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東京生まれ。幼稚園教諭、教育相談室勤務を経て92年より文筆業。児童書やエッセイのほか動物のルポなど幅広く活動。著書に「長寿猫」(講談社)、「初恋ストリート」(フォア文庫)「明日へアクセス」(金の星社)等多数。二匹の猫と同居。 |
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『ねこのお医者さん』
石田卓夫 著
(講談社 刊) |
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街には賑やかなクリスマスソングが流れ、暖房をいれた部屋で猫がごろごろ、飼い主さんは気ぜわしくなる季節です。今年1年ペットたちは無事に過ごせましたか?年末にむけて「ついうっかり」というトラブルがないよう、家庭内で遭遇しやすい猫の事故について考えてみたいと思います。
「あぶない!」
そう叫ぶと同時に、ガシャンと音が響く。猫が調理台に飛び乗り、熱い紅茶をいれたばかりのサーバーを床に落としたのです。そして粉々になった破片の上を、もう一匹の猫が歩いて、、、
私の部屋で数年前の冬に起きたことですが、忘れられない衝撃の瞬間です。破片を踏んでしまった肉球は小さな傷(一針の傷)ですみましたが、実はほかにも、キケンな経験をいろいろとしています。
ソファで寝ていたはずの猫がいなくなり、
トイレや浴槽などを探してふと窓を見ると「隙間」が空いている。
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空気の入れ替えをしたまま、締め忘れたのです。ここは3階、ベランダを探したけれど姿は見えず。胸をどきどきさせて階下へ降りると、愛猫は建物の隅にじっと佇んでいました。落下したものの、奇跡的に無傷でした!
猫は、物を落としたり、また自らが落ちたり、ということが本当に多いもの。 特にマンション暮らしをする猫の「落下」が、激増しているといいます。
『ねこのお医者さん』(石田卓夫著)によれば、高層ビルからの落下が多いアメリカでは「高層ビル落下症候群」という論文が発表されています。ビルの1階の屋根からなら大丈夫でも、2階以上7階以下から落ちた猫は助かる確率が少ない。それ以上の高さから落ちるとまた生存率が高まるのだといいます
つまり7階以上だと落下中に4本の足を広げて着地体勢を整える余裕があり、着地の際に空気抵抗が高まるため、生存率も高まる、と石田獣医師は説明しています。もちろん助かってもアゴや胸を強打し、骨折から呼吸困難と重篤な症状につながる可能性があります。
猫は、ベランダや窓の向こうが「宙」だという感覚がわからないのです。鳥を追って興奮して体勢を崩したり、干した布団と共に落ちることだってあります。窓辺のエリアはしっかりガードしたい、とつくづく思います。デッドゾーンといわれる3階から落ちて無傷だったうちのルナは、かなりラッキーだったのでしょう。
猫は高所へ軽々乗ることができるその行動特性から、窓辺やベランダだけでなく、室内でも「落下」することがあります。たまにズルッっと足を滑らせて罰のワルそうな表情をしますが、180センチを越えたタンスや戸棚の上から「うっかり」足を踏み外せば、打撲や骨折につながることも。
2メートル以上の天井に届く市販遊具も普及しているので、遊具自体の倒壊にも気をつけたいものです。何を隠そう我が家では、猫がキャットタワーに飛び乗った拍子にタワーが天井から外れ、私の頭上にガーンと直撃したことがあります、、、。ネジの緩みに気づかなかった私の責任ですが、高さも重量もあるキャットタワー等大型遊具は、猫ばかりか人のケガにもつながることもあるわけです。
組み立てて高くなるキャットタワーは、確かに「運動不足を解消する」「猫は垂直運動が必要」という理由から人気ですが、毎日一度は緩みを確認するなどの配慮が必須です。だーっと駆けてきて飛び乗り、ましてその猫が太っていれば予想以上の負荷がかかるもの。事故が少なくないせいか、この頃はキャットタワーに対して「高さは150センチもあれば十分」と唱える獣医師もいます。
いずれにしても飼い主さんは「自己責任」で、落下や倒壊に気をつけなければいけません。
3匹の猫と暮らすSさんは、室内にいろいろな「工夫」を凝らしていますが(右側写真)、愛猫たちが好きなように歩けるようにと、自家製キャットウオークを設置しています。キケンのないようどのようにしているか、ご紹介しましょう。
「市販の板(180センチ×15センチ×1・5センチ)を購入し、カーテンレールの穴をそのまま利用して木ネジで壁に固定。加重がそのままかかるので、落ちないように軽い板を利用しています。うちの場合はもしも3匹同時に乗ったら合計12キロになるので、全員をのせて確認しました」
Sさんはキャットウオークのすぐ横にタワーを「しっかり」設置、そこから上り下りできるようにしています。(写真はキャットウオークを渡るチャイ)
「3DKの部屋すべてにキャットウオークを取り付けていますが、じつは一度猫が落ちたことが。落ちた場所はちょうどトイレの中でした(笑)。いちばんよく歩くキャットウオークの下にはソファを置いて、万が一落ちてもクッションの役目を果たすようにしています」
猫の室内のトラブルは、落下の他にも多々あります。
煙を焚く「殺虫剤」で呼吸困難を起こしたり、「浴室」の蓋ごと湯の中に落ちたり、首輪をひっかけてしまったり、、、、命を落とした例も少なくありません。
近年では交通事故や感染症予防のため完全室内飼いが定着してきましたが、室内にいるからといって安心できないのです。(後編へ続く) |
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