ドラッグとリストラに揺れた激動の09年芸能界　ビートたけしは何を思うか

　昨年は夏に押尾学が違法ドラッグの使用で逮捕。同時にホステスの田中香織さんが押尾にMDMAを飲まされ、変死。直後に、女優の酒井法子が覚せい剤で逮捕されるという衝撃的な事件に追われ、あっという間に1年が過ぎてしまった感がある。だが、こうした刑事事件とは異なる芸能界の重大ニュースといえば、テレビ界の不況で、タレントたちの大リストラが始まったことも忘れてはならない。

　筆者は年末に、超多忙なビートたけしに会った。「東京スポーツ」客員編集長である彼へのインタビューという企画だ。そのとき、たけしの声が珍しく枯れていた。連日の長時間特番の出演で、喉への負担も相当なものだったようだ。これも、各テレビ局の制作費大幅削減の影響だろう。

　たけしは、数あるレギュラー番組を長時間化した特別番組を強いられていた。どれも、2時間から3時間。12月26日放送のTBSの『ニュースキャスター』は約4時間、大晦日のフジテレビの『奇跡体験！　アンビリーバボー』に至っては約5時間。どれも、制作費を抑えるために、たけしのトーク力と既成のVTRに頼ろうという魂胆が見え見えの単純な番組構成だ。たけしにかかる負担は尋常じゃない。

　12月22日に、スケジュールの合間を縫って、たけしとランチをした。やはり、連日の特番が堪えていたのか、疲れきった表情で「昨日は『家庭の医学』の特番で、3時間、一人でしゃべりっぱなし。アシスタントがいないから疲れるよ」とつぶやいていた。

　このとき、おかしなことを言っているなと思った。『家庭の医学』とは、テレビ朝日で放送されている朝日放送製作の『最終警告！　たけしの本当は怖い家庭の医学』のこと。この番組は、たけしが司会で、アシスタントはフリーアナの渡辺真理が務めていたはずだからだ。

　だが、翌日のスポーツ紙を読んで、納得した。この番組は来年の1月12日からリニューアルして『たけしの健康エンタテイメント！　みんなの医学』という番組に変わるのだ。約5年間、レギュラーを務めていた渡辺の名前は見当たらない。どうやら、リニューアルという名目で、渡辺はリストラされたようだ。年末の『家庭の医学』の特番では、渡辺は進行役として出演していたようだが、新番組に備えて、たけしがアシスタントに頼らないトークを意識しておこない、ほぼ一人でしゃべりっぱなしの状態だったのだろう。そこまで務められるタレントは、ほとんどいない。たけしが未だ各局から引っ張りだこなのも納得だ。

　今年はタレントのリストラがさらに強化されるだろう。タレントには厳しい年になりそうだ。

　たけしといえば、楽しみは、久しぶりに撮ったヤクザ映画『アウトレイジ』が6月に公開されることだ。これまで、たけしは映画がクランクインすると、必ず「面白い」と自画自賛しながらノっていたのだが、いざ編集の段階になると口が重くなることがよくあった。しかし、今回の作品については、編集が終わった段階でも、「今までの中で一番、面白い。出演者の三浦友和がいいよ。一番、ワルなんだよ。これまで通り、バイオレンス描写はふんだんにあるけど、言葉の暴力が痛い。"痛い映画だよ"」と自信満々に語ってくれただけに大いに期待が持てそうだ。

　筆者の個人的なニュースといえば、"芸能界のドン"と呼ばれているバーニングプロダクションの周防郁雄社長からの"恫喝訴訟"も最高裁に上告したが、結論は出ていない（記事参照）。

　さらに昨年末には、押尾学のスポンサーで、押尾に六本木ヒルズレジデンスの部屋を提供した下着通販会社「ピーチジョン」の野口美佳社長からも名誉毀損で提訴された。週刊誌で、野口が自由に使わせていた部屋が"ヤリ部屋"と化していたという状況を挙げ、その管理責任を問うべく記事を書いたら、いきなり裁判に打って出てきた。自身が管理する部屋で田中さんが変死したにもかかわらず、自分は「被害者だ」と開き直る野口を筆者は許さない。徹底的に戦う。また、押尾事件は今年も引き続き、執拗にリポートしていく。
（文＝本多圭）



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