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仙台地裁 裁判員会見で不適切な説明 職員、予断与える

 仙台地裁で昨年開かれた裁判員裁判の判決宣告後、記者会見の注意事項を裁判員に説明する場で、地裁が会見の運用を阻害しかねない説明をしていたことが6日、関係者への取材で分かった。仙台地裁は「裁判員がそう(否定的に)感じてしまったのなら、今後は気を付けたい」と話している。

 関係者によると、裁判員らは判決の言い渡しを終え、地裁総務課長から記者会見に関する説明を受けた。その際、総務課長は「会見でばかな質問をする記者がいる」、もしくは「ばかな記者がいる」といった趣旨の発言をしたという。

 説明時間は約10分で、出席する記者数や想定される質問などが伝えられた。総務課長は評議の秘密についても「記者は秘密を聞こうとする。その時はアイコンタクトをしてください。質問を止めます」などと話したという。

 裁判員経験者の一人は「正確な言い回しはあいまいだが、職員が『ばか』という言葉を使ったのは間違いない。説明で記者に対する否定的なイメージを植え付けられ、質問にできるだけ答えないようにしようと身構えた」と証言した。

 記者会見は報道機関の主催だが、事前説明や出欠の意向確認は地裁が行う。記者は会見まで裁判員と接触できず、会見内容の録画や録音も認められていない。

 河北新報社の取材に、総務課長は「『質問が下手な記者』とは言ったかもしれないが、ばかという言葉は誓って使っていない。裁判所は記者会見に意義があると考えており、今後は会見に後ろ向きと取られないようにしたい」と話した。

 最高裁の「裁判員制度の運用等に関する有識者懇談会」委員で、ジャーナリストの桝井成夫氏は「事実だとすれば、適切とは思えない。評議の中身など会見で話すときの問題点は説明すべきだが、神経質になり過ぎている。裁判員がオープンに話せるようにすべきだ」と指摘している。

[評議の秘密] 裁判員と補充裁判員は(1)評議で裁判員や裁判官が述べた意見(2)何対何で有罪だったかなどの評決結果(3)どのような経過で結論に至ったか―などを漏らしてはならない。裁判員法の規定で、違反した場合は6月以下の懲役または50万円以下の罰金。守秘義務を科す理由について最高裁は「裁判の公正さや信頼を確保するとともに、評議で自由な意見を言えるようにするため」と説明している。

◎裁判員経験者証言/「ばか」という言葉使っていた/接触避ける対応に違和感

 仙台地裁から受けた裁判員記者会見の説明で、会見に否定的なイメージを抱いたと証言した裁判員経験者との一問一答は以下の通り。

 ―地裁職員の説明で気になった点は。
 「『ばかな記者』か『ばかな質問をする記者』かはあいまいだが、『ばか』という言葉を使っていた。記者に対してネガティブな印象を持った」

 ―説明はいつ、どのように受けましたか。
 「判決後、評議室で記念のバッジと感謝状をもらい、宣誓をした部屋に移動してからだった。記者クラブの依頼で会見を開いていると説明された。職員は『ぜひ参加してほしい』と話していた」

 ―質問への回答について指導はありましたか。
 「『ありのままを話してください』『隣の人と同じと答えてもいい』と言われた。『答えなくていい質問がある』と聞き、答えられないことがあると知った。その説明がなければ、評議の秘密をうっかりしゃべったかもしれない」

 ―取材に応じた理由は。
 「記者との接触をできるだけ避けさせようとする職員の対応に違和感を持った」


2010年01月07日木曜日

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