がおっしゃられましたように、いろいろな党でこのカードについて御検討をいただいていると承知をいたしております。立法府で、そして党で、まず今、党で御議論をいただいている段階ということでございます。政府として、この点についてコメントを今の時点で申し上げるということは差し控えさせていただきたいと思います。
○鳩山(由)委員 どういう内容のものがふさわしいかという政府のお考えもあろうかと思いますが、どうもいつも、こういうものはできてくるまでお話しいただけない、極めて残念であります。
ちょっと川口外務大臣に、それでは戻ってお伺いしますけれども、このカードを持つということの有効性は御理解いただいていると思いますが、しかし、カードは持っても使う気持ちはないとどこかで発言されたやに伺っておりますが、それは事実でしょうか。
○川口国務大臣 今おっしゃっているカード、これは外為法のことをおっしゃっていらっしゃるのかと思いますけれども、これについての政府の立場というのは、北朝鮮が事情を悪化するということがあった場合には、その時点、その状況をよく判断して、また、その立法の趣旨あるいは外交上の観点、そういったことを踏まえまして適切に判断をしたいということでございます。
○鳩山(由)委員 発言はされたのですか、されてないのですかと。過去においてそういう発言があったかどうかだけ伺います。
○川口国務大臣 今申し上げたのが、私がいつも言っていることでございます。したがいまして、委員がおっしゃった、使うつもりはないというようなことを言ったということはございません。
○鳩山(由)委員 それでは新聞報道が誤りだったということだと思いますが、どうも各紙でそのような言葉が載っているということは、本当はおっしゃったのではないかと。ただ、そうであったとしても、今、川口大臣がある意味で訂正をされた、使うつもりはないということはない、将来、必要に応じてそれを発動する、その心構えはできているというふうに考えてよろしいですね。
○川口国務大臣 本人がそういうことを言ったことはないと言っているわけですから、言ったに違いないとおっしゃられるというのは、非常に私としては解せないということであります。本人よりもマスコミの方をお信じになっていらっしゃるのかということであります。
いずれにしても、外交当局、外交の立場にある人間としてどのカードを、これがそのカードであるわけですから、それを使わないということを言うというのは、交渉をする立場の人間としてはそういうことは言わないということであります。
どういう状況で使うか、これは先ほど申しましたとおりでございます。
今使うつもりがあるかという御質問でしたら、これは、今、対話をしている段階、次の会合も、日程もいつまでにということで決まっているわけですから、今、カードを使うつもりはないということでございます。
○鳩山(由)委員 川口大臣が、最初に、カードを持ったけれども使わないというふうに報道されているけれども、それは事実かどうかということをお尋ねしたときに、直接的な返答をなさらなかったものですから、それならばおっしゃったのかなというふうに疑ってしまうのが私はむしろ常識ではないかと。
本人が言うこととマスコミの報道とどっちが正確ですかというふうに言われましたが、しばしば本人よりもマスコミの方が正しいこともあるわけでありますから、よくそのところは、今、発言がないというふうに最初にお答えしなかったというゆえをもって、私はやはり疑いが残るなと。
ただ、こんな問題を言った言わないなんという話で時間を浪費しても全くせん方ない話でありますから、この外為法改正に関して、小泉首相も現時点においては使うおつもりがないとすれば、どういう時点になったら、そのときになったら考えるではなくて、どういう状況になったら使うことを考えるのですか。
○小泉内閣総理大臣 どういう状況になったら使うかというのは、言わないことが一番いいんですよ。悪化させたような状況には適時適切に、適切な判断をするということで、今からあれこれ、こういう想定なら使います、こういう想定なら使いません、そういうことを言わないのが外交の鉄則であります。
○鳩山(由)委員 そういう発言をするから、いつまでたっても使わないのではないかというふうに思わざるを得ないのでありまして、私はむしろ、拉致問題の進展の度合いというのはかなり明確に見えてくるわけです。どういうときに進展をしたかと言えるか、あるいはどういうときに本当に解決したと言えるか。その方向に向けて動かしていかなきゃいかぬわけでしょう。
総理が訪朝されてから一年半、ほとんど事態は膠着したまま何も動いていないわけでありますから、これがこのまま同じ状態でいて、それでも今は協議中だから使わないんだという発想にしか今聞こえてこないのです。だからこそ、カードを持たれた、そのカードを一枚だけではなく二枚しっかりと持っていただいて、そのうちの一枚を、交渉が長引いて何もうまくいかないという判断をされたときには使うのだと、ここで明言していただいたって構わないじゃありませんか。何も私は無理なことを申し上げているつもりはありません。
あえて、さらに、この六カ国協議がうまくいかなかった原因として、二つだけ申し上げたいと思います。それは一つは、中国も拉致問題に対して非常に消極的であったということ、そして、韓国も同じように拉致問題に対して前向きでなかった、この二つが挙げられると思います。残念ながら、それは事実でしょう。
そのまさに議長役の中国に対して、総理は今、訪中すらできないような関係になってしまわれていることは本当に国益を損なって残念でなりませんが、あえてきょうはこのことは、当然他の委員が申し上げることでありますから、ここでこのことに深入りすることはやめます。
むしろ一点だけ申し上げたいのは、北朝鮮から命からがら抜け出してこようと思っておられる人たち、いわゆる脱北者と言いますが、脱北者はたくさんおられます。しかし、中国が脱北者に対して極めて非協力的、あるいはこの問題に対しては北朝鮮と協力的でありますだけに、中国を通って満州に行くか、あるいは中国を通ってベトナムに行くか、そういう方法しか今ないんです。
この問題に関して、一刻も早く、例えば拉致問題と脱北者の問題というのは密接に絡んでいる問題であるだけに、この脱北者の問題に対して、中国に対してきちっと物を言うという決意を示していただきたい。いかがですか。
○川口国務大臣 脱北者の問題でございますけれども、外務省といたしましては、これは邦人保護という立場から、従来から、これについては熱心に取り組んできております。それから、邦人保護と並んで、在日の方でいらした方で脱北をしていらした方についても、同じような考え方で取り組んできているわけでございます。
どのように取り組んできているかということにつきましては、これは、外交上のいろいろな問題がありますので、この場で、申しわけありませんけれども、中身を明かすわけにはいかない点、多々ございますけれども、そういったことについては、中国の政府とも話をしながらこの問題について取り組んできているということを申し上げたいというふうに思います。
なお、中国にとって、脱北者の方々というのは不法入国者であるということでございます。それは、中国のそういった立場があるということは我々としても踏まえた上で、邦人保護それから在日の方の保護に取り組んでいるということでございます。
○鳩山(由)委員 最後にお話しされました、脱北者は不法入国者であるという判断を尊重されるから、この問題はいつまでたってもらちが明かないという話になるんです。やはり、命からがら、このままでは北朝鮮にいて命まで失うかもしれないという危機感のもとで、もう死ぬ思いで国を脱出してきた人たち、それを単に不法入国者だという扱いをする中国をそのまま理解してしまうから問題なんじゃないんですか。
やはりこれは世界の中の大変大きな人権問題だと私は思います。そうであれば、この問題に対してもっと、単に不法入国者だから仕方ないじゃないですかというふうに片づけないで、この脱北者の問題をどう扱うかによって、まさに、金正日体制を維持するのか、終えんに向かわせていくのか、大変大きなテーマであるだけに、中国に対して、日本が拉致問題を本気で解決したいと願うのであるならば、もっと前向きに活動してもらいたい、そのことをお願いしているんです。いかがですか。
○川口国務大臣 我が国としては、この問題につきまして、UNHCRと話をしております。また、UNHCRもそういう観点から中国とも話をしているということもございます。
この問題は、現実を踏まえ、現実的に、そして人権問題の重要性についてはきちんとそれを認識し、踏まえた上で、現実的に解決を志向していくということが重要だと思っております。
○鳩山(由)委員 中国の為政者と日本の為政者がダイレクトで十分心を開いて議論ができないところに、こういう大変重要な問題がネックになっているというふうに思わざるを得ません。中国に関してもしかり、そして、私がこれから申し上げたい韓国に関しても全く同じように、拉致問題、韓国政府、私も先般、ソウルに参りまして、統一部の方と話をいたしましたが、非常に拉致問題に関しては冷たかった。包容政策をやっておるんだから、今、事を荒立てないでほしいというような一点張りでありました。多分、その雰囲気が六カ国協議の中でもあったんだと思います。
私は、そんな中で、韓国が、特に核の問題に関して、北朝鮮が核を将来的に全面的に放棄するという前提のもとならば、核凍結というものに対してまず北朝鮮が受け入れるならばエネルギー支援を行おうという提案をした。その提案に対して、中国とロシアが、いいではないか、我々も協力すると。そして、日本までが理解と支持をしたという話を伺ったんですが、それは本当ですか、こんなことがあったんですか、一次的にでありますが。
○川口国務大臣 これは、六者会談の席上におきまして、韓国から、いろいろな前提を置いた上で、そういった前提が満たされるのであれば、その先そういうことをやるということを考える、エネルギー支援をするということを考えるという発言があったということは事実であります。
その前提といいますのは、これは、我々はCVIDと言っておりますけれども、完全で検証可能な不可逆的な、その核の開発について凍結ということを第一段階として北朝鮮が言っているわけでございますけれども、凍結が一次的である、すなわち、その先につながる検証がきちんとある、北朝鮮から情報の開示がきちんとある、そういった条件が満たされる、それについて北朝鮮側がきちんと合意する、そういう厳しい条件のもとでそういうことをやる、エネルギーの支援をするということを考えてもいいということを提案したということでございます。
○鳩山(由)委員 伺いたいのは、それに日本が理解をし支持をするというふうに表明したのかどうかということであります。イエスかノーかで結構です。
○川口国務大臣 そういう前提が満たされる上でほかの国がエネルギー支援をするということであれば、我が国としてはそれに反対しないということでございます。
ただし、我が国として、今、みずからエネルギーの支援をするということはないということも言っているわけでございます。
○鳩山(由)委員 確かに前提がいろいろあったようで、その前提がのめないから北朝鮮が断ってくれてよかったなと思っておるわけでありますが、このような核凍結というところで妥協してしまってエネルギー支援をしてしまえば、特に拉致問題というものを抱えている日本にとって、人道支援の意味での食糧支援をはるかに超えたエネルギー支援まで行ってしまおうという話になってしまえば、拉致問題の解決がどこかへ飛んでいってしまうことは明らかじゃありませんか。
こういうものに反対をしないというふうにおっしゃいましたが、本来ならば反対をしていただいて、これでは生ぬるい、こんなものじゃだめだというようなところまで詰めるべきではなかったかと、あえてここで申し上げておきます。
私はやはり、韓国に対して日本も本来ならば言うべきことが十分に言えない、その日韓関係をもっといい方向に持っていかないとこれも致命的になるなと非常に心配でならないのでありまして、そこで、先般、私は、中川正春議員、拉致問題対策本部の事務総長をやっていただいておりますが、中川議員とともに韓国に参りまして、韓国にも拉致被害者がおられる、韓国には政府が認めているだけで四百八十六名といういわゆる拉北者、北に拉致されておられる方々がいる、そのうちの三名が命からがら脱出に成功した、その三名の方にお会いをして、ぜひ日本の外務委員会で話をしてもらいたい、あるいは、日本人に対して、この韓国の拉致被害の問題とまた日本の拉致被害の問題を共通のテーマとしてとらえて大きな日韓の協力事業として進めてもらえるようにと、そんな話をしてまいりました。
おかげさまで、昨日、その三名の方が、外務委員会の小委員会でありましたが、話を参考人としてしていただくことができたことは何よりだったと思います。
このような形で、正攻法でなかなか扉が開かないというときに、この韓国と日本の拉致被害者の共通な問題として拉致の解決というものを扱っていこう、そのためには日韓協力しようじゃないかという呼びかけをぜひ総理になさっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 私は、盧武鉉大統領と会談した際にも、拉致の問題、日本の立場をよく説明いたしました。しかし、韓国におきましては韓国の事情があるようです。日本よりも多い拉致被害者がおられるということもありますが、韓国の置かれた立場と日本とは違うようであり、日本がその韓国の対応について、日本の立場というものは理解し協力するように私は求めましたけれども、韓国の対応について、これはいかぬ、ああしろこうしろと言う立場には私はないと思いますが、この拉致問題については、日本としては韓国に協力を求めました。
韓国には韓国の事情が、難しい事情があるんだと私は理解しておりますが、できるだけ日本側の拉致の問題について韓国側の協力を求めていこうという姿勢に変わりはございません。
○鳩山(由)委員 同じ北朝鮮に拉致をされた方々なんです。一方は日本から、あるいは他方の韓国は主として九二%は漁業者だ。漁業をしている間に拿捕されて連れていかれた。あるいは、その船長がスパイだったという話もあります。
いろいろな事情で北朝鮮に何十年も暮らさざるを得なかった、また、暮らさざるを得ない方々が、ある意味で日本の拉致被害者と同じ程度、あるいはそれ以上かもしれません、厳しい生活を強いられている。そういう人道問題として共通ではないか。違う、確かに韓国としては北朝鮮と接しているだけにより難しい問題があることは十分に認識をしておりますが、同じ人道問題として、あるいは、まさに国民を奪われたという、そういう同じ両国同士がもっと心を開いて協力していこうではないか、日本の拉致問題も韓国の拉致問題も同じではないかという認識にどうして立っていただけないんでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 それはその国によって事情が違うと思います。
日本と韓国は、この六者会合におきましても緊密な連携をとっております。この拉致の問題について、今お話ししましたように、日本の立場と韓国の立場、事情も違いますから、北朝鮮に対する対応も全く同じというわけにはいきませんが、この人道問題については、六者協議におきまして、それぞれの理解を日本側は各国に求めておりますが、各国においても対応が違います。
日本側の立場に一番理解をし支持をしてくれているのはアメリカでありますが、韓国におきましても、中国におきましても、ロシアについても、それは日本側の対応ということに対しては必ずしも同じような立場をとっているとは申しがたい。残念ながら、これは事実であります。
○鳩山(由)委員 それなら別の角度から申し上げますが、今来られている三人の韓国の拉致被害者の方々が一つ大変大きな望みを持っています。それは、日本の五名の拉致被害者と面談をしたい、あるいはせめて握手だけでも一緒にしたいという望みを持っておられるんですが、それをかなえていただけませんか。
○川口国務大臣 かなえるもかなえないも、五人の方々、この方々は自由に判断をなさり、行動をしていらっしゃるわけでございますから、政府がこれについて何かを申し上げているということは全くありませんし、何も申し上げるつもりはないわけでございまして、御当人同士、直接にお話をなさるお話であると思います。
○鳩山(由)委員 それが現実そうではないのでありまして、政府の拉致被害者・家族支援室にこの件で問い合わせると、今会わせるわけにはいきませんという返答が返ってくるんです。
やはり、せっかく今、外務大臣がそこまでお話をされたんでしたら、政府として拒まないでください。ぜひ、一目でもいいから会わせてもらいたい、握手をさせてもらいたいということでありますから。よろしいですか。
○細田内閣官房副長官 正式にそういうお話があったとは伺っておりませんが、よく精査したいと思っております。
○鳩山(由)委員 このメッセージが、日本の拉致の被害者の方々と韓国の拉致の被害者の方々が一堂に会して例えば写真を撮るということが、世界に対して、拉致の問題の深刻さ、そして、その共通基盤を持っているという日韓の協力という意味で非常に意味があることだと私は思いますから、今、細田副長官、そのような話をしていただきましたから、精査をして、どこでどうなっているのかを確かめていただいて、ぜひ、政府としては反対をしないでいただいて、積極的に、今お話がありましたから、自由の意思で会えるならば会わせていただけるように御配慮を願いたいと思います。
もう時間がだんだんなくなってまいりました。私が伺いたいこと、この日朝のハイレベルの協議などが行われて、またこれからもいろいろな交渉が進められていくのであろうかと思いますが、その中で一番気になっているのは、薮中局長がこのような話をされたと。
拉致被害者五名の方々の家族八名の全員の無条件の帰国と、それから、北朝鮮側が死亡や不明と通知してきた十名の真相究明、そのための協議機関の設置に北朝鮮が応じれば、日朝国交正常化交渉に入り、日本として経済協力に応じる用意があるという記事が載っておりましたが、これは間違いですか、それとも、このような発言をされたんですか。(川口国務大臣「参考人としては言っていただいていないんですが」と呼ぶ)
○笹川委員長 参考人として鳩山先生から指名はされておりませんが、そこにいるんだから、もし答弁する意思があれば答弁しなさい。意思がなければ答弁しなくてもやむを得ないけれども。
○鳩山(由)委員 委員長、ありがとうございます。
○薮中政府参考人 お答え申し上げます。
私が申し上げておりますのは、拉致問題の解決、これなくして国交正常化はない。当然のことながら、経済協力は一切ないということでございます。
そして、今申し上げましたのは、まさに拉致問題の解決というのは、八人の方、御家族の一日も早い無条件での帰国、そして、安否不明の方々の徹底した真相究明、そうしたことを通じた拉致問題の解決、これなくして国交正常化はなく、したがって、当然のことながら、経済協力はないということでございます。これしか言っておりません。
○鳩山(由)委員 もう今の言葉は曲げては困りますよ。
しかし、私が非常に心配しているのは、その拉致問題の解決なくしてという拉致問題の解決というレベルが、ひょっとして、拉致の被害に遭っている方や御家族の方、あるいは救う会の皆さんの発想と政府とが大分違うのではないかというところが心配でありまして、きょう、あえて、特定失踪者問題調査会というまさにボランティアの組織が、百八十名の行方不明の方、特定失踪者と言っておられますが、細田先生はよく御存じだと思いますが、こういった方々を、やはりこれは何らか拉致と関係があるのではないかということで、もう既に特定失踪者問題調査会では二十二、三人の、新たな拉致被害者ではないかと特定できると彼らが思っている、そんな方々を、特定を捜し出しているわけでありますが、今まで、政府がみずからの力でこの人は拉致被害者だと、マスコミが言ったとか北朝鮮から言ってきたからという話じゃなくて、政府みずからの力でこの人は拉致だと捜し出した人はおるんですか。
○小野国務大臣 警察におきましては、これまでの一連の捜査の結果、北朝鮮による拉致容疑事案、現時点で、先生おっしゃいましたように、十件十五名と判断しておりますけれども、それ以外にも北朝鮮による拉致の可能性は排除できない事案があるということで、先ほど申し上げましたように、四百人近い方々の当該リストも提供を受けておるわけでございます。
しかし、鋭意調査、捜査をしているという段階でございまして、その中から今先生おっしゃったような人数の割り出しというのはまだできておりません。
○鳩山(由)委員 このボランティアの方々に伺うと、本当は拉致じゃないだろうと思っていろいろと家族の方々に伺ってみたり捜してみると、どうも拉致の疑いの方が強くなってきているという方がたくさんおられるそうですよ。にもかかわらず、政府が、あるいは警察庁が、今まで一人も自分の力で拉致被害者を捜し当てたという事例がないというのは、余りにもこれはひどいんじゃないですか。どう考えているか。
やはり、最初に私が申し上げたように、国家の侵略を受けた、侵略行為だというぐらいの認識をまだどうも政府の皆さんは持っておられないんだというふうに思うんです。
そこで、私が伺いたいのは、例えば、こういうものは本来政府がやるべき話であって、政府がやらないのであるならば、ボランティアの皆さん方にもっと協力的でいいんじゃないんですか。
何で今まで一人も割り出せないのかというのをいろいろ調べてみますと、どうも、県警の間の連携の悪さとか、あるいは公安調査庁と警察庁の仲の悪さとか、そういうものが起因して本当にトータルとしての議論が、戦略的に行方不明者を拉致被害者だと断定するようなことができないんじゃないんですか。そこのところ、もう一度お答え願いたい。
○小野国務大臣 重ねての御質問でございますけれども、拉致容疑事案と判断している十件十五名、先ほども申し上げましたように、北朝鮮による拉致の可能性が排除できない事案があるということも、今回告発がなされた事案も含めまして、まさに鋭意捜査、調査をしているという現状でございます。
しかしながら、個別的あるいは具体的事案につきましては、拉致の可能性の程度に言及することはやはり当該事案が十件十五名程度の拉致の疑いがあるかのような予断を与えることとなるために、拉致との判断に至るまで、個別の事案に関する見解を明らかにすることは差し控えさせていただきたいということでございます。
○鳩山(由)委員 小泉首相、あえて、もう時間がなくなりましたからこれ以上申し上げませんが、本当にこんな状態でいいんですか。私は、国家公安委員長が全部紙を読みながら私が伺ったことと違うことを答弁されるような、そんな状態で済まされる話じゃないということだけ申し上げておきます。
そこで、私は、一つ提案を具体的に申し上げたいんですが、これは中山議員からも先ほど話がありましたが、やはりこの拉致問題を戦略的に取り扱わなきゃいけない。その部署がないじゃありませんか。今、仲たがいみたいな話、必ずしも否定されたのかされていないのか、答えられなかったですけれども、こういう警察庁だけに任せるのではなくて、内閣府に、この特定失踪者の問題も含めて、行方不明者やあるいは拉致被害者の全容を明らかにして真相を解明し、そして、拉致問題全体を解決するための拉致問題の対策本部というものを設置しなければならないんじゃないんですか。そういうものがないから、司令塔がないから、いつも、何を聞かれても答弁をごまかせばいいんだみたいな発想でおられたら、拉致被害者の方や御家族の方は、きょうこれを聞かれてどう思われるか、本当に私は心配であります。
ぜひ、具体的な提案ですからまじめにお答え願いたいと思いますが、新たな拉致問題対策本部というものを、今の家族支援室というものは余りにも、内閣官房副長官補というところの下に置かれている小さな支援室でありますから、そうではなくて、もっと本腰を入れる、内閣府にどかっと対策本部を設けたらどうですか。いかがですか。
○小泉内閣総理大臣 この拉致の問題を含めて北朝鮮との問題、これは政府を挙げて取り組んでおります。関係省庁、よく連絡をとりながら対応していきたいと思います。
○鳩山(由)委員 全力を挙げて取り組んでおられるとしては、成果が全然出ていない。成果が出ていないのに、全力を尽くしておられると。本当なのかなと。もし全力を尽くしても成果を上げられていないんだったら、やはり何か新しい組織をつくるとか、問題を一つ一つ解決していかなければだめなんじゃないですか。あえてそのことを申し上げます。
最後に、私は、ソウルに伺ったときに、ファン・ジャンヨプ、元の朝鮮労働党の書記にお目にかかってまいりました。一時間という限られた時間でしたから、必ずしもすべての話を伺うことはできませんでしたが、あの方は金正日の一番近いところに長くおられた方でありますだけに、拉致の問題も含めてどうすれば二千三百万人の同胞を救うことができるか、それには金正日体制を倒さなきゃならぬと、彼はそこまで力説しておられました。
私があえて伺いたいのは、この拉致問題に対しても必ず何らかいろいろな情報を御存じのファン・ジャンヨプ氏をぜひ日本に招聘したい。おいでいただけないかと申し上げたら、私は日本語が話せますから、ぜひお伺いしたい、そしてじっくり十日間ぐらい時間かけてお話を申し上げたいということまでお話を聞いてきています。ぜひ、ファン・ジャンヨプさんの来日に対して協力的であっていただきたい。これも総理にお願いします。
○川口国務大臣 ファン・ジャンヨプ氏の訪日につきましては、政府としては、黄氏の、御本人の御意向を踏まえ、そして、韓国政府の協力を得つつ、適切に対処をしてまいりたいと考えております。
○鳩山(由)委員 本当に適切に判断していただければと思うんですが。
今のお話がありましたが、ファン・ジャンヨプ氏の、御自身の訪日したいという希望を私も聞いております。来たいんだ、そしてじっくり話をしたいんだ、日本の皆さんに伝えたいんだという話も伺っています。そして、韓国政府も、内々伺ってみますと、オーケーが出ているんです、今回は。ファン・ジャンヨプさんはアメリカまで行かれましたからね。アメリカに行って日本はだめだという話はないんです。したがって、韓国政府も大丈夫です。ということは、日本の政府の対応次第なんです。
ですから、ここは国民の皆さんにも聞いていただきたいんですが、ここで何かおかしなことになったら、韓国とか本人の意思がどうのという話ではなくて、日本政府が邪魔したという話になりますよ。ぜひそうならないためにも、ファン・ジャンヨプさんを、大変重要な歴史の証人ですから、その話を聞く機会を日本国民に与えていただけるように、再度、これは総理、御答弁願います。
○小泉内閣総理大臣 どのような人とどういう対応をしているかということにつきましては、御本人の立場もあります。相手国政府の立場もあります。日本政府としては、必要なことをしておりますし、これからもそのつもりで対応していきたいと思います。
○鳩山(由)委員 これでやめようと思ったんですが。
ですから、本人も来たいという意思を表明しておられるし、韓国政府もオーケーを出しておられるんですから、今の二つの条件はクリアされているということを申し上げて、こういった問題に対する対応一つ一つで、拉致問題に対して政府が本当に、先ほど小泉首相がおっしゃったように、全力を挙げていますという言葉が本物なのかどうなのかということをこれから確認させていただきます。そのことを申し上げて、私からの質問を終わります。
ありがとうございました。
○笹川委員長 この際、松原仁君から関連質疑の申し出があります。鳩山君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松原仁君。
○松原委員 民主党の松原仁であります。
今の鳩山委員に続きまして、北朝鮮拉致問題を中心にして関連質問をいたしていきたいと思います。
先ほどから、小泉総理、そして閣僚の皆さんの答弁を聞いておりまして、どうも当事者意識がいま一歩強く伝わってこない、そういう感情を私は持ったわけであります。特に、総理の発言の中で、結果として北朝鮮に対して不満があるということを与党議員の質疑に対してちょっと漏らしましたが、具体的に、その不満というものの中身を少し教えていただきたいと思います。
○小泉内閣総理大臣 これは、まず拉致の問題を解決すること、核の問題も解決すること、ミサイル等の問題も解決する、そして一日も早く日朝間、正常化したい。これに対して、いまだにその対応ができていない。そういうことについて私は不満があるということを言っているわけであります。
○松原委員 いまだにその対応ができていないということは、我が国ではなくてかの国の方に、そういったミサイルや核や拉致についての対応に対して、その対応ができていないという認識を小泉総理は持たれて、不満である、こういうふうに認識してよろしいですか。
○小泉内閣総理大臣 北朝鮮が日本側の求めに対応していないということについて不満があるということを言っているのであって、一日も早く北朝鮮がこのような日本側の要求に対して全面的にこたえる、積極的に応じるということを期待しております。
○松原委員 つまりは、日朝平壌宣言を金正日との間で結んで、この北朝鮮において日本人を拉致しているという事件についても明るみに出て、そういったものをこの一年有余、二年有余ずっと扱ってきて、このことについて、北朝鮮側の対応について極めて総理は不満を持っていると。それは、誠意ある対応を彼らがしていない、こういう意味で不満を持っているというふうに思っていいわけですね。
○小泉内閣総理大臣 一日も早く日本側の要求に対して誠意ある対応をしてほしいということを求めておりますので、そういう点について日本側としては遺憾であると思っております。
○松原委員 これは極めて当たり前といえば当たり前ですが、大事であって、小泉総理が、今日に至るまでの北朝鮮の対応に対して不快感を持っている、簡単に言えば。不快感を持っているということを、こうやって国会の中できちっとおっしゃっていただくことは、私はメッセージとして大事だろうと思っております。
しかしながら、昨今の議論を見ておれば、北朝鮮側は北朝鮮側の原理原則論を繰り返し主張していることは、この今の委員会で議論になったとおりであります。つまりは、五人の拉致被害者を返せということを彼らは言ってきた。この問題については、約束はしていないけれども調整はあったという、先ほど川口大臣の答弁があったわけであります。
さらには、今回の六者会議においても、いわゆる根本的には解決はしている、根本的には解決をしているけれども、後続のまだまだ未解決の問題があると。こういう、国語としてはどう理解していいのかわからない、言葉の遊びとは言いませんが、言葉としてどうやってそれを理解していいのかわからないさまざまなやりとりが北朝鮮との間で行われている。そして、そのやりとりの中で時間ばかりがむなしく去っていっている。
私は、家族を拉致された被害者家族の皆さんにしても、いたたまれない気持ちでこのやりとりを見ているんだと思っております。
冒頭申し上げたいことは、小泉総理が、北朝鮮の今日に至る間の対応に対して、不誠実である、幾ばくか不快である、不満であるということを今この場でおっしゃった。それを、では具体的に、日本の国の最高指揮官として、どのように外交でやるかということが問われるわけであります。
実は、今回のさまざまな議論で、水かけ論みたいな議論が北朝鮮と行われている。私は、その原因は、残念ながら、小泉総理が一昨年行った日朝平壌宣言の中にその萌芽があるのではないかという気がしてなりません。
この日朝平壌宣言は、特に第二項では、「日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。」こういった文言が書かれております。また、「双方は、日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、」また「長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施し、」というふうな文言が書かれている。明快に我々は、この部分ではおわびということを、反省ということを言っている。
しかるに、拉致の問題については、第三条において、「双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。また、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」、これが恐らく拉致の問題だというふうに我々は認識しているわけでありますが、こういう非常に抽象的な表現しかとられていない。そして、これが、こういった問題について、「朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題」、遺憾という表現は使っておりますが、遺憾という問題で終わっている。
結局、拉致問題は、大変な狂乱怒濤の事実を我々に明らかにしたにもかかわらず、そのことをこの日朝平壌宣言では一言も触れていなかった。
この日朝平壌宣言の評価でありますが、このことを一言も触れていなかった日朝平壌宣言について、そのときの当事者として、総理はどんなふうな印象と、この拉致の事実を書き込むべきことは要求したんですか。
○小泉内閣総理大臣 日朝平壌宣言は重要な政治文書であり、日本も重視しておりますし、北朝鮮側も重視しております。この精神にのっとって日朝間を正常化させるという方針はお互い確認しておりますし、金正日氏との会談の中でも拉致の問題について言及いたしましたし、その点については、私は、日朝平壌宣言、拉致という文言は書いてありませんが、きちんと、今、その会談を踏まえた、意を酌んだ重要な文書だと認識しております。
この宣言にのっとって、日朝間の国交正常化を図っていきたいと思っております。この点については、今までも変わりありませんし、これからもこの方針に沿って日朝間の交渉を進めていきたいと思っております。
○松原委員 私が申し上げたいのは、今の拉致をめぐるさまざまな問題、例えば、拉致について解決済みであるとか、いや、これは約束があったとか、さまざまな議論が政府間で交渉になって、政府間でそれがいわゆる暗礁に乗り上げている。
私は、この日朝平壌宣言の中に拉致という言葉が入っていて、それに対して北朝鮮側の謝罪という文言があれば、今事務方の協議でやっている、こういったレベルの問題を極めて乗り越えることが可能であって、今の膠着状態というのは、実は、この文言に拉致という言葉が入っていない、明快にその言葉が入っていないということが、今の日朝交渉をこの拉致に関しては極めて不透明にし、彼らが不誠実な対応をすることに対する根拠を与えているのではないかというふうなことを申し上げているので、いま一点聞きたいことは、くどいようでありますが、拉致の文言をなぜ入れなかったのか、入れる努力をしたのか、ここをまず、今回の日朝交渉の原点でありますから、確認したいわけであります。
○小泉内閣総理大臣 その点は全く松原議員とは違います。
拉致の文言がはっきり入っていないから拉致の問題をおろそかにしているということではないということは、今までの交渉を見れば明らかであります。拉致の問題解決なくして日朝国交の正常化はあり得ないんです。
交渉の経緯について、ああだこうだと、言えることと言えないことがあります。
○松原委員 私の質問は、拉致という言葉を入れる努力をしたのかということを聞いているわけでありまして、そのことだけお答えください。
○小泉内閣総理大臣 私は、拉致の問題は日本にとって重大なことであるということは会談の中で十分話し合いました。拉致の問題だけではありません、日朝間の問題は。総合的に、包括的に解決しようという問題で、会談の中でも文書の中でも、十分その点については共通の認識を持っていると思います。
○松原委員 私は、総理大臣でありますから、余りくどくど同じことを聞いては大変御無礼であると思っておりますので、明確に、それを入れようということは主張したのかしなかったのかだけお答えいただきたいと聞いているのであります。
○小泉内閣総理大臣 拉致の問題も含めて、重要だということで文言に入っているわけであります。
ただ、拉致の問題という言葉を使わなかったということによって、拉致の問題は重要でないということにはとれない、そこについては松原議員と認識が違います。
○松原委員 いや、私は、拉致が重要であるという認識は大事なんですよ。
ただ、大事なことは、拉致の問題が大事だというのは必要だけれども……(発言する者あり)ちょっと待ってください、こっちは質問しているんだから。この拉致の問題の重要性は我々は認識している。しかし、北朝鮮側の極めて不誠実な対応というのは、日朝平壌宣言に拉致についての、彼らは、トップである金正日、北朝鮮という国はつかさつかさでしか判断できないんですよ。
ちょっと余談になりますけれども、例えば、広報部に行って、ことしのジャガイモはどうですかと言うと、ジャガイモのことを答えられないんですよ、ジャガイモを生産しているところへ行って聞いてくださいと。
つまり、あの国はトップでしか判断できない。トップがどう言ったかをみんな見て行動しているわけですよ。トップが小泉総理との間で、その場でどういう議論があったかわかりませんよ。我々が見るのは、日朝平壌宣言という公式文書でしか見られないわけであります。
したがって、拉致の問題を含めてと今小泉さんはおっしゃった。しかし、それが公式文書に入っていないということは、北朝鮮側の役人に対してのメッセージとして、この問題をどう扱っていいのかわからないというメッセージを、日朝平壌宣言が北朝鮮側の役人に対してそういうふうな一つのメッセージを与えているということを私は言っているんですよ。
だから、私は、その意味において、この問題が膠着している大きな理由の一つは、ここで拉致という言葉が入らなかったからなんだと。非常にそこは私は残念であって、その部分をなぜ総理はお入れにならなかったのかということを聞いているわけでありますが、もう何回聞いても恐らくそういう答弁でしかないと思うので、これについて、結局、北朝鮮側に拉致を入れろということを言っているならば、恐らく総理は言ったとおっしゃると思うので、それは結果としておっしゃらなかったんだろう、こういうふうな認識で、次の質問に進んでまいりたい。
○小泉内閣総理大臣 それは誤解ですね。
今まで、私がピョンヤンを訪問して金正日氏と会うまでは、拉致の存在すら認めてこなかったんですよ。どの政権においても、どの方が北朝鮮へ赴いても、拉致は存在しなかったと。いろいろな会合でも、一切そんなことはあり得ないと言ったのが、私と会談して、初めて拉致の存在を認めて、二度とこういうことをしないと言ったんです。そういうことを踏まえて共同宣言を発出しているわけであります。
○松原委員 私は、小泉総理が金正日と会って、拉致ということを、一応こうやって進んできたことに関して、それは評価してもいいと思っていますよ、それ自体は。
ただ、大事なことは、その部分の評価と、今日の日朝交渉がいわゆるこういう形で暗礁に乗り上げているその理由をつくったという点においては、あの日朝平壌宣言は功罪相半ばするし、この拉致問題の解決の見通しが立たないという点において、時間とともに日朝平壌宣言は功罪の罪の方が大きくなっているということを私は小泉総理に言っているわけであります。
○小泉内閣総理大臣 全く認識が違います。
この日朝平壌宣言がなかったらどうなるか考えてください。功罪相半ばする、何が罪なんですか。なかったことを考えてください。この宣言があるから交渉は進んでいるんです。
○松原委員 私は、何度も同じような質疑だと思っていたんで、それだったらもう一回確認しますが、そうはいいながら、小泉総理は、この問題は進捗したという認識のもとに、拉致という言葉は文言として入れるということは要請しなかったということでいいんですね。
○小泉内閣総理大臣 拉致の問題も含めて話し合ったんですよ。だから、拉致の文言は入っていないけれども、拉致の問題が重要だからこそこの平壌宣言に基づいて拉致の問題も協議しているんです。
○松原委員 これは、私の質問は、拉致という問題、文言が日朝平壌宣言に入っていないことが今日の交渉を、さっき私はるる言ったんですよ、総理も聞いておられたと思う。
北朝鮮側の役人に対して、彼らはですよ、今の小泉総理が、例えば、いや、これは拉致を入れてこうしたという説明を北朝鮮側の役人は知らないわけですよ。おびえながら交渉しているかもしれない、彼らは。彼らが見ているのは、日朝平壌宣言のテキストしか見ていない。そこには、くどいようですが……(発言する者あり)いや、私が言って、また小泉総理が答えるから同じことを繰り返しているんだけれども、日本国民の生命と安全にかかわる懸案事項についてという文言しか書いていないんですよ、これは。
だから、私は、結果として、金正日さんのこのメッセージが、一般の北朝鮮側の官僚に対しては、拉致の問題の、ゴーしろというシグナルになっていない、基本的に。そういう認識であるから、日朝平壌宣言で拉致という言葉を入れることが正しかった。
では、いいですよ、その部分の議論じゃなくて、日朝平壌宣言に拉致という言葉が入っていた方がよかったかよくなかったか、どっちですか。
○小泉内閣総理大臣 入っていようがいまいが、今交渉している事実をよく見てください。北朝鮮関係者は、まさかみずからの将軍様が拉致の問題を認めるかとびっくりしたじゃありませんか。今まで全部、何年間も否定していたんですよ。
文言が、拉致という問題が入っていないということは、政治文書、事実でありますけれども、諸懸案の中に入っているんですよ。だからこそ、日本が、拉致問題の解決なくして正常化はあり得ないとあらゆる場を通じて言っているじゃないですか。この問題の認識はどうかしていると思いますよ。
○松原委員 この質問は次に移っていきたいと思うけれども、私は、北朝鮮側の官僚に対して誤ったメッセージが伝わっているという認識を持っていますよ。
○小泉内閣総理大臣 持ってなかったら何で交渉になっているんですか。問題になっているから、北朝鮮側の代表が出て、日本とちゃんと交渉しているんじゃないですか。
○松原委員 これは、北朝鮮側が、今回交渉はしているけれども、彼らが、例えば五人が約束で戻ってくるとか戻ってこないとかという話や、根本的には解決していると言っている話は、そこにきちっとした謝罪が北朝鮮側にあれば、私はそういう議論にならないだろうということを言っているんですよ。
私は、日朝平壌宣言の中にその文言を入れておけば、全然、この拉致問題の解決というのは今ごろは進展しているということは間違いないと。
○小泉内閣総理大臣 全くそう思いません。
では、何で今拉致問題を交渉しているんですか。これだけ前面に、国民の前に明らかになって、六者間で協議して、国際社会の中で拉致の問題を私はいろいろな会議で説明している。そして、日朝間で今交渉している。
全然関係なかったら、北朝鮮側の代表が拉致の問題を日本と交渉するはずないじゃないですか。問題になっているから、将軍様が、金正日氏が拉致の問題を認めたからこそ、その部下が日本と交渉しているんじゃないですか。文書に入っていないから、入っているから、交渉になっていない、全く認識が違います。
○松原委員 交渉になっていないとは言っていないんですよ。交渉になっていないとは言っていない。
ただ、北朝鮮側が強硬で原理にこだわる理由はそこにあると私は言っているんですよ。北朝鮮が原理にこだわる理由はそこにあるんですよ。
○小泉内閣総理大臣 それは、国交が正常化していない、国交がない国と今交渉しているんです。問題になっていないどころか、これだけ問題になっているじゃないですか。どういう認識ですか。
○松原委員 どういう認識ですかって、これは非常に私は理解に苦しむ。これはテレビを見ている皆さんだって、拉致が何で入っていないのかと理解に苦しんでいますよ、恐らく。
結局、拉致問題の解決が進んでいない最大の理由というのは、そこに文言が入っていないからなんですよ。拉致問題の交渉は続いていますよ。しかし、こうやって暗礁に乗り上げ、北朝鮮側がもっともらしく引き延ばしをする理由というのは、私は、原点はそこにあると。
○小泉内閣総理大臣 全く違う。諸懸案で問題が入っているから、拉致は議題になっているんです。最大の問題になっているんです。
○松原委員 当初の質問から話がずれているので、もう一回。
もうそれだけで、イエス、ノーだけでいいですよ。拉致について、文言に入れろと言ったのか言わないのか、それだけで結構ですよ。
○小泉内閣総理大臣 それは、いろいろな話し合いの中で総合的に解決すると。諸懸案の中で拉致の問題は入っているんです。(発言する者あり)
○笹川委員長 静粛にしてください。
○松原委員 だから、簡単に言えば、諸懸案に入っているということは、それを明確に入れろと言っていないというふうに、それは、その部分に関してそういうことだということですよ。もう、これはこれで結構ですよ、これ以上議論してもしようがないですから。
今、第二回の六者協が行われたわけであります。政府は六者協を評価しているわけでありますが、この六者協というのは、実際に前進だったのか、むしろ後退でなかったかという議論があるわけであります。
例えば、朝鮮半島の非核化というのが第一回の六者協で議論された。しかしながら、今回は、非核化ではないんです、いわゆる核の武装をしないと。しかも、それは、議長声明という極めて拘束力の弱い声明での議論になってしまっているわけであります。私は、そういった意味において、この六者協というのは、成功したというふうに評価を下すには極めて厳しい内容だったと思っております。
これで私が申し上げたいのは、日本とアメリカ、そして韓国、中国、ロシアの温度差ということが、実は六者協が我々としてはなかなか思いどおりにいかなかった原因になっていると。
それは、例えば、かつてジュネーブにおいて、北朝鮮非難決議、国連人権委員会が昨年の四月十六日に、北朝鮮の人権状況を非難、日本人を初めとする拉致問題の全面解決を要求した決議を賛成多数で採決した。このときに、この採決にかかわって、反対した国が残念ながら十カ国あります。北朝鮮の人権問題の非難決議に反対した国が十カ国ある。その中に中国とロシアが入っているわけであります。そして、欠席をした国が韓国であります。
結果として、六者協の中において、北朝鮮を除いた、また日本、アメリカを除いた三カ国は、第五十九回の国連人権委員会における北朝鮮に対するこの決議で、中国、ロシア、韓国、反対もしくは欠席という対応をした。ですから、六カ国協議の環境というのは、初めから我が国にとって極めて厳しい環境であったということは目に見えているわけであります。
問題は、その協議においてどこまで我々は食い下がり、我々の持説を主張するかということでありますが、事前に、こういった中国、ロシア、韓国、これはこの人権非難決議についてすら反対をしたり欠席をした国でありますが、どういうふうな根回しやら交渉があったのか、お答えいただきたい、簡単に。
○川口国務大臣 この国連決議、人権委員会の決議につきましては、我が国は、たしか共同提案国を行ってあるというふうに思います。
それで、反対をした十カ国の国、これらの国の反対の理由、考え方でございますけれども、これは、北朝鮮であろうがあるいはほかのどの国であろうが、個別の国の人権問題について、国連の場で決議の対象とすることはしないという考え方に基づいて、これらの国々は対応をしているということでございました。
そして、北朝鮮の問題につきましては、ロシアもそれから中国も、これについては総理もそれから私も、今まで拉致問題について日本の立場の説明はきちんとやってきておりまして、それぞれ理解をしているということであります。特に中国については、今回、日朝の二国間の会談をするに当たって、いろいろな協力をしてくれたということもあるわけでございます。
○松原委員 私が申し上げたいのは、この三カ国に対して、少なくとも彼らは昨年の四月のジュネーブにおいて、この人権非難決議に対して反対及び欠席をしたということを踏まえ、きっちりとした根回しがどこまでできていたのかなという疑問を私は持っております。
これは、彼らが再び、同じものをもう一回扱うかどうかはわからないけれども、再びこういった人権非難決議を、新しい特定失踪者が日本の警察によって拉致被害者として例えば承認されるということが、さっきの鳩山さんの質問じゃないけれども、あり得るかどうかという議論がありますが、仮にあったような場合、再びこういった非難決議を上げたとき、反対に回らないように、また欠席をしないようにという根回しはきっちり行っていただきたいと思います。
時間がありませんので、先に進みます。
政府の拉致に対する取り組みというふうなことが問題になります。
テロは、これはもちろん犯罪であります。そこで、小泉総理にお伺いしたいわけでありますが、北朝鮮のこの拉致というのはテロであり、北朝鮮は国家ぐるみの犯罪を行ってきた犯罪国家である、大体、きょう、このいわゆる国会放送を聞いてる方も、北朝鮮は犯罪国家だとほとんどの日本人は思っていると私は思っておりますが、総理は、北朝鮮は犯罪国家であるというふうに思っていらっしゃいますか。
○小泉内閣総理大臣 犯罪国家という定義がどうあるべきかというのは難しい問題でありますが、テロというのは許されざる犯罪だと私は思っております。
○松原委員 つまり、国家的なテロを行ったとするならば犯罪国家であり、あの国の仕組みの中で個人が、冒険主義者的なという表現を使ったというふうに聞いておりますが、個人がそれを行うということは、なかなか私は想定しづらい。したがって、国家テロであるという認識のもとに対処していただきたいわけであります。
御案内のように、この拉致というのは、拉致された子供を持つ親にしては、もうこれは表現に絶するような苦しみと怒りと嘆きであり、そして日本においては、これは屈辱であり、国家主権の侵害であると思っております。このことも、総理大臣として、日本国の最高責任者として、そのとおりだというふうな答弁をいただきたい。
○小泉内閣総理大臣 拉致というのは、これはもう許されざる非人道的な行為である。だからこそ、このようなことを二度と起こさないように、日本としては対応をしっかりしていかなきゃならないし、そのような行為をした北朝鮮側に対して、二度と起こらないような措置を求めているわけであります。
○松原委員 そこで問題なのは、質問がもう時間があとわずかなので、前後逆転しながらもしますが、先ほど、漆原さんの質問ですか、それに対して、抜かずの刀をやった覚えはないと言ったら、刀は飾っておく、そして抑止力だと小泉総理は答えましたね。抑止力だと言った。刀はそこに置いて、抑止力だと言った。
私が申し上げたいのは、抑止力だということをおっしゃったけれども、現在進行形の拉致はテロだと私は思っているんですよ。刀を用意しておいて、これがあるから何もさせませんよというのは、それは一つの考え方だろうけれども、拉致問題については、既に北朝鮮側は日本に対して、それはテポドンありノドンあり不審船あり核あり拉致あり、もうこれ、刀を抜くべき状態というのはいつなのかという議論があって、先ほど小泉総理は、そのタイミングを言わないのが外交だと。それはそうかもしれぬ。
しかし、少なくとも刀は抑止のものだと言うなら、しかし、もう抑止はされていないんですよ。現実に、拉致というのは私は進行中のテロだと思うんですよ。この拉致というのは進行中のテロであって、今この拉致問題が進行中のテロであるという認識を持つならば、これは抑止するんじゃないんですよ。解決のための手段なんですよ。抑止するためにそこにあるんじゃなくて、解決のためにそこにあると思うんですが、いかがですか。
○小泉内閣総理大臣 北朝鮮側との交渉の目的は国交正常化でありますし、それは平和的解決であります。そういう中にあって、対話と圧力も、平和的解決、正常化に向けての手段であります。伝家の宝刀、これを抜かずに目的を達成すること、これ、一番大事なことであります。抜けば解決できるんだったらばそれにこしたこともないでしょうし、抜かずに解決できるんだったらなおいいでしょう。
先ほどお話ししたのは、武士においても、刀を腰に差しているのは、抜くためにあるのではない。人を切るためにあるのではない。剣というのは殺人のためにあるのではない。武というのは戈をおさめると書くように、私は兵器も、兵器を持てば使うということは好ましいことではないと思っております。兵器をいかに備えても、使わないで問題を解決する、これが大事であります。
今のいろいろな対応も、対話と圧力のために何が必要かということでありますが、目的は平和的解決、これであります。そのための手段であるということを忘れてはならないということを申し上げているわけであります。
○松原委員 私は、抑止というので、おいおいと、こういう話でありましたが、そうではないと。今、解決のためのツールであると。
解決のためのツールということは、常に抜く緊張感と可能性がある。私は、武士が刀を持っているのは、それはやはり常に抜く可能性があるから持っていたんであります。常に抜く可能性があるから刀を持っていたんで、それは、武士が腰に差して常に抜く刀としてこういった経済制裁法案の法律を持っているんだ、こういう認識でよろしいですか。
○小泉内閣総理大臣 それは選択肢としていろいろな手段を持つことはいいと思います。しかし、いろいろな国際紛争を解決する手段を考えると、武力の行使もあるでしょう。しかし、それは最後の手段なんです。
私は、ブッシュ大統領との会談でも、イラクに対する対応と北朝鮮に対する対応は違ってしかるべきだ、そういうことに対してはブッシュ大統領も同意しております。あらゆる選択肢を持つというのは、日本以外の国においては、場合によっては武力行使もあり得るという手段を残しておくでしょう。しかし、日本は国際紛争を解決する手段としても武力の行使はしないんですから、まして北朝鮮との対応は平和的解決を目指しているんです。
そういうことを考えますと、制裁とか罰するとかいう、そういう措置を講じないで、話し合いによって解決するということが私はいい方法ではないかなと。そこに今北朝鮮側ものってきていると。こういう状況において、今、すぐ刀を抜けということが効果的であるかどうか。将来、可能性として、今よりも事態が悪化する場合には考えなきゃいけない。しかし、そういう時点になくて、今話し合いのテーブルにのってきて、平和的解決をしようという努力をしている最中に、ぎらぎら抜き身の刀をちらつかせて本当に効果があるかどうかということも冷静に考えなきゃいけないと私は思っております。
○松原委員 私は本当に、最初に、腰に刀を差している、それは常に抜くぞという姿勢の中で差している、それでもう答弁はいいんですよ。その後、平和的な解決と。それは平和的な解決は目指すわけですよ。目指しながらも、それは、さっき小泉総理はいつ抜くかわからないと。もしかしたらあした抜くかもしれないわけでありますから、それは私は、いつ抜くかわからないという答弁は大事な答弁ですよ。もう常に抜く、私はそういう思いでやってほしいということを言うにとどめておきましょう。
ただ、私が言いたいことは、アメリカのケネディ大統領が、あのキューバの危機のときに、キューバで核兵器がアメリカ本土に向かって配置されたときに、彼は非常に呻吟をし、苦しみ、そしてキューバの海上封鎖というものに踏み切る。これは言ってみればこの経済制裁以上かもしれない。しかし、あのときのアメリカが、キューバによって核の兵器を中に対して向けられた、アメリカ本土を射程に置かれたというときの危機感でケネディさんはああいった対応をしたけれども、私は、北朝鮮が、核あり、そしてノドンとかテポドンとかぶっ放し、さらに日本人を拉致し、この状況というのはケネディさんが海上封鎖を決意したときよりもはるかに日本にとって深刻だと思うんですが、その辺はどう思いますか。
○小泉内閣総理大臣 それはアメリカと日本の国の立場も違いますし、考え方も違います。
あのとき、ケネディ大統領は、場合によっては戦争も辞さぬ、ソ連との核戦争も辞さぬという決意のもとに封鎖をしたと思われます。日本は果たして、戦争も辞さぬというようなことを言っていいかどうかということも考えなきゃいかぬ。日本は、北朝鮮との間に戦争まで覚悟して正常化を目指そうなんという立場じゃありません。あくまでも平和的解決を目指しているんです。そういうことも考えて、制裁が効果的かそうでないかということも考えるべきです。
今、北朝鮮は、ようやく平和的解決を目指して、国際社会の責任ある一員になろうと努力をしているというふうに日本は考えるべきじゃないでしょうか。そういう姿勢になるように、国際社会の協力が必要だ、六者間の中での協力が必要だということで話し合いの努力を進めているんです。その話し合いの努力が進んでいるうちに、制裁だ、制裁だ、懲らしめてやろうというような対策が、本当に効果ある解決につながるのか、そこも我々はよく考えなきゃいけない。
我々は、北朝鮮が国際社会の責任ある一員になることが、北朝鮮側の体制の保証にも、北朝鮮の国民の生活改善にも資するということを何回も申し上げているんです。国際社会から孤立しちゃいかぬ、いかぬと、日本側と正常化になれば、必ず北朝鮮は平和裏に繁栄しますよということも申し上げているんです。そういう話し合いが今進んでいる最中に、だんびらぶら下げて、刀を抜いて、けしからぬ、けしからぬと言って、本当に効果的なのかということをよく考えてくださいよ。
私はそういうところでも冷静に考えなきゃいかぬと思っております。
○松原委員 時間がないから、これ以上この議論はしませんが、それ、違うんですよ。そういう部分の、腹までくくってある程度行動しなけりゃ解決できないぐらい、今までも硬直してきたし、今も、私は、こういった交渉を見ていれば、そんな安直なものじゃないというふうに思っているから、総理にそれを言っているんですよ。
ちょっと時間がないので、最後、あと五分しかないというから。
私は総理に、拉致の全容解明とは何か、全面解決とは何かと聞こうと思っていたわけでありますが、恐らく答弁としては、全面解決というのは、拉致被害者家族の全員の同意が得られたときが全面解決だろう。これは、たしか川口さんもそういった答弁をしていると思いますが、そういう認識でよろしいですか、総理。
○小泉内閣総理大臣 一日も早く拉致された御家族を帰国させること、そして、今後、まだ不明の方もおられます、その点についても調査をしっかりしてもらうということ、こういうことについて、私は北朝鮮側に、早く誠意ある対応をしてくれという交渉を進めておりますし、そのようなことを御家族の方々も一日も早く期待していると思いますので、この方針をもってこれからも続けていきたいと思います。
○松原委員 その場合に、今総理の答弁にありましたが、不明者ということも触れたので、要するに拉致被害家族の了解、そして不明者で明らかに拉致の可能性が極めて高く、排除できないというところの被害者の部分の了解まで入れて拉致問題の解決をしなければ、恐らくこれは国民の理解も得られないでしょうし、そこまでいかないと、この十件十五人だけで終わりというのでは国民の理解を得られないと思いますから、今の御答弁のとおり、逆に言えば認証問題とかがここで出てくる。
最後に、駆け足で二つ質問をしていきたいと思いますが、そうなると、この究明をきちっとやるための準備立てというのが必要になるわけであります。先ほどから何回も、例えば中山委員からも話があったように、中山恭子さんもそういう思いがあったから、だんなさんがこの場で言ったんでしょうけれども、結果として、拉致を専門にやるスタッフがいないんですよ。途中省略しますが、拉致を専門にやる専従班がないんですよ。これをどうするのか。拉致を専門にする専従班が何でつくられないのか。これが第一点。これをつくらない限り、メッセージとしても北に日本が本気であるということは伝わらないだろう。これをぜひともつくってほしい。これが第一点であります。
もう一点として、我が民主党は、昨年の段階の拉致対策本部の初会合において、いわゆる拉致問題調査特別委員会をつくるべきだということを国会ベースで、国対ベースでも申し入れをしようということで、全会一致で協議を上げて、これを年明けの通常国会の前に議論として行ったわけであります。
これは、内閣総理大臣というよりは、自由民主党総裁としての小泉総裁に対する質問になるかもしれませんが、我が民主党は拉致対策特別委員会をつくれということを非常に強く要望したにもかかわらず、国対レベルでは、これは時期尚早というんですか、与党国対の中から時期尚早という声があって、結果として、反対というか尚早というか、拉致対策特別委員会は、民主党等はぜひつくれと言ったけれども、現在小委員会はできているけれども、いわゆる特別委員会はできていないわけであります。調査権をきちっと持つ特別委員会はできていないわけであります。
この特別委員会をつくり、そして内閣の中にそれなりの予算措置をした、調整をし企画立案をするような部署をつくるということは、拉致問題の絶対的な解決であると私は思いますが、これは総理に聞かないと、北朝鮮側からの交渉はトップ同士の話じゃないと解決ができない部分があるので、総理に聞くわけでありますが、総理はこのことについて、この二つについてどのように御所見を持っているか、お伺いいたします。
○小泉内閣総理大臣 拉致専従班をつくれということでありますが、政府挙げて、拉致の問題解決なくして正常化はあり得ないと言っているんですよ。政府全体がこの問題を真正面から取り上げているわけです。
それと、委員会の件につきましては、これは国会で今話し合っていることでありますので、国会の皆さん、よく協議していただきたいと思います。
○松原委員 以上で終わります。
○笹川委員長 これにて鳩山君、松原君の質疑は終了いたしました。
次に、穀田恵二君。
○穀田委員 私は、今度の北朝鮮問題の六カ国協議がどう進展するかについて注目してきました。それは、この協議に北朝鮮と韓国、アメリカと中国、ロシア、日本という北東アジアの平和と安定にかかわるすべての国が参加していて、核問題の解決という点、さらに拉致問題の解決という点でも、そしてあるいは将来の北東アジアにおける平和の枠組みという点でも重要な協議の場であったからです。
私どもは、朝鮮半島の軍事的な衝突を絶対に起こしてはならない、あくまで外交的、平和的手段によって解決を図らなければならない、この問題での解決が東アジアの平和と安定に不可欠であると考えてきました。
昨年の六カ国協議は、各国の主張に隔たりはありましたが、対話を通じて平和的に問題を解決する努力を続けること、このことで共通の認識に達するという重要な一歩を踏み出しました。長い中断はありましたけれども、今回の第二回六カ国協議が再開されたことは歓迎すべきことです。六カ国協議という枠組みを維持し、今回の話し合いでどのようなステップに進めるのか、極めて重大な問題だと私は考えていました。
そこで、総理に、この重大な六カ国協議を、北朝鮮問題の解決、そして北東アジアの平和と安定についてどのように位置づけておられるか、まず基本的な認識をお聞きしたいと思います。
○小泉内閣総理大臣 私は、拉致の問題につきましては、日本と北朝鮮における二国間の問題である、基本的にはそう認識しておりますが、六者間の会合の枠組み、これは、全体の、核の問題を含めて、朝鮮半島の非核化、平和と安定ということを考えますと、この六者協議の枠組みは重要だと認識しております。
今後も、この枠組みの中で各国が協力して、北朝鮮が国際社会の責任ある一員になるように努力をしていきたいと思っております。
○穀田委員 今お話ありましたように、六カ国の枠組み、これはとても大切だと私は考えています。
特に、今度の六カ国協議を通じての議長声明では、これも取りまとめましたが、今度の議長声明は、特に各国が同意をしたという点が重要だと思います。
今総理からもお話あったように、今度の議長声明では、朝鮮半島の非核化が共通の目的であること、そして、対話を通じて平和的に核問題を解決するという点について北朝鮮も含めて確認をしたという点が、私は大事だと。しかも、次回の六カ国協議を六月末までに開催すること、さらに作業部会を設置すること、これを確認しました。その点で、私は、今回の六カ国協議の枠組みを強化する方向で進展したことについて評価したいと考えています。
総理は、今回の第二回の六カ国協議の結果について、どういうふうに評価されているかについてもお聞きしたいと思います。
○小泉内閣総理大臣 共産党から評価をいただきまして、ありがたいと思っております。
また、今回の成果につきましては、一定の前進が見られましたが、私どもが期待していたような成果は見られなかったという点については、残念な面もございます。
しかしながら、これから次の会合に向けての作業を進めて、六月末までに再び六者会合が行われて、総合的な解決を目指そうということを、六者間で共通の認識を持てたということでありますので、これからも粘り強く、北朝鮮側との正常化を目指して日本としても努力をしていきたい。そういう面において、六者協議の枠組みというのは重要なものだと日本政府も認識しております。
○穀田委員 何も、私どもは、道理があるものは道理があると評価しているわけで、しかも、この問題について言えば、各国も、さまざまな立場の違いはありますけれども、一様に評価しているんですね。アメリカだって、この問題については重要な足がかりをつくったと。ロシアでもそういう立場を表明していますし、そして、韓国でも、実質的な議論ができて、しかも、非核化という共通目標という点では、朝鮮半島にそういうもので紛争を起こしてはならない、平和的に対話を通じて解決しなくてはならぬ、こういう点では大体一致しているんですよ。
もちろん、今お話あったように、国民が期待しているさまざまな前進という問題では不十分な点はあります。しかし、私が今言っているのは、枠組みを強化する、そういう方向で動いた、各国がそういう継続そのものについての今後の発展方向を定めたという点で評価しているということを私は改めて申しておきたいと思います。
そこで、進まなかった問題の一つに、核の問題があると思うんです。
六カ国協議の議長声明は、核兵器のない朝鮮半島を実現すること、こういうことをわざわざ触れまして、その意味では足がかりはできたと思うんですね。総理、ここが大切だと私は思うんです。
先ほども、質疑の中で、ようやくこういう問題について軌道に乗り始めたと総理はお話ししていましたよね。だからこそ、私は、文言にある六項目ですか、作業部会の設置に合意をした、こう書いています、その作業部会で、非核化の内容、さらには検証方法、また北朝鮮が言う安全の保証などについて、国際的なルールと監視といいますか、そういうもとで進むような、そういう外交努力が今、日本政府に、特に唯一の被爆国として、またそのことを、核廃絶を何とかみんなでやろうじゃないかという国民の多くの期待を背景に努力すべきじゃないか、こう考えているんですが、その見解をお聞きしたいと思います。
○川口国務大臣 作業部会の場それから六者会合の場、両方を通じまして、その完全で検証可能な非可逆的な核の廃棄という目標を達成するように議論をしていくということが大事であるというふうに考えております。
○穀田委員 いや、議論していくのは当たり前なんですよ。問題は、どういう立場で接近していくかということを私は言っているんですよ。
先ほど言ったように、政府は必ずこう言うんですよね。すべての核兵器の完全、検証可能かつ不可逆的な廃棄、いわゆるCVIDと言うそうですが、それはわかっているんです。その問題は重大な意見の対立が依然としてあるわけですよね。そこが問題なんですね。
そのときに、私が言っているのは、やはり北朝鮮に対して、北朝鮮の考え方自身に対する、理詰めといいますか、道理ある批判が大事じゃないかということを私は言っているんです。それは、彼らは軍事優先で来ますし、そして核抑止力論の立場に立っている、こういう問題がありますから、そこをきっちりとした批判をすることが大事だということを私は言っておきたいと思うんです。
そこで、拉致問題の解決についても、私は一点だけ質問したいと思うんです。
拉致問題の解決というのは、日本の国民の人権と安全を脅かした国際的な犯罪行為として絶対に許すことができないものであることは明らかです。私は、まず何よりも、帰国した五名の家族の帰国について、その実現のために北朝鮮が誠意を持って対処することを求めてきました。さらに、被害者の真相の全面的な解明、拉致の責任者の厳重な処罰、さらには被害者への謝罪と補償を要求してきたことは、総理も御承知のとおりだと思うんです。問題は、今回の会合で具体的な進展がその意味で得られなかった、その期待が十分できなかったという点では残念なことだと思うんです。
そこで、私どもは、各国が合意した議長声明の第五項、関連する懸案に対処することに合意した、この文言は、その意味で拉致問題を一つ触れているということだと思うんです。問題は、やはりこの点でも、国際的な枠組みできちんと処理をしていく、解決をしていく、そういう場での努力が求められていると思うんですが、その点はいかがでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 私は、拉致の問題と核の問題という話をいたしますと、日本以外の国々は核の問題について大きな関心を持っている、どちらかといえば、日本の拉致の問題よりも核の問題を主として議論の対象にしようという姿勢はうかがえます。しかし、日本は、拉致の問題も核の問題も同じように重要なんですということを、個別の首脳会談におきましても、二国間の首脳会談におきましても、あるいは国際会議の場においても、何度も日本の立場を説明し、各国の理解と協力を求めているわけであります。
今回も、六者協議の場におきましては、核の問題に大きな比重が当てられたと思います。しかし、この核の問題につきましては、六者、北を除いて五者、五者の間においても、核の完全廃棄、検証可能、後戻りできないということの問題については、北朝鮮側の態度に対して、アメリカと日本の態度と韓国、中国、ロシアの態度は若干違っております。しかしながら、今御指摘のとおり、この問題については各国の理解を得ながら進めていきますし、日本は、日本の立場というものを各国から理解が得られるように、協力関係をこれからも求めていきたいと思っております。
○穀田委員 今お話ありましたけれども、私は、核問題とこの拉致問題というのは非常に密接不可分の問題だ、国際的に言って。といいますのは、核を放棄するということは、国際社会の仲間入りをするということなんですね。問題は、核が自分のところの抑止力だと考えている考え方の誤りを正すということと同時に、一つ大きな柱となるのは、あの国がみずからの無法を国際的に反省をして謝罪をする、そういう中で国際社会の仲間入りをするということに関連があるわけですね。そこが国際的な道理を説く必要があるという立場を私どもは申しているわけです。
特に、私たちは一貫して批判してまいりましたけれども、北朝鮮が起こした数々の国際的な無法行為、例えばビルマのラングーンでの爆破事件、大韓航空事件などの無法行為、これを批判してきましたが、拉致問題はそういう無法行為の一つであります。だから、北朝鮮が国際社会の仲間入りをしようとすれば、こうした無法行為の清算は不可避の課題なわけですね。
だから、私は、一昨年の日朝首脳会談で北朝鮮が初めて拉致の事実を認め、謝罪の意思を表明したということは大事だと思うんです。それだけに、拉致問題は、日朝二カ国間の粘り強い話し合いを継続していくことはもちろんだけれども、無法行為の突破口として、国際的な共通認識としていくことが大事だということを改めて言っておきたいと思うんです。
最後に、時間が来ましたので一言言っておきますと、私は、この日本と北朝鮮における懸案の諸問題を解決するために、日朝平壌宣言、そして第一回の六カ国協議、第二回の六カ国協議と進んできたこういう前進をしっかり見てとる必要があると思います。一致点を大切にしていきたいと。
その点で、外為法の改正や特定船舶の入港禁止の法案をつくることは、外務省も認めた第一回六カ国協議の合意事項の第四項、六者会合の参加者は平和的な解決のプロセスの中で状況を悪化させる行動はとらない、この合意に反するものであり、両立しないと考え、私ども反対の立場である、このことを改めて表明して、質問を終わります。
○笹川委員長 これにて穀田君の質疑は終了いたしました。
次に、阿部知子君。
○阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
国民の多くが拉致問題の解決と、そして、特にパキスタンでのカーン博士の核の多国間、特に北朝鮮等への核技術の供与という問題もあり、核の問題でまた非常に揺れる国際情勢の中で開かれたこの六カ国協議というものに注目が集まっている中で、私が冒頭総理にお尋ねいたしたいのは、果たして我が国はこの六カ国協議の中でどのようなみずからの主体的な思いとプレゼンスを発揮したかということでございます。
この問題の前段に、実は私は、昨年の六月の十五日に韓国に行ってまいりました。六月十五日という日は、その一年前に、韓国で二人の女子中学生がアメリカの装甲車、訓練中、移動中の装甲車にひかれて無残に亡くなり、その悲しみと、そして、非常に通学路に面したようなところに基地があるという韓国の現実に対して、何とかよい方向に打開してほしいという願いとともに、やはり、北朝鮮と韓国という三十八度線で分断された祖国が一日も早く平和的に統一するようにという願いを込めた集会が持たれた日でもありました。
ちょうど当日、南北を結ぶ鉄道が開通いたしまして、都羅山駅というところの開通もございまして、北朝鮮そして韓国が、やはり本当に平和的に人の往来、物の交流、そして、これからの世界の中での自分たちの平和的役割を果たしたいという願いが強くあったればこそ、私は、今回の六カ国協議の中で、韓国の外相のさまざまな発言、そして、韓国のいわばいろいろな提案というものは際立っておったと思うのであります。また、中国が、先ほど漆原委員も御質疑でございましたが、この六カ国協議というものをきちんと遂行していきたいというために払った努力も、非常に私は多とするものであると思います。
その中にあって、我が国、本来であれば六カ国協議、小泉首相もおっしゃったように、平壌宣言の中で我が国が新たに打ち出したこの六カ国協議という枠は、極めてこれからも重要な意味を持つと私は思いますが、日本にとって、今回のこの六カ国協議という中で示し得たプレゼンスは何かということ、一点、お願い申し上げます。
○小泉内閣総理大臣 まず第一に、北朝鮮が一日も早く国際社会の責任ある一員になること、そして、六者会議に臨んだ五カ国も平和的解決を望んでいるんだということを強く発信したということ、これからも六者協議の場を通じて平和的解決を目指していこうという共通の認識を持てた、これは、私は、評価されてしかるべきだと思います。
しかし、日本の立場に立てば、不十分だという点はたくさんあります。例えて言えば、拉致の問題、それから核の廃棄の問題、これについては日本の言っている主張にこたえてこなかった、こういうことについては残念であります。
しかし、この問題につきましては、作業部会も通じ、そして、六月末にはもう一度六者会議を開こうということについて北朝鮮側も同意したわけでありますし、今後とも、日本としては、この六者といいますか、アメリカ、韓国のみならず、中国、ロシア、いわゆる周辺国であります、こういう国と、協力してくれる場が今後も継続していくということについては、私は、一定の評価がなされてしかるべきではないかと思います。
もとより、この六者協議の場におきましても、日本と北朝鮮は国交がありません。北側はアメリカに対して敵視しております。なおかつ、韓国は同じ民族であります。中国とロシアは北朝鮮と友好国であります。それぞれ立場が違うんです。そういう中にあって、お互い協力して平和的解決を目指すんだ、北朝鮮は早く国際社会の責任ある一員になりなさいよと。それに北朝鮮側も応じてきた、これを壊さなかった、前進していこうということについては、私は、一定の評価がなされてしかるべきではないかと思っております。
○阿部委員 私も、その点は、小泉首相の先ほどからの御答弁のとおりと思っております。
そして、逆に、核問題においては、濃縮ウラン問題を含めて、今後の作業部会にゆだねられる。しかし、その場合には、先ほどの穀田委員の御質疑にありましたように、北朝鮮の核抑止論、そういう論の論拠も含めて、このことは、逆に、私どもが批判もし、よりよい方向に核問題の解決を持っていかなければいけないわけです。この方は、一定、我が国のスタンスというのもはっきり出ていると思います。
一方の拉致問題でございます。これは、先ほどの松原委員の御質疑の中にありましたが、私は、平壌宣言の中で拉致が明文化されなかったということについての首相の答弁はお伺いいたしましたが、果たして北朝鮮から謝罪はあったのであろうかという一点と、そしてまたもう一つの課題は、北朝鮮問題含めて、拉致問題含めて、中国と韓国に、やはり我が国が、いかに働きかけ、協力を求めながら、ともに解決していけるかということを打ち出していくことが極めて重要で、この中国と韓国との信頼関係の醸造ということを小泉首相がどのようにお考えかの二点、お伺いいたします。
○小泉内閣総理大臣 北朝鮮側から、私と金正日氏との会談におきまして、拉致を認め、謝罪し、二度とこのようなことはしないという言明がありましたし、そういう中で日朝平壌宣言を発出したわけであります。
そして、これからも中国、韓国、両国とは密接に連携をとっていきますし、隣国でありますので、そういう交渉を踏まえて六者協議が開かれ、これからも継続していこうということでありますので、日本としては、韓国との協力はもちろん、今回中国も、この六者会合の設定におきまして大変努力をしていただきました。これからも、中国の北朝鮮に対する影響力は大きいものがありますので、連携を緊密にとりながら交渉を進めていきたいと思います。
○阿部委員 私は、実は、韓国と中国と我が国の間に横たわる溝は、まだまだ深いと思っております。そして、例えば中国では、この間、日本が戦争中に、第二次大戦中に残した毒ガス問題、これも、日本は遺憾の意を表明いたしましたが、謝罪はしておりません。やはり外交関係の基本は、きちんと謝罪する。これは北朝鮮にもやはり要求していくべきで、今総理は他の会談の場で謝罪の意はあったと言いますが、拉致問題でのきちんとした謝罪は、私は少なくともないと思います。
その点もあわせて指摘したいと思いますし、最後に、恐縮です、一点、川口大臣に、今の御答弁とあわせてお願いいたします。
この間、小泉首相もおっしゃられました、この六カ国協議に基づく東アジア、北東アジアの平和的な枠組みの大切さというのは本当に余りあるものと思いますが、キャンプ座間というところに、米軍の本国にございます司令部の移設が打診されたということがあったやに伺います。恐縮ですが、今の御答弁とあわせて、このキャンプ座間問題もお願いいたします。
○笹川委員長 川口外務大臣、時間が切迫しているから、なるたけ短目にお願いをいたします。
○川口国務大臣 まず、キャンプ座間の件については、米側から提案を受けたという事実はございません。
それから、謝罪というのは、先ほど総理もおっしゃいましたけれども、拉致について、金正日委員長は、これについては明確に謝罪をなさったわけでございます。率直にお話を申し上げたいということをおっしゃられて、大変に遺憾であるということもおっしゃられていらっしゃいます。それから、その日、九月十七日のピョンヤンでの会合の後、北朝鮮の外務省のスポークスマンからも、その趣旨の談話が外に出ているわけでございます。
○阿部委員 次回の日朝の協議も含めて、拉致問題の一日も早い解決のために、小泉首相のリーダーシップを期待いたします。ありがとうございます。
○笹川委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。
―――――――――――――
○笹川委員長 この際、各分科会主査から、それぞれの分科会における審査の報告を求めます。
第一分科会主査松岡利勝君。
○松岡委員 第一分科会における審査の経過及び内容について御報告申し上げます。
本分科会は、三月一日及び二日の両日審査を行いました。その詳細につきましては会議録に譲ることとし、ここでは主な質疑事項について申し上げます。
まず、会計検査院所管については、会計検査の改善・強化の必要性など、
次に、内閣及び内閣府本府所管については、地域再生構想及び構造改革特区の推進、沖縄振興対策、青少年の健全育成、地震、雪害等の防災・災害対策及び被災者支援のあり方、男女共同参画社会の基本理念、公務員制度改革のあり方など、
次に、金融庁所管については、地域金融機関の現状及びリレーションシップバンキングのあり方、ペイオフ解禁問題、新生銀行の株式上場問題など、
次に、警察庁所管については、治安・防犯対策、道路交通行政のあり方、産業廃棄物の不法投棄問題などでありました。
以上、御報告申し上げます。
○笹川委員長 第二分科会主査植竹繁雄君。
○植竹委員 第二分科会について御報告申し上げます。
本分科会は、総務省所管について二日間審査を行いました。その詳細につきましては会議録に譲ることといたします。
その主な質疑事項は、公職の候補者に対する特殊乗車券交付制度のあり方、市町村合併の現状及び今後の課題、地上デジタル放送移行に伴う放送事業者等の設備投資に対する支援策、災害対策及び消防団活動の充実強化対策、外国人配偶者に関する住民票記載のあり方、地方交付税改革及び税源移譲の必要性、郵政三事業民営化のあり方、災害救助犬の活用方策、公務員制度改革等々であります。
以上、御報告申し上げます。
○笹川委員長 第三分科会主査杉浦正健君。
○杉浦委員 第三分科会について御報告申し上げます。
本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について二日間審査を行いました。その詳細につきましては会議録に譲ることといたします。
その主な質疑事項は、中国残留日本人家族の在留資格問題、刑法における法定刑のあり方、土地登記及び借地借家制度等土地政策のあり方、北朝鮮問題、日米地位協定のあり方、竹島及び尖閣諸島等領土問題、外務省改革問題、国債管理政策等財政再建に向けた取り組み等々であります。
以上、御報告申し上げます。
○笹川委員長 第四分科会主査小杉隆君。
○小杉委員 第四分科会について御報告申し上げます。
本分科会は、文部科学省所管について二日間審査を行いました。その詳細につきましては会議録に譲ることといたします。
その主な質疑事項は、教育基本法の見直し、三位一体改革と義務教育費国庫負担金の関係、法人化に伴う国立大学の運営費と私学助成、六年制導入に伴う薬学教育、障害者の特別支援教育のあり方、小学校における英語教育の導入、学校における食育と校庭芝生化、日本映画・映像の振興策、ITER、すなわち国際熱核融合実験炉の誘致、国産ロケット打ち上げと今後の宇宙開発、宇宙線被曝問題、「もんじゅ」等の原子力政策等々についてであります。
以上、御報告申し上げます。
○笹川委員長 第五分科会主査谷口隆義君。
○谷口委員 第五分科会について御報告申し上げます。
本分科会は、厚生労働省所管について二日間審査を行いました。その詳細につきましては会議録に譲ることといたします。
その主な質疑事項は、年金制度改革、少子化対策のあり方、介護保険制度の見直し、障害者支援費制度の運営方針、動物由来感染症への対応、児童相談体制の強化、育児休業中の厚生年金保険料免除の取り扱い、乳がん検診の状況、若年失業者の雇用対策等々であります。
以上、御報告申し上げます。
○笹川委員長 第六分科会主査北村直人君。
○北村(直)委員 第六分科会について御報告申し上げます。
本分科会は、農林水産省及び環境省所管について二日間審査を行いました。その詳細につきましては会議録に譲ることといたします。
その主な質疑事項は、米国産牛肉の輸入再開に向けた日米交渉の見通し、有明海における漁業の現状、米政策改革推進に向けた政府の取り組み、林業振興推進策、鳥インフルエンザ感染拡大防止に向けた施策、漁業及び農業の担い手対策、循環型社会形成に向けた施策、自然再生及び都市緑化の推進、産業廃棄物不法投棄問題等々であります。
以上、御報告申し上げます。
○笹川委員長 第七分科会主査中馬弘毅君。
○中馬委員 第七分科会について御報告申し上げます。
本分科会は、経済産業省所管について二日間審査を行いました。その詳細につきましては会議録に譲ることといたします。
その主な質疑事項は、中小企業再生支援策及び個人保証等の金融問題、地域経済の活性化策、FTA推進施策の是非、環境面から見たエネルギー問題、ごみ固形燃料推進施策の是非、ネットワークビジネスの育成及び悪徳マルチ商法対策の必要性、我が国の国際競争力向上のためのコンテンツ産業育成支援策、ICタグ普及策等々であります。
以上、御報告申し上げます。
○笹川委員長 第八分科会主査園田博之君。
○園田(博)委員 第八分科会について御報告申し上げます。
本分科会は、国土交通省所管について二日間審査を行いました。詳細につきましては会議録に譲ることといたします。
その主な質疑事項は、観光立国行動計画の概要、まちづくり交付金の趣旨、個別公共事業の採択基準、一般国道及び高速道路の整備、東京国際空港の再拡張事業、関西三空港の機能及び役割分担、スーパー中枢港湾構想等々であります。
以上、御報告申し上げます。
○笹川委員長 以上をもちまして各分科会主査の報告は終了いたしました。
午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時七分休憩
――――◇―――――
午後一時二分開議
○笹川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
これより一般的質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長勢甚遠君。
○長勢委員 自由民主党の長勢甚遠でございます。
参考人の皆さんには、御苦労さまでございます。
きょうは、年金運用問題と新生銀行問題について質問させていただきたいと思います。
まず、年金運用問題でございますが、今、国民の最大の関心事の一つは年金改革でございます。これについてきちんとした議論が必要なわけでございますが、この議論を妨げておるのが、制度運営についての国民の不信でございます。具体的には、保険料のむだ遣いですとか、あるいは年金資産の運用の失敗ですとか、あるいは未納者問題などがあるわけでございまして、こんな運営をしておるのに保険料を上げるというのは何のことだということが言われておるわけでございます。
しかし、こんなことで、年金制度改革のきちんとした議論の妨げになるということがあってはならないことでありますから、ぜひ、こういう問題について、政府において明確な方針を示していただいて、考えを示していただいて、国民の理解をいただいて、きちんとした年金制度改革の議論をしなければならない、こういう観点から質問をさせていただきたいと思います。
まず、むだ遣いということでありますが、国民の感情としては、年金のために保険料を払っておるのですから、その保険料は年金給付のために使われると思うのは、もう当然のことでございます。年金給付以外に使う金があるんなら、それを給付に回すか、保険料の引き下げに回してもらいたいというのが自然の考えでございまして、こういう思いにこたえていかなければならないと思います。
そこで、厚生労働大臣にお伺いいたしますけれども、一体全体、むだ遣い、むだ遣いと言ってきましたが、これまで保険料収入というのは総額幾らあったんだ、そのうち、病院だとか会館などの福祉施設のようなもの、つまり年金給付以外に支出した額はどれくらいになるのかということをお答えいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 ただいま御質問いただきました中で、厚生年金保険それから国民年金の保険料収入でございますが、全体といたしましては、厚生年金保険につきましては、戦後の昭和二十年から平成十四年末までの間、この間におきましては、合計額が約三百三十兆円でございます。国民年金につきましては、制度発足というのが昭和三十六年からでございますから、その昭和三十六年から平成十四年末までの間の合計額が約四十兆円でございます。したがいまして、合計で約三百七十兆円となっております。
また、この間に、今御指摘をいただきましたように、厚生年金保険法の第七十九条、それから国民年金法第七十四条の規定に基づきますいわゆる福祉施設事業といたしましては、よく御指摘をいただきます大規模な年金保養地、いわゆるグリーンピア、被保険者用の住宅融資、年金の福祉施設の整備費、それから被保険者サービスのための年金相談やシステム経費、これらがあるわけでございまして、これらの合計額は全体で約五・六兆円でございます。これは年金給付費以外に支出した経費の合計額でございます。
○長勢委員 今の御答弁ですと、給付以外に使われた保険料の割合というのは大体一・五%程度ということであろうかと思います。
そんなに少ないというわけでもないわけでありますけれども、この中には、当然保険料から支払ってしかるべきものも多々あるわけでございますから、このむだ遣いがあるからといって、制度設計そのものの議論に直接大きな影響があるということではないということも考えながら、正確な議論をしていかなきゃならぬと思いますが、といって、むだ遣いがあって信頼を失っているということは断じて許されないことでありますから、これはこれで、特にきちんとしなきゃならない。
今お話のあった、グリーンピアでありますとかあるいは福祉施設というものが、何で保険料から使うべきであったのかということは、疑問を持つわけでありますけれども、このようなものに保険料を支出したというのはどういうことであったのか、これはやはりここできちんと国民にわかっていただいておかなければならない。ひとつ大臣から、ぜひ御説明をいただきたいと思います。
今、自由民主党では、この問題について、先日、今後、福祉施設の整備費、委託費には一切保険料は充当しない、既存の福祉施設はすべて売却をしていくという方針を決めたわけでありますけれども、大臣、今後、このような福祉施設についてどのような見直しをされていくのか、明確にお答えをいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 ただいまお話がございましたように、年金のいわゆる福祉施設グリーンピア、あるいはまた年金住宅融資、こうしたことが行われてきたわけでございますが、これは、高齢者となりまして年金を受給するまでの、長期にわたります、長い間の保険料を支払い続ける、そういう被保険者に対しまして、被保険者用のいわゆる福祉の向上を目的とした福祉還元という形でスタートしたというふうに思っております。
私、この国会に出させていただきました当初でございますが、昭和四十七、八年でございますが、この当時は、こうした福祉還元ということが非常に叫ばれまして、そしてそのことが国会の中で議論をされたという経緯がございます。
そうした意味で、被保険者が長い間年金を納めていかれる。その間、全然、何ら還元されないではないか、すべて財投の中で他の分野にそれが向けられるではないか、こういう不満があったということも事実だというふうに思いますし、そうしたところからこの制度が設けられたというふうに思っております。
年金の積立金につきましては、その全額が旧資金運用部に預託されていたわけでございまして、先ほども申しましたように、その中で運用されるというようなことがずっと続いていたといったようなことから、福祉還元の話が繰り返されたというふうに思います。
厚生年金保険法などの年金関係各法の規定の中にもそうしたことが書かれておりまして、それに従いまして幾つかの施設がそこでつくられてきたということだというふうに思います。
事の経緯はそういうことでございますが、しかし、運用が十分であったか、そこに対する天下りの問題等々、多くの問題が指摘されているところでございまして、そうした問題につきましては、これは積極的に取り組んで改正をしていかなければならないというふうに思っております。
最後に、こうした年金福祉施設の見直しについてでございますけれども、御指摘をいただきましたように、この年金福祉施設の見直しに全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに思いますし、廃止をすべきものは廃止をし、譲渡すべきものは譲渡をする。中には、年金病院のような施設もございますし、すぐにこれを処理するというわけにもいかないものもございますけれども、それらにつきましても、明確に、国民の皆さん方から御理解のいただけるように整理していきたいと考えておるところでございます。
○長勢委員 この福祉施設等の役割があった時代もあったことはそのとおりだと思いますけれども、今やその役割は、民間企業もこのように発展した中では、終わった。かつ、年金財政がこういう中では、きちんとする姿勢を明確に出すことが肝要だと思いますので、我が党の方針もよく尊重していただいて、大胆に取り組んでいただきたいと思います。
この実際の運用に当たっておられます厚生年金事業振興団の吉原理事長においでいただいているわけでございますが、今、我が党の考え方、また大臣の考え方も示されたわけでございますが、現実に運営されてこられた立場から、どういう御感想をお持ちか、お伺いをしたいと思います。
○吉原参考人 お答えをさせていただきます。
私どもの事業につきまして、保険料の使い方として問題があるという御指摘をいただいていることを大変恐縮に思っている次第でございます。
今、厚生大臣が申し上げましたように、私どもの事業というのは、厚生年金保険法という法律がございまして、その法律に基づいて国がつくった施設を、国から委託を受けて、被保険者や受給者への保険料の還元でありますとか、福祉の向上のためにやっている事業、私どもとしては、それが被保険者なり受給者のために本当になるようにということで一生懸命努力をしてきた事業であるということを、最初に国民の方々に御理解をいただきたいと思うわけでございます。
しかしながら、お話ございましたように、現在のような年金財政の窮迫の状況、それから国民ニーズの変化等を考えますと、こういった福祉施設のあり方につきまして基本的な見直しの時期に来ているということについては、私どももそのとおりだというふうに認識をいたしております。
具体的には、今後、保険料の投入は一切しない、すべきでない、それから、利用者が少なくて赤字となっているような施設は廃止するということは、私は、私どもとしてもやむを得ない、あるいはまた当然だというふうに思うわけでございます。
しかしながら、全体としては、私どもは黒字を出しておりまして、わずかでございますが黒字でございまして、施設によってはかなりまだ利用者がたくさんおられまして、また、仮に減価償却をして独立採算ということでいきましても、今後、健全な経営、あるいは黒字の経営ができるような施設がございます。
それからまた、一方で、地元で非常に、この施設を残してほしい、存続、まあ設置のときからそういう要望もございましたし、今なお存続の要望の強い施設がたくさんあるわけでございまして、そういった施設まで全部売却するということにつきましては、実は、私どもの立場で申し上げますと、いろいろ心配な点があるわけでございます。
それはどういうことかと申し上げますと、一つは、果たして適当な買い主というものが見つかるかどうか、仮に見つかっても、安くたたかれるおそれがあって、国の損になりはしないかというようなことが第一点でございます。それから第二に、私どもで働いている職員が全国で大体五千人、パートの人を含めると約一万五千人ほどの人がおられるわけでございますけれども、そういった人たちが働き場所を失う、そういったことにどう対応していけばいいのか。もう既に、大変職員たちは不安を持っております。そういう問題がございます。もう一つは、施設を廃止することによりまして、地元の経済とか雇用にも悪影響が出はしないかというような心配を持っているわけでございます。
したがいまして、基本的な見直しということは、私、もちろん当然だと思いますけれども、地元の存続要望が強い、それからまた独立採算で健全経営ができるような施設、もちろん保険料は投入しないという前提でございますけれども、そういった施設については、状況によっては存続の余地を残していただければありがたい、これは私どもの希望でございますけれども、そういうふうに思うわけでございます。
以上でございます。
○長勢委員 長年苦労されてきたわけですから、思いはわからぬでもありませんが、我々考えてまいりまして、もう年金の財源で建てた建物があること自体も国民全体の中にはおもしろくないという向きもあるわけでありますから、やはりこういうときは、今いろいろおっしゃいましたが、ひとつ腹をくくって、きちんと対応するという姿勢で臨んでいただきたいものだと思う次第であります。
次に、年金資金運用でございますけれども、平成十三年から自主運用ということでやってまいりましたけれども、どうも結果としてはうまくいっていない、つまり、大きな穴をあけているんじゃないかという批判がされておるわけであります。
運用に当たってこられた年金資金運用基金理事長、参考人でおいでいただいておりますが、どうしてこんなようなことになったというふうにお考えになっておられるか。具体的な運用というのは、しかるべく民間機関にさせておられるわけでしょうが、こういう運用機関の採用なり入れかえというものもきちんとやっていただくということも大事だったんだろうと思いますが、どういうふうにやってこられたのか。
また、中には、役人がやっているからうまくいかないんだという声もないわけではないわけですけれども、理事長は役人出身ということになりますが、国民の金を預かっておられる立場から、どんな点に責任を感じておられるか、そのことを少しお話しいただきたいと思います。
○近藤参考人 お答えを申し上げます。
先生御指摘のように、私どもの運用いたしております年金資金の運用というのは、十四年度末、六兆七百億の赤字になっているわけでございます。累積でございます。
それで、なぜそうなったかということでございますが、非常に長引いた景気の低迷があったわけでございまして、その中で株価が大幅に下落をいたしたわけでございます。これが運用の損失でございますが、これに加えまして、財政資金への利払いもございます。それから、旧年金福祉事業団から承継いたしました債務もございます。そういうことで非常に膨大な損失が累積いたしているわけでございます。
大変金額が大きいということでございまして、多くの国民の皆様方に大変大きな不安を抱かせてしまった、こういうことにつきまして、私どもも深刻に受けとめているわけでございまして、責任も重々感じているわけでございます。
ただ、運用の結果につきましては中長期的な視点からごらんいただく必要がある、こういうふうに考えているわけでございます。幸い、十五年度におきましては企業業績が回復をいたしております。それから、イラク等の国際情勢というのも当時よりは後退をいたしているわけでございまして、国内株式それから外国株式、ともに上昇いたしているわけでございます。あとは、金利の問題とかあるいは為替の問題もございますけれども、昨年の九月末、半年でございますけれども、収益額は二兆四千四百五十二億円となっております。十二月時点につきましては、近日中に発表する予定でございますけれども、これに加えまして一兆円程度の上乗せができる、こういうふうに見込んでいるわけでございます。
資金運用というのは、国民の老後を支える、こういうことで非常に重要な事業でございますので、私ども、今後とも効率的な運用に取り組んでまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
それで、役人がやっているからだめなのではないか、こういう御指摘はよくあるわけでございますし、私どもも、それは、もしいい方がいらっしゃれば民間の方がいいというふうに私自身は思っております。
ただ、現在の段階で申し上げますと、一部の資金を除きましては専門の運用機関というものに委託をいたしているわけでございまして、私どもは、その運用受託機関の選定とか、あるいは評価とか入れかえ、こういうことをやっているわけでございますし、それから、三名の投資専門委員という者がいまして、運用でございますとか法務とかあるいは財務に関しまして、専門的な知見をいただいているわけでございます。一般職員につきましても、そういうことで専門性の向上を努めているわけでございます。
それから、運用機関の入れかえの問題でございますけれども、これは、特に私ども、銘柄を絞って超過収益を目指す、こういうアクティブ運用機関につきましては、公募を行いまして、定性あるいは定量的な評価ということで、かなり大幅な入れかえを行っております。
以上でございます。
○長勢委員 長々御答弁をいただきましたが、制度の説明だけで、何ら責任を感じている姿勢が見受けられません。景気が悪いからというのはみんなよくわかっていることで、その中で何かやるべきことがあったのかなというような、将来参考になるような話でもあるのかと思いましたが、全く無責任な答弁であったと思います。今度新しい法律もできるようですから、今後、資金運用についてこういうことのないように、大臣、ひとつしっかり取り組んでいただきたいと思う次第であります。
最後に、年金に関して、今、年金資金は、いわゆる財政融資資金にお預けしている分が相当あるわけですが、百十二兆円預けていると聞いていますが、何か最近、一部に、財政融資資金の四〇%は不良債権だというあり得ないような話をする人が出てきまして、大変不安を与えておるわけです。こんなばかなことはあるわけがないと思いますが、財務大臣からきちんとひとつお答えをいただきたいと思います。
○谷垣国務大臣 財投から特殊法人に貸し付けている資金は今までもきちっと返済されておりまして、財投資金が不良債権化しているということはございません。
それから、先ほど来委員の御議論のように、年金から財投に、かつて、平成十二年度までは預託していただいておりまして、それが平成十二年度末で約百四十兆あったわけでございます。平成十三年度以降はもう預託はないわけでありますけれども、この返済計画は逐次返済することにしておりまして、十六年度末で約六十八兆円残額があるということになりますが、二十年度末にはゼロになる予定でございまして、そういう御心配は全くないものとお考えいただいて結構でございます。
○長勢委員 この金は年金にとってはとらの子でございますから、大変安心をさせていただきました。
次に、新生銀行問題、ちょっと時間がございませんので、大臣に、また、おいでいただいております森参考人にあわせて御質問をさせていただきますので、御答弁をお願いしたいと思います。
新生銀行、長期信用銀行問題の経過はもう御案内のとおりでございますが、省略をいたしますが、私も金融問題はよくわからない方の一人でございますので、国民の側からすると、どうも外国の、リップルウッド社ですか、ここを中心にしたパートナーズ社というものに二束三文で売り飛ばして、しかも多額な資金援助、何か八兆円という声もたまに聞きますけれども、これは全部国民の負担というわけでもないんでしょうけれども、こういう資金援助もした上、また有利な譲渡条件もつけて、そのあげくに株式上場に伴って大もうけをした、それに税金もかからないということのようでありますから、我々素人からすると、これは何の話だと。ハゲタカファンドとかいう言葉があるようですが、いいようにやられてしまっているんじゃないか。非常に私自身も、不愉快というか、おもしろくない。これはやはりきちんとしてもらわないと、何かすっきりしませんね。この問題に責任者としてずっと取り組んでおいでになったのが森元金融再生委員会事務局長ということでございますので、ぜひ、私のような素人にでもわかるように御説明をいただければと思います。
まず、そもそも何で外国のパートナーズ社に譲渡をすることになったんだ。国内にはそういう相手先がおらなかったのか。何かいろいろなうわさも聞こえてくるものもありますけれども、ぜひ明確にしていただきたいと思います。
また、譲渡条件自体も極めて買い手側に有利だったというふうな指摘があるわけでございまして、特に、譲渡契約において設けられた瑕疵担保条項というのは、譲渡後に貸出資産が劣化した場合には一定の条件で預金保険機構が買い戻すというもので、極めて不用意、また、現実に新生銀行もこの解除権というものを積極的に行使してきたんではないかという批判があるわけでありますが、なぜこの瑕疵担保条項というものをつくらなきゃならなかったのか。また、二次ロス対策について、ロスシェアリングをとるべきではなかったかという指摘もありますので、ここら辺も御説明いただければ大変ありがたいと思います。
そのおまけに、どうしても納得できないのは、こんなに国の税金までつぎ込んだところがキャピタルゲインを得たら税金がかからないということでありますので、何かよくわからない。こんな議論が譲渡の段階でもあったのかどうかはよくわかりませんが、そのことと、また、何で、リップルウッド社ですか、こういうところに課税ができないのか。
何にもわかりませんから、わからない者からすると、外国法人にだけ何か特別に優遇措置でもしているんじゃないかと疑うということになれば変なことになりますから、ぜひ財務大臣からその点は明確にお答えをいただいて、国民のわかるようにしていただきたい、このように思います。
参考人からひとつお願いいたします。
○森参考人 お答え申し上げます。
まず最初に、なぜパートナーズ社に譲ったのかということでございますけれども、御承知のとおり、平成十年の十月に長銀が破綻いたしまして、その直前に国会でお決めいただきました金融再生法を適用いたしまして、速やかな破綻処理を当時求められていたわけでございます。
そういうことから、金融再生委員会におきましてFAも選定いたしまして、金融再生委員会、それから長銀の旧役員、FA、こういうところが日本を中心に全世界から候補先を募ったわけでございますけれども、当時は、思い起こしていただきたいと思うんですけれども、アセットを持つことへのリスクが強く意識されておりまして、いわゆるリスクマネーの出し手というのは本当に限られたものでございまして、名乗り出た先も極めて限定されていまして、結局、平成十一年六月の段階では四グループ、さらにそれが、八月になりますと、そこから二グループがドロップいたしまして、最後に残ったのが二グループでございました。
そうした中で、再生委で選定の基準というものを定めまして、もちろん、再生法三条に基づく公的負担の極小化、こういうのが第一でございますけれども、さらに、金融の安定に資するかとか、金融の効率化に資するかとかいう中に、内外無差別という原則を金融再生委員会は立てさせていただきました。そうした選定基準のもとでこの二グループを比較検討した結果、パートナーズ社がほかよりか有利だったということでございます。
それから、次の御質問で、買い手に有利な契約じゃなかったかということでございますけれども、この譲渡契約につきましてはさまざまな評価があり得ようと思いますし、御批判も耳にしておるわけでございますけれども、最終的に最優先交渉先を検討したときに、結局、平成十一年の九月でございますけれども、優先交渉先を決めたときに、内外にほぼこういうような契約内容だということは示させていただいたわけでございますけれども、それは、最終的には、今の譲渡契約に反映されているわけですけれども、その契約条件というものが、他のものが申し出ていた契約の条件に比して、やはり国にとっては有利だったというところが決め手であったと思います。
当時の金融経済情勢のもとで、かつ金融再生法の枠組みの中で再生委がこういう譲渡を決めたわけでございますけれども、当時の再生委員会としては最大限の努力を払った結果だと認識しております。
〔委員長退席、杉浦委員長代理着席〕
○谷垣国務大臣 課税関係についてお答えいたします。
個別の課税関係についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論で申し上げますと、日本に住んでいない人、あるいは外国法人が日本の中の法人の株式を譲渡した場合の課税関係ですけれども、これは、国内法と租税条約、両方で規律されるわけです。
この場合の租税条約というのは、先進国の標準とされているのはOECDモデル条約というのがございますが、これが、例えば日本とアメリカの間の租税条約でも、日本とオランダの場合の租税条約でも、そのOECDのモデルに従っているわけでございます。
そのOECDモデルはどういうことを言っているかといいますと、要するに、いろいろなところで課税される、二重に課税される、三重に課税されるのを防ぐために、住んでいる居住国、つまり、外国人が日本で取得した場合でいえば、外国ということになりますが、外国で課税されるという形になっているわけです。
ですから、条約上、株式の譲渡益を得るものは居住している国において課税されるというのが条約上の仕組みですけれども、ただ、株式を所有しているところが法人ということではなくて投資組合なんという場合は、もう少しややこしいことがございまして、その国でその投資組合そのものに課税するんじゃなしに、投資組合を構成している個々人に課税をしていくという仕組みをとっていることがございます。そういう場合には、その所在地国、その当該外国で課税されなくて、その組合を構成しているそれぞれの人が住んでいる居住地国で課税されるという仕組みになりますから、この組合を構成している人がいろいろなところにおりますと、それぞれの国で課税されるという形になります。
したがいまして、この投資組合の構成員が仮に日本にいれば、それは日本で課税されるということになるというのが一般論でございます。
○長勢委員 時間が来ましたので、終わります。
○杉浦委員長代理 これにて長勢君の質疑は終了いたしました。
次に、遠藤乙彦君。
○遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。
両大臣、お疲れのところ、大変恐縮でございます。また、参考人の皆様、お越しいただきましてありがとうございます。
私からも、年金財政のむだ遣いの問題についてお聞きをしたいと思っております。
今日、年金改革、最大のテーマでございまして、地元へ帰ると一番大きなテーマになるのがこの点でございます。しかしながら、年金改革の中身の話をしようと思っても、真っ先に出てくる質問が、グリーンピアの問題であり、また天下りの問題であり、また、そういった法人の役員の高給与また高い退職金の問題、常にこれが出てまいりまして、なかなか中身の議論まで入れないという状況があるわけでありまして、今日の年金制度に対する不信をもたらした最大の原因の一つがこの年金財政のむだ遣いの問題であるということを大変私は痛感をしておるわけであります。
今後、年金改革といいましても、将来的に給付の水準が下がり、また保険料が上がるという話であって、国民の皆様に痛みをお願いしなければならない内容でありまして、そういった上で、ぜひともこの問題はしっかりと究明をし、是正すべきものは是正して進まなければ話が始まらない、そのように私は感じている次第であります。
こういった年金の保険料を財源として行われてきたグリーンピアや各種の福祉施設などの福祉還元事業について、年金財政の厳しさの中で、保険料財源の使い方として国民各層から大変厳しい意見が出ているわけであります。
平成十四年度末の施設の数は全国で二百六十五を数えておりまして、年間の利用者は四千四百万人という状況でありますけれども、仮に国有財産減価償却費の考え方を考慮した収支状況で見ると、ほとんどの施設が赤字経営となっているという状況であります。また、年金福祉施設の資産状況を見ても、福祉施設整備に今日まで一兆五千億円を超える費用が投入をされたのに対しまして、国有財産の評価額は一兆円強でありまして、五千億円の差が生じているのが現状であります。
また、グリーンピアにつきましては、被保険者への福祉還元と高度成長のもとでの余暇活動のための公的施設として昭和四十七年に構想され、全国十三カ所の基地が開業したところでありますが、民間部門における施設の普及もあり、平成十三年の閣議決定によりまして、平成十七年度までに廃止することとされております。グリーンピアの整備のために年金財政からの支出総額は、約三千八百億円と見込まれているわけであります。
また、年金の福祉施設の委託先の七種の公益法人に対しまして、いわゆる天下りが行われておりまして、役員数合計千三百七十五人に対して百五十四人が厚生労働省出身、そしてまた職員数二万九千四百四十二人に対して六百十四名が厚生労働省の出身であるわけであります。
こういった年金の福祉還元事業の経緯を見ますと、各種施設の制度発足時の国民のニーズにこたえ、被保険者への還元を図ってきたということ、また、多くの被保険者や受給者に利用されたことを勘案すると、一定の役割を果たしたということは評価をできるわけでありますが、しかしながら、社会経済の状況の変化、また生活様式の変化の中で、これらの福祉還元事業の必要性が希薄になり、経営状況が極めて悪化してきたにもかかわらず、今日まで的確な対応ができなかったということは厳粛な事実であると考えます。
特に、年金財政の見通しが厳しくなってきました平成以降のいわゆるバブル崩壊後にあっても、漫然と施設整備を続けてきたというところでありまして、この点につきましては、政治や行政に携わってきた者の責任は極めて重いと言わざるを得ません。
こういった中で、国民に対する年金の制度への信頼を取り戻すためにも、私たち公明党は基本的に五点に絞って考え方を発表いたしております。
まず第一に、政府においては、今日までの年金の福祉還元事業などの経緯を総括し、国民に十分な説明責任を果たすこと。第二に、年金保険料は年金給付のための貴重な原資であり、今後は、保険料を福祉施設の整備及び運営のために充当しないこと。第三に、各施設の今後の整理に当たっては、年金資金への損失を最小化し、年金資金への貢献を果たすよう努めること。第四に、委託先法人への厚生労働省関係の職員の天下りについては、今後、原則として行わないこと。第五に、委託先法人の役員の在任年齢や常勤役員報酬、退職金などについて、適切な処遇の見直しを行うこと。以上五点を公表いたしておりまして、今後、政府に対しても強くこれを求めていく所存でございます。
こういった視点に立ちまして、年金制度への信頼を回復するために、具体的にまた質問を進めてまいります。
先ほども御説明があったわけでございますが、年金財政の中で、いわば年金以外に使われた額として、六・五兆という数字を大臣は挙げられたわけでありますけれども、この年金財政の中でどの部分が毀損したのか、改めまして、大臣から御説明をいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 先ほども御答弁を申し上げたところでございますが、もう少し具体的に申し上げさせていただきますと、グリーンピアにつきましては、先ほどお話がございましたように、建設費に充てました財政投融資資金からの借り入れの返済等で、今後もこれを出さなければならないもの、今後のものも含めまして約三千八百億円を年金財源から拠出しなければならないというふうに思っているところでございます。
また、年金住宅融資につきましては、利子補給等をいたしておりまして、今後支出すべきものを含めまして約九千三百億円を支出することになります。年金住宅融資につきましては、先ほど六・五兆を挙げましたけれども、その中にはこれから返還してもらうものも含まれているわけでございますから、若干全体の数は違いますけれども、利子補給として九千三百億円でございます。
それから、年金福祉施設でございます。その他の多くの年金福祉施設でございますが、昭和二十七年から平成十五年までの経費は約一兆五千七百億円でございます。
一方、福祉施設にかかわります固定資産といたしましては、平成十四年度末時点で、年金の特別会計に約一兆五百億円の資産が計上されておりますけれども、これは、先ほど御指摘いただきましたように、その値段で売れるかといえば、それはなかなか売れないのが現実だというふうに思っております。
今お話をいただきましたこれまでのグリーンピア、年金住宅融資、年金福祉施設等々に対して使用されました額は、以上でございます。
○遠藤(乙)委員 いずれにしましても、大変巨額のいわば年金財政がむだ遣いされたというふうに、国民は厳しくとらえているわけであります。国民にとりまして、税負担そして保険料負担は大変大きく家計にのしかかっておるわけでありまして、それをむだ遣いされることは、本当にこれは許しがたいものであるというふうに国民はとらえているわけでありまして、また、天下りや高給をはむ等、まさに年金官僚の食い物になっている、これが国民の怒りなわけであります。
こういった一連のむだ遣いは、やはり年金保険料、本来はこれは年金の給付に充てるべきものでありまして、それを目的外に流用してきたことのツケが回ってきた、いかにそれが危ういことであったかということをあらわすものであると思っておりまして、今後はぜひともこの点を厳しく律しなければならないと思っておりますが、なぜこのような目的外の流用、特に法律的根拠も必ずしも私は明確でないと思っておりますけれども、なぜこのようなことになってきたのか、改めまして、大臣から御説明をいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 これも先ほど長勢議員にお答えをしたところでございますが、高齢者となりまして年金を受給されるまでの間、長い間保険料の掛金をしていただかなければならないわけであります。保険料の掛金をしていただくその間に、若干は掛金をしている人たちに対しても還元をすべきだというお声があってスタートしたものというふうに理解をいたしております。
しかし、時代は変わったわけでございますし、そうした時代があったことは事実でございますけれども、この時代の変化に早く気づいて、そしてここを立ち直りをさせなければいけない、時代に合ったようにしなければならないというのは、御指摘のとおりだと私も思う次第でございます。
今後、これを立て直しをいたしまして、そして、今まで行ってまいりましたグリーンピアでありますとか、あるいはまたその他の施設等々に使ってまいりました、いわゆる年金に使用する以外に使ってまいりましたものは、これは原則としてなくしていくという方向で、その方向性の中で、今後逐次整理をしていかなければならないというふうに思っております。
それで、一遍に、来年からというわけにはいかないというふうに思います。例えば年金病院のように整理をするのに少し時間のかかるものも中にはあるだろうというふうに思いますけれども、そうした原則論に立ちまして、廃止をするもの、そして譲渡をすべきもの、そしてまた、今後形を変えた形で、どこかに、民間なら民間に経営をしてもらうべきもの、そうしたものの整理を早く開始しなければならないというふうに思っております。
○遠藤(乙)委員 ここで、このいわゆるむだ遣い問題の責任問題ということを少し問いたいんですが、確かに、当初は、国民のニーズにこたえ、国民のサービスとしてやってきた面は評価できると思いますけれども、特にバブル崩壊後、平成に入って以降、大きく経済環境が変わり、経営環境も変わって、厳しい状況になって、また年金財政も厳しく圧迫をされてきたわけでありまして、多分、この時点において、本来であれば、民間の企業であれば、当然そういった時点で経営を見直し、大きく方針を転換しなければならなかったわけでありますけれども、それ以降もなお漫然といわゆる施設整備が行われてきたことは厳然たる事実なわけでありまして、そういった意味では、この点は厳しく、経営責任、政治責任は問わなければならないと私は考えております。
もちろん、これは坂口大臣以前の話だったと思いますけれども、やはり平成に入ってからの、そこら辺の段階での判断、これをだれも無責任でしなかった、あるいは漫然とやってきた、そういうことがあったわけでありまして、だれが一体この責任をどういう形でとるか、この辺につきまして大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○坂口国務大臣 スタートは、先ほど申し上げたようなことでスタートをしたわけでございまして、だんだんと国民の御要望も変わってきた、それに対応してこの制度の改革を行わなければならなかったわけでございますが、そこがおくれた。平成九年には、このグリーンピアにつきましても廃止の方向が決定されたわけでございますが、平成十三年になって、十七年度までに廃止をするということが閣議決定をされるというようなところまで、少しそこに時間があったことは御指摘のとおりでございます。
それではどの時点までよくて、どの時点から責任があるのかということも、なかなかこれは難しい問題でございますけれども、やはり政治の力でもって方向性を変えるということがなければならないわけでございます。と申しますのは、今まで、衆参におきます、本会議におきます決議でありますとか、あるいはまた委員会におきます再三の附帯決議等があって、そして、その年々の予算におきましてそれが決定をされてくるというようなことがずっと続いてきたわけでございまして、そうした中で、いつからこれが責任が生じたかということを明確に言うことは、私はなかなか不可能なことだというふうに思います。しかし、現時点におきましては、早くこれらの問題を処理する、一日も早く処理する、そして国民の皆さん方の御要望にお答えをするということが非常に大事だというふうに思っているわけでございます。
私の課せられた責任の範囲内において最大限の責任を果たしていきたいと考えているところでございます。
○遠藤(乙)委員 今後二度とこういう失敗をしない、そういう決意はよくわかり、高く評価をするものですが、ただ、やはりこの問題をうやむやにしておくことはまた同じ失敗を繰り返す可能性があると私は思っておりまして、ぜひとも過去の経営責任、政治責任というものを一度きちっと、特に第三者の委員会等でしっかりとこれは調査究明をしていく必要があると私は考えておりますが、この点につきまして大臣の御見解はいかがでしょうか。
○坂口国務大臣 今御指摘をいただきましたような、第三者機関によって過去のものを一度検証するというのは一つの方法ではないかと私も思います。検討させていただきます。
○遠藤(乙)委員 ぜひその方向で、この失敗を繰り返さないためにも、ぜひとも総括をお願いしたいと思っております。
そこで、グリーンピアの問題、これは非常に国民から、まさにむだ遣いの象徴的な問題としていつもやり玉に上がっております。壮大な浪費、壮大なむだ遣いということで指摘をされているわけですけれども、現在の当事者である近藤参考人ですか、このグリーンピアの問題について責任をどう感じておられるか、御意見を賜りたいと思います。
○近藤参考人 グリーンピアの問題でございますけれども、先生が先ほど御指摘のとおり、ちょうど列島改造論といいますか、華やかなりしころでございまして、国土の均衡ある発展、こういうスローガンのもとで、そういう風潮の中で、余暇施設が足りない、こういう要請、あるいは老後の生活の生きがいをどうやって確保するか、こういうことで三十年ほど前に構想されたわけでございます。
それで、大きく約千九百十四億円の建設費を投じまして、利子が千五百億余りということでございまして、合計で、管理費も含めますと約三千八百億円、これはこういうことに相なっておるわけでございます。
私ども、この問題、金額が非常に大きい、こういうことで、いろいろな役割とか原因はあったといたしましても、厳粛な事実として受けとめているわけでございまして、今から考えると反省すべき点が多々あるわけでございます。
それで、今の私たちが十七年度末に廃止ということになってございますので、基金といたしましては、グリーンピアが公共的な施設、こういうことで設置運営されてきたわけでございまして、地域の状況でございますとか、あるいは自然環境あるいは雇用の確保、こういった観点から、できるだけ一括して、できれば地元の自治体に引き取ってほしい、こういうことでお願いをいたしているわけでございまして、今のところ、ほとんどの地元市町村が手を挙げていただいている、こういうことで、具体的な条件あるいはそこの運営主体をどうするのか、こういうことで今真剣に交渉いたしているわけでございます。
この施設でございますけれども、当然のことながら、貴重な年金資金でできたものでございますので、これまで地域で果たしてきた役割が今後とも続けられる、こういうふうな形で、地域で有効に使われる、こういう方針で今努力をいたしている、こういう状況でございます。
○遠藤(乙)委員 このいわゆる福祉還元施設については、国民の目から見ると、結局は年金官僚の天下り先確保の手段ではなかったのか、既得権になってしまっている、結局そういう見方が今定着をしておりまして、大変激しい憤りの対象になっているわけであります。もちろん、いろいろな理由はあったかもしれませんけれども、今後は、基本的には天下りを原則禁止していくというのが我が党の態度でございます。
この点につきまして、天下りの問題につきまして、今後の方針、具体的な検討ぶりにつきまして、坂口大臣の御説明をいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 天下り問題につきましては、先日もここで御議論をいただいたところでございまして、原則禁止をしていくという方向性、その方向性で私も進みたいというふうに思っておりますが、ただ、現在のように、五十二、三歳で肩たたきをするというようなことも、これはちょっとやめていかないといけない。もう少し長くお勤めいただけるような環境をつくりながら、しかし、その先は、役所としてそこで、どこへ、どういうふうに天下り先をつくるかというようなことは、もう考え直していく。それは、独自がお考えになる、第二の人生は独自でお考えをいただくということにしていかなければいけないと私は思っております。
そうした原則をどういうふうにつくり上げていくか。先日もここで御議論ございまして、今国会、六月ぐらいまでの間に案をまとめるように御指摘をいただいたところでございまして、私もそうした案をつくりたいと思っているところでございます。
○遠藤(乙)委員 もう一点、役員報酬、退職金の問題です。
これも国民の目から見ると、そういったむだ遣いをしている割には極めて高い、許しがたいという声が強いわけでありまして、これもぜひ見直しをすべきと考えております。この点につきまして、大臣のお考え、具体的な検討状況を教えていただきたいと思います。
○坂口国務大臣 これも天下りの問題と関連した話でございます。
最近でございますけれども、最近といいますか平成十三年、十四年、この辺のところで二回ほど改正をいたしまして、今までに比べますとかなりこれは低くなっていることは事実でございますけれども、これも、今後、鋭意検討していかなければならないというふうに思います。
しかし、これは仕事と見合ったものでございますから、立派な仕事をしていただいておる人に、給料もあるいは退職金ももう全然だめだというのは、それは通らないだろうと思いますけれども、しかし、それはしっかりとした仕事をしてもらっているかどうかということが先決問題であります。
その上に立って、鋭意これはその都度改革をし、そして、これから先はもう年金のお金は使わないというのが原則でございますから、年金との関係はなくなるとはいいますものの、国の関連をいたしますところの企業があるというふうにいたしますれば、それはやはり国民の皆さん方から見ていただいて、一般的な企業と突出するようなことがあっては決してならないわけでありまして、その辺につきましても見直しを続けていきたいと思っております。
○遠藤(乙)委員 この天下り問題、そしてまた退職金、報酬問題、国民の納得のいく形でぜひとも実現していただきますよう、大臣の御尽力を期待しております。
それから、もう一点、各種施設の見直し、廃止ないし譲渡といったことが大臣から御説明がありました。
それは当然だと思いますけれども、一点留意していただきたいことは、実際に老人ホームに入っておられるような方々あるいはまた従業員の方々は責任がないわけですから、そういった方々へのスムーズな転職等、雇用問題への配慮、これはぜひとも逆にしっかりと対処していただきたいと思っております。この点につきまして、施設の見直しと関連して、大臣の御見解を賜りたいと思います。
○坂口国務大臣 これは、御指摘のとおりでございますし、先ほど理事長からも話の出たところでございます。
整理、統合、それは大事でございますけれども、現在お勤めになっている皆さん方の将来というものも、これもやはり配慮を十分にしていかないといけない問題だというふうに思っております。
○遠藤(乙)委員 国民の年金に対する信頼を確保する一つの重要な道は、年金の原資というものを絶対に毀損させない、むだ遣いをさせないという強い決意と、具体的な体制を整備することだと思っています。
もう一つは、年金の運用、これをしっかりと特化して、十分高い利回りを実現していく。安全性と収益性、この二点を兼ね備えて、十分な利回りの水準を確保していくということが国民の期待にこたえるものだと思いますので、ぜひとも今後は、そういう方針に立って、この貴重なとらの子であります年金基金の運用、年金財源の運用、国民の信頼感に立った上で、最大の努力をしていただきたいことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
以上です。
○杉浦委員長代理 これにて遠藤君の質疑は終了いたしました。
次に、海江田万里君。
○海江田委員 民主党の海江田でございます。
参考人の皆様、御苦労さまでございます。
今、参考人の意見陳述等も聞かせていただきました。それから、坂口厚生労働大臣も、今、福祉関連施設、大変大きな問題になっていますが、年金の加入者にそういうニーズがあったんだというようなお話もございました。それから、もちろんあくまでもこれは年金の加入者の福利厚生のためだということなんですが。
私は、まず吉原参考人にお尋ねをしたいと思います。
吉原参考人が今理事長をしております財団法人厚生年金事業振興団という団体ですが、この前は厚生団という団体でございましたね。
○吉原参考人 おっしゃいますとおり、従前は、厚生団という名称でございましたが、平成二年から、厚生年金事業振興団というふうに名称を変更いたしました。
○海江田委員 それでは、その厚生団のときに「厚生年金保険制度回顧録」という本を出しておるんですが、これはごらんになったことはございますか、どうですか。
○吉原参考人 ございます。
○海江田委員 それでは、しっかりとそのときのことを思い出していただければいいんですが、先ほど厚生労働大臣も言いました、本当に保険の加入者のために、年金の加入者のためにやっているんだということで書いてございますが、ここに、そもそも厚生団をつくったいきさつ、今の事業団の前身ですが、出ていまして、花澤さんという大先輩が「厚生年金保険の歩みを語る」ということで書いているんです。
資金運用と福祉施設
それで、いよいよこの法律ができるということになった時、
これは労働者年金保険法ですね。
すぐに考えたのは、この膨大な資金の運用ですね。これをどうするか。これをいちばん考えましたね。この資金があれば一流の銀行だってかなわない。今でもそうでしょう。何十兆円もあるから、一流の銀行だってかなわない。これを厚生年金保険基金とか財団とかいうものを作って、その理事長というのは、日銀の総裁ぐらいの力がある。そうすると、厚生省の連中がOBになった時の勤め口に困らない。何千人だって大丈夫だと。金融業界を牛耳るくらいの力があるから、これは必ず厚生大臣が握るようにしなくてはいけない。この資金を握ること、それから、その次に、年金を支給するには二十年もかかるのだから、その間、何もしないで待っているという馬鹿馬鹿しいことを言っていたら間に合わない。
そのためにはすぐに団体を作って、政府のやる福祉施設を肩替りする。社会局の庶務課の端っこのほうでやらしておいたのでは話にならない。
大営団みたいなものを作って、政府の保険については全部委託を受ける。そして年金保険の掛金を直接持ってきて運営すれば、年金を払うのは先のことだから、今のうち、どんどん使ってしまっても構わない。使ってしまったら先行困るのではないかという声もあったけれども、そんなことは問題ではない。
二十年先まで大事に持っていても貨幣価値が下がってしまう。だからどんどん運用して活用したほうがいい。何しろ集まる金が雪ダルマみたいにどんどん大きくなって、将来みんなに支払う時に金が払えなくなったら賦課式にしてしまえばいいのだから、それまでの間にせっせと使ってしまえ。
こういうことを言っておるわけですよ。
だから、ここからは、別に、加入者の利益のためとかニーズがあったからとかいう話じゃないんです。これはもう既に最初の厚生団のスタートのときからこういう考え方だったんじゃないですか。吉原さん、どうですか。
○吉原参考人 私もその本を読みました。全部は覚えておりませんけれども、そういう記述があるということは知っておりますけれども、信じられない事実でございます。
今の私どもが読みまして、そこに書いてあることが本当だろうか、これはもう耳を疑うといいますか、私どもとしては到底信じられない。少なくとも、今の現在の私どもはそういう考え方で資金の運用とか施設の運営ということはしておりませんことを御信用していただきたいと思います。あるいは私どもの役所の先輩かもしれませんけれども、大変残念な思いでございます。
○海江田委員 そうはおっしゃいますけれども、ここに書いてある。そういう団体をつくれば「厚生省の連中がOBになった時の勤め口に困らない。何千人だって大丈夫だと。」そのとおり、あなた自身がそれをやっているじゃないですか。どうですか。
○吉原参考人 私が今の職にあることについては、私自身がどうこうということがなかなか申し上げにくいわけでございますけれども、少なくとも、そこに書いてあるような趣旨で私がこの施設の運営でありますとか、あるいは団の理事長として仕事をしているということは絶対ないということを御信頼いただきたいと思います。
○海江田委員 いや、絶対ないとおっしゃるんなら、まず御自分がおやめになってから言えばいいじゃないですか。そうでしょう。
これまで、あなたはどういう経歴ですか。厚生省の年金局長をやって、社会保険庁の長官をやって、厚生事務次官をやって、それから厚生年金基金連合会の理事長をやって、それからまた、さらに財団法人厚生年金事業団の理事長をやっているでしょう。全部、天下りでしょう。このままじゃないですか。
この間、厚生省をおやめになったとき幾ら退職金をもらって、厚生年金基金の理事長をおやめになったとき幾ら退職金をもらって、そして、今はおやめになっていないけれども、今おやめになるとしたら幾ら退職金をもらうのか、それから、今どのくらい収入をもらっているんですか。(発言する者あり)いや、理事長じゃなきゃ聞かないですよ。理事長じゃなきゃ聞かないですよ。
○吉原参考人 せっかくの御質問でございますが、この場でそういうことをお答えすることにつきましては、もしお許しをいただければありがたいかと存じますが。(発言する者あり)やましいことは全くございません。(発言する者あり)いえ、できましたならばお許しをいただきたいと思います。
○杉浦委員長代理 質問してください。(海江田委員「いや、ちょっと相談してもらってよ」と呼ぶ)――吉原参考人、個人のことでまずければ、一般論として、厚生事務次官は幾ら、事業団の理事長は何年幾らという規定をお答えするということはどうですか。
○吉原参考人 次官のときのは、かなり、私が次官をやめましたのはもう十何年前でございますので、ちょっと私から御答弁するのは、正確な御答弁ができませんので、御容赦いただきたいと思いますが、現在の団体の、私が今現在理事長をしております団体の計算の仕方は、そのときの月収、報酬に対しまして、一定の率、たしか百分の二十八でございましたでしょうか、それを掛けまして、さらにその期間、何カ月かという期間を掛けまして算出をされるという計算方式になっております。
○海江田委員 これは自分の、その意味でいえば公職についておられた方なわけですし、それから、今の仕事だって全くの民間の仕事じゃないわけですよ。それは調べればすぐわかりますけれども、私もあえて調べていませんから、だからお尋ねをしているわけです。ただ、通告は出してありますからね。これはお伝えをしてありますからね。私、本当に知らないんです、本当のこと言って、これは。
だから、それはやはり、御自分の仕事に対して、働きに対してそれだけ、仕事を持っているということがここに記録に残ることにやましさがあるんじゃないですか、どうですか。そうでなければ、堂々言えますよ。私は本当にこれはとんでもない話でこんなことは全然違うと言うんだったらば、やはりそれは、まずそうでないような形に自分たちの組織をしなきゃいけないじゃないですか。そうじゃなくて、そのまま、ここに書いてあるとおりのままのことをしておるじゃないですか。時間も本当に限られていますので、また後でお尋ねをしますが。
近藤参考人にもお尋ねをしたいんですが、やはりこの本で、先ほどお話のあった大型保養基地のことですけれども、これについては、横田さんという方が、これはもうお名前を言えばおわかりだろうと思いますけれども、
大型保養基地のことがありますね。あれは私が最初に発案した時は、岩手県の田老と、新潟県の津南、兵庫県の三木の三カ所だったのです。それがいろいろ要望が強くて結局一〇カ所になった。あんなに大きなのは日本中にそんなにいらないというので、ほんとうは三カ所だったのです。
というような記述があるわけですが、これはどういう経緯で三カ所が十カ所になったんですか。
○近藤参考人 三カ所が十カ所になったというのは、私は存じません。十カ所ということで公表されたという事実は知っておりますけれども、最初三カ所だったということは、私自身は知りません。
○海江田委員 それでしたら、今の、これは後で調査できちっと調べていただくことになると思いますから、その中で明らかにしていただければいいんですが、先ほど近藤参考人は、年金の積立金の運用の失敗について責任を重々感じているとおっしゃいましたね。では、その感じておられる責任をどうやっておとりになるんですか。
○近藤参考人 先生、経済の専門家でございますので、運用がどうなるものかということは御承知のことと思いますけれども、釈迦に説法ということで申し上げますと、資金運用というもののあり方ということでございますが、やはり中長期的にこれは考えるべきということでございまして、私ども、これまでのものにつきましては……(海江田委員「どういうふうに重々感じている責任をとるんですかと聞いているんですよ」と呼ぶ)いえ、私どもは、それは中長期的に考えるべきだ、こういうふうに思っております。
それで、申し上げますと、十三、十四の……(海江田委員「そんなことわかっていますよ。委員長、注意してください、さっき同じことを長々と答弁していたじゃないですか」と呼ぶ)
○杉浦委員長代理 答弁してください。(発言する者あり)ちょっと、参考人に話させてください。
○近藤参考人 よろしゅうございますか。(発言する者あり)したがいまして、お答えを申し上げているわけでございます。(発言する者あり)
○杉浦委員長代理 ちょっと、参考人に答弁させてください。
○近藤参考人 先ほど来申し上げましたように、大きな金額が出ておりますので、これにつきまして、国民の皆様方に御不安をかけているということについては、重々、私どもも厳粛な事実と受けとめまして、責任を感じているわけでございます。まさに組織として責任を感じているわけでございます。
そういうことで、私ども、この運用の関係につきましては、ぜひとも挽回をしたい、こういうことで頑張っているわけでございますが、幸い、このところ、株式が戻ってきております。既に九月末で二兆四千億程度戻っておりますし、さらに、十二月末には一兆円程度戻っているわけでございます。
そういうことで、中長期的な視点から効率的な運用、こういうことで私どもの責任を果たしてまいりたい、こういうふうに考えております。
○海江田委員 責任を重々と感じています、重々感じていますということをあなたがおっしゃいましたから、ですから、それならばどうやってその感じた責任をおとりになるんですかということでございます。
あなたは年金資金運用基金の理事長ですから、今、組織として責任を感じているという、責任をとるというようなお話もありましたから、では、組織として、あなたはその組織のトップですから、どういうふうに責任をおとりになるんですか。いろいろなとり方はあると思いますよ、それは。減給にするとか、一日も早くおやめになるとか、いろいろなとり方はあります。何にもとらないんですか。
○近藤参考人 私の進退につきましては、これは厚生労働大臣にお預けしておりますので、当然、そこにゆだねております。
それから、今の責任のとり方でございますけれども、私ども、この運用の問題だけではなく、さらにはグリーンピアの問題、それから融資の問題、いろいろございますので、その点も含めまして、今のところ私がとっておりますのは、賞与を二割カット、こういう形で対処をいたしております。
○海江田委員 だから、そういうことをおっしゃればいいんですよ。
ただ、これは、賞与二割がいいか悪いかは別ですけれども、やはりきちっと本当に身の処し方というのをお考えになった方がいいですよ。
私は、厚生労働大臣、さっき、原則として天下りを禁止とかいって、だけど五十五歳がどうのこうのとかいう話ですけれども、やはり一回全部、オールクリアにしちゃった方がいいんじゃないですか。原則なしですよ、それは。
特に、せんだって、今度この基金が新しく生まれ変わる、それについて、理事長は民間人を充てるということでお話がありましたけれども、そのほかの理事にそのまま、その意味では天下りをこれは禁ずるものではないというお話がありましたけれども、この種の年金の、とりわけこの年金の運用でありますとか、それから、そういう福利厚生の関連でありますとか、幾つも財団あるいは特殊法人がありますけれども、それについては、一回全部クリアにする、そういうところから、やはり天下りを禁止するということをおっしゃってもいいんじゃないですか。
○坂口国務大臣 ここは新しい独立行政法人ができるわけでありますから、新しくスタートするわけでありますので、過去のいろいろの人がおみえになりますけれども、その人たちは一切そこで、一遍一区切りをして、そして新しくスタートをする。
それで、理事長は、先日申し上げましたように、一般の中から優秀な人材をそこから選ぶようにさせていただきます。多くの皆さん方の御意見を聞いて、そこは決めなければなりません。
理事の皆さんは、正式には理事というのは理事長が御指名になるということになっているわけでございますから、私からはどうこうということはなかなか言えないですけれども、しかし、そこは、今御指摘になりましたような、天下りというものを多くしてはいけない、そういう趣旨を私たちも十分尊重しながら、そして新しい組織をつくりますときに、新しい理事長になっていただくその方にそのこともちゃんと申し上げて、そして新しいものをつくっていくということにしたいというふうに思っております。
○海江田委員 本当に人を入れかえるというのは、きょう時間があればこの後やりますけれども、金融大臣の例の長銀の話も、全部、人が入れかわって、そこで初めていろいろな問題も出てきたわけですよ。やはり官僚の方々というのは、その意味ではずっと先輩ですよ、みんな。先輩がやったことをなかなか後の人が否定し切れるものじゃないですからね。そうすると、どうしてもこれまでのを引きずってしまいますし、それから、私はつくづく思ったんですけれども、これはあえて言いますけれども、やはり官僚の皆さんはうそつきですよ、はっきり申し上げまして。
せんだっての国民年金基金の問題で、ダイレクトメールが来る。そのダイレクトメールについて、国民年金に加入をしたデータが、加入のデータが年金基金に行って、この年金基金から私どものところへダイレクトメールが来るわけですけれども、そのとき、どういうふうにやっているんですかということを言いましたら、副大臣が、それはちゃんと国民年金基金とそれから契約をした、契約書を取り交わした、この契約書の中には守秘義務が入っているイシカワコーポレーションという会社の朝霞の工場でもってやっているんだとお答えになった。それは覚えていらっしゃるでしょう。
ところが、これは真っ赤なうそですよ。私があそこでも指摘をしたように、朝霞の工場なんというのは、イシカワコーポレーションというのがなくて、そして、そこのところに関連会社、それも、関連会社というけれども平成十三年からで、その前は関連でも何でもなかった。そこに丸投げをしていたわけですよ、これは。
そことの間でやっているということ自体、これは知らなかったのか、知っていてうそをついたのかわかりませんけれども、そういうことを言っているわけじゃないですか。だから、副大臣がそういうふうに答えたけれども、これは全然違っていたでしょう、私に答えたのと。私の言うとおりだったでしょう。どうですか、お答えください。
○森副大臣 先般の委員の御質問に対して私は十分お答えできかねたところを事実関係を十分調べて報告しますと申し上げました。そういうことで、その後、調査をいたしましたので、その結果についてこの機会をおかりして御報告を申し上げたいと思います。
委員御指摘のとおり、国民年金基金連合会が封入封緘作業を委託している株式会社イシカワコーポレーションは、東京メールサービス株式会社と業務提携し、封入封緘作業を行わせておりました。
しかしながら、株式会社イシカワコーポレーションと東京メールサービス株式会社は、業務の実施や秘密保持等について覚書を締結するとともに、東京メールサービス株式会社での作業は、株式会社イシカワコーポレーションの管理者及びオペレーターの指示、立ち会いのもと、東京メールサービス株式会社の作業者が行っております。
また、東京メールサービス株式会社のセキュリティーについては、警備会社セコムに委託するとともに、カメラにより監視を行い、また、作業室への入退室はカードと暗証番号により厳重に行われておりますという状況でございまして、したがって、秘密保持については実態上の問題はないと考えられます。
しかしながら、国民年金基金連合会と株式会社イシカワコーポレーションとの契約において、再委託に関する明確な条項がないなどのいささか問題があるというふうに感じておりましたので、これらの調査結果を踏まえまして、国民年金基金連合会において、まず委託契約の内容について……(海江田委員「もういいですよ」と呼ぶ)いや、せっかくちゃんと調べて御報告しているんですから聞いてくださいよ。(海江田委員「前回のときにそれを調べてくださいと言ったじゃないですか」と呼ぶ)いやいや、もうちょっとで終わりますから。
そういう個人情報に関する業務委託でありますので、再委託を認めないことにいたします。また、次回の共同ダイレクトメール実施から、競争入札を実施いたします。
こういったことを海江田委員の御指摘を踏まえて対処したことでございます。ありがとうございました。
○海江田委員 もう本当に怒る気もしないけれども、そんなことは最初のときにそのままの答えが返ってくればいいわけなんですよ。最初のときは、申しわけないけれども、それこそ丸め込まれているわけですよ。今のメモだって、お役人が書いたのをそのまま読んでいるんでしょう。まあ、そこまではいいですけれども。
だから、そういうことで、だけれども、大事なのは、そういう大事な私たち国民の国民年金の加入番号、前も副大臣から答弁がありましたけれども、特殊な、特別な例じゃなければその国民年金の加入の記録というのは出しちゃいけませんよ。
特殊特別な例だということで、そこについても私は出すべきでないというふうに思っていますけれども、百歩譲ってそうならば、それならば管理はしっかりやってくださいよということですが、その肝心の管理だってしっかりやっていない。全然別会社がやっているというような状況で、これもやはり基金の中に、基金の理事長も、もちろん加藤さんというこれは厚生労働省の年金局長をおやりになった方です。私も直接お目にかかりましたけれども、何にもわかっていないわけですよ、申しわけないけれども。あるいは平気でうそをつく人なんですよ、これは。
だから、そういうことに関しては、私はやはり、そういういわゆる年金の方々というのは、これからの年金制度をしっかり組み立て直しをしていこうとか、抜本的な改革をやっていこうとかいうような方たちではもうないということを言いたいわけで、そのためにはぜひこの天下りというものを全部やめさせるということにしなければいけないのではないだろうかというふうに思うわけでございます。
それから、せっかく森さんにもお越しいただきました。
お久しぶりでございます。いろいろ国会に出てきてお話を聞きたいというときは何度もあったわけでございますが、そのときにはお出ましにならないで、久しぶりにお出ましいただいたわけでございますけれども、この長銀の問題ですね。
長銀の問題でいうと、私はやはり、資産査定に問題が一番あったんじゃないだろうかというふうに思うわけですね。資産査定に問題があったことによって、それこそ本当に平成の不平等条約と言われているような瑕疵担保の問題でありますとか、それから、株の含み益が二千五百から二千七百億円あったのを、それをわざわざ資本の方に入れてしまって、含み益が二千五百から二千七百あったものが売り値が一千二百十億円ですから、こんなばかな話はないわけですけれども、そんなようなことでありますとか、いろいろな問題は、私はやはり、資産査定が当てにならないといいますか、資産査定のいいかげんさにあったんじゃないだろうかというふうに思うわけです。
長銀がつぶれたところで、約七千社と聞いていますけれども、この七千社の資産査定を適、不適という形で腑分けをしたということですが、一つ一つについては、まだもちろんちゃんと営業をやっている会社もあるわけですからいいわけですけれども、この適、不適、七千社という数字であるのならば大体何割、何割ぐらいになったのかということを教えていただきたいんですよね、適、不適が。
○森参考人 お答え申し上げます。
これは金融再生法の七十何条でございましたか、適、不適の判定をするということになっておりまして、金融再生委員会で平成十年の十二月から十一年の二月にかけて判定をしたわけですけれども、社数では、申しわけございません、私、余り覚えていないのでございますけれども、適、不適の額でございますね、それは、適の資産関連の額が約十兆、そして不適が五兆であったというふうに記憶しております。
ただ、それは平成十一年の二月の話でございますから、それからまた譲渡までに一年ございました。その間に、適資産につきましては、いろいろ顧客の方から離れていったという面もあって、もうちょっと額が下がっていたと思います。
○海江田委員 これは金額も大事なんですが、本当はやはりこれは、まあ七千もあったので大変な事務的な作業だったと思うんですが、私は、この社の割合というのは、これは別に、それが明らかになって困ることなんか何にもないわけですよ。少なくとも、適にやって、そして実際にはさっきの瑕疵担保の特約を使ったところが三百二十一ですか、これは社数で出ているんですよ、件数で。債権の総額で一兆一千七百億円、それで支払い額が八千五百億円という形で、この場合はやはり件数で出ているんですよね。だから、私は、この割合というのをぜひ教えていただきたい。
それから、基本的には、委員会の議事録、私も一生懸命見ようと思ったんですけれども、一部は新聞社が情報公開で出して、ほとんど黒塗りですよ。真っ黒塗りのところでそれが出ておりますけれども、一番大事な仕分けのところ、あれはたしか九九年の十二月から始まって、一月の門松がとれるころからまた再生会議をやって、そして、適、不適をざっと分けていったということなんですが、そこのところがどういうふうになっていたのか。
一部に漏れているところですと、適、不適だけじゃなくて、適、不適で、最初はマル、バツ、それから留保でやっておったのをマル、バツ、三角もつけたという話で、その三角の中に、実は本来ならば不適なんだけれども適にしたというようなものがたくさんあるんじゃないだろうかというようなことも漏れ聞こえているわけですが、そのあたりはどうですか。
○森参考人 お答え申し上げます。
適、不適の判定は、金融再生委員会におきまして、一つの基準に従いまして、その基準はもう公表されておるんですけれども、判定したわけでございます。
すなわち、財務状況という縦の軸と、それから、延滞の、簡単に申し上げれば延滞があるかないか、あるいは条件緩和があるかないかを横の軸にいたしまして、資産査定の結果、正常先となったものについては原則適だと。
そして、要注意先になったものについて、これをAとBというふうに区分いたしまして、Bについては財務状況も繰欠があるし延滞もある。こういうものは原則はだめなんですけれども、二年後にその状況から脱せられるという見込みが立った場合はそれは適にするという意味で、AとBを分けたわけでございます。
今先生御指摘の、三角というのは何かということでございますけれども、それはもう先生一番御承知のとおりだと思うんですけれども、実は、世の中に公表した基準の一番の、前文の方にただし書きがございまして、A、Bとなっていなくても、メーン銀行の強固な支援があるとか、あるいはその会社の親が保証するとか、あるいは特許等があって云々とか、そういうような個別の事柄があった場合には適にできるという条項がございまして、それで適にしたものも確かにございます。それを先生が三角とおっしゃったのではないかと思います。
○海江田委員 少し時間がたってきましたので、かえって時間がたってきて思い出したことも随分あるんじゃないだろうかというふうに思うんですが。
どうですか、その適、不適の大体の割合を、もうあのころのことを思い出されたと思うんですが。七千ですから、かなり積み上げてわっとやったんでしょうけれども、大体三割、七割ぐらいだったのか。七割というのは恐らく適の方だろうと思うんですが、そんなのはどうですか、大ざっぱな思い出しは。
○森参考人 お答え申し上げます。
私、隠しているわけでは全然ございませんで、正直、実は金額の方に頭がございまして十兆、五兆という話を申し上げたんですけれども、それはもちろん、社数で二対一になるわけじゃございません。
長銀につきましては、金額の大きい債権、債権額の大きい債権で不適になったものも多かったかと思いますし、そんなことで、七千を分けてみろと言われても、大変申しわけございませんけれども、記憶にございませんで、ただ、これは調べればある話なのか、その点、当時の再生委員会の仕分けでそこを公表していたのか、ちょっとそこを記憶にございませんで、申しわけございません。
○杉浦委員長代理 海江田委員、後で調べて……。
○海江田委員 済みません。いいんですよ。池田委員から今メモが来まして、この中でやはり言っていますね。六千二百三十社を適ですね。それで、不適が八百五十三ですから、九割、一割ぐらいの話です。
やはりここに本当は一番問題があるということは、竹中さん、よくおわかりだろうと思いますので、竹中大臣は、今度の特に新生銀行の株式の四年ぶりの上場について、これはまさに改革の一つの手本だというように受け取れるコメントが出ていたんですけれども、御自分がなってからじゃなくて、その前の、これは柳澤さんのときが一番だったわけですが、全部の流れをもう一度思い起こしてみて、本当にそんなに、これぞ改革のシンボルだというような形で自慢できるものなんだろうかどうなんだろうかということをお聞かせいただきたいと思います。
○竹中国務大臣 私は、改革の手本とか、そのような言葉を使った記憶はございません。しかし、新生銀行が改革に向けていろいろ努力をして、その上場というのは一つのステップである、そのような言い方をさせていただいたというふうに思っております。
平成十一年、十二年にかけての難しい状況下での話、これは、今、森参考人がいろいろお話ししておられますが、その中で、当時の状況、これはもう今我々にはなかなかはかり知れないような非常に緊迫した状況があったと思います。その中で、その当時の再生委員会の皆様はそれなりの御判断をなさったというふうに思っている次第であります。
我々としては、それを受けて、さらにそれを一つの出発点としてよい方向に向かっていく、それを持っていくのが我々の務めでございますので、非常に大きな長期的な評価というのは専門家の政策評価にゆだねるとして、我々としては、当時の御決断を踏まえて、さらにそれをよくしていくような、その努力を引き続き続けたいというふうに思っているところでございます。
○海江田委員 どうもありがとうございました。
○杉浦委員長代理 これにて海江田君の質疑は終了いたしました。
次に、池田元久君。
○池田委員 池田元久でございます。
参考人の皆様、御出席御苦労さまです。
先月十二日の総括質疑で、年金資金を使った年金福祉施設、グリーンピア、年金住宅融資、それに積立金の運用について取り上げまして、このうち、積立金運用を除く年金福祉還元とされる三事業だけでも最大二兆八千億円の損失が見込まれることを指摘いたしました。
小泉総理は、その後、二十四日に、厚生労働省の事務次官を官邸に呼んで、年金福祉施設の整理合理化を指示いたしました。日ごろは余り評価しておりませんが、この点は評価をしたいと思っております。
きょうは、まず、これまで指摘した四つの事業に加えて、厚生年金、国民年金の保険料から支出された事務費等について取り上げたいと思います。
十六年度は、事務費等、つまり、一般の事務費と福祉施設、年金資金運用基金などへの支出は合わせて二千八百六十七億円を見込んでいますが、昭和五十年ごろからこれまで、どのくらい累計で支出をしてきたのか、お尋ねをしたいと思います。
〔杉浦委員長代理退席、委員長着席〕
○坂口国務大臣 全体におきましては五・六兆円というのは、先ほど御答弁を申し上げたところでございますが、その個々の分類でございますか、それとも……(池田委員「累計額の総額がわかれば」と呼ぶ)
まず、年金給付以外に支出をしました年金保険料の総額は、全体としましては五・六兆円でございます。そして、その中で、先ほど御指摘をいただきました大規模な年金保養基地、それから被保険者住宅融資、それから年金福祉施設の整備、それから被保険者サービスのための年金相談やシステム経費、これらのことがこの中に含まれているわけでございますが、そのほかに、平成十年以降、国の財政状況が厳しいことを受けまして、いわゆる財政構造改革法を受けまして支出をしておりますものが、平成十年から十四年までで〇・四兆円でございます。
○池田委員 お手元に資料1が行っていると思いますが、グリーンピアなどが建設され始めた、本格的に始まった昭和五十年から平成十五年まで、年金資金、保険料から事務費等として支出された額は、昭和五十年からずっと足し合わせると、二ページ目の左側二段目、保険料財源繰入、これは十四年度までですから、隣の十五年度の繰入額を合わせると、五兆八千四百八十五億円が投入されております。これでよろしいですね。――この十年間を見ても、二兆七千二十六億円が保険料から支出されているわけです。
昨夜遅く、この資料と数字を見て、その巨額さに私はびっくりいたしました。想像を超えておりました。厚生労働大臣の感想を一言お聞きしたいと思います。
○坂口国務大臣 確かに、昭和五十年以前と五十年以後とを比較いたしても、五十年以後には非常にふえておりますし、とりわけこの十年間というのはふえているというふうに私も実感いたしております。
○池田委員 先ほどちょっとお触れになりましたが、まず、年金保険料等から支出される事務費等の主な内容、内訳を手短にお示しいただきたいと思います。
○小林政府参考人 お答え申し上げます。
今、大臣からも御答弁させていただきましたけれども、大規模年金保養基地グリーンピア等に対する出資金、あるいは被保険者住宅融資、これで二・二兆円、年金福祉施設の整備費、これで累計で一・五兆円、被保険者サービスのための年金相談、システム経費、これで一・三兆円、その他、先ほど大臣からの御答弁もありましたけれども、財革法を受けた特例措置等を含めまして、全体五・六兆円という内訳でございます。
○池田委員 厚生年金法と国民年金保険法では、年金の事務費は国庫が負担することになっているわけです。また、現在国会に提出されております公債発行特例法案では、これらの法律の特例として、事務費の一部に年金保険料の流用を認めているわけです。
しかし、現実には、特例措置分を除いて、毎年、多額の保険料が事務費として使われているわけです。昭和五十年二百九億円とか五十九年二千五百九十五億円、そして平成十五年では二千九百六十五億円。
年金保険料を事務費に使うことができる根拠は何ですか、坂口大臣。
○小林政府参考人 お答え申し上げます。
厚生年金保険法の七十九条等におきまして、政府は被保険者等の福祉を増進するために「必要な施設をすることができる。」こういう規定がございます。この「施設」といいますのは、土地や建物というものを一般的に想定いたしますが、法令用語といたしましては、さらに広く、こういうような物的設備のほかに人的要素も加味いたしました事業活動全体を総合的に指し示す意味で用いられる、こういうことでございます。この条文を根拠といたしまして支出をさせていただいております。
○池田委員 今お聞きになってわかりますか。「必要な施設をすることができる。」というのが事務費に使える根拠だと言うんですよ。どこにこんな解釈ありますか。こんな解釈ありますか。
それで、これは本当は坂口大臣に答えてほしかったんですが、大切な年金保険料から事務費を出すんですから、そのぐらいのことは、根拠ぐらいは知っていていただきたい。
そして、厚生労働省に問い合わせたところ、根拠は二つの答申なんですよと。
昭和五十四年九月の社会保険審議会厚生年金保険部会、「事務費国庫負担の原則を堅持しつつ、被保険者や年金受給者に対して直接寄与する事項については、その費用を特別会計において負担することもやむを得ない」
それから、臨時行政調査会の第一次答申、これも答申ですよ。関係行政の縮減、効率化を図るため「各種公的年金に対する事務費国庫負担の保険料財源への切換えを図る。」
初めは、根拠が答申だと言ったんですよ。根拠が審議会の答申なんですよ。何でこんなのが根拠になるんですか。それからもう一つ、「必要な施設をすることができる。」のがどうして事務費の支出の根拠になるんですか、坂口大臣。
○坂口国務大臣 今、御指摘になりましたように、厚生年金保険制度改正に関する意見というのが一つ出ておりますし、それから、行政改革に関する第一次答申、ここは御指摘のとおりでございまして、これを一つの根拠にしておるわけでございますが、しかし、全体の問題といたしましては特別会計の中で処理されているわけでございますし、それらの問題は、毎年これは予算の中で処理をされているということだというふうに思いますが。
○池田委員 今、ちょっとはっきりしませんでしたけれども、この答申が根拠の一つになるんですか。
○坂口国務大臣 答申は、これは一つの意見として、こういうことにしようではないかという政策の方向性を示すものでありますから、それによって決まるというものではないというふうに思っております。
○池田委員 厚生年金保険法の第七十九条、国民年金法の第七十四条「政府は、第一号被保険者及び第一号被保険者であつた者の福祉を増進するため、必要な施設をすることができる。」どうしてこれが根拠になるんですか、坂口大臣。
○坂口国務大臣 ですから、先ほど申し上げましたように、これは政策の一つの方向性を示したものということを申し上げたとおりでありまして、これによって決定されているわけではない、法律によって決定されているということを申し上げているわけでございます。
○池田委員 原則といいますか、ルールといいますか、厚生年金保険法では、「国庫は、毎年度、予算の範囲内で、厚生年金保険事業の事務の執行に要する費用を負担する。」国民年金法では、「国民年金事業に要する費用に充てるため、負担する。」これが原則ですよ。だから特例法案を今、国会に提出しているわけでしょう。どこに根拠があるんですか。
○坂口国務大臣 これは、保険料財源繰り入れの福祉施設の根拠というのがございまして、例えば厚生年金保険法でございますと、その第七十九条に書いてございます。読みましょうか。これは、「政府は、被保険者、被保険者であつた者及び受給権者の福祉を増進するため、必要な施設をすることができる。」こういうふうになっているわけでありまして、これを一つの根拠にしてやっているということを申し上げているわけでございます。
○池田委員 坂口大臣は優秀なドクターでいらっしゃると思います。ちゃんと事実、こういう文言を正確に把握されていると私は金融再生法のときも思ったんですが、今の答弁はいただけない。「必要な施設をすることができる。」これがどうして事務費を出す根拠になるんですか。
○小林政府参考人 条文の解釈ということでございますので、私の方から一言答えさせていただきます。
七十九条に規定しております福祉施設というものにつきましては、被保険者等の福祉を増進するための事業、こういうふうに解釈をいたしております。社会保険事務所におけるオンラインシステム、これを活用した年金相談業務につきましては、被保険者等に対するサービスの向上を図るためのものでありますので、これに該当するものとして従来から考えておるところでございます。
○池田委員 「施設をすることができる。」それがどうして大切な年金保険料を事務費に充てる根拠になるんですか。本則は、明らかに、国庫でこれは支弁をすると明確にうたっているわけです。明確な答弁を大臣からお願いしたい。
○坂口国務大臣 先ほども申しましたように、ここに書かれておりますこの法文でそうしたことも読み込んでいくということだというふうに思っております。ですから、それは、施設をつくるということにつきましては、それに対しまして、今度はそれに対する予算も要るわけでございますから、そうしたものについてもこの中で読み込んでいくというふうに理解をいたしております。
○池田委員 そんなことをやっていたら、年金保険料は何でも使えますよ。責任者として、そんなことでいいんですか。「必要な施設をすることができる。」で何で事務費になるんですか。
○坂口国務大臣 ですから、今までそういうふうにやってまいりましたから今申し上げておるわけであります。
○池田委員 答えになっていませんので、待ちます。とめてください。(発言する者あり)
○坂口国務大臣 先ほど申し上げましたように、厚生年金保険法の第七十九条におきまして、先ほどのような文言があるわけでございます。
厚生年金保険法等に規定する福祉施設というのはどういうことかといえば、このような、被保険者の福祉を増進するための事業と解されておりまして、社会保険事務所における社会保険のオンライン、いわゆるソフトの分もその中に含まれているという解釈をいたしているわけでございます。
○池田委員 施設に関連しない事務費はどこに根拠があるんですか。
○坂口国務大臣 ですから、今申し上げておりますように、社会保険のオンラインシステムを活用した年金相談事業等は、被保険者等に対するサービスの向上を図るものでありますから、この施設に付随したものというふうに解釈をしているということを申し上げたわけであります。
○池田委員 そんなオンラインじゃなくても、年金相談というようなこともあると思うんですが、施設に関連しない事務費というのはどういう根拠があるんですか。
○坂口国務大臣 施設に関連しない事務費というのも、それは存在するというふうに思いますけれども、それはまた別途の話だというふうに思います。
○池田委員 でも、根拠は必要ですよ。
○坂口国務大臣 先ほど申し上げました具体的な、グリーンピアの問題でありますとか、あるいはまた住宅融資の問題でございますとか、年金福祉施設整備費というようなものは、これは先ほど言いましたものに入ってくる。ただ、先ほど一番初めに申し上げました平成十年度から十四年度の財政構造改革法を受けた特例措置額〇・四兆円、これは別途のものであるということを申し上げたいと思います。
○池田委員 特例措置でお金を出すのは根拠があるんですよ。またもとに戻っちゃうじゃないですか。保険料財源から繰り入れたこの根拠というのは、今、全然不明確ですね。
次の質問したいんですけれども、これではちょっと質問できませんよ。ちょっととめてくださいよ。
○小林政府参考人 お答え申し上げます。
社会保険事業、厚生年金保険、国民年金保険それぞれにつきましてのそれぞれの事業の事務の執行に要する費用につきましては、厚生年金保険法の八十条あるいは国民年金法の八十五条で、国庫はその費用を予算の範囲内で負担する、こういう規定がございます。これが事業の執行に要する経費の負担の法律上の根拠でございます。
あと、先ほど委員御指摘のような年金相談事業でありますとかオンライン関係の経費につきまして、それが法律上支出の根拠はどこかというのは七十九条、こういうことでお答え申し上げております。
○池田委員 また七十九条がどうだこうだという話になって、この論議、どうなっているんですか。「必要な施設をすることができる。」それでは、施設関連以外の事務費はどうなんですかと聞いているわけです。
○笹川委員長 池田委員に申し上げます。
微に入り細にわたった大変細かい質問なので、本来、事務局に答弁させることはいけないんですが、厚生大臣、全部答えられなければ、事務局がもっと的確に委員の質問に答えられるように努力してください。
○小林政府参考人 お答え申し上げます。
一つは、「施設」と条文上表現されておりますものにつきましては、土地とか建物とかそういうものに限定されず、それ以外の、被保険者の福祉の増進というものに資する、そういうソフト的な事業を実施するために必要な事業が含まれるというのが条文の解釈でございます。
その上で、このような社会保険、厚生年金なり国民年金の事業を行うための事務に要する費用につきましての国庫負担の規定というのが、別途、厚生年金保険法の八十条あるいは国民年金法の八十五条に規定をされておる、こういう状況でございます。
○池田委員 この資料をちょっと見ればわかるでしょう。「年金事務費(国庫負担)」。それから「保険料財源繰入」、一番最後の方に「(特例措置分)」六百八億、これを除いたところで出ているわけですから。それで、施設関連以外の事務費に大事な保険料を出す根拠については全くおっしゃらない。「施設をすることができる。」がどうしてその根拠になるんですか。
全くこれは、国民の皆さんが聞いていたら、根拠はないということですよ。そうでしょう。要するに、これ、根拠はないんですよ。あなた、人をだましちゃいけませんよ。これ、本当に根拠はないんですよ。だから、初めは答申とかなんとかということを言ってきたわけですから。(発言する者あり)
○笹川委員長 厚生労働大臣、今、池田先生の質問は、第一は、設備をつくりますね。そうすると、当然、設備には人件費その他かかりますね。二番目が、年金の相談とかありますね。そこの根拠を聞きたい。
○小林政府参考人 繰り返しになりまして恐縮でございますけれども。
こういうような被保険者の福祉の増進に資する事業、そういう事業を行うために必要な費用につきましても、法令上の用語といたしまして、こういう「施設」という言葉で包括的に表現をするというのが、これは「法令用語の基礎知識」等の基本的な書物においても明らかにされていることでございます。ハードだけではなく、そういうソフト的な事業を行うために必要な経費、必要な費用ということも含まれるということでございます。(発言する者あり)
○笹川委員長 社会保険庁小林次長。
○小林政府参考人 お答え申し上げます。
法律の規定でございますこの「施設」につきましては、被保険者等の福祉を増進するための事業そのもの、この事業に要する経費をこの「施設」という形で読む、こういう解釈で従来からやってきております。こういうことで、被保険者の福祉の増進につながる事業、これをこの「施設」という形に含まれるということでの解釈をさせていただいております。
○笹川委員長 事務局以外の答弁、何かありますか。
○池田委員 常識ある、国語の理解力のある方ならいかにおかしいか、多額の年金保険料が根拠のない根拠で支出をされていることがもう明確になったと私は思っております。
時間がないので、委員長、引き続きこの問題はやりますので、よろしくお願いします。
さて、既に明らかにしましたように、年金資金から年金福祉施設とグリーンピアの建設などに投じられた額は、これですね、それぞれ、一兆五千六百九十七億円、グリーンピア三千七百九十八億円に上っておりまして、ほとんど返ってこないと言われております。年金住宅融資では九千三百二十億円の損失が見込まれております。
その結果、先ほどの事務費を合わせると、国庫からじゃないですよ、年金保険料からの事務費は何と五兆八千四百八十五億円になるわけですよ。ここはまだ書いてありませんけれども。
この保険料が年金の給付以外に使われているわけです。その大半は、まさに、これまで私が指摘したように、むだ遣いをされていると言って言い過ぎではありません。
年金福祉関連事業を行っている百五十九法人には、八百五十八人の厚生省出身者が天下っております。
国民が退職後に備えている貴重なお金がこのように大きく失われたことについてだれが責任をとるのか、厚生大臣と官房長官にお答えをいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 確かに、グリーンピアその他施設に対しまして、多くの旧厚生省の人間がそこに勤めておることは、もう御指摘のとおりでございます。これを今後どうしていくかということにつきましては、今後どうするかの問題を明確にしていかなければならないというふうに思っております。
したがいまして、きょうも御答弁申し上げておりますように、今までの、過去の問題というのはどうであったかということは第三者によって一つの検証をしてもらうということも、それは一つの方法でございましょう。そうしたことを踏まえて、今後の問題について解決をしていく、過去の問題の解決をしながら前を向いた施策を行っていくということが一番大事なことだというふうに思っている次第でございます。
○福田国務大臣 今、厚生労働大臣から答弁がございましたけれども、いろいろ御指摘のような問題があるかもしれませんが、今申されたように、今後、厚生労働省において、グリーンピアの廃止とか譲渡、また年金福祉施設の見直し、こういうことに責任を持って取り組んでいく、こういうことが大事なんだというふうに思っております。
○池田委員 先日は時間がなくて十分に議論できなかったんですが、きょうもそうですが、国民の皆様の貴重な保険料を大きく毀損したことについて、これは政府ですよ、政府は、当事者の厚生労働省から離れて独立の調査委員会を置き、徹底的に調査し、責任の所在を明らかにすべきだと思います。刑事、民事などの責任を追及し、調査の結果を国民と国会に報告すべきだと思います。前にアメリカでペコラ委員会というのがありましたけれども、内閣の考えを官房長官にお聞きしたいと思います。
○福田国務大臣 ただいま私が答弁申し上げたとおりでございますけれども、今後、厚生労働省、この問題に真剣に取り組んでほしい、こういうふうに思っております。
○池田委員 真剣に検討し、具体的にやっていただきたい。国民の年金に対する不信感を解消するには、過去をきっちりと総括し、けじめをつけるべきだと思います。
さて、年金資金運用基金と年金福祉施設の運営をしている厚生年金事業振興団、きょう来ていらっしゃいますが、理事長の退職金はどうなっているか、まず厚生労働省から聞きたい。
○坂口国務大臣 個々に申し上げることはできませんけれども、過去の例を二、三申し上げますと、古い順に三代申し上げますと、この三人の中で一番古いところから申し上げますと、退職金は約四千六百万円、次が四千六百万円、そして一番新しい人が約三千万円、こういう額でございます。これは厚生年金事業振興団でございます。
○池田委員 今、振興団の方しかおっしゃいませんでしたが、今お手元に配付資料2として行っていると思います。
過去、直近三代の理事長の退職金をここに厚生労働省から聞いて掲げたものでございます。厚生労働省の資料からでありますが、第二、第三の勤め先で最高四千八百万円の退職金を手にしているわけです。天下り法人を渡り歩いて何度も多額の退職金と給与を得ている者もおります。この中にもおります。
年金福祉施設では、この前指摘しましたように、社会保険センターと社会保険健康センターといって、全国二回りして建設をしている。福祉施設全体では、民間の会計基準に従えば九七%が赤字となっている。グリーンピアの大半は累積赤字を抱えて、十三のうち六カ所が運営を停止している。赤字を垂れ流しながら、退職金だけはお手盛りの規定で手にする。
これは責任の程度に応じて、退職金の全部または一部を返還してもらうべきではないかと思いますが、厚生労働大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○坂口国務大臣 先ほど申し上げたのは、これは厚生年金事業振興団の方の話でございまして、もう一つの方は、年金資金運用基金の方は先ほど委員が御指摘になったとおりでございます。
確かに、こうした退職金が出ていることは事実でございますし、そしてまた、いろいろ運用されておりますが、運用のいわゆるランニングコストというのはそれぞれの都道府県等でこれはお出しをいただいているわけでありまして、その部分にこの年金資金を使っているわけではございません。
しかし、運用がうまくいっていないところがあることも事実でございまして、それらの問題を含めて、ここを明確にどうしていくかということが今後問われているというふうに思っているわけでございますから、そこを私の責任におきまして明確にしていきたいと思っております。
○池田委員 ところで、年金資金運用基金は、株式を保有している会社の株主総会で、業績不振企業の当時の役員への退職金の支給に反対をしています。基金は、投資収益を目的とする株主として議決権行使は当然であるとしながら、国が民間企業の経営に影響を与える懸念が生じるおそれがあるとして、議決権の行使は直接行わず、委託した民間運用機関が行ったものなんです。
そして、平成五年度株主議決権行使状況報告によりますと、業績不振企業七社の当時の役員への退職金の支給に反対をしています。反対しているんですよ。また、業績不振企業十三社の役員の増員や再任にも反対している。これは大変結構なことですね。これ、確認したいと思うんですが。
○近藤参考人 議決権の行使でございますが、私ども、直接やるということは企業の支配につながる、こういうことで、これは受託運用機関に全くゆだねております。私どもはその報告を聞いております。そういうことでございます。
○池田委員 だけれども、これは株主としての議決権を行使したわけですから、株主側としてそういう議決権を行使したということになります。
いずれにせよ、民間の業績不振企業の役員への退職金支給に反対するのであれば、まず、率先してみずから過去にさかのぼって退職金の返還を求めるべきじゃないですか。
○近藤参考人 先輩たちのことで、しかも、これは政府全体という形で決まったもの、こういうことで支給されたものでございますし、仕事そのものは誠実に、忠実に仕事をしていただいた、こういうふうに思っております。
○池田委員 赤字を垂れ流して、また、成績も上がらずやってきて、漫然と禄をはんで高額の給与と退職金を得ている。被保険者は、少なくとも退職金ぐらいは返していただきたい、こう言っているわけですよ。今の答弁、何ですか。
厚生労働大臣に再度お尋ねしますが、このように年金資金運用基金ですら株主総会では正しいことをやっているんですが、今の答えは非常にあいまいでしたけれども、政府は、過去にさかのぼって、責任の度合いに応じて、関係団体の長から、少なくとも退職金の全部または一部を返還させるべきだということを明らかにしていただきたいと思います。返還させるべきだという考えを明らかにしていただきたいと思います。
○坂口国務大臣 年金資金運用等につきましては、そのときの経済動向等もあるわけでございますから、それらも勘案しながら、十分でなかった、もっとそれは別の方法で行うべきだというような結論が出れば、それはそうした努力もしなければならないというふうに思いますが、先ほど申しましたように、一度ここは第三者による検証をきちっとしていただくというところからスタートをするのが順当ではないかというふうに思っております。
○池田委員 何か基本方針としておっしゃっていただきたい。こんなことでいいんですか。もう一度お願いします。
○坂口国務大臣 いずれにいたしましても、よく検証をして、そして、それに対応しなきゃいけないというふうに思いますが、問題は、今後ここをどうするかということが一番大事でございますから、そこは私の責任で行えるわけで、過去の問題につきましては、その時代、時代の背景と、そして、行ってきたところが、それが十分であったかどうかということの検証が大事ではありませんか。(池田委員「前向きに検討して結論を出すというふうにおっしゃった」と呼ぶ)いやいや、そこは前向きに検証をして、そして結論をそこで出すということでございます。
○池田委員 前向きに検討して結論を出すというのはどうなりました。
○坂口国務大臣 それは、その結論によるわけでありまして――いやいや、その結果に従って結論を出すということでございます。
今後の問題につきましては、これは私の責任でございますから、私の責任のもとで処理をしたいというふうに思います。
○池田委員 森参考人に来ていただきまして、何やら懐かしい感じもいたしますが、余り質問はできませんが、きょうは、私の考えだけちょっと申し上げておきます。
公的資金の投入額が新生銀行絡みで八兆円弱、今後の株価動向やRCCの債権回収状況によりますが、最終的な損失は五兆円前後と言われております。預金者保護などに充てられた三・六兆円はもっと早く長銀の経営是正策をやっておけば少なくできたと私は思いますが、あの時点では大筋やむを得ないと考えております。
私は、国有長銀の売却のやり方に大きな問題があったとかねてから申し上げております。まず、九九年一月の資産判定が甘かった。景気への影響を考慮などして、そごうのような企業も適資産として売り物の中に入れてしまった。またというよりも、そのため、一括譲渡にこだわって、購入側の買い取り調査、デューデリジェンスを許さなかった。言い値で商品の中身を見ずに買ってくれ、腐ったリンゴも入っているが箱もあけずに箱ごと買えというようなものなんです。こんな売り方では買う方は二の足を踏む。数少ない購入側から足元を見られてつけ込まれた。その結果、例の瑕疵担保条項というおまけをつけて、売り主に極めて不利な売買となったわけです。
私たちは、金融再生法にのっとって資産判定を厳正にやる、国有長銀をきれいなものにして、二〇〇一年三月まで、少し時間をかけて売却をする、デューデリジェンスもやってもらう、MアンドA方式の常識的なやり方でビッド、入札してもらう、そういう公正な方法で売却することを考えていました。
私たちがつくった金融再生計画、金融再生法では、破綻金融機関の財務内容の開示、破綻の処理コストの最小化、民間経営手法によって健全な銀行として再建する、株式公開、売却益は公的資金の穴埋めに充てることにしていたわけです。国有後の資産判定から、先ほど海江田さんも指摘しましたが、再生委員会のとった行動は、九九年三月の資本注入も含めて、日本の金融を再生させるという私たちの考えとは異なっていた。迷走が目立ったと言って言い過ぎではない。これを教訓にしていただきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○笹川委員長 これにて池田君の質疑は終了いたしました。
次に、生方幸夫君。
○生方委員 民主党の生方でございます。
谷垣大臣に、質問通告はしていないんですけれども、先ほど財投に関して答弁されておりましたので、そのことで一言お伺いしたいんですが、財投の資金は心配ないということを重ねて谷垣大臣はおっしゃっておりました。この間も私質問させていただきましたが、財投の資金が入っている公社公団の中に大幅な債務超過に陥っている企業があるんではないかというようなことを指摘させていただきました。
例えば、日本道路公団が、今度、いずれ民営化されるということになれば、そのときに仮に、この間の調査でもわかったように、債務超過というような状態になっていた場合、その債務超過の分は債権放棄をするんですか、それとも公的資金を導入してその債務超過の分を穴埋めするのか、そこの点をお伺いしたいと思います。
○谷垣国務大臣 財投機関の健全性ですけれども、先ほど、きちっと返済されていると申し上げました。それで、幾つかそういう御議論が出るのは、一つは、特殊法人などに対して、財投とあわせて国の補助金などが投入されていることがあって、それを問題視して不良債権化しているというような御議論がございますけれども、これは特殊法人が行う事業の受益者が負担する金利や料金を一定の範囲等に抑えるという、政策的に投入したものですから、これを不良債権だと言っていただくのはちょっと違うんだと思うんですね。
それから……(生方委員「いや、私が聞いているのは、いいですか、もう一回、じゃ質問しましょうか」と呼ぶ)いや、わかります。
それで、そこのところは、確かに公団、事業団等に、例えば旧国鉄であるとかあるいは本四公団のように、需要が当初見込みのとおり推移しないで、それで当初想定した以上の国民負担を求めることとなった事例があるのは、これは事実だと思います。ですから、既往の事業については収支採算性をチェックする等のいろいろなことをやらなきゃいけないと思いますし、新規の事業については精査もしなきゃいかぬ。
そこで、今おっしゃったのは、これから、今のようにどう整理をしていくかという議論の中で、赤が出た場合どうしていくかということだと思いますが、それはやはりその数字を確定しませんと、どうしていくかという答えはそのときに判断しなきゃいかぬと思います。
○生方委員 いや、債務超過になった場合、例えば一兆円債務超過になっていたという場合、債権放棄をするのかあるいは公的資金で穴埋めするかしなきゃ民間企業になりようがないですよね。
国鉄のときもそうだった、あのときは清算事業団というのをつくりましたけれども。道路公団の場合も、多額になった場合は、そういうようなものをつくるのか、あるいは債権放棄するのか、公的資金で穴埋めするのかというぐらいの方針は出ていると思いますけれども、いかがですか。
○谷垣国務大臣 それは、それぞれの機関がどうなっていくのか、その中身をよく見てこれから、もしそうであればですよ、もしそうであれば、今まだどうなっていくかわからないわけですから、もしそうであればその場で判断ということを申し上げているわけで、今どうするか、債権放棄するかあるいは穴埋めするかと言われても、ちょっとまだお答えの材料はございません。
○生方委員 私が聞いているのは、財投は大丈夫だと言っているから、大丈夫だと言っていたって、こういうことがあって、ひょっとしたら財投の資金が損なわれるかもしれないわけでしょう。年金の基金だって財投に貸し付けていたわけです。戻るというふうに言って、二十年になって本当に戻るのかどうかというのは、最後は、本当は足りませんでしたという話になりかねないわけですからね。道路公団の場合も、この間の内部資料では、債務超過だというような内部資料も出ていたりしているわけですから、今の段階から、少なくとも政府としては、このときはどういうふうにしなければいけないと。
だから、谷垣さんがおっしゃるように大丈夫だということは言えないわけでしょう。大丈夫じゃないかもしれないわけでしょう。道路公団だけだってこうなんですから、ほかにもいろいろな事業団があって、債務超過に陥っているところがたくさんあるんだという指摘もあるわけで、その場合どうするんですかと言ったら、財投は絶対大丈夫だということは言えないわけですよね。どこかで必ず税金で穴埋めするのか債権放棄するのかしなければ、これはチャラにならないわけですから。
今までのようにずっとこのまま生きているんならば何とかごまかしていけるでしょうけれども、これは改革をして民営化するなりなんなり、廃止するなりしていこうというとき、その最後で確定するわけですよね。そのときの出口をきちんと政府としては、そのときになってみなきゃわからないというんじゃ、やはりそれは無責任で、どういうふうにするのかぐらいの方針は打ち立てておかなければ、国民だって、いきなりこんな負担が来ましたよと言ったら納得ができないと思うんですよ。
○谷垣国務大臣 それは、先ほど申し上げましたように、既にいろいろな失敗が出ているものは、やはりそれはきちっとどう見直していくかということがあると思いますし、これからの計画の立て方も精査しなきゃいけません。
その上で、今おっしゃったような、それぞれの機関を仮に民営化したりスクラップしていくときにどうなるかという話は、それはまだ中身が明らかに全部はっきり、幾ら負担が出るとか、明らかになっていないわけですね。それを今どうするかと言われても……(生方委員「いや、どうするかじゃなくて、考えておくべきじゃないですかと言っているんです」と呼ぶ)いやいや、それは、だから一つ一つの事業はやはり常に精査していかなきゃいかぬと思います。きちっと見ていかなきゃいかぬと思いますが、今、民営化するとき赤が出たからどうだという仮定の形で御質問がありますと、ちょっとお答えができないわけです。
○生方委員 私が質問しているのは、大臣が財投は大丈夫だと言っているけれども、大丈夫じゃない要素があるでしょうと。大丈夫だと何回もそう言い切っちゃって、最後は大丈夫じゃなかったということになったらそれは困るんじゃないですかということを言っているんですよ。
○谷垣国務大臣 これは、例えば政策金融機関にしても、政策金融機関でありますから、やはり貸し付けているものに、確かにそれは、不良債権であったり貸し倒れの危険性のあるものは一定程度あるわけですね。それはやはりやむを得ないことだと思いますが、一つ一つの健全性はやはりちゃんと見ていかなきゃいけないと思いますが、それは今やっておるということであります。
○生方委員 質問の趣旨がよくわかっていないんです。大丈夫だとは言い切れないでしょうと言っているだけの話なんですよ。
だって大臣は、再三大丈夫だと。大丈夫じゃないわけです。どこかで穴埋めしなきゃいけないでしょうということを言っているだけの話であって。だから、余り大丈夫だ、大丈夫だと言っていて、最後になって、こんなに借金がありましたよ、そういう国民にツケを負わせるようなことをしちゃいけませんよということを言っているんですよ。
○谷垣国務大臣 わかりました。そういう御懸念と御注意はよくわかりましたので、承ります。
ただ他方、財投の財務内容にやはり過大な御懸念があることも事実でありまして、先ほど私が申し上げたような、政策的に一般会計から入れているようなものまで財投のいわば失敗の象徴だというようなとらえ方があって、過大な不安があるものですから、先ほどのようなことを申し上げた。
ただ、事業でありますからいろいろな問題点があって、では一〇〇%、二〇〇%、絶対確実かと言われると、それはよく見ていかなきゃいかぬということだろうと思います。
御注意はよく承っておきたいと思います。
○生方委員 問題があることは明らかなんで、やはり財務省としてもきちんと調べて、国民の前に明らかにしていただきたい。
これはよくわからないんですよ、我々も、中がどうなっているのか。額が大き過ぎて、一億二億だって余り額が大き過ぎてわからないですが、一兆二兆といったらもう本当に何か、あの住専のときは六千九百億というのでみんな驚いたんですが、それが一兆になっちゃったらみんな余り驚かなくなっちゃって、一兆二兆というと何かもう豆腐のような感じになっちゃう。
やはりそれは、非常に大きな額ですから、国民もよくわからないので、できるだけ財務省としてもきちんと調査をして、問題があるなら、どこに問題がある、その問題をどういうふうに解決するんだということをきちんと示さないと、年金のお金だってたくさん入っているわけですから、戻ってくると言って本当に戻ってくればいいですけれども、最後足りませんでしたということになったらこれは泣くに泣けないわけです。
今の論議を聞いていると、額が大き過ぎるから、本当にいいかげんな使われ方もしているんじゃないかと。坂口大臣も大分苦しい御答弁だったでしょうけれども、でも、やはり額が大きいからそういうことになっちゃうんですね。一兆二兆だから、一億二億は一兆二兆から比べればもう本当に取るに足らない額だからそんなものはいいやというようなことになってはいけないので、これは国民の大事なお金ですから、そのことを申し上げておきます。
新生銀行のことについてお伺いしたいと思うんですが、森参考人は、もう財金でも大分、何度もお呼びしたんですけれどもなかなか出てきていただけないで、今、今度出てきていただいたということで、これも、もう新生銀行が上場しているわけですから、過去のことを余り振り返って根掘り葉掘り聞いても仕方がないとは思うんですけれども、これから先もこういうような事例があるかもしれぬということで、これから先にどう生かすかという観点から質問をさせていただきたいと思いますが、私も、当時の新聞をいろいろ読み返してみまして、聞いてみたいことが何点かございますので。
これも我々も財金でいろいろ論議をしたんですけれども、リップルウッドに決まる過程で、当時、中央信託と三井信託が名乗りを上げていたんですけれども、我々もあの当時から、どうも、日本企業も手を挙げておかなきゃいけないんじゃないかという程度、おつき合いで挙げていて、本命はもうリップルウッドに決まっているんだというような感じを非常に強く受けたんですね。これは新聞を読みましたら、中央信託の方でも、我々は結局は名乗りを上げているだけ、こまに使われているだけじゃないかというようなことを言っている新聞もございました。
その中で、一点まずお伺いしたいんですが、今非常に問題になっておる瑕疵担保条項ですね。瑕疵担保条項というのは最終的にリップルウッドと再生委員会が決めたことでございますが、これは、例えば瑕疵担保条項というのがもともとあれば、三井信託と中央信託がその条項があれば引き受けたかもしれないと私は思うんです。その辺は内部は知りませんから、そういう交渉の過程でリップルウッドに示したような瑕疵担保条項をつけるよというようなことを中央信託、三井信託にも再生委員会として言ったのかどうか、その辺からまずお伺いしたいと思います。
○森参考人 お答え申し上げます。
先生の御指摘は、ポイントは、瑕疵担保条項をなぜつけたか、それはいろいろな候補者に平等に示したのかという点であるかと思いますけれども、まず、瑕疵担保条項につきましては、通常のMアンドAであれば、先生御承知のとおり、デューデリジェンスを前提に、つまり資産査定を前提にいたしましてその商品、今回で言えばその銀行というものを値決めする、これが通常の方法だと思いますし、再生委員会も、第二地銀なり信用組合とか、いわゆる金融整理管財人方式をとった場合にはそういうデューデリをさせて値決めをして、その結果落札させて、一番国にとって有利なものに決めるというやり方をとっていました。
ただ、御理解いただきたいのは、破綻した長銀というのは二十四兆円という世界にも例のない大きな資産を持った銀行、これが破綻したわけでございまして、FA等も使い、日本を中心に世界じゅうに、そういうリスクマネーといいましょうか買い手を探したときに、そしてそれが、先ほどちょっと申しましたように、嫁一人に婿を何人もというような状況とは全く正反対の状況で、当時は資産を持つことのリスクの方が強く意識されて、どこも腰が引けていたという状況でございました。
そんな中で、幾つかの候補者に、デューデリジェンス方式でやるということはもちろん我々考えていました、それが通常の方法でございますから。ところが、どの候補者も例外なく、二十四兆もの資産をデューデリすればどれだけの公認会計士を集めなきゃいかぬか、どれだけの時間がかかるか、そしてかつ、それだけのコストをかけて本当に自分のところに来れるかどうか、それもわからない、入札ですから。そういうことから、どの候補者も、正直申しまして、デューデリジェンスには極めて消極的でした。
このごろ新聞等で、新生銀行の上場を契機に、過去についていろいろなことを言われていること、いろいろな評価を読ませていただいております。
ただ、私は、この点についてはぜひ御理解いただきたいのでございますけれども、我々が瑕疵担保で最初からやろうとしたわけではないので、まず、デューデリという通常の方法でやろうとしたら、やはりコストと時間の関係から無理だなと。
そして、異口同音に相手先から来たのは、むしろ二次ロス対策を求める、二次ロス対策をやってくれ、こういう話でございました。その二次ロス対策としては、ロスシェアリングという考え方を示唆したところもございましたし、資産の瑕疵の責任をきちんと規定してくれというような示唆もございました。
そんな中で、再生委員会としては、ロスシェアリングにつきましては、旧住専法に明文の規定があるのに対して、金融再生法にはそういう明文の規定がないものですから、リーガリーに考えて、やはり反対解釈として、金融再生法の枠組みの中ではロスシェアリングは無理だなということになりまして、それでは民商法の法理に基づく瑕疵担保というのはどうであろうかということになりました。
そして、金融再生委員会の中の法律専門家、さらに預保の顧問弁護士、こういう法律専門家で中身を詰めまして、現在譲渡契約の中にございますような瑕疵担保条項というものを再生委員会の側で詰めまして、これで二次ロス対策を我々は考えていますということを、最終的には、先ほどちょっと、四グループになり、二グループがドロップして二グループになったと申しましたけれども、たしか四グループ全部にこの考え方を示しました。
最後の二グループがリップルウッドとどこかということは我々は申し上げられない立場でありますけれども、その最後の二グループは当然瑕疵担保を前提としたオファーを、ビッドをしてまいりまして、それを総合的に再生委員会が検討した結果、国にとってはリップルウッドの方が有利であるということで、そういうふうに決めさせていただいた次第でございます。
○生方委員 ロスシェア方式と瑕疵担保条項の方式と二つあって、委員の中には、再生法そのものを改正すればロスシェア方式だってとれるんじゃないかというような意見もあったと思うんですね。これは結果論ですから、瑕疵担保条項でやった方がいいのか、ロスシェアでやった方が、国の損害はどちらが大きかったか、これはロスシェアをどういうふうにシェアするかということによってまさに違ってくるんですけれども、少なくとも、瑕疵担保条項を全部利用されるより、ロスシェアの方が国民にはわかりやすかったと私は思うんですね。だから、そういう選択もあったと思うんですね。
そういう論議は、再生委員会の中では、改正をした方がいいんじゃないかという論議はなかったんですか。
○森参考人 お答え申し上げます。
もちろん、ロスシェアリングが出ましたときに、再生法の中では無理だ、しかし旧住専法に例がございますし、実際その後、預保法の改正の際にはたしかロスシェアリングという規定を入れたと思いますので、当然そういう議論は、再生委員会の正式な場であったかどうか私記憶にございませんけれども、ございました。
ただ、平成十一年の二月に資産判定を終えて、この問題、つまり二次ロス問題というものをどうするかが一番盛り上がったのが六月、七月、八月あたりでございます。そのときに我々は資産の劣化を一番恐れたわけでございます。
これだけ大きい金融機関がつぶれまして特別公的管理銀行になりましたけれども、特別公的管理銀行というのは基本的にニューマネーを出せません。したがって、正常先であっても極めて苦しい融資姿勢を受けざるを得ないわけです。一刻も早く民営化にした、一人前の、ニューマネーも出る銀行にしたいわけでございます。
そういう観点から、スピードの観点から、我々は瑕疵担保でいこうと。それが資産劣化を防ぎ、国民負担の極小化に資するんだ、そういう考えで当時の金融再生委員会がおったということを御理解いただきたいと思います。
○生方委員 その当時、再生委員会は、譲渡先決定の条件として、一つ、国民負担の最小化というのと健全な借り手の保護というのを挙げていましたですね。
私が瑕疵担保条項云々と言うのは、健全な借り手というか、健全じゃない借り手もいっぱいあったんでしょうけれども、借り手保護という意味からいいますと、瑕疵担保条項というのが非常にうまく使われたというか、過剰に使われたというか、それによって、貸しはがしという言葉が出たように、先ほどの質問にも出ましたですけれども、たくさんの中小企業が倒産をしたわけですね。
それから、そごうなんかだって、債権放棄を求めたのに対して、債権放棄しちゃえばお金が戻ってこないから、結局はこれはそういうふうにしなかった、それでつぶしてしまったというようなことがあって、結果として、その目的であった、健全であるかどうかは別として、借り手の保護という点に関しては瑕疵担保条項が悪い方に作用したんではないかという観点から私は質問をしているんですけれども、いかがでございましょうか。
○森参考人 お答え申し上げます。
一つは、ロスシェアリングとの比較でございますけれども、ロスシェアリングも決め方の問題でございますから、どういう立法をするかということによりますけれども、アメリカにありましたロスシェアリングであれば、まず、瑕疵というのがあったかどうかと関係なく、ある債権から利益が出たのか損が出たのかというところを一定期間で切って、その損得を半々とか八、二とかいうことで分け合う。これは、申し上げれば、いわば時期の点、その債権を譲渡した後の先についても、売り手はアンコントローラブルなんですけれども、その後のことについてまでロスシェアを求められるというデメリットもあるかと思います。
一方、瑕疵担保のポイントは何かといえば、瑕疵が、つまり、まだ見えない瑕疵でございますけれども、見えない瑕疵が譲渡時にあった、それが実現することによって、その瑕疵が実現し、かつ二割減価したときには、買い戻すという言葉を当時使いましたけれども、法律用語で正確に言えば、解除権の行使でございます。すなわち、譲渡したその債権の譲渡契約、一本一本の譲渡契約をみなし契約いたしまして、その譲渡契約を解除しますから、いわば売らなかった状態に戻すということでございます。
そして、もう一つ、生方先生に一番御理解いただきたいのは、先ほどちょっと、瑕疵担保をうまく利用された、買い手の方は、いわば融資管理を意図あるいは過失を伴って怠れば二割減価になるじゃないか、いわばモラルハザードを起こす規定だ、そういうふうにおっしゃられましたけれども、その点、我々は十分に考えまして、瑕疵の生じた責めが売り手側にあるのか、買い手側にあるのかということを厳密に判定する、それを契約に盛り込みました。
すなわち、売り手側に責めが帰するものだけ瑕疵担保条項を実施して、買い手側に責めを帰すべきものについては、一切、瑕疵担保、解除権行使は認めない。これは今でも、この譲渡契約をきちっと実行し、見守っていますのは預金保険機構でございますから、預金保険機構がそこをきちっと見ながら、一つ一つの解除権行使要求に対して対処してきたというふうに理解しております。
○生方委員 結局、私は、再生委員会の旧長銀に対する資産査定そのものがきっちりできていなかったんじゃないかと。きっちりできていれば、査定、資産が全部きちんと把握されていれば、瑕疵担保条項なんてものをつけなくたって、例えば貸倒引当金を幾ら幾ら充てればいいということになったと思うんですね。
結局、先ほども、適、不適で、割合からいえば、恐らく九割対一割ぐらいの割合で適にしちゃったわけですね。適にしたけれども、その後ですぐにもう倒産したところがいっぱい出てきているわけで、これは、そごうもマイカルもそうだし、第一ホテルもそうだったし、そういうような形でたくさん出てくるわけですから、その再生委員会がもともとやっていた査定そのものがおかしかったんじゃないか、おかしかったその自信のなさのあらわれが、瑕疵担保条項という買い手に有利なような条項に私はしてしまったんじゃないかと。
まあ、森参考人はいろいろおっしゃいましたけれども、その当時はそういうことしかなかったんだというようなこと、それは時間との勝負だということも私は理解はしますけれども、やはり最近の金融庁の検査なんかを見ても、検査が最近は大分厳しくなりましたけれども、前は厳しくなかったと。逆に言えば、厳しくなっているということは、前は厳しくなかったということも言えるわけで、今さら言ってもこれはしようがない話ですけれども、これはふだんからやはりきちんとしておかなかったというのがそういう結果になっているんじゃないかということを指摘だけさせていただきます。時間がもう余りないので、申しわけございませんが。
それで、竹中大臣にお伺いしたいんですけれども、今は、少し法律も整備をされてまいりましたから違う処理もとれたと思うんですけれども、竹中大臣があのときに仮に再生委員会の委員長、柳澤さんの立場でございましたら、この方法というのが最善だったか、あるいは違う方法もあったのではないか。もしアイデアがあれば、こうすればよかったというのがあったら、お伺いしたいと思います。
○竹中国務大臣 今、森参考人の御意見、私も改めてそばでお伺いをいたしまして、当時のやはり緊迫感といいますか、時間的制約、それと、初めての経験であり、その中で世界最大規模の破綻を扱わなければいけない。それは、改めて、やはり難しさはあったんだと思います。
仮に私がそのときその立場にあればどうかという御質問なんでございますが、これは、当時の緊迫感も含めて、私が当時の方々と同じ情報量、同じ雰囲気、環境の中に自分を置くことは不可能でございます。そうした中で、私なればこうしたというような意見は、今の私の立場では申し上げるべきではないというふうに考えます。
いずれにしましても、あの当時の方々のさまざまな御努力があった、御尽力があったというふうに思っておりますので、それを踏まえて、私としては、今の状況の中でしっかりと対応していきたいと思っております。
○生方委員 森参考人にもう一点お伺いしたいんですけれども、長銀の後、日債銀の処理であおぞら銀行が誕生して、ソフトバンクが一番多くの株を取得して、我々も、リップルウッドの場合と同じように長期に保有をしてほしい、これは投資の対象とするんじゃなくて、きちんとした新しい銀行をつくるための投資なんだということでソフトバンクは株を買ったというふうに理解をしていて、もうおととしになりますか、ソフトバンクが株を売るかもしれぬというような話が出たとき、私も、孫さんを金融委員会の場に参考人としてお越しいただきまして、どういうふうにするんですかと。
そのときは、全く結論は出ていないという話で、そのとき塩川財務大臣だったと思いますが、常識的な判断をしてくれるはずだというふうに言っていたんですが、結局、ソフトバンクは、三年ぐらいしか保有しないで、瑕疵担保条項が外れた途端に株を売って、大体四百五十億ぐらいで買ったのを一千億ちょっとで売ったわけですから、五百億円ぐらいの利益を得ているわけですね。
これについて、私は本当にこれは、当時、孫さんにも、大して大きくもないリスクでそんなに三年でもうけちゃいけないじゃないか、それはもう国に返すべきだというようなことを言ったこともあったんですけれども、仕組みをつくって実行された森参考人として、このソフトバンクの行動についてどういうふうな感想をお持ちか、お伺いしたいと思います。
○森参考人 お答え申し上げます。
長銀の場合も日債銀の場合も、その譲渡契約につきましては、その前文におきまして、その新しい銀行の株については長期に保有するということを、いわば声明を出させているわけでございます。ただ、これは前文なものでございますので、いわば意図の表明ということでございまして、法的拘束力は残念ながらございません。
ただ、意図表明をさせることによって、パブリックプレッシャーにかけ、向こうがその意図表明に反したならばレピュテーショナルリスクを負うよというような形で、あそこに盛り込んだわけでございます。
生方先生が今御指摘になった例が、これは長期であるかどうか。実は、長期についての定義は何も置いておりません。したがって、三年を長期と見るかどうかという話になるのでございますけれども、当時、私、金融庁長官であったわけですけれども、そのときとしては、何と申しますか、どうぞどうぞというわけにはいかないわけでございまして、この長期との関係について孫社長と話させてもいただきました。
ただ、最終的には、そこは、いわばレピュテーショナルリスクも踏まえた上での個々の企業の経営判断でございますので、そういうようなことで、最終的にはほかの社にソフトバンクが持っていた分がかわったわけです。ただ、幸いなことにと言えばなんですが、残りの二社、これは金融機関でございますが、これは同じに残ってくださいまして、あおぞら銀行を健全な銀行に今までどおり努力すると言っていただいておりまして、基本的には、私は、あおぞら銀行の政策というものが、主要株主がかわったからといってそんなに変わっているとは思えません。
○生方委員 これは普通の商取引であるならば構わないんですけれども、多額の公的資金が入っている中で、本当にソフトバンクがそれだけの大きなリスクを負っているなら私いいと思うんです。瑕疵担保条項がある間だけというのは、ほとんどリスクないわけですね。そこが終わったら売っちゃって、五百億稼ぐためにはそれは大変な努力を本来要さなきゃいけないのに、国民のお金が入っているところでそれが入っていっちゃうというのは、私は納得いかない。でも、これは納得いかないと言っても、今さらどうにもならないんでしようがないんですけれども、これからはこういう形にはならないと思うので。
やはり、銀行の株を所有していて三年でというのは、私もあのとき随分読みましたですけれども、こういう銀行にしたいんだということを再三申し上げていたわけですね、ソフトバンク側は。だけれども、こういう銀行にしたいんだというのが一歩も何も進まないうちに売り逃げちゃっているというのは、これは幾ら何でも、ない話で、それでどこからもおとがめがないというのも、ただ単にそれは市場の評価が下がるだろうというぐらいじゃ私は納得がいかないんですが、これはいかんともしがたいんで、これにとどめます。
もう時間が余りないんですが、年金資金運用についてもお伺いしたいんです。
近藤参考人、先ほどから大分おつらい立場ではございますでしょうけれども、退職金について一点だけお伺いしたいんです。
やはり、厚生労働省にいて長い期間おられるわけですから、もちろん次官までお務めになった方がみんな天下りをしているわけですから、一たんそこでかなりの額の退職金は受け取るわけですね。だから、私、次の事業団に行ったときに、給料をもらうなとまでは言いません。だけれども、次に移ったときは、少なくとも退職金はもう要らないと言うぐらいじゃないと、なかなか国民の皆さん納得いかないと思うんですね。普通の民間会社だったら、今は何十年勤めたってこんな額の退職金を受け取れないわけですよ。それが、四年とか五年でもう一回退職金を受け取るというのは、国民感情からしてなかなか私は納得できるものじゃないと思うんですね。
もちろん、近藤参考人一人で決断できることじゃないとは思うんですけれども、私は、やはり一度官庁をおやめになったときもらった退職金でとどめるべきで、次は月収、報酬だけでやるのが本来の筋だというふうに思うんですが、いかがでございましょうか。
○近藤参考人 質問の趣旨、よくわかります。私も、特殊法人の退職金というのは、特にあの乗率というんですか、高いなと、こういう印象を前から持っておりました。
それで、これはもう政府全体で決まりますので、厚生労働省とかそういうものではなくて、まさに政府全体で決まるということでございますが、ことしの一月から公務員並みに下がったということは、私は妥当な措置であったと、こういうふうに思っております。
全体の問題でございますので、私がここでいい顔をするわけにはいきませんけれども、御趣旨はよくわかります。
○生方委員 この場で退職金を返還しますというようなことも言えないのはよくわかりますので。
ただ、全体として、国民の間には非常に納得いかないという雰囲気があるんだということを御承知をいただいて、これから、どこかでだれかが決断をしないとこれはずっと続いていってしまうわけで、ぜひともいいように御決断をいただきますようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。
○笹川委員長 これにて生方君の質疑は終了いたしました。
次に、小林憲司君。
○小林(憲)委員 民主党の小林憲司でございます。
我が党は、平成十一年以来、長銀のニュー・LTCB・パートナーズへの譲渡について、監督官庁の、臭い物にはふた、先送りの体質、低廉な譲渡価格、国辱的な瑕疵担保条項、不明朗で国民に納得できない取引として追及をしてまいりました。
概略を簡単に申し上げますと、仙谷由人議員による買収条件に対する追及、五十嵐文彦議員による瑕疵担保条項に対する追及、岩國哲人議員による譲渡益課税に対する追及、そしてまた、海江田万里議員、原口議員、浅尾議員、小川議員もそれぞれ契約内容について俎上にのせ、厳しくこの問題を追及してこられました。
これらの指摘は、平成十六年の二月十九日の新生銀行の再上場、売り出しによる経緯の中で、すべて的を射ているということが明らかになってきたと私は思っております。
そしてまた、私も、新生銀行の再上場をめぐりまして、ハゲタカファンドがもうけ過ぎることは許されないという単なる感情論ではなくて、国民の税金から八兆円もの国庫負担をさせておきながら、当時の政府、金融庁が、瑕疵担保条項など税金で買い取らせる行為、メーン寄せ、他銀行寄せなどを看過し、短期間に一兆円もの利益を上げさせた金融政策の誤りを指摘してまいりました。新生銀行とイ・アイ・イ管財人との巨額訴訟は、こうした新生銀行が抱える体質、問題を解明するためにも大変有効的な事例でありますので、再三にわたり取り上げさせていただいております。
私は、この新生銀行の訴訟問題について、引き続き本日も質問をさせていただきます。
本日は、新たに発覚をいたしました、サイパンの裁判における訴状の送達遅滞疑惑と裁判遅滞工作の疑いについて質問をさせていただこうと思っております。
新生銀行の抱えている問題と、竹中大臣の答弁を聞いておりますと、これは、新生銀行は大株主が外資系組合であることゆえの特権を享受しているのではないか、国が一民間の金融機関を必死にかばおうとしている癒着の構造が存在しておるのではないだろうかとすら思いたくなります。これは、私が日本人であるという私のひがみでしょうか。
竹中大臣、新生銀行は、竹中大臣にとって、また金融庁にとって特別、格別な銀行なのですか、ごく普通の銀行なのですか。まず、お気持ちをお伺いさせていただきます。
○竹中国務大臣 小林委員は日本人であるとおっしゃいましたが、私も日本人でございます。かつ、金融の行政を預かる立場として、公正不偏の立場に立ってしっかりと対応しているつもりでございます。特定の金融機関と特別の関係にあるという事実は、新生を含めて一切ございません。
○小林(憲)委員 なぜ私が新生銀行をそう見ているかについて申し上げます。
一月二十三日に、サイパンの裁判所で、新生銀行に対する巨額賠償訴訟は既に決定をされています。新生銀行に対し、平成十六年一月二十三日、サイパンの裁判所が訴訟は復活すべきと決定していることについては、一月二十九日に東京地方裁判所で行われた上記破産会社の債権者集会において、民事二十部の破産事件担当裁判官と田中破産管財人から報告をされております。
この債権者集会に出席をした破産債権者の大多数は、「破産管財人がサイパン訴訟をできるだけ早く、かつ強力に遂行し、新生銀行から巨額な回収を得て、破産配当をなすべきである。」という書面を東京地方裁判所民事二十部に提出しています。
しかし、平成十六年の三月一日の衆議院予算委員会分科会においても、竹中金融担当大臣は、私の質問に対して、サイパンにおいてはサイパンの裁判所から新生銀行に訴状の送達がない、訴状が送達されていない訴訟について政府は何も言うことができない、そう述べられました。
新生銀行には訴状の送達がないから答弁しようがないのではなくて、新生銀行は、再上場日である二月十九日までは何としても訴状の送達はおくらせる、そういう必死の工作をしていたのではないでしょうかと私は思うんですが、竹中大臣はどう思われますか。
○竹中国務大臣 そのような話は承知しておりません。
○小林(憲)委員 新生銀行の訴状送達遅滞工作疑惑について、一つ明らかなことがあります。
二月二十七日、グアム島における新生銀行の代理人シビレ弁護士が、田中破産管財人が任命した破産会社の代理人であるカルボ弁護士に対し、たとえサイパンの裁判所から事件について訴状が送達されたとしても、自分は新生銀行からこの送達を受け取ることについて権限を付与してもらっていないよ、こう言っているんです。あらかじめ訴状の送達を拒否しました。あらかじめ拒否しました。このサボタージュ事件についての報告を金融庁から大臣は受けていますか。
○竹中国務大臣 今何人かのお名前も挙げられましたが、初めて聞く名前でございまして、承知をしておりません。
○小林(憲)委員 新生銀行が平成十六年二月十九日の再上場まで訴状の送達を意図的におくらせるため、RCCを初め、預金保険機構など各方面に根回しをして工作をした疑いが濃いとの関係者の証言もあります。竹中大臣は、この点につきましても、全く聞いていない、知らない、金融庁から聞いていないということでしょうか。
○竹中国務大臣 聞いておりません。もしそういうような事実がございますんでしたら、ぜひ証拠と同時にお示しを賜りたいと思います。
○小林(憲)委員 東京地方裁判所の民事二十部において、預金保険機構とRCC、破産管財人が、新生銀行が破産管財人に和解金を支払うことを前提とする話し合いを持ったということの報告は、これは聞いてみえませんか。預金保険機構とRCC、破産管財人が、新生銀行が破産管財人に和解金を支払うことを前提とする話し合いを持ったということを聞いていませんか。
○竹中国務大臣 特に報告は受けておりませんのですが、念のために、いつのこととか、もし特定していただけるのでありましたら、お願いを申し上げます。
○小林(憲)委員 まずは、私が今御質問した、一切そういうのを聞いていないということですね。
巨額の賠償訴訟が提訴されているのに、預金保険機構と新生銀行との間において一切話し合いがなかったということの方が、これはむしろおかしいんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
○竹中国務大臣 当然、事務レベルで、現場のレベルで、これは債権債務の関係でありますから、いろいろなやりとりがあるのだというふうには承知をしております。
しかし、それに関して、例えば、今おっしゃいましたように、特別の何かをおくらせようという意図を持って何かの工作をしたとか、そのようなことは承知をしておりません。
○小林(憲)委員 新生銀行が再上場する前、既にサイパンの裁判所において訴訟が提訴されていたわけですが、投資家に対してその情報が適切に報告されていなかった、隠ぺいされていたとすれば、これは、新生銀行の東証の再上場に対する姿勢は極めて重大であり、犯罪的な行為にも当たるのではないでしょうか。そしてまた、そのようなことにかかわる話が一切大臣のもとに入っていないというのは、これはいかがしたことでしょうか。
○竹中国務大臣 債権と債務の話でございますから、当事者の間ではいろいろな話し合いがあるんだと思います。
ただ、サイパンの訴訟に関しては、先般、この委員会で委員からそのコピーが配付されました。そこで、その手続に関する決定がございましたが、その委員御自身がお出しになった紙の一番下の方に、これはサイパンの裁判所の方から外交ルートを通じて、それで日本の司法当局に送られて、それで新生に送られる、その手続が必要である、ないしはその手続をもって裁判が開始されるというような趣旨の内容のことを書いてあったように記憶をしております。まさにそれが、正当な、ハーグ条約に基づく手続であろうというふうに認識をしております。
○小林(憲)委員 ヘーグ条約にはたしか二つあると思うんですね。十条ですか。たしか(a)と(b)とあって、(b)は外交ルートを使う場合がありますね。(a)は、たしかそれは直接ですね。外交ルートを使う場合は、言葉がわからない人が相手で、それで、要するに裁判の代理人である弁護士も向こうにいなくて、言葉が、英語がわからなくて、そういう場合は外交ルートに乗せてやるということですが、今回の場合は、裁判はサイパンであるんでして、これは難しい話ですが、裁判はサイパンであるんです。
それで、そのサイパンの裁判が、代理人である弁護士も向こうにいて、そして新生銀行の方々は大変優秀ですから、みんな頭がよろしいですから、英語はしゃべれて、それでその訴状の送達がおくれているんですよ。だから、それは外交ルートを使ってやらなくたって、裁判はサイパンですから、サイパンが裁判ですから。
ですから、これを踏まえますと、ヘーグ条約の(a)なんですよ、本当は。それを途中でだれかがねじ曲げて変えてしまっているんです。
ですから、サイパンの裁判所は、もう既に管財人に渡しているのになぜそれが渡っていないんだとずっと二週間怒っているわけですよ。ずっと怒っていて、ついに、委員長、きょう出たんです、訴状が。送達されました。御存じでしたか。
今、私、これ、出たばかりだったので、とりに行っていたものですから、ぜひこの場で皆さんに配りたかったんですが、用意をしたんですが、ちょっと時間がなかったので、お見せしますが、これが、訴状が出ました。
ですから、この訴状が出ますと、その訴状が、なぜか、これも不思議な話なんですよ。東京の裁判所がその訴状を送達していいよ悪いよという許可を出しているんですが、本来ならば、おっしゃったとおり、これはヘーグ条約の(a)ですから、そんなことは、裁判はサイパンの裁判官がやるんであって日本ではないんですが、それがなぜか、送達しなくてもいいようなことをしていたそうですね。その許可がきょう出て、送達をされました。訴状が送達をされました。
まずは、ここで一つ切りますが、御存じだったでしょうか。
○竹中国務大臣 幾つかの御指摘がございましたが、ハーグ条約の中身、今、(a)、(b)とおっしゃいましたが、ちょっと私は、法律の専門家でございませんので、そのことは今の時点では確認できません。これは調べさせていただきます。
ただ、その上でも、繰り返しになりますけれども、先般委員がお配りになりましたその資料そのものの中に、これは、国際条約、国際法等々に基づいて、私が先ほど御説明したようなルートを通じて新生に届くことによって裁判がスタートするということが明記されていたというふうに認識をしております。
その上で、送達云々、まあ、訴状があるという御指摘でございますが、私どもが昨日の時点で新生に確認した時点では、その訴状はまだ受け取っていないという報告を受けておりました。
○小林(憲)委員 ですから、本日は、これが出て、私も今副本を持っていますが、本日この報告は新生からあったんですか。大臣、金融庁の方にありましたか、訴状が出たという。
○竹中国務大臣 今申し上げましたように、昨日の時点で確認した時点では届いていないと。きょう、ここに至るまで、私が院内にいたということもあるのかもしれませんが、私ども、報告を受けておりません。
○小林(憲)委員 金融庁の皆さん、金融庁は、これは報告ありましたか。
○五味政府参考人 本日、そのような報告は新生銀行からいただいておりません。
○小林(憲)委員 おかしいですね。これは、ここまで、私もこれを含めて四回目の質問をさせていただいておりますが、訴状の送達について、訴状がないからこれは大丈夫なんだ、そしてまた、訴状がないから賠償金額もはっきりしていないんだと。そんなことで上場をして、投資家保護の立場から私は言わせていただきますが、訴状が出て、きょうこの訴状に基づきまして訴えが始まるわけです。
そうしますと、これもちょっと配付できなかったんですが、前資料をお配りしたと思うんですが、トータルしますと、約七千億円の損害賠償の訴状が出た、送達をされたということなんです。それを金融庁もまだ知らないとなりますと、それは八兆円を使った国民に対してどう言い分ができるんですか、おっしゃってください。
○竹中国務大臣 ちょっとその訴状とおっしゃるもの、我々としてはまだ手に入れておりませんので、そのものに対する具体的なコメントはできないんでございますが、これは前回の委員会で御答弁させていただいておりますけれども、そもそも上場会社は、重要な訴訟、これは純資産額の一五%以上の損害賠償請求額を提起された場合には、臨時報告書を提出することとされております。したがって、そういう中身が明確になった場合は、新生銀行は、提出要件に照らして臨時報告書の提出を当然のことながら検討しなければいけない。
我々としては、金融庁としては、あくまでも法令にのっとって適切な情報開示が行われるように努めてまいります。
○小林(憲)委員 ですから、その内容についても、先般から私は、七千億というのはこれは一〇%以上になると思うんですよ。それで、三倍賠償ですから、もう一兆円を超す訴訟になってくるわけですね。
ですから、これはもう必ずしっかりと、これは先日、私と大臣、お約束されましたね、訴状が来て、送達されたら私はちゃんと言いますよと言いましたね。送達されましたから、これについてきちっと解明をしていただかなきゃいけない。
ところが、きょう、まだ大臣、お手元にないかもしれませんが、この訴状も非常に摩訶不思議なものでして、読みますと、本訴状が送達されてから百二十日後、だから五月の二十二日、ですから、平成十六年五月の十日までは裁判しなくていいよと。それで、その間に、要するに合意されたり、手打ちされたりできなければ、それを取り下げるか裁判をするかにしましょうという、手足を縛ったような訴状が送達されていまして、何のための訴状なんだろうと。とにかく訴状訴状と騒ぎになっているので、訴状は出したけれども、中の裁判はできないよというような内容になっているんですが、これはもうまさしく、ここでまたイカサマのようなことを新生銀行はやっているわけですよ。
ですから、こんなことをして、八兆円も使って、そしてまた上場までして、株が今乱高下していますが、今度もうすぐTOPIXに入りますね。TOPIXに入ったらある程度の安定をしますが、またそこでいい売り場になって、またどおっと飛んできて、売られて、そして、しばらくまた乱高下を繰り返して、それでまた飛んできて、五月二十二日までに全部終わりましたよなんといったら、はい裁判始めましょうとか、はい巨額賠償ですよと。どおんと落ちたらこれはどうなるんですか。
投資家保護の立場から、この訴状にのっとって、本当にこんなことがされていていいとお思いですか。これは大臣と金融庁の方々にお伺いします。
○増井政府参考人 先ほど大臣もお答えをいたしましたけれども、重要な訴訟、純資産額の一五%以上の損害賠償額が提起された場合には、臨時報告書が提出されるということになっております。
前回も御説明をいたしましたが、今後、サイパンにおける訴訟について訴状が送達された場合などには、新生銀行が、提出要件に照らして臨時報告書の提出が検討されるというふうに考えております。
いずれにいたしましても、金融庁といたしましては、法令にのっとりまして、適切な情報開示が行われるように努めてまいりたいというふうに思っております。
○竹中国務大臣 今委員お持ちの訴状とおっしゃるもの、我々まだ見ておりませんので、中身について、委員が今御指摘になった点についてはちょっとコメントしかねますし、また、これは民事の訴訟でございますので、当事者間の問題でありますので、細部について云々する立場にはないと思っております。
ただ、情報開示という観点からは、我々は、今局長からも答弁させていただきましたとおり、あくまで法令にのっとって適正に対応していくつもりでございます。
○小林(憲)委員 ですから、大臣、先般も私は言いましたが、これは民事だから関係ないという問題ではないんですね。これは民事だからといっても、その債権者集会に預金保険機構の人もちゃんと出て、RCCの人も出て、その債権者集会で、債権を返せ、借金を早く裁判によって、ちゃんとRCCの堀田さんという役員が発言をしているわけですよ、ちゃんと、早くこれは処理してやるものだと。
それで、このときに、五大銀行もちゃんとそこにいるんですね、債権者集会には。五大銀行がいるということは、RCCも政府も、不良債権を回収して、早く回収して早くやりましょう、早くきれいにしましょうということでやっていたじゃないですか。それなのに、なぜ裁判がおくれていくんですか。なぜ裁判の訴状までおくらすんですか。これはおかしいですよね。
早くそれを片づけなきゃいけない立場の人たちがいて、そこに、ちゃんと債権者の中に入っていて、RCCもいて、私、それは民事だから関係ないということはないですよ。そしてまた、それを早く解決しなきゃいけない人たちがいるのに裁判はおくれるような話になっている。そして、訴状は全然出ていない。これは一体どういうことですか。お答えください。
○竹中国務大臣 一般論として、裁判は速やかに行われるべきものであるというふうに思っております。
今委員、御自身の調査に基づいてお話しされましたが、我々としては、我々の範囲で確認できることを確認して、法令に基づいて適正に対応してまいります。
○小林(憲)委員 時間になりましたので質疑を終わりますが、最後に、訴状送達疑惑、裁判遅滞疑惑などなど、数々の問題を抱えている新生銀行のあるべき姿を、国民に責任を果たすため、ここで私は同席委員各位に提案をしたいのでありますが、この破産事件は商事非訟事件であります。ですから、三権分立の司法権の独立を侵害するものではありません。
破産事件は、司法事件ではなくて商事非訟事件ですから、つまり、東京地方裁判所民事二十部の裁判官は、破産債権者の意向を尊重するだけでなく、そのサイパンにおける訴訟の当否についてはサイパンの裁判所が判断すべきことですから、日本の裁判官がその訴訟を進めなかったりおくらせたりすることに協力することはできないはずであります。
ですから、最高裁判所事務総局民事局としては、司法行政事務に関するものとして、東京地方裁判所民事二十部の裁判官の行為に関して、当然問いただすべき事案と存じます。
ですから、この国政の重要事項を審議する衆議院予算委員会においては、解明、調査のため、それらの、最高裁判所民事局長の園尾隆司局長、そして破産会社のイ・アイ・イの破産管財人の田中伸明氏、そして清算会社のイ・アイ・イの清算人の松尾翼弁護士、そして現地の弁護士のエドアルド・カルボ氏を参考人として招致をしていただければよかったのですが、既に予算委員会の審議も大詰めのようでございまして……(発言する者あり)まだですか。そうですか。わかりました。
財務金融委員会とか法務委員会とかという手もございますが、やはり権威の高いこの予算委員会において、この問題についてまだまだ追及をしていくことが八兆円を使った国民に対する説明だと思いますが、このことについての提案をさせていただきまして、私の参考人の要求をさせていただきます。要求をいたします。委員長、いかがでしょうか。
○笹川委員長 理事会で協議いたしますが、自分で委員会が終わるということは決めないでください。私が決めますから。
理事会で協議します。
○小林(憲)委員 終わります。
○笹川委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。
次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
私は、新生銀行、リップルウッド問題について質問をさせていただきます。
先週、当時の越智金融再生委員長の参考人、要求したんですけれども、かなうことができませんでした。そういうこともありますので、主に森参考人に当時の経過などについて質問させていただきます。
昨日の朝日新聞に、さいたま市の七十三歳の男性の方の投書が載っておりました。証券会社から新生銀行株の事前購入を勧められて食指も動いたが、八兆円もの公的資金投入や瑕疵担保特約など破格値で外資グループに売り渡した、そんな日本国民を踏みつけて再生された銀行の株で利ざやが得られたとしても、後ろめたさで悩むだろうと勧誘を断ったという話であります。
こういう国民の皆さんからの批判を率直にどう受けとめておられるのか、所感を森参考人にお聞きしたいと思います。
○森参考人 批判は批判として率直に受けさせていただきますけれども、いろいろな誤解が私はあると思っております。
先ほども答弁させていただきましたけれども、瑕疵担保条項をなぜつけたか、先方に有利なことをさせただけではないかということに対して私は説明させていただきましたけれども、いろいろな点でやはり誤解があるんだなということで、それに対して、我々としては説明責任を、これは果たしてきたつもりなんですけれども、さらに説明していかなければいけないというふうには思っております。
ただ、一般的に言えば、先生も御承知のとおり、平成十年、金融国会から、さらに十一年、十二年に至るここのときというのは、日本の金融経済情勢は極めて厳しいときでございまして、大変な不安がいろいろ渦巻いているときでございまして、そうした中で、長銀が破綻し、そうした大きい銀行を、いかに金融の安定を回復するために早く譲渡しなければいけないかという、そういう緊迫した認識のもとで、当時の金融再生委員会の委員の皆様方は、そして私以下事務方は、金融再生法の枠組みの中で懸命に最善の努力を払った。その結果につきましては、今後いろいろ歴史が評価していくものであろう、その歴史の評価に任せるべきものだろう、そういうふうに考えております。
○塩川委員 誤解もあるだろう、歴史が評価をするというお話ですが、私は、やはり国民の健全な現状認識というのがこういう批判としてあらわれているんだと率直に思います。その上で説明責任が求められているのは当然のことであります。
森参考人に重ねてお聞きしますが、新生銀行の貸し渋り、貸しはがし問題も大変ひどかったというのは、当時からいろいろな告発がありました。新生銀行の貸出金の総額が、二〇〇〇年の三月から二〇〇三年の三月を比較すれば、七兆七千億円が三兆六千億円に激減をするとか、そのうちの中小企業向けの貸し出しも二兆七千億円から一兆八千億に激減をする、正常債権でさえ六兆六千億から、〇三年の九月末ですけれども、三兆六千億へと激減をしています。
譲渡契約書には、御承知のとおり、少なくとも三年間は「特段の事情のない限り、貸出関連資産を売却せず、急激な回収を行わず、且つ借換え、季節資金等当該債務者の適切な資金需要に応ずる」と書いてあります。率直に、契約に反するんじゃないかと私は思うわけです。
業務改善命令を出しましたとか、そういう話はこの前竹中大臣からもお聞きいたしました。率直に、契約に照らして問題だ、信義に反するんじゃないか、こういうふうに私は思うんですけれども、当時の事務当局のトップの森参考人はどのようにお考えか、お聞きします。
○森参考人 お答え申し上げます。
私も記憶しております。平成十二年三月期決算の貸出金額七兆七千億、それが、これは最近の新聞の報道で知ったわけですけれども、今や三兆六千ぐらいでございますか、半分にいっていると。
ただ、私が金融庁長官時代の、そこまでしか私はタッチしていなかったものですから、平成十四年の七月までの話でございますが、そのときに、なぜこんな大きな額、貸出金が減るんだ、まさに譲渡契約の十一条との関係で問題じゃないか、こういう意識のもとで、当時の関係課に聞かせました。
と申しますのも、我々は、単に特別公的管理銀行という国の銀行を売った売り先だけではございません、そこに二千四百億の資本注入をしている資本注入行でございますので、経営健全化計画を毎年出させておりまして、その達成ぐあいを関係課がきちっと見ております。その一環で、先ほどちょっと触れられましたように、中小企業貸し出しが著しく減少したという場合は業務改善命令をしかるべく打っております。
ただ、私が分析を命じ、その中で、やはり私、今記憶に残っていますのは、二つだと思います。
一つは、ちょっと先生が触れられましたように、正常先も減っていると。これは、クライアントといいますか、顧客が、今までは新生銀行の融資方針に対して賛同を示しながらクライアントになっていたところが、健全先ですね、正常先です、むしろ新生銀行の融資ポリシーにどうも自分の企業は合わないなといって離れていった、これはかなりあったと聞いております。
それから、もう一つは、新生銀行自身のビジネスプラン、ビジネスポリシーというものが、インベストメントバンキングと個人リテールに特化していくという方向であったわけでございますので、もちろん譲渡契約書十一条に言う、受け取った善意かつ健全な借り手の貸しはがしなんということはまさか考えないと思いますけれども、しかし、資金ニーズが少ない中で、そのポリシーとしてコーポレートバンキングというものにそんな力を入れていないというところが、また一つ金額の減少に、貸出金の減少には響いているのかな、私、長官時代、そういうふうな分析をした記憶を今思い出しております。
○塩川委員 いろいろ理由を述べられましたけれども、要するに、この譲渡契約が結ばれた時点にこういった契約条項が入っていたわけですね。その際に、結果としてここまで貸し出しが激減をしている、これはそもそも、率直にお聞きしますが、想定外だったのか、それとももう予測されたことだったのか、それはいかがですか。
○森参考人 お答え申し上げます。
答えにならないのかと思いますけれども、我々は、譲渡契約というものをきちんと守っていただくという、契約の一方の当事者の立場でございますので、不合理に貸しはがしをして貸出金が減っていくなんということは全然想定しておりませんでしたし、そういうことはなかったものだと。その点は、先ほど申しましたように、金融庁の関係課と預保がきちんと見ているわけでございますが、そういう表明違反のようなことはなかったんだろう。また、そういうものがもしあって、いわゆる我々は個々の融資対応に対しては行政介入いたしませんけれども、そういうものが集まって新生銀行の融資姿勢というものになるわけでございますので、その融資姿勢に対して、世の中に貸しはがしの風評等があれば、それは新生銀行に、そういう批判がある、融資姿勢について大丈夫かということはチェックいたしておりました。
お答えにならないかと思いますけれども、最初から、こういうことになるだろうとかならないだろうとか、そういうことを想定して何か譲渡したということではございません。契約は守ってもらえるものだということを前提として譲渡したわけでございます。
○塩川委員 このことへの国民の批判があるんだということを改めて受けとめていただきたいと思います。
そこで、この間議論になっていましたリップルウッドなどの譲渡益課税の問題についてですけれども、御承知のとおり、九九年の九月二十八日に覚書が交わされました。リップルウッド・ホールディングス社に優先交渉権を与えることが決まり、二〇〇〇年の二月九日に越智金融再生委員長のもとで譲渡契約書が締結をされました。この経過を一番御存じなのが森参考人だと思うんです。
そこで、お聞きしますけれども、森参考人御自身は、二〇〇〇年二月九日の譲渡契約書締結時に、パートナーズの出資者への株式譲渡所得への課税権問題についてどのような認識だったのか、お聞きします。
○森参考人 お答え申し上げます。
譲渡益課税の問題についての御質問でございますけれども、ちょっとその前提で、十一年九月のことを話させていただきたいのでございます。
いわゆる最優先交渉先を再生委員会で決めたのが十一年の九月の末だったと思うんですけれども、その前に、九月になってから、どういうところを最優先交渉先にするかということについて基準をつくって議論しました。つまり、前も申しましたように、とにかく残っているのは二グループしかありません。(発言する者あり)いえ、最初はもちろん十幾つあったんですけれども、六月の段階で四グループになり、もう九月になる前に二グループがドロップして、二つしかございませんでした。その二つをどちらにするかについて、きちっと基準を議論して決めようということになって、その基準というものの中に内外無差別という基準を入れました。
これはいろいろ、その内外無差別を入れたときの議論の中に、税制上の問題、つまり国民負担最小化、極小化という基準と、それから金融の安定、効率化という基準と、そしてこの内外無差別、大きくいえばこの三つなんでございますね、あと、会計上の問題はありますけれども。そのときに、内外無差別ということを入れると税の問題をどう考えるべきか、当然それは当時認識しておりまして、そういう議論もなされたと思います。
ただ、税の問題というのは、谷垣大臣も御答弁されましたように、ケース・バイ・ケースによって非常に想定が難しい。ここに売ったらばどういう課税が起こるのかということが非常に難しい面もございますし、税の面の話を中に入れ出すと内外無差別にならないねと。それは青目の方が、基本的にはその青目がOECDモデル条約を採用している国であった場合には、いろいろな、リミテッドパートナーシップか、あるいは法人かで若干違いが起こるかもしれませんけれども、原則として課税はできないわけでございますので、そうでない場合ももちろんあるということでございますけれども、そうであるならば、税制上の問題というものを加味すると内外無差別にならないということから、内外無差別原則をとりましたときに、税制上の問題は税制上の問題としてわきに置こう、こういう再生委員会としての認識であったと記憶しております。
○塩川委員 課税の問題についてはケース・バイ・ケースと言いながら、原則としては課税できないというお話もありました。
そこで、税を入れると内外無差別の原則にならないねという話をしたということは、逆に言えば、その内外無差別の原則を立てたことで課税権は無視しようという判断だったということですね。
○森参考人 お答え申し上げます。
無視という言葉が適当であるかどうか。わきに置きましょうということでございます。
例えばリミテッドパートナーシップをとっている場合には、極めて課税も、いわば構成員課税を認めるところに本拠を置いているかどうかによっても変わってきますし、どういう税のあれをたどるかというのは非常に想定しにくいし、じゃ、それによって幾ら税金を損する分があるのかという計算も非常にできにくいことでございます。
そういう課税の計算、例えば、仮にでございますけれども、これはちょっと一般論で申しますけれども、日本の法人に譲渡した場合であっても、それが大きな繰欠を抱えているところであったら、その株を上場した際に、売り出したときのキャピタルゲインというのは課税できませんですね、結果的に。そういうことで、繰欠があるかないか、繰り越しの損失があるかないかによっても税の計算というのは違ってくるわけでございますね。
ということから、やはり税の話というのは、青目の場合であれ黒目の場合であれ、横に置いて、それを基準の中には入れない、こういう認識であったと記憶しております。
○塩川委員 絞り込まれて二グループになったわけですから、その繰越欠損の話にしても、その対象となるところははっきりしているわけで、何も、何十社も調べる話ではないわけですよね。
そういう点では、本来、今、森参考人もおっしゃった基準の中に国民負担の極小化というのがあったわけです。この立場に立って課税権の問題についても、どう負担を軽減するかということで、本来考慮されてしかるべきだったのに、実際にはわきに置いてしまったというのが実態だということでよろしいですか。
○森参考人 お答え申し上げます。
国民負担の最小化、極小化というのは、もちろん金融再生法第三条に書かれております大基準でございます。それはよく金融再生委員会も承知しております。
ただ、その売った先、一番高く売れたと申しましょうか、国からすれば高く売れたなと思っても、その銀行が二次破綻をしてみれば、結果的には、結局それこそ高くつくわけでございまして、単に国民負担最小化という、処理するのに幾らコストがかかったんだというだけでは、やはりいかぬという議論。
そのために、金融の安定に資するか、いわばしっかりした受け先なのかとか、あるいは金融の効率化、再編等に資するのかとかというのと同時に、内外無差別原則、これは日本の金融界に革新的な金融技術等を持ってきてくれるかもしれない、そういうメリットもあるかもしれないという議論は当時あったような気もいたしますけれども、いろんな角度から最終的には決めるということで、結果的には、リップルウッド、ニュー・LTCB・パートナーズがコストが一番安かったわけでございますけれども、ただ、基準の考え方としては総合点だということかと思います。
○塩川委員 総合点とはいいながら、そもそも、二つのうちからリップルを選んだというのも、国民負担、そちらの方が少なくなるということが基準だったということが、大きくそのときにも紹介をされているわけですから、その際に課税権の問題を無視してやったということは、極めて重大だと思うんです。
あと、配付資料でお届けしているかと思うんですけれども、私、ぜひお聞きしたいと思っているのが、当時の金融再生委員会のトップの譲渡益課税の問題についての認識です。
最初に、こちらで傍線を引きましたけれども、二〇〇〇年の二月十六日の会議録であります。その際に岩國委員が、日本側としてはアメリカの投資家が得たキャピタルゲインに税金をかけることはできないですねと言ったのに対して、越智金融再生委員長は、外国の投資家が持っておりますけれども、それをかけられないという法文は今私の頭にはちょっと浮かんでまいりませんとか、その後のくだりでも、私どもはかかるべきだと思っておりますと言っておられます。
当時の越智金融再生委員長は、外国の投資家の株式譲渡所得に課税できると認識していたんじゃないでしょうか。この点、いかがでしょうか。
○森参考人 ただいまの御質問に御答弁いたす前に、ぜひ先生の御了解を得たいと思うのでございますけれども、先ほど、私、うっかり青目という表現を使って、適当でない表現だったと思います。外国の法人ということで、修正させていただきたいということで御了解いただきたいと思います。
今の先生の御質問に対する答弁に移らせていただきますけれども、越智大臣がこの予算委員会で、たしか平成十二年二月に、岩國委員の、これは突然の御質問でございました、に立たれまして、こうおっしゃったことをよく承知しております。ただ、越智大臣も、突然で用意がなくてこうした御答弁をされたと思いますけれども、同時に、最後に、調べさせてほしいということもたしかおっしゃっておったと思います。その結果、その後の予算委員会できちっと御答弁されていると思います。
先ほどちょっと言った内外無差別の話、それから税の話、もちろん、平成十一年の十月でしたか、前の柳澤委員長から越智委員長にかわった際に、事務方としてはその前のいきさつ等はすべて説明してございますけれども、ただ、先ほど申しましたように、この課税関係は非常にケース・バイ・ケースによって変わり得る話でございますので、そういうことから、越智大臣は、課税権がある場合もあるじゃないかという意味でおっしゃられたのかなと。そう事務方としては、突然の話で用意もなかったんですけれども、そう私はそのとき想像していたわけでございます。
○塩川委員 事務方の方は知っていたという話ですけれども、ちょっと調べさせますと言ったことは、それまでは知らなかったということなんですよね。譲渡益課税の問題という重大な、本来検討されるべき中身について、当時の金融再生委員会のトップが調べさせますと言っているんですから、それまでは事情について知らなかったということになりますよね。
○森参考人 お答え申し上げます。
我々は、越智当時の委員長が御就任になった十一年の十月に、特にこれは、最優先交渉先としてニュー・LTCB・パートナーズを決めた直後でございましたので、決めた経緯等、もちろんその中には、先ほど御答弁させていただきました無差別原則を入れた経緯等も当然事務方としては御進講させていただきましたので、越智大臣が全く御存じなかったということはなかったと思いますし、とりわけ、越智大臣は大蔵省での御経験もある方でございますので、そういう税の常識みたいなものを踏まえておられた、私はそう思っております。
○塩川委員 いや、そうであれば、なおさらこんなことを知らないはずがないわけで、その時点でも、調べさせますと言った点で、知らなかったという点が、改めて私は重大だと思います。
要するに、この譲渡益課税の問題について、金融再生委員会のトップがこういう認識を欠いたままで譲渡契約が結ばれたということですから、こういう金融再生委員長のもとで、こういう金融当局のもとでこういう譲渡契約を押しつけられた国民は大変不幸だ、このことについて、改めて大いに検証されなければならない、このことを指摘して、終わりとします。
ありがとうございました。
○笹川委員長 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。
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○笹川委員長 この際、お諮りいたします。
政府参考人として厚生労働省健康局長田中慶司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○笹川委員長 次に、阿部知子君。
○阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
本日は、主に年金問題、特に、現在、非常に新聞報道等で年金のいわば資産部分の損失というものが盛んに報道されておりまして、恐らくこのままでは国家百年の計に当たるこの年金の大改革の国民的信頼が得られまいということで、重ねて坂口大臣に御質疑をさせていただきます。
坂口大臣、もう既に御承知のように、現在、国民年金の著しい空洞化、三百六十万人以上の方が全く未納状態で、全体二千二百万人ほどおられますが、中には未納でなくても完納していない人もおられる、あるいは厚生年金も毎年毎年加入者が減っておるということで、あえて言えば、我が国の年金制度は、逆に、これだけ真剣に国会で年金論議がされている一方で、大きな空洞化と不信がそこを支配しておるという状況だと思います。
そこで、冒頭、ごく当たり前のことですが、大臣に御決意のほどを一点伺いたいのですが、国民皆年金制度、いわゆる無年金者をつくらないために、厚生労働大臣として最大限リーダーシップをとってこの年金改革問題にお取り組みいただけるか否か。まず一点目、お願いいたします。
○坂口国務大臣 年金につきましては、過去におきましても、いわゆる無年金者というのがございまして、そして、いわゆる無年金障害者というものを生み出してきた経緯がございます。そうしたことを考えますと、皆さんが年金制度にお入りをいただいているということがいかに大事かということを痛感いたしますので、国民年金を中心といたしまして年金加入者が非常に減ってきている、未加入者がふえてきているというこの現状を打開しなければならないというふうに決意をしているところでございます。
その内容もさまざまでございまして、理由もさまざまでございますが、いろいろの理由に対応した取り組みというものがやはり重要であるというふうに思っている次第でございます。
○阿部委員 坂口大臣御指摘のごとく、内容も理由もさまざまであると確かに思います。
この間、特にその理由の一角として大きくクローズアップされた問題に、いわゆる積立金の問題がございます。また、今回の改革でも、約九十五年という長きにわたりこれを取り崩していくということも含み込んだ案だと思いますが、果たして、この年金の積立金として積み立てているものが本当にあるのか、資産としてそこにあるのかということがこの間極めて揺らいできたと思います。
一つには、もうずっと各委員がお取り上げのグリーンピア問題、あるいは、新聞報道にもございますが、いわゆる年金資金の運用のために事務経費を含めて保険料の中から四・五兆円がむしろ本来の給付以外のものに使われている実態が出てきたりしている中で、先ほど厚生労働大臣は、午前中の委員の御質疑、たしか遠藤委員に対してだったと思いますが、この積立金ということも含めて年金の資産性について第三者機関をもって評価することも検討するというふうに御答弁されたかと思いますが、この点、さらに詳しくお教えください。
○坂口国務大臣 けさ各委員に御答弁を申し上げましたのは、過去の問題につきまして検証をしなければいけないということでございまして、過去の問題を検証して、そして、どういう問題がそこに存在をしていたか、二度と再び同じようなことを繰り返さないようにするためにはどうしたらいいかといったようなことのために行う必要があるということを申し上げたわけでありまして、そうしたことを踏まえて、今後、取り組みをさらに深めていきたいということを申し上げたところでございます。
○阿部委員 私は、この過去の問題がきちんと総括されないと、それ以降の論議というのは国民に受け入れられないと思うのです。私が冒頭、大臣は国民皆年金を強く推し進められる御覚悟ですかと伺ったのは、やはり国民が、本当に信頼して、これでやろうと思ってくれてこそ年金改革でございますから、私は、もう一歩踏み込んで、大臣がおっしゃる、過去のことをより明確に明らかにする視点という中をもう一歩できれば踏み込んでいただきたいと思って質疑をさせていただいています。
例えば、現在の特殊法人であるところの年金資金運用基金も、外部監査法人等々が入られる形で、一応これまでもチェックはしていたのだと思います。ところが、この段になって、年金論議の段になってあけてみると、さまざまな問題があちらこちらから出てくる。そうなると、監査法人が監査していて、なぜ、例えば資産の健全性、先ほど谷垣大臣も、財投部分の健全性は大丈夫とおっしゃいましたが、今や国民は、政治家の大丈夫というだけではとても大丈夫じゃないと思っているのが、この間のグリーンピア問題で本当に国民の中に生じてしまった疑義だと思います。
であるならば、具体的に方法と数値を示して国民の信を得るのが私は現段階での政治の役割と思いますが、もし、坂口大臣が、現時点で、年金の積立金の資産性について、こういう方式で詰めていったらよかろうというお考えがあればお願いいたします。
○坂口国務大臣 現在、積立金につきましては、御承知のように、百十二兆円ぐらいが財政融資資金として存在しておりますし、約三十五兆円が厚生労働省の側で運用をされているという割り振りになっているわけでございます。
今、お話がございましたように、財務省の方でお預かりをいただいております方の百十二兆円につきましては、今朝来、財務大臣からも御答弁をいただいているとおりでございます。
そして、今度は、年金資金運用基金への寄託金につきましては、これは、毎年度、監査法人によります監査を受けているということは先ほど御指摘をいただいたとおりでございます。
また、厚生年金のいわゆる代行部分等につきましては、それぞれの、年金数理人というふうに言われております人々によりまして毎年度これを検証されているということでございますので、この額そのものにつきましては、私はかなり明確になっているのではないかというふうに思いますが、問題は、それをどう運用しているか、それがどう運用に回されているかということが国民の皆さん方から見れば不明確な点があるのではないか、そうしたことを明確にしていかなければならないのではないかというふうに私は思っております。
○阿部委員 私は、あえて言えば、額も運用方法も両方、国民は今、疑いを持ってしまった。例えば代行部分については、この間、代行部分の返上も含めて、しかしながら、どんどんどんどん倒産する企業の中には、倒産した場合に積み立てておくような準備金のないところもある。そうすると、代行部分の資産性というのにもまた疑義が差し挟まれるということになっております。
私はやはり、今、この大きな国民の不安とそれから不信にこたえていくという観点からも、今大臣、御答弁でありましたが、額も運用方法も重ねて検討していただきたいということを一点申し述べます。
きょうは近藤参考人においでいただいておりますので、年金資金運用基金の運用にかかわる部分でも、これも新聞報道で恐縮ですが、例えば住宅融資事業においては、下請機関にその融資を投げるために二重構造をとっており、手数料が九十七億円と非常に高額になっておるという報道がございます。この運用基金の理事長として運用されておるときにです。
手数料が非常に高い運用というのはやはり当然大きな問題だと自覚していただかねばならないと思いますが、この点に関してはいかがでございましょう。
○近藤参考人 ただいまの数字は、恐らく融資の関係の金融機関への手数料だと思っております。代行していただいておりますので、その関係で、私どもが直接やるよりは金融機関の方にやっていただいた方が手数料も結果的には比較的安くなる、こういうことで金融機関への委託料を支払っているわけでございます。
○阿部委員 その比較的安くなるか、九十七億が本当に必要な経費であったかについても疑義が挟まれているというのが現在だと思います。
ですから、こうしたことの運用は、なるべく透明性と、データを出して国民的検証に足るようにやらないと、この場で何兆という論議があるので九十七億は些少に見えますかもしれませんが、やはり国民にとっては見たこともない額のお金でございます。それで、代行してそういう委任機関に投げた方が本当にコスト安であるのかどうかの検証も行われていないのが現状だと思います。
そして、そこで例えば株式運用に回して、今回、十四年度だけでも三・一兆円のマイナス、財投からの返却部分がありますから表向きは黒字に見えておりながら、株式運用だけではマイナスであったということを考えると、果たして、ポートフォリオが悪いのか、株式運用の中で具体的な運用が悪かったかについても検証されないと、これは、国民の大切な税金であるという観点からは国民的納得は得られていかないと思います。
この点は、本日、近藤参考人にこれ以上の御答弁は求めませんが、そうした観点に立って運用の見直しをきちんとし、国民に明示していただきたいと思います。
重ねて厚生大臣にお聞きいたしますが、この間の年金改革でも、保険料率と最終的な給付を決めるときに、賃金上昇率や、あるいは出生率とか、あるいはまた物価上昇率というような幾つかの指標を重ね合わせて計算されておると思います。ところが、例えば五年前の見通し、五年前の考えたことと五年後と大きくずれが毎回生じておるということも、私は国民的不安と不信の原因になると思います。
そして、そういう年金の試算をする部局と実際に給付にかかわる厚生労働省がいわば同一の省でございまして、このチェック・アンド・バランスがきかないのではないかという指摘もございますが、この点についてはいかがでございましょう。
○坂口国務大臣 今の御意見は確かに一つの御意見だというふうに思っております。
平成十一年のときの試算とそして今回の試算を比較いたしましたときに、平成十一年のときの試算の結果がその後若干違ったということは、私も率直に認めなければならないというふうに思っております。
これはどこで一番大きく違ったかといえば、これは、名目の運用利回りが非常に低かったということが最も大きな要因であったというふうに思っているわけでございます。
ただし、運用利回りが低くなりましたけれども、名目賃金の方も低かったものでありますから、いわゆるその差というものは、それほど予定したものとは変化はなかった、範囲内に入っているということは言えるかというふうに思いますけれども、御指摘のとおり、そうした幾つかの違いがあったことは事実でございます。
○阿部委員 そうした違いがより正しく次の政策に反映されるように、私は、先ほど申しました、厚生労働省が両方、年金の資金の試算、運用資産の計算とそれから実際の給付をつかさどるというところはチェック・アンド・バランスがきかないのではないかという指摘を再度させていただいて、時間の関係で次の項目に移らせていただきます。
今、大臣もおっしゃいましたように、運用利回りが違ってしまえば大きく違ってくる、たまたま名目賃金上昇率が低かったので、これは国民にとってよいことではないのですが、低かったので表面上は大きく毀損していないと見えるとおっしゃいましたが、ここにはやはり、今後さらに運用利回りを株で行っていくような計画がある中で、国民の大きな不信がまたここで生じております。
このこともあわせて、将来、例えばアメリカ型の国債方式がどうであるかとかいうことも追って御答弁もいただきたいですが、最後に、ちょっと一つだけ、論点が違うことを火急で問い合わせさせていただきます。
昨夕立ち上げられた鳥インフルエンザに対する緊急対策本部で、これは坂口厚生労働大臣がリーダーシップをおとりいただいたことと推察し、また、非常に御見識があるものと評価もさせていただいておりますが、今、鳥から人間にうつるところをどうやってブロックしていくかというところが極めて重大な火急の用件となっていると私は思います。
この点に関してたった一つ御答弁いただきたいのですけれども、人に対して、いわゆるヒト型のインフルエンザのときに使っておりますタミフルというお薬がございまして、これを、かつて大分で発生した鳥インフルエンザの場合にはそこの働く人々に投与いたしました。しかし、薬事法上は、この薬の治験では、鳥インフルエンザということに出会っておりませんので、治験上、治療経験上は効果について定かではないが、緊急対応で使いました。
そして、こうした緊急対応で使う場合に生じた薬害、これはあり得ることですので、そのことについてはあわせて国としてきちんとした補償体制が組んでいただけるのかどうか。現場のサイドで非常に今不安を持っておられますので、その一点だけお願い申し上げます。
○坂口国務大臣 確かに、タミフルを使いますときに、それは予防的に使うのか、それとも、今まで存在するインフルエンザ等にかかっているような人に使うのかということによって、これは違ってまいりますが、予防的に使うということになりますと、御指摘いただきましたように、副作用の救済制度にはこれは当てはまらないわけでございます。
医師法におきまして、医師が認めまして、そして本人もそれを了解するということであれば、予防的にお飲みいただくことはできるわけでございますけれども、飲むことはできますけれども副作用が起こりましたときにその対象にならない、それならばどうするかということでございましょう。
そのときに、これは予防的にも通用するように、この製薬会社に申請をしていただくということが一つの方法としてあるのではないかというふうに思っております。
これは今後も起こり得ることでございますから、こうしたタミフルのような薬剤がそんなにたくさんあるわけではございませんので、そうしたことが一つの方法であるというふうに思っておりますし、今まで予防的に使う薬といたしましては、破傷風の薬、それからまた結核の薬等で存在をするわけでございますので、初めてのケースではありませんから、早急に検討させていただきたいと思います。
○阿部委員 国民の安心と安全に向けて、坂口大臣もお体を大切にされて、またよいお仕事をしていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○笹川委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。
次回は、明四日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時五分散会