新年連載・常識革命
2010年は、常識革命の年。その先達となる取り組みを紹介する
【放送芸能】(2次元キャラ+3次元シンガー)÷2=アニソン人気2010年1月8日 朝刊
アニメの主題歌や挿入歌という枠を超えて多様化し、一つのジャンルとして存在感を増す“アニソン”。NHKの音楽番組「MUSIC JAPAN」(総合、日曜午後11時半)で昨年八月に放送し、大きな反響を呼んだ「新世紀アニソンSP」の第二弾が、十日放送される。番組の収録現場をのぞいてみると、ブームの理由が見えてきた。 (近藤晶) 東京・渋谷のNHKホールは揺れていた。女性アーティストの出演が多いこともあって、観客の男女比は七対三といったところ。意外と女子も頑張っている。同番組のナレーターを務めるアニソン界のトップランナー・水樹奈々ら、アニソンアーティスト計八組が次々に熱唱した。 観客は、折り曲げると発光するライト「サイリューム」を手にジャンプ。総立ちだ。それぞれイチ押しのアーティストはいるのだが、すべての出演者、すべての楽曲を、みんなが全力で応援しているのだ。 「この参加感と一体感こそがムーブメントの底流にあって、アーティストにだけでなく(アニソンという)ジャンルにもファンがついている。そこが、これまでと違うところ」と同番組の石原真プロデューサー。「カタカナ四文字で『アニソン』とネーミングしたことによって、一つ突き抜けられた」と語る。 今、アニソンと呼ばれるものは、アニメ専門の歌手が歌う主題歌や挿入歌にとどまらない。作品に登場するキャラクターに成り代わって、声優や歌手が歌うキャラクターソング(キャラソン)など、そのスタイルは多様化。声優が、歌手として自身の名義でリリースするCDもヒットを飛ばしている。 紅白歌合戦に初出場した水樹は、昨年六月発売のオリジナルアルバムが、声優として初めてオリコン週間チャートで一位を獲得。日本武道館や西武ドームなどでの大規模ライブも次々と成功させた。キャラソンでは、高校の軽音楽部を舞台にしたテレビアニメ「けいおん!」の関連CDの総売り上げ枚数が百万枚を突破するなど、アニソンは、低迷するCD市場で無視できない存在になっている。 ◇ 「地上波のJ−POP番組をやっていて、これまでアニソンって、少なくとも何か見えない線があったが、その垣根がなくなった」と石原プロデューサー。昨年八月に放送したアニソンSP第一弾の反響は大きく、初回未公開部分を再編集するなど、三回にわたり再放送。第二弾収録の観覧応募は、約五倍に増えたという。 第二弾では、テレビアニメ「マクロスF(フロンティア)」に登場するランカ・リーの声と歌を担当する中島愛(めぐみ)と、シェリル・ノームの歌を担当するMay’nが、オープニング曲「ライオン」をテレビ番組で初披露。同アニメのイベント以外では見られないレアなデュエットに、会場は大いに盛り上がった。アニソン人気は国内にとどまらず、May’nは昨年、シンガポール、韓国、中国でもライブを成功させている。 今のアニソンブームの本質を「二・五次元萌(も)え」と表現する石原プロデューサーは「ファンの間では、作品に登場する二次元のキャラクターと、その声で歌う三次元のシンガーとが薄くオーバーラップしている」と指摘。「アニメのオープニング曲は一分半の芸術。耳に届きやすく、説得力があるのは、そこにポップスの知恵が集約されているから」と、高い歌唱力や楽曲の作品性もブームを押し上げている要因と説明する。 NHKホールの熱気もすごかったが、石原プロデューサーもかなり熱かった。「楽曲のクオリティーも高い、歌唱力もある、ルックスもいい。売れているのに、今、音楽番組でアニソンに目を向けない方がおかしい。アニソンSPは今後も続けていきたいですね」
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