経済的に困窮する家庭の小中学生を対象にした、自治体の「就学援助制度」の受給者が増えている。経済情勢の悪化が最大の要因とみられ、2008年度は過去最多の約144万人。同じ都道府県でも市区町村ごとの格差が大きいとの調査結果もあり、関係者からは「地域間の不公平感を解消し、教育を受ける権利を守る努力が必要だ」との声が上がっている。
「目が悪く黒板が見えないのに、眼鏡を買わずに我慢する」「けがをしても病院に行かずに保健室で治療する」―。
昨年12月、東京都内で小中学校の教職員ら約100人が集まった「子どもの貧困」を考えるシンポジウムで、援助が必要な児童や生徒の実態が、次々に報告された。
就学援助の対象は、生活保護世帯の「要保護」と、生活保護世帯に近い所得層で市区町村が独自に基準を定める「準要保護」。文部科学省によると、全国の受給者は1998年度に約83万人だったが、10年間で約1・7倍の約144万人に増加。
公立小中学校の児童生徒数に対する受給率は全国平均で13・9%に高まり、大阪、山口、東京、北海道、高知の5都道府県では20%を超えた。
市区町村ごとの格差については、埼玉県の教育関係者が県内の自治体の受給率を調べた07年度の調査で、最も高い市と最も低い市では約10ポイントの差があった。関係者からは、財政難の市区町村が基準を厳しくしたり、保護者への説明をしっかり行っていないケースが多いのではないかとの指摘も出ている。
東洋大の藤本典裕教授(教育行政学)は「教育を受ける子どもの権利は守らなければならない。国や自治体は、制度の運用方法や費用負担について検討し、地域間の不公平感を解消するべきだ」と話している。
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